機動戦士ガンダム二次創作  ミリしらシャア・アズナブル列伝   作:泉 とも

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アクシズ(デギン派元祖ジオン)来る

 アーガマ内MSドック。

 

「は~~~~……」

「大尉、そんな大きく溜息を吐かないでください」

「すまんなカミーユ」

 

 シャアは疲れていた。

 

 地上で特に全く要らない、その後一生掲示板で叩かれる理由の一つとなるシンタとクムとかいう孤児を拾い、ガルマとハヤトに別れを告げ、宇宙へ戻った。

 

 情勢は着々と悪化しており、ティターンズの戦力は増していた。カミーユもゼータに乗り換え、エマ中尉もスーパーガンダムに乗り換え、皆が場数も踏んだことで強くなったものの、依然として厳しい戦いを強いられていた。

 

「オレも頼りにしてるんですから」

「そうか、ありがとう」

 

 カミーユもまたクワトロの帰還を喜んだ。

 

 サラリーマンというか組織人に徹し、理不尽という長い物に巻かれることで大人の振りをしているアニメ版の大人たちと違い、こちらは良心と甲斐性があるので、カミーユが変な中国人に絡まれるのから守ったり、フォウの一件もあったりで、更に信用が増していた。

 

「大尉、お帰りなさい」

「ララァ……少尉」

 

 またララァもパイロットとして復帰しながら、やたらとギスり合い宇宙してる女性陣を大人しくさせたことで、アーガマの環境は格段に良くなっていた。ガンダムの世界において女は動物なので序列が何よりものを言うのだ。

 

 だが、艦内に自分の家族が全員いるシャアの心労は、自分の子ども妊娠していた女性が、暴漢に襲われているのを見殺しにしたという不仲を盛られたハマーン・カーンに言い寄られていたアニメと、同じくらい重くなっていた。

 

「ロラン、あの子たちは家に帰さなかったのか?」

 

「ごめんなさい、月から戻るはずだったのだけれど、敵が攻め込んで来てしまって」

 

「そうだったのか。肝心な時に傍にいてやれなくて、すまない」

 

 ちなみにその時のティターンズ指揮官ことジャマイカンは、ララァが百式のメガバズーカランチャーでアレキサンドリアごと消滅させた。

 

「こんな時代ですもの。仕方ありませんわ」

 

 キュベレイはサイコガンダム戦でララァのニュータイプ能力の負荷に耐えきれず、使用不能になってしまったので、月で百式と交換になった。

 

 しかし圧倒的な機体性能を持つキュベレイの代わりを用意することは難しく、機動性だけでも同水準にしようと、百式の各部はかつて作られた試作機群『GPシリーズ』の物と交換された。

 

 同シリーズはアナハイムが次世代MSを模索して他者と凌ぎを削る中、特定の性能を突出させるべく設計(結果的に2号機を除いて全員機動性に傾いたが)した実験機で、徹底したその設計は四・五年前の技術水準にも関わらず、十年先の能力を獲得する怪物であった。

 

 結果的にそこまでは要らないだろうとデチューンにデチューンを施したのがジムⅡやハイザックであり、そこからまた少しずつ性能を引き上げて行こうという事になったのだが、それはそれこれはこれ。

 

「君の腕が全く衰えていないのは、喜ぶべきか悲しむべきか」

 

「育児休暇は貰っても退役はしてませんもの」

 

「ララァさんは凄いですよ。ボクたち皆の教官をしてもらってるくらいで」

 

 カミーユが照れながら話す。普通なら自分の妻に色目を使う青年など白い眼で見られるものだが、シャアは悪い気がしなかった。

 

 他にいるのがオカンみたいなファと、言うことを聞いている時は優しいエマ中尉と、レコアしかいないのだから当然である。

 

「機体の性能も良いし」

「ほとんどガンダムになったようだが」

「百式は元々ガンダムの試作機だそうですよ」

 

「ガンダムの試作機の改良に、試作機のガンダムを使い回すとはな。ある意味当然の噛み合いとも言えるか」

 

 ララァ・スン専用百式改とは。

 

 百式脚→GP―04

 百式腰→GP―03ステイメン

 百式腕→GP―01Fb

 百式背→ガンダムマークⅡ

 

 となっている他、ハイザックのエネルギーパイプ露出を踏襲している。前から見るとそうでもないが、後ろから見ると悲しいくらい痩せていた百式は、これによりだいぶ中型MSとしてはもっともらしいガタイになった。

 

「大した調整もなくすんなり交換できました」

 

「先んじて完成したガンダムたちの部品が、こうも上手く組み合うとは」

 

「運命的な者を感じますわね」

 

 また例によって背中がマークⅡのバーニアに換装されているが、それだけ優秀であることの証左である。

 

 かつてドムの足が時代を席巻したように、U.C80年代の過渡期における技術競争において、傑作と呼べるパーツや構造もまた生まれていた。それがハイザックのエネルギーパイプと脚部外側の補助スラスター、そしてガンダムマークⅡのバーニアである。

 

 簡略化されればネモのバーニアになるこれは、コンパクトに纏まりながら推力8万を誇り、後年も徐々に強化を得ることで存在感を維持し続けることになる。

 

 Gディフェンサーと合体できることもあり、ジムⅢやバーザムを始め、エースはバーニアの換装からスーパー化をやりたがった。猫も杓子もスーパースーパーである。当然この百式もスーパー百式になれる。

