機動戦士ガンダム二次創作  ミリしらシャア・アズナブル列伝   作:泉 とも

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主人公機 届く

 ケネディ・スペースポートにて。

 

 アウドムラ艦橋。

 

「は~~~~……」

「大尉、そんな溜息ばかり吐かんでください」

「すまないハヤト艦長」

 

 シャアは激動の数日を生き延びて、すっかり消耗していた。

 

 それもそのはずで、地球へ降下しジャブロー攻略戦を開始したが、言わば空城の計にかかる所だったのだ。

 

 一年戦争末期にコロニー落としと核爆発で完膚なきまでに潰した、かつての地球連邦軍の要塞。

 

 数年を要して新たにジオン軍の基地として再建したものが、ジオン軍の手によって崩壊した。現地の守備隊や一部のティターンズ兵まで囮に使い、エゥーゴを抹殺せんとして。

 

「まさか政争のために、基地を丸ごと失うことになるとはな。スポンサーもこれにはお冠だよ」

 

「我々のせいではありませんがね」

 

 基地を自爆させられ、命からがら生き延びたエゥーゴと、地上版エゥーゴのカラバだったが、ティターンズの放送により追い打ちで、まんまと濡れ衣を着せられてしまった。

 

「幸い保護した守備隊から証言は得られましたが、これだけでも軍法会議で何人死刑になるか分からんですな」

 

「全くだ」

 

 ティターンズは既にジャミトフの手によって掌握されており、ギレンの書いた絵図面の通り、彼らはギレンの手から離れつつあった。

 

「カミーユも折角持ち直したと思ったが」

 

「あの幼馴染と会ってから、また気落ちしましたね。間が悪いと言うか」

 

 自分のしたことのカドで両親を死なせてしまったカミーユは、当然のように同じ目に遭わされていたファとご両親に対し、激しい罪悪感を抱いていた。

 

 しかし恋人にもならない内からオカンみたいな態度で接して来るファに対し、カミーユは反抗的な態度を取り、喧嘩別れしていた。

 

「まるでエヴァンゲリオンのシンジだな」

「ああ、昔のアニメですね。当時は凄い人気で」

 

「主人公に魅力が無いが、いったい何をモデルにしたんだろうな」

 

 などと言いながら、二人は窓の外を眺めた。次に宇宙へ上がるシャトルには、エゥーゴの追加人員たちが乗っている。

 

 兵員輸送も民間経由でしなくてはならないのが、覆面MPの辛い所である。

 

「単純に我々の権限がもっと強ければ、話は早かったのだがな」

 

「今じゃテロリスト扱いです。元を質せばこっちも正規軍なんですがね」

 

 ギレン・ザビ率いるジオン軍は文民統制なんかしていないので、兎に角軍の権力が強く、それでいて軍同士の格差は無いに等しい。

 

 部隊や機関も上はドズルかキシリアかガルマとなっているため、明確な優劣を付けると即座に内紛の火種に早変わりする。

 

 全員それが分かっているので、有事の際は当事者のケースバイケース以上にならないよう、暗黙の了解を貫き制度化、明文化を避けていた。

 

「閣下たちの思惑が変わっていなければ、水面下でも話は進んでいるはずだが」

 

 ティターンズの犯罪、企業への癒着等、次々に広がる陰謀の根を追って、ジオン軍諜報部も動いてはいたが、現場ではそれを伺いすることはできない。

 

「君も損な役回りに就いたものだな」

「後追い組はこんなもんですよ」

 

 ジオン軍の勝利がほぼ確定した後に参戦したコロニー群は、地球よりはマシだがそれでも厚遇はされなかった。

 

 ジオン軍として参入した後は戦後のサイド国家主義の枠組みから外され、人の棲家以上の物としては見なされなくなったのである。

 

 戦場に立ったことのない新兵もどきは比較的危険度の高い任務を回され、連邦残党との柵代わりに矢面に立たされるのが常だった。

 

「命があるだけ儲けたもので、何だ!」

 

 話を遮るようにアウドムラの警報が鳴り響く。

 シャトル発着場にMSが接近している。

 

 エゥーゴは現在テロリスト扱いで手配されているので、放っておいても敵がやって来て遭遇戦や撤退戦が増える。

 

 話の都合で自然と戦闘に移れるようになっている設定なのだ。

 

「MS?随分早いが新型か?」

 

『そこのシャトル、発進を待て!搭乗者を確認する!命令に従わない場合、直ちに攻撃する!』

 

「何だって!?シャトルはもう発進準備に入ってるんだぞ!止まれる訳がない!無茶苦茶だ!」

 

 まるでガンダムである。

 

