機動戦士ガンダム二次創作  ミリしらシャア・アズナブル列伝   作:泉 とも

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決戦前夜

 サイドⅡ宇宙港。

 

「おーいそっちじゃない!ディアスの改修が先だ!」

「キャラメルの追加と腰だけだ、直ぐ終わる!」

 

 宇宙港は蜂の巣を突いたような騒ぎだった。シャアたちエゥーゴの主力が補給と整備を受けに、次々とやって来るからだ。

 

 ガブスレイの入手により構造と設計が解禁、パーツの流用が可能になった。

 

 とある世界では、ティターンズが使用したことで一部の機体は忌子扱いで封印されるが、この反乱軍がかき集めたのは、紛れも無い当時最先端の傑作MSである。

 

 このガブスレイも可変型MSだが、この機体を傑作たらしめたのはそこではない。

 

 脚部の奇抜な変形機構でも、各種センサーでも、ハンブラビにはマウントする場所がないフェダーインライフルでもない。では何か?

 

 この腰部側面内部に、小型の推進器を詰めた構造である。

 

 MSの推進機構は背部と脚部に集中しがちだが、胴体部の高さにある物は少なく、パワーレシオが最適化されていないのが普通だった。

 

 ディアスは取り回しの都合上、腰のビームサーベルが取り出し難く、ジム系列のように取り敢えずでのミサイル増設などが向いていない。

 

 そういった微妙な不具合を改善しつつ、更にパワーを増すことができる。前線で戦う兵士にとって、微々たる強化でも決して疎かにはできない。

 

「こんな骨董品が役に立つのか?」

 

「ヘリウムコントロールボックスか。おまけの割りにはちゃんとしてるよ」

 

 加えてスカート前面の余剰面積には、初代ガンダムの出力強化装置の黄色い四角い箱が増設された。

 

 シュツルムディアスの強化はここに完成したと言っていいだろう。

 

「メタスはどうだ」

 

「ブロックビルドアップの適用改修は終わった。すげえぞ、安さと簡単さの結晶だ」

 

 メタスはまず、ガンマガンダムの構造を取り込んでいた。これにより全身の分離が可能になり、手足を失った機体に、そのまま自分の手足を差し出せるようなった。

 

 ガソスタ的なエネルギー補給も可能であり、単独で修理・補給が可能な高速可変MSという絶対的なポジションを確立した。

 

 そして。

 

「アクシズから回されたパーツはどうだ」

 

「構造材が死ぬほど安っぽかったから、今はガンダリウム製の物を作った。あんなの撃ったら暴発するぜ」

 

 整備員の一人が苦言を呈する。

 

 デギンが移動させたアクシズには、大量の新型MSが用意されていた。

 

 その名はガザC。

 

 

 メタスのパチモンっぽいこの機体もまた可変MSだったが、火力と機動性を両立するという着眼点こそ正しかったが、本来必要であるはずの資材や費用をケチったばかりに、びっくりするほど安っぽい機体に仕上がってしまった。

 

 しかし見るべき所はあったので、バラバラにした部品と設計図が、エゥーゴへと横流しされた。出所はだいたいガルマかキシリアである。

 

「よーし、ズサM、いいぞ!」

 

 ズサM、またの名をメタス・フレーム流用型ズサ及び対艦ミサイル搭載型ドダイYSとは。

 

 連邦とジオンの技術融合が進んだことで、両者の特性を合わせ持つ、次世代の主力となる量産型MSの模索されていた。

 

 そしてSFSと簡易な可変機構を持つMSが凌ぎを削り合う中で、初期に考案・開発されたのがガザC及びズサだった。

 

 胴体スカスカで上下がパイプと細い背骨でしか繋がっておらず、空中ブランコみたいな回転でブースターと合体する下半身という、俺なら絶対乗りたくない構造のメタスだが、可変機としてこの簡易さは特筆すべき物があった。

 

 事実他の世界では、ゼータと組み合わさり、後世で完成形と呼べる強力な可変MSが作られるほどである。

 

「一気にゴツくなったな」

「ああ、そのクセすげえシンプルだ」

 

 ズサMはメタスの上半身をガザCに交換し、一つしかないケチ臭い砲撃用センサーを見かねてもう一つ追加した。

 

 そして両腕と両足をズサに交換。回転時の位置を考慮し股間部に同機のバーニアを増設。

 

 被り物のブースターも、ジェネレーターボックスを内蔵したズサのブースターに換装、大幅なパワーアップを遂げた。

 

 メタスは元々背部ブースターと脚部側面の小型バーニアのみで推進力を得ており、その速度と機動性は、機体の軽さと小ささで稼ぎ出していたに過ぎない。

 

 またカメラの角度で大きさを誤魔化していた機体の筆頭である本機は、肩幅がズサ並みにあるので、ミサイルを肩と首に置くことに問題は無かった。

 

「ミサイルの装填はするなよ。出撃前にするんだ。搬入だけでいい」

 

 このズサブースターはミサイルが満載されているが、更にGディフェンサーのノウハウが活かされており、フレキシブルアームにより14連ミサイルポッドが両腕に装着される。

 

「まるでハリネズミだな」

「いったい何と戦うんだろう」

 

 武装を見てみよう。

 

 ズサの代名詞とも言えるミサイル。ブースターによる上半身のミサイルが左右合わせて22発。両腕に装備されたミサイルポッドの28発。

 

 大小合わせてミサイル合計50発!