 

「それにしても随分派手だ」

「大尉にそっくりですわね」

 

「Gディフェンサーが付いたらもっと大きくなりますよ」

 

「MSの巨大化はもうしばらく続くかもしれんな」

 

 Gディフェンサーもまた亜種が考案されては、開発されたりされなかったり、された物が横流しされたりしていた。

 

 エゥーゴでは合体後ずっと片手が空いているマークⅡ用に、ロングライフルとは反対側にシールドを持たせ、フォールディングアームである程度自動で攻撃を防ぐようになった。

 

 百式用のGディフェンサーはバインダーが干渉するため取り外し、それを羽に流用したことに加え、のっぺりした胴体部にはバーザムのバーニアが増設されていた。

 

 アナハイムがいつものように不正入手したデータにより、改造されたディフェンサーは更なるパワーを得た。MS戦の要諦は火力と機動力である。機動力とは即ちパワーとスピードとテクニックだが、スピードとはパワーであり、テクニックもパワーには敵わない。

 

 機動力とはパワーである。

 

 こちらは有人操作で戦闘機として運用しながらMSと合体もできるのではなく、後にBWSと呼ばれる装備のように、予め合体して出撃することを前提としているため、カツは必要ない。

 

「このアーガマのMS搭載数が十機だから、これで一杯か。交代や補充要員を入れるとパイロットは充実しているし、数では早々負けんだろう」

 

 シャア・カミーユ・エマ・ファ・アポリー・ロベルト・カツ・レコア・ララァ。

 

 レギュラーの七名に加えバッチ、ボティ、トリッパーとかいう三人で十名。モブの機体にはスポンサーが奮発してマラサイが支給された。

 

 このマラサイという機体はティターンズが使用していたことでイメージダウンしたが、反乱のためにかき集められた新型主力量産機というストーリーが後に盛られたことで復権、ギラドーガ系列へと発展することになる。

 

「カツは自分のMSが無いって不貞腐れてましたけどね」

 

「この船はいつも銃座に人が足りないから、エマ中尉とドッキング後に戻って貰わないと困るわ」

 

「戦艦のクルーは高級品だ。向いているならそっちの方がいい」

 

 カツは何やかんや活躍していたし、二代目ジョブジョンみたいなポジションに落ち着きつつあった。

 

「こちらの戦力は整いつつあるが、残る問題はティターンズの摘発と、アクシズの動向だな」

 

「世論はすっかり奴らに向いてしまった。どうにかならないんですか、大尉」

 

「サイド国家主義がこういう形で仇になるとは、正直私も思わなかった」

 

 コロニーが連邦の所有物みたいな扱いから脱却したまでは良いものの、トップダウンによる情報統制はし難くなり、逆に情報格差による工作はし易くなってしまった。

 

 ガンダムのコロニーの住民は基本的に死ぬほど頭が悪いので、特に興味もなくノンポリを貫き、騙されたまま宇宙の塵になったりする。

 

 あ~平成の日本人~。

 

「そろそろ情報部のギリアム少尉が手筈を整える頃だ。反ティタ―ンズ派の議員やジオン検察局の身柄が確保出来れば、後は時を待つだけだ」

 

 ヒーロー戦記もよろしく。

 

「待つって、何を待つんです」

 

「ジャミトフが地球連邦を再結成する時をだ。彼らは形だけの民主主義で、公権力を乗っ取り掌握することでしか、再起の手段がない。そこを押さえることが必要だが、我々はそれに気付かぬフリをしなければならない。これまで後手に回って来たが、だからと言って何も考えていない訳ではない」

 

 根回しをされたりブレックスが流れ弾で死んだり風向きがいつも怪しかったが、できることはしていたのである。

 

「歯がゆいですね」

「ああ、焦りは禁物とは言うがな」

「それで大尉、アクシズの方は」

「アクシズ、アクシズか」

 

 シャアは休憩中の整備班たちを見た。正確には、彼らが見ているネットニュースを。

 

 そこには生放送で政見放送をするミネバ・ザビと、真面目に感動しているデギン・ザビの姿が写っていた。

 

『然るに、人類の革新と、スペースノイドの真の安息のため~』

 

「もしかして、本当にあんな子供を担ぎあげるつもりなんでしょうか」

 

「デギン公王だけはその気の様だ。ただし言わせている内容には注意せねばいかんが」

 

 緊張と羞恥に染まりながらも、祖父のために健気にスピーチをするミネバを見て、シャアは笑いと怒りが内心で高止まりするのを自覚した。

 

「こんなくだらないことで水を差されて、迷惑ですよ」

 

「しかも名指しでティターンズの存在を口撃している。明確なギレンへの敵対表明と思っていいだろう」

 

 こんな連中だが先日ヤザンに追い込まれた所を助けて貰ったので、邪険にもできない。

 

「この状況で余計な争いを招かないと良いのですけど」

 

 判断に困るデギンの暴走により、アクシズの元祖ジオンは戦線に混ざろうとしたが、後にティターンズから使者としてパプテマス・シロッコが出向。ミネバに忠誠を誓うことでデギン側の大義名分を失わせることに成功する。

 

 これによりティターンズはアクシズとの交戦を回避することはできたものの、全勢力で兵士の士気が下がり、アライメントも悪化、事態は増々混迷を極めるのであった。

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