機動戦士ガンダム二次創作  ミリしらシャア・アズナブル列伝   作:泉 とも

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そしてゼータへ

 一年戦争終結から7年。シャア・アズナブルはクワトロ・バジーナと改名して、通名系反逆コロニーことサイド7を訪れていた。

 

「懐かしいな。思えばここでガンダムを拾ったことで、私の人生は大きく狂ったんだ」

 

「そのコロニーでまたガンダムが作られていると」

「懲りない連中だ」

 

 部下二名を引き連れてシャアはジオン系軍事基地を襲撃していた。

 

「予期していたことだが、ギレンめ本当にやるとは」

 

 ジオン公国内では散発する旧連邦軍系テロリストに対応すべく、ギレン・ザビは『ティターンズ』を発足。

 

 彼らは予想通り連邦系MSにて武装、地上は元より各コロニーでも、地球系企業をガジるなど、素行の悪さで反感をモリモリ育てていた。

 

「大尉、迎撃機が来ました」

 

 コクピットの画面には、連邦系MSのジムⅡが数機ほど迎撃に出て来る姿が映る。

 

 しかしその姿は歪で、股間にはバーニアが一基付いており、また脚部はドムのそれだった。

 

 一年戦争時に統合整備計画が実行されると、何は無くともドム足にしておけという風潮が出来た。

 

 山岳地域以外では地上も宇宙もドム足ドム足、宇宙では背中にもドム足を追加するという雑な改修が大流行り、今日までにドム足だけ一万本は生産される有様。

 

 連邦系MSもホバー機能を諦めるまで、無理矢理ドム足を付けるのがセオリーだった。

 

「我々の目標はあくまでも新型の奪取と破壊だ。アポリー、ロベルト、抜かるなよ」

 

『了解!』

 

 そしてガンマガンダム三機がコロニー警備用のジムⅡと交戦。

 

 カミーユの家を壊した。

 

 そうとは知らずシャアはガンダムマークⅡに乗ったカミーユをスカウトして、アーガマに帰還した。

 

「勢いで付いて来たけど何です?あなたたち」

「我々はエゥーゴ。簡単に言えば秘密警察さ」

「秘密警察?」

 

 正史的な設定だと私設軍隊がエゥーゴで、私物化された軍隊がティターンズである。

 

 目糞鼻糞。

 

「そうだ。そして私はクワトロ・バジーナ大尉。彼が艦長のドレンだ」

 

 ※ブライトのポジションはドレンに置き換わっております。

 

「よろしく。君の名前は」

「……カミーユです、カミーユ・ビダン」

「綺麗ないい名前だな」

 

「本当にそう思ってますか?」

「アカハナよりはマシだろう」

「は?」

「もっと酷い名前の人間がいたのさ」

 

 かつて鼻が赤いからアカハナという部下がいたことを、クワトロことシャアは告げた。

 

 カミーユは何とも言えない表情になった。あいつよりマシだなという評価を手放しで喜べるほど、彼は歳を取っていない。

 

「話を戻そう。我々エゥーゴの目的は、ティターンズの活動妨害と解体にある」

 

「ティターンズって、さっきの基地の連中で、一応はジオン軍ですよね」

 

 ジオンが勝ったため、彼等の母体となる組織も交代している。

 

「そうだ。ギレン・ザビが地球連邦軍残党を集めて発足させた、地球連邦軍残党への対処を目的とした第十三独立外部部隊、それがティターンズだ」

 

 まるでスパロボに毎回出て来るような部隊名に、カミーユは不思議な懐かしさを抱く。

 

「それって共食いってことですか?」

 

「ああ。ギレンは連邦残党がゲリラやテロリストになることを防ぐために、敢えて悪名高い連中をかき集め、あの組織を作った。自分たちに従う連邦軍を使って、従わない連邦軍を叩く。ただしこれは表向きの理由だ」

 

 勿体ぶった言い方と共にクワトロがサングラスを外す。ヘルメットの下は素顔なのに、艦内に戻るなりいつの間にかかけているサングラスを。

 

「実態は彼等自身が暴走し、反旗を翻すことを狙った部隊なのだ」

 

「裏切ることが分かっている連中を集めて、わざわざ好き勝手させているっていうんですか!」

 

 カミーユは憤った。

 

 そんなことをせずとも一年戦争の終結時に、戦争犯罪のでっち上げや差別でもして処刑すれば良いだけだ。

 

 こんなに念の入った傍迷惑な計画を実行に移されては堪ったものではない。

 

「言いたいことは分る。だからこそ、我々の背後にいる人たちも、様々な反ティターンズ組織を結成して、この日に備えたのだ」

 

