機動戦士ガンダム二次創作  ミリしらシャア・アズナブル列伝   作:泉 とも

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グリプスの終わりに

 ネェル・アーガマ艦内。

 

「は~~~~……」

 

「元気がないな、シャア。いや、今はキャスバルと呼ぶべきかな?」

 

「茶化さないでくれ、ガルマ」

 

 シャアは新造戦艦の艦首にて、ガルマと束の間の安息に浸っていた。

 

 今は本国で行われているギレンの演説を見ている。

 

「結局、我々はギレンの掌で躍っただけか」

 

「そうだな。だが躍ったのが我々だから、戦いは今日で終わったと思うべきだろう」

 

「ガルマは前向きだな。私もそう思いたいが……」

 

 ティターンズとの戦いは終わった。

 

 一応は元祖ジオンも味方に付いたことで、エゥーゴは優勢のまま彼らをア・バオア・クーに追い詰めることに成功。

 

 籠城を決める彼らにアーガマは突入し、内部で艦を爆破。ティターンズは殲滅され、シャアたちは駆け付けたガルマの艦に避難した。

 

 抵抗する者がいなくなったことが確認されると、ガルマによって戦闘の終了が宣言され、最初から予定していたかのように、間髪入れずにギレンの演説が始まったのである。

 

「シロッコには逃げられてしまった」

「まあ、彼が死ねばジュピトリスも困るだろう」

「それはそうだが」

 

 ジュピトリスは破壊されていないので、木星の無関係な人たちが苦しむことはありません。ご安心ください。

 

「まさか奴が兄上の手の者だったとは」

 

 シロッコはア・バオア・クー内にてカミーユ、カツ等と交戦。二人を圧倒するも煽ってキレさせたことで形成が逆転。カツのギャプランにラストシューティングされて敗北した。

 

 その後カツはギャプランにコバンザメみたいにくっ付いていたGディフェンサーのコクピットに乗り換え、サラの幽霊に導かれ脱出。

 

『ボクには帰る場所がある。こんなに嬉しいことはない』と言って帰投した。

 

「ジオン公国軍諜報部ギレン・ザビ直属諜報工作員パプテマス・シロッコ。木星船団所属ジュピトリス艦長パプテマス・シロッコ、そしてティターンズのパプテマス・シロッコ大佐」

 

「三重スパイか。そんな奴が大人しく木星に帰ってくれるなら、今は良しとしよう、誰も彼もが疲れ切っている」

 

「そうだな……ララァたちもよく無事でいてくれた」

 

「ああ、まさかサイコガンダムの後継機なんて物が出て来るとは、予想だにしなかった。しかもパイロットがシャリア・ブルだったとは」

 

 強化人間を失ったティターンズの奥の手は、左遷されてきた老けたニュータイプだった。

 

「奴はララァがエルメスに乗った時、その才能に嫉妬しやる気をなくして、彼女を一人置き去りにして帰って来た下種だ。キシリア閣下に陳情して処罰して貰ったが、まさかティターンズに転属させられていたとは」

 

 シャリアは逆恨みでエゴを増大させ、サイコガンダムマークⅡの力も加わり多くの被害を出したが、ララァ・フォウ・ロザミアによる合体サイコミュ攻撃を受けて身動きが取れなくなり、ネェル・アーガマのハイパーメガ粒子砲の直撃により消滅した。

 

 所詮はスパロボF完で乗ってる機体が強いだけの強化兵である。

 

「こちらも戦力を整えた心算でいたが、少しでも足りなかったら皆死んでいただろう」

 

 戦争は数とはよく言った物で、モブ枠の味方が全員生存したことでエマ中尉は生還し、ガトーがラーディッシュに来たおかげで、ヤザンを押さえ込むことが出来た。

 

 ジェリドはなんか普通に死んでた。

 

「持つべきものは頼れるスポンサーだな、シャア」

「こればかりは何も言い返せないよ」

 

 エゥーゴに所属してから今日に至るまで。多数のMSや物資を用意してくれたのは、ガルマを始めとしたジオン上層部だった。

 

 もしも自分がザビ家への復讐を果たしていたら、今回のようなケースに対応出来たとは、シャアにはとても思えなかった。

 

「しかしよく戦艦を用意できたな。しかも見るからに新造艦だ」

 

