機動戦士ガンダム二次創作 ミリしらシャア・アズナブル列伝 作:泉 とも
「は~~~~……」
「何とか、間に合いましたね」
「これでグラナダは助かりましたな」
直したばかりなのにもうズタボロになったアーガマの艦首にて、シャアたちはぐったりしていた。
例によって戦況は大きく変化し、その対応に僅かな猶予も許されない激戦となった。
「この後のジオン本国のことは、あまり考えたくありませんな」
「戦後の楽しみと思って今は忘れよう」
ドレンのぼやきにシャアが返す。彼らはほんのついさっき、コロニーレーザ-を制圧したばかりなのだ。
順を追って話すと、サイドⅡにて補給を受けたアーガマを待っていたのは、元祖ジオンによるアクシズの接近と、デギン公王とジャミトフの会談であった。
摂政政治を敷いていた公王は、振り上げた拳を降ろしあぐねていた。ティターンズの使者として来たシロッコがミネバに忠誠を誓ったことで、逆賊として討つ口実を失いつつあったからだ。
とはいえこれまでのティターンズの所業が免罪される訳ではない。ギレンへの反抗心もあり、先んじてこの逆賊集団を解散させ、鼻の一つも明かしてやろうと考えていた。
結果は酷いものだった。ジャミトフはデギンの命令を明確に拒絶。交渉は決裂。昔取った杵柄で暗殺を試みるも失敗に終わり、命からがら逃げ帰って来た。
しかも暗殺に失敗したはずなのにジャミトフは死んでおり、その犯人はデギンだと濡れ衣を着せられてしまった。当初の目的は達成されたがそのせいで事態は悪化し、ティターンズはパプテマス・シロッコの手に落ちた。
元祖ジオンとティターンズは交戦状態に入ったが、前者はエゥーゴも邪魔者程度にしか考えておらず、戦場で遭遇すると攻撃してくるという有様だった。ガンダムの世界だから軍人なんてものは、チンピラに毛が生えた程度の理性しか持ち合わせていないのである。
たぶん富野監督の逆恨みが入ってるんだろうな。
「先程キシリア閣下から感謝の一報が届きましたが」
「これだけ目の敵にされて、あやうく死ぬ所だったからな。礼の一つも言いたくなるだろう」
現在キシリア・ザビは月面一帯を納める女帝であるが、ティターンズには再三に渡り平穏を脅かされており、最後はコロニーレーザーの的にされかけるなど、ろくな目に遭っていない。
「愚痴も多かったですがね、流石に今回ばかりは、ギレン総帥も肝を潰したとか何とか言ってましたよ」
「それ見た事か。現実はいつも都合の悪い方に転がると、相場が決まっている。これに懲りて世の中を思い通りに動かせるなど、考えないで欲しいものだ」
父デギンの反発やティターンズの月への度を越した攻撃は、ギレンを大いに弱らせた。
想像を大きく下回る他者の愚行・暴挙に対し、自身の計算を狂わされていくのか、或いは単に見通しが甘かったのかと。
「大局を見ても今回の騒動は、計画で始まりこそすれ、ほとんどは誰かのエゴによって動かされてきた。ギレン、デギン、ジャミトフ」
「それにシロッコも」
「ああ、あの男には何か得体の知れない邪悪さがある。幼稚さとも違う、自分の能力を戦争に使って試しているような」
「遊んでるんですよ、奴は!」
シャアはコロニーレーザー争奪戦においてシロッコと交戦、辛くもこれを退けている。
「サラだって、あんな奴に魅かれなければ」
「カツは部屋にこもってしまった。無理もない」
「レコア少尉も寝返ってましたしなあ」
カツは乱戦の最中シロッコを攻撃したが、サラのボリノーク・サマーンが庇ったことで、意図せず彼女を殺害してしまう。
アニメにおけるアムロとシャアとララアの再現だが、シロッコとカツという配役のせいで、ファンからは余計にヘイトを買ったのだった。
そしてもう話数も無いし話を振る必要も無くなったので、助けに入った甲斐もないエマ中尉の援護に入って死ぬのだが、ドラマを盛りたがるクセに片付け方が雑だからそんな盛り上がらないの本当このアニメダメだなって思う。
「兵士にとって、敵以外の人間を傷付けることほど、恐ろしいことはない。だからこそ、ティターンズを放ってはおけない」
「分かってます。奴らだってもう後が無いんだ。ここでオレたちを叩いて行方を晦ますしか、生き残る手段はないはず」
「総力戦になるだろう。この宙域に敵味方の戦艦が終結しつつある。艦隊戦とMS戦、ありったけをすることになる。流れ弾と戦艦の爆発に巻き込まれたら、一巻の終わりだぞ」
ドレンが通信手に言ってレーダーを出させると、僚艦ラーディッシュを始め、敵味方の艦影が、この宙域に集まりつつあった。
「機体の整備もこれが最後だろう。カミーユ、ゼータの改修は済んだのか」
「はい、どうにか間に合いました」
ゼータガンダム【変形機構改良型】
人体に例えると服を捲った後に両腕をゴリラみたいにしてスカートの中に突っ込み背中のマントを前に回してうつ伏せに寝て足をエビ反りしてスカートも捲るという、これ例えないほうがよかったな……。
今のなしなし!