「最初からそのつもりという訳か。ハヤト艦長、出撃命令をくれ」

 

「ああ、MSパイロットはシャトルの防衛に出てくれ、急げ!」

 

 シャアは颯爽とデッキに移り、先日受領した新型MSに乗り込んだ。

 

 ずんぐりとした見た目、引き続き赤いカラーリング、その名はシュツルム・ディアス改。

 

 カミーユの親父のせいで自分のガンマガンダムを失い、アナハイムに手配して貰った物である。

 

「クワトロ・バジーナ、シュツルム・ディアス、出る!」

 

 解析に送られたガンダムマークⅡをベースに、ガンマガンダムの追加装甲であるガンダリウムを外装に使用。

 

 ガンマガンダムのブロックビルドアップ構造も流用。フレームの強度も向上。両者の繋ぎにはハイザックが使われて、肩から肘、膝から下が置き換わっている。

 

 ジオンと連邦の技術のいいとこ取りに成功したのがガンマガンダムなら、失敗したのがハイザックなどと言われていたが、その失敗がここで活きた形である。

 

 上半身はガンダムで手足はザク。また次期量産予定のネモの推進器が背部と脛裏に増設され、推力と機動性が大幅に向上している。

 

 そのあまりに簡素な作り故にそっくりそのまま付けられたのだ。何せリック・ディアスのメイン推進器が腰下から臀部に当たるので、スペースの問題はほとんど無い。

 

 ビームピストルが装備されているバックパックも、ネモの推進器増設に合わせて大型化した。

 

 グライバインダーと呼ばれるこの装備は、ビーム砲とブースターが一体化しており、縦方向の伸縮と前方向へのスライドが可能で、射角が拡張され火力も増強。

 

 バインダー自身を伸長することで放熱板にもなり、ジェネレーター内蔵でこの時点で出力は2000kwをマーク。推力はこの時点で17万を超える。

 

 腕部もハイザック式になったことにより両側腕部にシールドが装着可能になった。両肩もスパイクアーマーに換装。

 

 頭部にはマークⅡのバルカンポッドを追加。ジムⅡくらいなら落とせる頭部機銃と合わせて、接近戦にかなり強くなった形である。

 

 加えて頭頂部の形状を改変し、ブレードアンテナを差し込んでセンサーの有効半径も増大。

 

 武装は新型のビームライフルと最新型のガンダムハンマーとなっている。

 

 シャアは最初こそ苦い物を感じたが、ジオン水泳部のフレキシブル・ベロウズ・リムを流用し、ガンダリウム合金を丁寧に鍛造し、これでもかとビーム攪乱幕を塗布したこの鉄塊は、攻防一体の質量兵器である。

 

 ビームサーベルとの鍔迫り合いでは一方的に敵機の腕を叩き潰せるほどで、数十年後にショットランサーとかいう質量兵器が流行ることを考えると、この路線は正しいも正しい。正しいと言わざるを得ない。

 

 このような欲張りな強化を可能にしたのは、何も素材を潤沢に使っただけではない。失敗作と言われがちなハイザックの、エネルギーパイプの配置が応用されている。

 

 ジオンの機体は内部構造に余裕がないと外にこれを出しがちだが、腕部と胴体にパイプが出したことで、この機体を完成させたのである。

 

 括れの無いマッシブな胴体。

 ごっつい肩と腕と足。

 少し寂しかった背中も豪華になった。

 

 見るからに強そうで強い。

 それがこのシュツルム・ディアス改だった。

 

 アナハイムからは機体にドズル・ザビ専用機のような装飾を施したいという申し出があったが、流石に目立ち過ぎるのでシャアは断った。

 

 それでもマッキンキンの機体よりはよほどマシなのだが。

 

「カミーユ・ビダン。ガンダムマークⅡ、生きます!」

『出たなテロリスト!』

「変形した!?」

 

 その後モビル円盤獣アッシマーに襲われた一行は、空中での抜群の機動力に翻弄されたり『散弾ではなあ!』とか言われたりしながら、辛うじてこれを撃退した。

 

 ちなみに機体の胴体を打ち抜かれたロベルトは、ガンマガンダムのコクピットが頭部にあるので何とか脱出が間に合った。

 

 今のうちに言っておくけどアポリーも同じように助かる。

 

「敵も新型を繰り出して来たか、これから増々苦しくなるな」

 

「でもシャトルは何とか守り切りましたよ」

 

「そうだな。だが、とりあえずここを離れなくては。アウドムラに戻ろう」

 

 宇宙に帰り損ねた二人は、カラバを頼るためにケネディ・スペースポートを後にした。

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