 時は数年前、ガルマ・ザビがアクシズに送られた時から、関係各位は表立った分裂を避けつつ、この時限爆弾を処理する準備をしていた。

 

「もっとも、曲りなりにも相手は上がジオン総帥だからね、連中の邪魔をして目の敵にされながら、ボロを出す瞬間を待つしかない」

 

 ドレンが手近なコンソールを弄ると、空中に先ほど強奪したマークⅡや基地の映像が出現した。

 

 戦艦も省人材で動く時代なので、アーガマのクルーは少ない。

 

 一年戦争時には既に一人バーミンガムみたいなワンオペ戦艦も存在したほどである。

 

「アレも登録許可の下りていないMSを勝手に開発し、量産に入っている。こんなことが地球圏全体で起きていて、モグラたたきをしている有様だ」

 

「まあそれについては、エゥーゴもあまり強くは言えんが」

 

「そういえば皆さんの使っていた機体、ジオン系じゃありませんでしたね」

 

 明確に正規の機体を使えは登録照会をかけられる。

 

 お互いの陣営はそれぞれがジオン軍という軍に対し、反逆的な行為をしていることに変わりはないため、身元が割れてはいけないのだ。

 

 もっとも、ティターンズ側は大規模な揉み消しを平然とできる当たり、エゥーゴは不利だが。

 

「ああ、連邦と戦うならば、やはりガンダムだろうという話になってな」

 

「やっぱり、SDガンダムの奴に似てると思ったんです」

 

 この世界ではMS開発の一環で、イメージアップのためにMSのホビー化、アニメ化などの企画が推進されていた。

 

 子ども向けファンタジーの登場人物をMSに置き換えた騎士ガンダムは根強い人気があり、中でも嵐騎士ガンマガンダムは最近登場したばかりだった。

 

 おじさんたちは乗るのが別の意味でキツイと言うが、

 

「はっはっは、アレもアナハイム製だよ。戦勝企業になり損ねたから、今ではすっかりシャドウランナーだ。君も就職するなら、あそこだけは止めておけよ」

 

 ドレンがカラカラと笑う。

 

 他作品でもだいたい悪いことばっかりしてるので、大した違いはない。

 

「重力下では厳しいので付けなかったが、増加装甲もある。従来のビーム程度ならそこそこ耐える奴がな」

 

 クワトロがコンソールを弄ると、そこにはリック・ディアス的な物が映った。

 

 本来はガンマガンダムがこれを装着し、いざとなればパージして中身が出て来るのだ。

 

「とはいえ君の乗っていた機体、ガンダムマークⅡは新型だ。その基準のビームとなると怪しいが」

 

 MSの火力開発はどんな設定をくっ付けようが留まる所を知らないので、主人公補正の塊みたいな装備が出るまでは、生死はその日の気分次第である。

 

 死なないときは当たっても光ってコクピットが揺れるくらいだ。

 

「でもあの機体、不具合があるみたいですよ。ティターンズのパイロットたちは、上手く使えてないみたいでした」

 

 操縦系統が新機軸でパワーもあるので、ハイザックよりも難しいだけで、別に欠陥などは抱えていない。

 

「その辺りはやはり試作機ということだな。追々改修して行くしかあるまい。機体の調整とは詰まる所、パイロットとの相性を高めていくことなのだから」

 

 余談だがこれ以降バッタ品のマークⅡが地球の各地で散見されるのだが、それはまた別のお話。

 

「それと勧誘しておいて今更だが、当分君は家に戻れないし、学校にも通えなくなる。一応言っておくが、すまない」

 

「構いませんよ。家には誰も帰って来ないし、将来のことも、あんまり興味がないから」

 

 今や結婚して子持ちとなったシャアに、カミーユのこの態度は些か辛かった。

 

 壊した家が彼の自宅と知ったら、本家のブライト並みに胃を痛めただろう。

 

「まあ、その内考えますよ」

 

 二親の愛情を飢えた青年が思春期の性欲を持て余し、狂犬のようになりながら戦争を駆け抜ける。或いは反政府系青年が正規軍の新型と肩を並べる機体を設計し、刹那的なサクセスと破滅を味わう。

 

 それが機動戦士Zガンダムである。

 

「そうだな。今は目の前のことに集中するのが先決だろう。来給え、艦内を案内しよう」

 

「よろしくお願いします。大尉」

 

 糸の切れた穴だらけの凧。

 無軌道青年。

 ネグレクト少年。

 

 そんなカミーユ・ビダンとの出会いが、シャアの今後の人生に大きな意味を持たせることになるとは、この時はまだ知る由も無かった。

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