 

 また本機は対艦武装として改良されたドダイYSとのセット運用が前提である。このドダイYSは爆撃機としての性能を追求し、ミサイル発射口を拡充。

 

 対艦ミサイルを10発搭載しており、ズサとの併用により双方に不足している命中精度と決定力を補うこと、発射後の迅速な帰投を助けており、合計60発のミサイルを撃ち逃げする構造となっている。

 

 二機もいれば十分な量のミサイルが敵機を襲う訳だが、実弾に強いMA・巨大重MSでさえタダでは済まない火力を持つようになった。

 

 携行火器にはナックルバスターが採用されており、ブースターのジェネレーターはこの武装に使用される。変形時には宙吊り状態の上半身にマウントされる。

 

 腕部ではメタスからアームビームガンと格納機構が引き継がれ、プラモデルが困るビームサーベル六本とかいう設定は無かったことになった。代わりに両腕に一本ずつ収納され、使用時に取り出せるようになった。

 

「しかし今時ミサイルで墜ちるケースなんてあるのか?」

 

「いや、これだけの攻撃に晒されるとな、回避プログラムが悲鳴を上げるんだよ。それで動きが鈍った所にズドンっと寸法さ」

 

「おっかねえなあ」

 

 基本的に攻撃が命中することが死に直結するMS戦において、食らっても平気な攻撃を学習して強気に前に出るのは大型機の判断であり、それ以外は即座に回避行動に移るようになっている。

 

 回避行動と接近攻撃を同じ括りに出来るのは、エースの所業ということを忘れてはいけない。

 

 外観はと言えば頭部と脚部はメタスのままだが、ビームサーベルが撤去された空間には、追加でプロペラントタンクを収納。

 

 胸部センサーの増加に伴い、肩部は後ろを向きつつ側面にもモノアイを追加、ブースターと胴体底部にモノアイが付き、上下前後左右に目が付いた形である。まるでハンブラビ。

 

 ガンダムの首一つ後ろに吊っとけばいいだろとか言ってはいけない。

 

「急拵えにしては頑丈そうだが」

「これからメタス系は増えるかもな」

 

 実弾を撃ち終えた後も、油断のならない火力を持った本機は、メタス改のバリエーションの一つとも言えた。

 

「ガブスレイは整備だけでいいのか?」

「ああ、あっちは普通のメタスと組むらしい」

 

 ガブスレイは後に足を伸ばし、二段階関節と前後対象となるガザの脚部を採用、変形機構をより簡略化した物が、メタスとの併用で長期運用されることになる。

 

 仰向けになって被り物を被るだけで巡航形態になれる本機は、通常のメタスと作業用アーム等で連結しランデブーするだけで、航続距離と移動速度を大幅に増やすことが可能だった。

 

 戦闘面においても牽制役とトドメ役の分業や、ガブスレイ側の中破時までならメタスのパーツを流用可能など、兵士からの信頼も獲得していく。

 

「このGファイターの中身は、あそこか」

「ドッキングが済んだら積み込んでくれ」

「分かった」

 

「でも誰が乗るんだこれ?」

「アポリー中尉が撃墜されるから、次の機体だと」

「そうか」

 

 EWAK搭載型Gファイター。

 

 索敵装置と一体化したMSの頭、というより機能の一部としてMSの頭が組み込まれた索敵装置を、胴体に格納されたGファイター。

 

 ジオン軍印のステルス機能もついて、戦場の情報戦を大幅に助ける名脇役である。

 

「しっかしこれだけのワンオフやカスタム機が並ぶと、流石に壮観だな」

 

「これだけの質と量が揃っていても、戦艦はボロボロだったからな。最前線ともなれば試作機や実験機みたいなのも集まって、次々に使い捨てにされていく」

 

「おっかない話だぜ」

 

 MSが飛び交う宇宙では艦首に流れ弾が一発刺さるだけでもお陀仏だし、後年は胴体に刺さっても一発でお陀仏である。

 

 アーガマは直撃こそ受けていないが、小競り合いの回数から被弾が嵩んでおり、控えめに言ってもギタギタってレベルで傷付いていた。

 

 未だに沈んでいないのが不思議なくらいであり、ドレンは日頃から遺書と自伝を更新している。

 

「オレたちにできることは限られてるし、アーガマの修理だって完全とは行かない。どこまで保つか……」

 

「やれるだけやろうよ。勝利の栄光を君に!ってな」

 

 整備士たちは休む間も無く働き続けた。

 

 そして最後には出発するアーガマを見送り、誰ともなく、彼らの武運を祈るのであった。

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