「何、試供品だよ。木馬級の新型をティターンズが横領していたのを、アナハイムに引き渡したんだ。そして今後のために色々な装備やシステムを盛り込み、改造させていたんだ。まあ結局ギリギリになってしまったんだが」

 

 先行技術試作導入型ネェル・アーガマ。

 

 ティターンズが横領し、各地の拠点に解体・分割して隠していたペガサス級戦艦アルビオンを、ガルマ・ザビがカラバと共に取り返してアナハイムに送り、急ぎ再建させたネェル・アーガマの『ようなもの』。乗員たちからの愛称は『ねるねる』。

 

 可愛らしいあだ名とは裏腹に、騒乱時に採算を度外視してありったけの改造を施して最前線に送りたがる同社の悪癖がこれでもかと詰め込まれている。

 

 本艦は解体されていたアルビオンを建造途中だったネェル・アーガマに組み込み、またアナハイムが旧連邦系戦艦の新型として考案中だった『クラップ級』『カイラム級』及びティターンズから盗み出した、同組織が独自運用していた各艦の技術を結集したものである。

 

 外見で言えば前半分がネェル・アーガマであり、後ろ半分がラー・カイラムである。両者の中央にはエンドラ級に使われている、前後の機関をフレーム状の構造体で繋ぐというデザインが採用されている。

 

 ペガサス級の特徴である、両舷前方へ伸びるMSデッキを流用し、先端からはMS以外の機体が、後部側面からはザンジバル式の掴まり立ち、片足立ちの発進形式を採用している。

 

 また中央部は正面カタパルトの上に主砲が二段設置されているが、その間にもエレベーター式及び格納型カタパルトがあり、これにより一度の出撃で最大MS六機、戦闘機系の機体が二機の合計八機が同時出撃可能となっている。

 

 最大MS十六機を搭載する本艦にとり、短時間に艦載機を全機出撃させるという爆発力は、前例の無い本艦特有の強みとなる。

 

 外観上で目を引くのは船体下部に装備された一対の巨大な放熱板と、左右に伸びながら折り畳むことも出来る二対の放熱翼であろう。船体が長くなったことでこれらは干渉を免れ同時に運用することが可能になった。

 

 元々ペガサス級と旧連邦系戦艦の折衷案と呼ぶべきデザインのアーガマ系は、分割することでより強い先祖返りが可能になることを可視化したのである。

 

 武装面も機銃は全てレーザー機銃へ置き換わり、ネェル・アーガマにアルビオンとラー・カイラムの武装がそのまま足された形である。

 

 現状で最強の戦艦だったドゴス・ギアを仮想敵に据えた本艦は、間違いなくもう一つの最強という位置付けになる予定だったが、ティターンズの内紛によりそのドゴス・ギアは敢え無く轟沈した、悲運と幸運の戦艦である。

 

「核ミサイルもハイパーメガ粒子砲もある。Gジェネ仕様だからパイロットが六人だ。これでスパロボでも弱いなんて言わせないぞ」

 

「頼もしいな」

 

 いつになったらこの仕様にするんだろうね。

 

「あ、大尉、ここにいたんですね」

「カミーユ、どうかしたのか」

 

 彼は小さなバック一つを持って、どこかへ行こうかという様子だった。

 

「戦いが終わったから、オレ、サイドⅦに帰ろうと思うんです。親父もお袋もいなくなったし、死体も残ってないけど、一度ちゃんとした葬式をしてやらないとって」

 

「そうか。寂しくなるな」

 

 シャアはサングラスを外した。

 

「ティターンズが消滅した今、私たちは正規軍に戻る。困ったことがあったら、遠慮なく尋ねてくれ。まあこれからはガルマの方が役に立つだろうが。それと、その時はシャア・アズナブルということで頼む」

 

 苦笑する赤い彗星に、カミーユはクワトロ・バジーナの終わりを感じていた。

 

「結局、あなたは誰ってことになるんですか」

 

「全部私だよ。幼い頃両親を無くした、ジオンの息子キャスバル。ジオン軍の赤い彗星、シャア・アズナブル、そして、君にとってのクワトロ・バジーナだ。どれも、無くすわけにはいかない私自身なんだ」

 

