機動戦士ガンダム二次創作 ミリしらシャア・アズナブル列伝 作:泉 とも
アウドムラ艦内。
「いやー死ぬかと思いましたよ」
「脱出装置のおかげで命拾いしたな、ロベルト」
「本当に助かって良かったですよ」
つい先ほどロベルトはアッシマーにより機体を破壊されたばかりだった。
あわやという所で脱出装置が作動し、九死に一生を得たのである。
「これがアニメだったら死んでたよ」
「そういえば昔、話の都合で脱出装置を全然作動させなかったくせに、劇場版でラスボスを負けさせるために作動させたっていう、ロボットアニメがありましたね」
「あまり面白そうじゃないな」
『はっはっはっはっはっは!』
男たちは一頻り笑うと、改めてロベルトの生還を喜んだ。
「ロベルト、折角生き延びたんだ。しばらくは休んでいたらどうだ」
「そんなこと言って大尉、オレはまだ全然やれますよ。もっとも、乗る機体はなくなっちまいましたけど」
「もしよかったら格納庫のコンテナに入ってる奴を使ってください。マゼラ・ガンタンクが入ってます」
「本当か!ありがたい、助かるよ!」
マゼラ・ガンタンクとは、連邦軍の技術を吸収したジオン軍によって作られた、ガンタンク及びマゼラ・アタックの後継機である。
SFSのドダイ改とベースジャバーに履帯を増設し、作業用アームで連結した本機は、前後のユニットをフレームで接続するムサイの設計を流用しており、大型輸送車両として地上を走破しつつ、空も高速で飛べるという進化を遂げた。
ビーム砲戦車のノウハウも注がれており、これ自体がMSに通用する大型ミサイルとビーム砲を搭載しているため、戦力としても十分である。
ガンタンク部分を見てみよう。目を引くのは胴体が一段、腕が一対多いことに加え、頭部がマゼラ・トップ、下半身がマゼラ・ベースとなっていることだろう。
V作戦時に開発されたガンタンクは、コアファイターを格納する都合上、上半身が分離する機構が備わっていた。離れた上半身はそのまま固定砲座になる。
――これがジオン軍技術開発部にウケた。
SFSに乗り上げ、分離した半身が前後に設置され、即座に空中移動砲台と化す。
改良される度に砲台や戦車への先祖がえりを繰り返して来たガンタンクだが、遂に空を飛ぶ戦車としてその設計を確たるものとしたのだ。
武装を見てみよう。
離れた上半身はガンタンクⅡの物となっているが、その両腕はミサイルとロケット砲を切り替えて使える四連ガンランチャーへと発展。
下半身の腕は初代ガンタンクの物で、上半身が離れたことで背部のスプレーミサイルが使用可能になり、ボップミサイル共々厚い弾幕を形成。上半身も邪魔な頭部が離れることでバズーカユニットが使用可能になる。
頭部のマゼラ・トップは下半身の機首として着陸、再合体が可能になっている他、技術の進歩により五分しか無かった飛行時間は今では数時間は飛べるほどになった。
また代名詞だったマゼラ砲は220ミリ砲へと大幅な強化を受け、マゼラ・ベースの重機関砲と同じ物に換装も可能。
これだけの重量と重武装でも何ともない点は、SFSとしてドダイとベースジャバーの優秀さの証明である。衝撃と重量に対し圧倒的な耐久力を有しており、最高速で空中から地面に叩き付けられても何ともない点は、特筆すべき要素である。
また宇宙での使用に際しては後部ユニットに台座を増設し、ガンダム系の足を固定すれば、Gファイターの後部を接続できるという利点もある。
このトーテムポールかマトリョーシカみたいな移動砲台の唯一の欠点は、分離が前提であり分離しないと本来の性能を発揮できない点である。
しかしそれでもMSを他に二機随伴・搭載できるため(機体底部に吊革状の取手が有る)、十分過ぎるほど強力かつ、非常に高い完成度を誇る。
「例によってアナハイムのバッタもんですけど」
「この際贅沢は言えんよ。む!」
ケネディ・スペースポートーヒッコリー間の上空にて、またも警報が鳴り響く。
「ええい、また敵影か!」
「相手はジオン軍のレーダー網を、フルに使えますからね」
「煙に巻くのも一苦労だな」
「大尉見てください、また新型です!」
レーダーからの映像が艦首の液晶に映る。
太ももの付け根から折れ曲がる可変MS、ギャプランである。
「また可変機か!宇宙からずっとだぞ!」
「流行ってるのかも知れんな」
流行ってる。
ゼータは可変機が十機くらい出て来る。
十年後にリゼルで体系が一旦完結してあっさり廃れることを考えると、過渡期の産物以外の何物でもない。
「うちでも何か考えないといけませんね。オレ考えてみます」
「えっ、ああ、頼む」
「はい!」
シャアは自分の耳を疑った。
何かいきなり自分も可変MS考えてみるとかカミーユが言い出した。この一人称が気分とテンションと相手でコロコロ変わる青年を刺激するのは危険なので、聞き返したりはしないが。
「クワトロ・バジーナ、シュツルムディアス、出る!」
「カミーユ・ビダン、ガンダムマークⅡ、出ます!」
「ロベルト(苗字無し)、マゼラガンタンクで行く!」
三人は出撃すると頑張ってギャプランを撤退させたが、アッシマーは頑張ってもどうにもならなかった。
このブランとかいうパイロット、強化人間と新型のセットよりも普通に強いのヤバない?