とにかく無茶な変形の代名詞であり、カミーユ渾身の設計でアナハイムが当社の設計ですと言って憚らない、よくこの時代に完成させられたなという傑作MS。
それがZガンダムである。
ガンダム1のイケメン。
なのだが背中のウイングが半回転して上下を逆にし、次に前に回って左右が逆になることで正しい位置になり、なおかつ羽根の中に畳んだ腕を更に収納するという、ゼータの変形の複雑さの半分を担うこの部分を、本機は改善したものである。
変形を見越して最初からウイングが腕部に装着されており、対ビーム用コーティング剤の塊と言っても良いほど塗布された当該部は、シールドとしての機能も果たすことになる。発想自体はギャプランのアームバインダーである。
またウイングの有った背部には、ガンマガンダムの初期バックパックをゼータ用に調整した物と、次期拡張装備として開発されたシールドバインダーが追加され、側面防御力と火力が向上した。
余談だがガンマガンダムは今回の紛争のデータをフィードバックし、シュツルム・ディアスのグライバインダーを、シールドバインダーとロングシールドブースターに分割。
『シュツルムパック』と呼ばれる両装備をした機体は『嵐騎士』の愛称で呼ばれるようになるのだが、それはまた別のお話。
「流石に説明用のプラモデルでさえ、混乱が生じるような構造はやり過ぎました」
そしてゼータの変形の複雑さのもう半分を担う、脚の付け根から二段階関節を採用し、脚が割れて内側からメカが飛び出すという、ティターンズ製可変機の影響をこれでもかと受けている脚部だが、リアスカートも縦に畳み二段階関節は膝に移行。
主に変形時に内側からメカを飛び出させながら曲がるという構造がオミット、非常にシンプルな足へと生まれ変わった。
「ギャプランの改修も終わっている。ゼータと似た機体になったから、もしもの時はアーガマに戻って乗り換えるといい」
「はい」
収斂進化という言葉がある。簡単に言うと『なんだかみんなして進化の方向性が被っちゃったな』ということを指す。
ギャプランもまた、メタスやゼータと言ったエゥーゴの機体を参考にし、スポンサーたるジオン軍上層部の助力を得て、更なるパワーアップを遂げた。
ギャプラン・カスタム
皆さんは本機の胴体を見て、またこんなもげそうな胴体してる、と思ったことはないだろうか。
細く見せたい見栄。しかしそんな機体に対するベストアンサーが既に出ていることも、皆さんならお気付きだろう。
メタスである。
メタス・フレームを用いた背部ブースターと下半身の連結。上半身をしっかり繋げないことで更なる拡張性を齎す。ギャプランの改良にとってメタスこそ次へのステップに他ならなかった。
そしてゼータ。足の付け根から後ろへ畳まれる構造は全く同じであり、むしろそこから余計な動きをしない時点で、ゼータより優秀だった。
だがアナハイムは真似した。足の付け根から二段階関節と変形を。股関節の展開と脚を機体の上側に引き上げることを。
「あんなにスラスターやバーニアを増やしてどうする心算なんでしょうな。フルパワーなら強化人間だって圧死しますよ」
ドレンが苦笑する。MS開発は恐竜的進化という、それ絶滅しますよね?という膨張と過熱を迎えていた。
「恐らくはサイコミュを見込んでのことだろう。ニュータイプの超能力にはパイロットの身体能力を強化したり、バリアを発生させたりすると、以前キシリア閣下から聞いたことがある。現在その超能力を強化する金属粒子を開発中だとも」
「宇宙時代でいう事じゃありませんが、そりゃまたSFですな」
ギャプラン・カスタムは背部スタビライザーを撤去。ギャプラン用に形状を調整したメタスの背部ブースターを増設。
スカートは側面にガブスレイ、リアスカートにゼータと同じく推進器を内蔵。足の付け根からはゼータと同じ変形機構を採用し、山の字となる胴体と両腕の谷間に脚部を引き上げ、足はアッシマーの物と交換。
この時点で大小含め推進器が十基以上増えており、脚部の内側や腕部にはエネルギーパイプが露出。稼ぎ出したなけなしの内部スペースに推進剤を増量している。
武装面の変更はメタスの背部ブースターの機首に追加された、フルオート式ビームガンの他、前方に伸ばした両腕で保持する『プラズマ・ビッグ・ジョー』が上げられる。
MSサイズの『やっとこ』に放電機能を持たせたこの武装は、高速で一撃離脱を旨とする可変機に、体当たり的な攻撃を追加することで、突撃時の安全を確保するものである。
使用方法は敵MSに機体ごと突撃する。またはその大顎で敵機を挟み込み、感電させながら圧壊させる。または引き摺り回してパイロットを失神させるというものである。
ジオン軍のMAビグロのクローを想起させる格闘戦用の装備だが、Zガンダムの設計者はギャプラン・カスタムを見て、ウェイブライダーで突撃することは考えていないと、自機がモデルにされたことに不満を隠さなかった。
「MSの性能が人間を置き去りにする日は、案外近いやもしれんな」
「その前に新しい艦が欲しい所ですな。アーガマは今日までよく保ってくれましたが、む!」
三人が話していると、艦内に警報が鳴り響く。
「敵MS多数接近、ティターンズです!」
「来たか、総力戦だな。カミーユ」
「ええ、行きましょう、大尉!」
U.C.88。エゥーゴとティターンズ、最後の戦いが始まる。