 彼はシャア・アズナブルという人間に戻る。だからといって、これまでの過ごした名前と、その時間を過ごした者たちとの記憶は、仮初などではない。

 

「ずるいと思うか」

「いいんじゃないですか。大尉は、大尉のままで」

 

「おいおい、三段階降格だぞ。子どもが三人もいるのに」

 

「流石にララァも怒るな」

『はっはっはっはっは!』

 

 一頻り笑った後、クワトロはカミーユの頭を撫でた。

 

「……この一年で、背が伸びたな」

「大尉」

 

「我々のくだらない戦いに、君を巻き込んだこと。私は一生忘れないだろう。済まなかった」

 

「オレがどんなに許しても、あなたは自分が許せないんですね」

 

「もしも君があの強化人間たちを死なせていたら、同じことを考えていたはずだ」

 

 カミーユは言い返さなかった。

 

 他の世界だと一人ベンチで泣いている所を慰めようとしてエマ中尉に(やめとけ……)って無言で止められたり、一人アーガマで落ち込んでいる所を話しかけようとしてエマ中尉に(やめとけ……)って無言で止められたりしていたが、ニュータイプとは違う親しみを、カミーユはシャアに感じていた。

 

「人は皆、帰りたい頃には帰れない。その痛みや寂しさを、噛みしめて明日へ向かう。それがどこかさえ分からずに。ララァと子どもたちは、私が帰る場所になってくれた。君にもまだ、そういう人が残されているはずだ」

 

 シャアがふとカミーユが来た通路を見ると、荷物をまとめたファ、フォウ、ロザミアがいた。

 

「今更だが、君がエゥーゴという反政府組織の、正規パイロットだったという事実は抹消されている。報酬代わりと言うのも失礼だが、口座に当面の生活には困らないだけの金額も振り込んでおいた」

 

 こういう経済的なケアを絶対欠かさないのがシャアの甲斐性である。

 

 なおカラバとエゥーゴはこの実績により、武力を持ちつつ軍を監視する正式な外部団体として、存続することになる。

 

「もう一度学校に通い直すもよし。軍人になるなら私が面倒を見よう。勤め人になるならガルマがいる。これからのことを心配する必要はない。それと」

 

 シャアはカミーユに対し、多くの励ましを送りたかったし、多くの援助をしたかった。

 

 しかしそのどちらも、今この瞬間には出て来ない。それが歯痒かった。

 

「それと、今日までありがとう」

 

「大尉……ええ、ありがとうございます。クワトロ大尉。本当に、お世話になりました」

 

 カミーユもまた、目の前の叔父や歳の離れた兄のような存在に、言葉を送りたかった。

 

 あまりにも忙しなく駆け抜けた、命がけの一年間。やがて訪れた戦いの終わり。

 

 胸に去来する瞬間の数々は、刻の涙なのか。

 

「それじゃ、またいつか」

「ああ、また会おう。カミーユ」

 

 去って行く青年たちの背中を見送り、シャアは一つ溜息を吐いた。

 

「行ってしまったな」

「ああ、若者に巣立ちは付き物だ」

 

 そして目を細めると、再びサングラスをかけ直す。

 

「これからがまた大変だぞ、シャア」

「今度は偽ザビ家でも出たのか」

「ふっ、止せよ馬鹿馬鹿しい」

 

 実際この後グレミー・トトとかいう水素よりオツムの軽い若造がいきなりそんなことを言い出して、元祖ジオン軍を後継ジオン軍と改め掌握、ザビ家ではすわ隠し子かと激震が走りデギン公王が崩御するのだが、今すべき話ではない。

 

「戦後処理という奴さ」

「所詮は内紛に過ぎんものを」

「そうだな。だが今の内には」

 

 ガルマが手招きをする。シャアはそれ見て、カミーユが去った通路に視線を戻した。

 

 そこには子どもたちを連れた、ララァ・スンがいた。

 

「少しばかり、休むといいさ。シャア」

「ああ、そうしよう」

 

 友人に背中を押され、赤い彗星は自分が帰るべき場所へと歩き出した。同時に、彼の家族もまた、引き合うように。

 

 ゆっくり、ゆっくりと。

 

<完>




これにてこの作品は完結となります。
読んで頂き誠にありがとうございました。
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