「このままではアウドムラが」
「ええい、ちょこまかと!」
予算不足の劇場版で使い回されたパンチを食らい、シャアの機体が後退する。
「貰ったな!」
あわやこれまでかと思われた、その時。一つの機影が猛烈な速度でアウドムラに接近する。
ガウ攻撃空母が。
「カツ、ジェットパックで先に降りていなさい」
「はい!」
一人がガウから離脱し、機体は真っ直ぐにアッシマー目掛けて突っ込んでいく。
「何をする気だ、ガルマ!ガルマだと?」
「ジオン公国に栄光あれー!」
「うおおー!?」
ガウに跳ねられたアッシマーは堪らず撤退。
パラシュートで離脱した男を、シャアは慌てて救出した。
「ガルマ、君なのか……?」
「久しぶりだな、シャア」
それはアクシズにいるはずのザビ家四男。
ガルマ・ザビその人であった。
――再びアウドムラにて。
「さっきは助かったが、何故君がここに」
シャアは回収したガルマと、ついでに合流した補充要員のカツを、艦内に収容した。
「君を笑いに来た。そういえば君の気が済むのだろう」
「おいそれ私の台詞だぞ!」
「ははは、すまない」
久しぶりに会った戦友は、変わりない友情を確かめて笑った。
「君も知っての通り私はアクシズにいたが、実は定期的に地球にも戻っていたのだ。地上の席を空にする訳にもいかないのでね」
ギレンの目論見により栄転という名の左遷を受けたガルマだが、地上で既に築いていたコネクションのために、宇宙と地上を往復するようになっていた。
「私の跡を父上に継いで頂いたのだが、その方が心配だったらしい」
「デギン公王もお歳を召しているからな」
その上ギレンとは不仲である。ガルマ以上に反ギレン派が担ぎ上げても不思議は無かったし、ギレンもガルマの成果を無碍にすること自体は気乗りがしなかった。
結局の所、ギレンもガルマには甘かったのだ。
「いや、アレで元気そのものだよ。私が地上に戻る時は宇宙にお戻りになる。そうして私の不手際を補って貰っていたんだ。ただ……」
そこでガルマの表情が曇る。
「ギレン兄上の、私が担がれるかもという危惧は、当たっていたんだな……」
「その口ぶりからするとまさか」
「ああ、アクシズで父上が、政党を立ち上げてしまったのだ」
シャアは口を引き結び、歯を食い縛った。ギレンの参る顔が容易に想像出来たので、笑いを堪えるのに必死だった。
「元祖ジオンなどと言って。あまりに突然のことだったので、私はギレン兄上に相談した」
シャアの体が小刻みに震える。ドレンは後ろから彼の体に隠れて笑っていた。
自分を疎んでいるであろう兄に、真っ先に接触する辺りが、ギレンにさえ好まれた所以なのだろう。
「閣下はなんと」
「『父上が?お前ではないのか?』と。あんなに困惑した兄上を見たのは初めてだった」
シャアはサングラスをかけた。よく見れば耳の辺りが赤くなっている。そろそろ限界だった。
「マハラジャ・カーンは比較的穏健だが、父上を慕う退役軍人たちに外堀を埋めさせるのに忙殺され、私は丁度地上に戻る時期だったので、距離を置くことになった。エゥーゴやカラバの支援という任務も帯びてな」
「それで我々の元まで駆け付けてくれたという訳か」
深く息を吐き、笑いを霧散させる赤い彗星。あまりにくだらないが、笑いごとではない。
「一応、周囲への影響も考慮して私も新生ジオン、ドズル兄上は正統ジオンを名乗って派閥を形成した。今は全員で道化を演じるのに必死だよ」
SDガンダムで避暑地のコテージが元祖と正統で争う話があったなとカミーユは思った。
「これ以上、内部分裂を増やさないで欲しいものだな」
「冗談みたいなものだよ。父上の方は落ち着き次第、解散をするさ」
幸いにも現状は、誰から見ても茶番としか映っていない。
「地上では当面の間、私が君たちのサポートをする。以後よろしく頼む。君がカミーユ・ビダン君だね。話は大尉から伺っているよ」
「よろしくお願いします。大尉からはどんな話を」
「色々さ。その辺は今度話すとして、一つだけ言うなら、若いのに見所があるって所かな」
「若いって、大尉たちだっておじさんって歳じゃないでしょう」
カミーユは嫌味を返したが態度は明るく、言われたおじさんたちは肩を竦めた。
ゼータ時点でのシャアの年齢は27歳なので、確かにまだ若い。
「そう思いたいな。それと彼はカツ。私や君のサポートとして士官学校から連れて来た。年齢も近いから、私たちよりは付き合い易いと思う」
「よろしく」
「ああ、よろしく」
エゥーゴ一行に新たな仲間、ガルマ・ザビと。
脈と主人公補正が無いのにそれっぽく振る舞いたがって視聴者に『君たちはこっち側だよ』って示して来るせいで嫌われているカツ・コバヤシが仲間に加わった。
アニメだと養い親の背中を見て育ち、しゃかりきになってカミーユを助け、毒ガスも阻止しサラにアプローチをし続けるなど、顔も声も良くない奴が頑張ってる姿がガンダムなんか見てる層の劣等感を強烈に刺激するという理由で嫌われているカツ・コバヤシが仲間に加わった。
初代アムロに自分を重ねるなどという烏滸がましい真似をしていたが、続編でそのアムロが落ちぶれて逆に見下していたハヤトが立派になり、作中で展開された不都合な現実を受け入れられないファンを、若さと青臭さからアムロに悪態を吐くという形で思っくそぶん殴ったことから嫌われている、カツ・コバヤシが仲間に加わった。
――認めたくないものだな、自らの若さゆえの過ちというものは。
ともあれ彼らは宇宙へ戻るため、今度はヒッコリーのシャトル発着場を目指したのであった。