機動戦士ガンダム二次創作  ミリしらシャア・アズナブル列伝   作:泉 とも

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忙殺

 アウドムラ艦内にて。

 

「は~~~~……」

「大尉、また溜息ですか」

「これだけ目眩苦しいとな」

 

 シャアはつい先日地上に降りた後、宇宙に戻りそしてまた地上に戻って来た。

 

 地球連邦議会総会にエゥーゴの首領が出席するため、その護衛を務めるためだった。

 

 場面転換し過ぎである。

 

「無理もない。この所大変だったしな」

「君のせいでもあることを忘れないで欲しいが」

 

 シャアは全く悪びれないガルマに悪態を吐く。この場にいるのはシャア、ドレン、ガルマの三人である。

 

「サプライズで妻が息子と共に会いに来て、ティターンズの人質になり、助けに行った君まで捕まった時は、流石に気が遠くなったよ」

 

 それでも救出を強行してホンコンまで逃げ切ったのだから、人間の底力とは侮れない。

 

「敵の大型可変MSに街は焼かれるし、そのパイロットはカミーユのガールフレンドで強化人間だった」

 

 サイコガンダムの攻撃は猛烈だったが、カミーユは何とかフォウを助けようとした。

 

 シャアも無茶だとは思ったがこっちではララアが死んでおらず、ガルマもロベルトもいた。

 

「助けられて本当によかった」

「まあ、異論はないがね」

 

 加えてガルマが秘密裏に手配し、地上で組み立てられていたキュベレイに、なんとララァが搭乗したのだ。

 

「しかし君の奥方があそこまでファンネルを使いこなせるとはな」

 

「ララァは本物のニュータイプだよ。少しも力が衰えていなかったのは驚いた」

 

 彼女のキュベレイはサイコガンダムを圧倒した。

 

 それどころかフォウと感応し合ったり、敵の銃弾を超能力で防いだりとその後もやりたい放題であった。

 

「君が呼んだ援軍も役に立ってくれた」

 

「彼らは日本に帰ったから、今度礼を言いに行かないとな」

 

 加えてガルマもサイコガンダムから相手の素性を察し「相手がムラサメ研ならこっちはサオトメ研だ!」と言って、ホンコンに来ていたジオン軍のゴッグ乗りたちにも加勢してもらった。

 

 各領域に特化したMS、ゲッターG(ゴッグ)のパイロットたちは、見事な連携と高い実力で大いに活躍した。

 

「それにしてもガルマ閣下は、よくムラサメ研だとお分かりになりましたな」

 

「キシリア姉上から忠告を受けてはいたのだ。フラナガン機関の連邦版とも言えるものが地上にあると」

 

 フラナガン機関はニュータイプ研究所の一つであるが、ムラサメ研究所は一般ピーポーを脳改造して、人工ニュータイプこと強化人間にする研究をしている。

 

 基本的にはトライアルアンドエラーで人間を使い捨てにしているため、ジャミトフをして「これ使い物にならないんじゃね?」と言わしめるような部署である。

 

 圧倒的に強力だがとても使い物にならないMSを、ニュータイプの超能力で無理矢理動かそうと試みるとかいう、リアル系が散々格好を付けながら結局特撮やスーパーロボットに出戻って来る、あの情けない幼稚さを地で行く集団でもある。

 

 Gファイターの先っちょに頭突っ込んで『ラアアアァイディイイイイン!』とでも言ってろよ。

 

「捕縛したあの女性パイロットは、カミーユと一緒に宇宙へ上がり、そのフラナガン機関へ送られました」

 

「当面は強化人間の治療を受けるだろうな」

「そんなことができるのか?」

 

「ああ、姉上はニュータイプの研究をして、彼らの能力が個人としての生活を苦しめることになると、一早く気付いていた。人をニュータイプにするのではなく、ニュータイプを普通の人にすることも、必要になるかもしれないと」

 

 ニュータイプの可能性に着目していた人物が、ニュータイプを辞めるための研究をしている。

 

 シャアは不思議な気持ちがして、遠くを見つめた。冷徹な印象ばかりが目立ったが、そのような気遣いが出来るとは思っていなかった。

 

「あのキシリア閣下がな……」

 

「実を言うとな、ここだけの話なのだが、私の言葉に感心してくれたんだ。正確には、とあるゲームのキャラクターの台詞なんだが」

 

「ゲーム?」

「ほらこれ」

 

 ガルマは懐から携帯端末を取り出すと、ソシャゲを一つ起動して見せた。兵士も社会人もソシャゲをするのが今の世の中である。

 

「意外だな、君がこういう俗っぽい物に手を出すとは」

 

「今や私の周りは普通の人の方が多いからな、後になって遊びを勉強しているような有様さ」

 

 ガルマの説明にシャアは納得した。まだ軍に在籍しているとはいえ、彼はほとんど財界人だ。

 

 ザビ家兄弟が受け持つ、それぞれの分野の情報とコネクションを一身に受け、軍と民との橋渡し役を受け持つようになった。ザビ家で唯一、還俗しているのが彼だった。

 

「このゲームで人の心が読める人物が出るのだが、それを仲間の一人がこう評した。『人を自分で判断できず、ありのままの他人を受け入れるしかない、君の苦悩は計り知れない』とね」

 

 それはニュータイプという理想像に対し、欠落している配慮であった。

 

「中々いい台詞だろう。ジオン・ズム・ダイクンの理想に対して、我々はそれを受け入れる準備が出来ているだろうか。人類が皆ニュータイプになることは、本当に目指すべき場所だろうか。そんなふうに考えてしまってね。前に姉上と話したとき、その台詞と合わせて言ったんだ。そうしたらこれが」

 

「大当たりだったと」

「ああ、珍しく褒められた」

 

 戦争の道具としてのニュータイプは確かに強力だったが、大して役に立たないニュータイプなどいない方が良い。

 

 スパロボに出て来るモンドやカツ辺りがそうであるように。

 

「そこで姉上は、当面は嫌でも強化人間の研究をどこもやるだろうから、それならこちらは先んじて、治療技術の研究をしようと言ってくれた。どこも廃人にして使い捨てにするのが前提だったし、退役後へのケアを考える必要もあった」

 

「その結果がニュータイプと強化人間の治療と」

 

「生まれが重荷になることは、誰にでも有り得ることか。それはそうだな」

 

 ドレンの言葉にシャアも無意識に呟いていた。ジオンの遺児、ニュータイプへの執着。ザビ家の末弟の劣等感。

 

 およそ運命的な負債について、彼は人一倍身に覚えがあった。

 

「時代が変わり、技術が進歩して、人の価値観も変わっていくか。道理だな」

 

 ザビ家の仲を悪くしているのはだいたいデギンとギレンなので、彼ら抜きだと他の三人は存外真面である。

 

「技術の進歩といえば、閣下の新型ルッグン、アレは凄かったですな」

 

「ああ、あれには私も驚いた。ビームのプロペラだったか。どういう理屈なのだ」

 

 先日のサイコガンダムとの戦いには、大勢の仲間たちがカミーユとフォウを助けたが、ガルマもまたその一人だった。

 

 彼の機体は『ガルマ専用ビームローター搭載試作型ルッグンⅡ』だった。

 

「うむ。二人ともギャンを覚えているか。マ・クベの」

「一年戦争時から大型ビームサーベルが使えていた」

「突きのモーションの元になった機体ですよね」

 

 縦横に振り回すだけの従来の動きに加え、フェンシングを原型とした片手突きは後の先にも繋げ易く、エースたちから不服ながらも一定の評価を確立している。

 

「アレをゲルググのビームナギナタにも使おうという声があってな、大型のビームナギナタを振り回したら強いだろうと」

 

「威圧感は凄まじいだろうな。余程の強者でもなければ、距離を取るしかあるまい」

 

 ナギナタというよりミキサーである。そんな物が突っ込んで来たら誰だって逃げる。

 

「それなんだがな、強化されたビームナギナタを振り回していたら、機体がちょっと浮いたらしいんだ」

 

『は?』

 

「まさかと思い、開発部はナギナタの出力を可能な限り上げて、手首を回してプロペラのようにしたら、確かに浮いたんだ。どうもミノフスキークラフトと同じ理論が発生してるそうで」

 

「事故みたいな発見だな」

「遊んでたんじゃないですか」

 

 諸説ある。

 

「ともあれ新しいミノフスキークラフトの形として、試験的に採用されたのがあのルッグンだ。役に立っただろう」

 

「ああ、おかげで助かった」

 

 ガルマ専用ルッグンⅡはフライングアーマーをベースにビームローターを装着した改良型のルッグンを追加ユニットとして接続。

 

 よりハイパワーかつ低燃費・長時間の飛行を可能にしたSFSである。単純な速度増加は行っていないが、余剰積載が従来の比ではないため、結果的に高速となる。

 

 シャアのシュツルム・ディアス改は本機との連携によりサイコガンダムの片腕を破壊するという活躍を見せた。

 

「あのフライングアーマーは優秀なオプションだ。できれば量産をして欲しいが」

 

「善処するよ」

 

 なおこのルッグン自体も独立して運用が可能な上、接続すれば片方は無人で操縦が可能となる。

 

「将来的にはMSの発電力次第で半永久的に飛行が可能になるそうだ。加えて静音性に優れているし、使用にそこまでの出力も必要ない。ドズル兄上はアッガイみたいなステルス機に追加する心算らしい」

 

「その内一機でも地球の裏側から偵察しに行けそうですね」

 

「ぞっとせんな」

 

 後に完全な球体に変形し陸海空を制するアッグジンが開発されるのだが、それはまた別のお話。

 

「所でガルマ、ティターンズの新型可変MSだが、何か分からないか?あんな機体は見たことがない」

 

「私も気にはなっていた。アナハイムにも、ジオンと連邦、カラバやエゥーゴにも存在していない。彼らが独自の規格で開発を始めたとしか思えん。放っておく訳にもいかないから、探りを入れては見る」

 

「頼む」

 

 雑談の中からついつい仕事の話をしてしまうのはおじさんの傾向である。

 

「艦長、ブレックス准将がお見えになりました」

「来たか、直ぐ行く」

 

 三人は話を切り上げて、来客との会談に向かう。

 相手はエゥーゴの首領ブレックス。

 

 身も蓋もないことを言うと、この後まんまと暗殺されて、ティターンズを勢い付かせてしまう人物なのだが、この時はまだ誰も知る由も無かった。

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