ヤムチャになったってどうしたらいい   作:茉莉

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第12話

「な、なんだ貴様は……! この私の『爆力魔波』を、ただの片手で……!?」

若返り、全盛期の力を手に入れたピッコロ大魔王が、信じられないものを見るかのように後退った。その額からは、冷や汗が流れている。

「……ヤムチャさん、すげぇや。気が、さっきまでと全然違うぞ。まるで空みたいに静かなのに、とんでもねぇ力が詰まってる……!」

背後でボロボロの悟空が、驚きと共に不敵な笑みを漏らす。超神水を飲み、大猿の力をその身に宿した悟空。そして神殿で「無」を学んだ俺。今、地球最強の二人が、魔の根源の前に並び立った。

「悟空、動けるか?」

「おう……! 腹ん中に力がみなぎってんだ。いけるぞ!」

「よし。……行くぞ、大魔王。これが俺たちの『答え』だ!」

俺が地を蹴った瞬間、キングキャッスルの瓦礫が衝撃波で粉砕された。神殿で磨き上げた**「瞬光・縮地」**。もはや移動という概念を超え、俺は一瞬で大魔王の死角を捉える。

「ぬうっ! 速すぎる……! だが、私を舐めるなよ!!」

大魔王が周囲を無差別に破壊する衝撃波を放つ。だが、俺はその爆風を「気の流れ」として利用し、柳のように受け流しながら連撃を叩き込んだ。

「狼牙風風拳・零式、改――『牙城壊滅』!」

無駄な叫びも、大きな構えもない。急所を的確に、そして連鎖的に穿つ超高速の突き。大魔王の強靭な皮膚が、俺の「気」を一点に集中させた貫手によって次々と弾け飛ぶ。

「が、はっ……あ、ありえん! この私が、人間に……うわあああっ!」

堪らず上空へ逃げようとした大魔王の足首を、悟空の如意棒が鋭く捉えた。

「逃がさねぇぞ! はああああっ!」

悟空が大猿の幻影を背負い、強烈な一撃を大魔王の腹部に叩き込む。その反動で宙に浮いた大魔王に向け、俺は指先を跳ね上げた。

「多重・操気弾――『全方位封殺』!」

十数発の光弾が、逃げ道を完全に塞ぐ檻のように大魔王を包囲する。

「これ、は……!? 避けても無駄というのか……!」

「終わりだ、ピッコロ」

俺と悟空が同時に、最大出力の構えに入った。

「「か・め・は・め……波ぁーーーーっ!!」」

悟空の黄金色の光と、俺の白銀に輝く光が一点で混ざり合い、巨大な光の龍となって大魔王を飲み込んだ。細胞のひとつひとつが浄化されるような、圧倒的なエネルギーの奔流。

「……ば、化け物……め……。だが……これで……終わると、思うなよ……!」

大魔王は絶叫と共に、自らの命を振り絞り、一つの卵を遥か彼方へと吐き出した。それは原作通りの「マジュニア」の誕生。だが、俺はそれをあえて見逃した。

「……ヤムチャ。あいつ、最後になんか出しやがったぞ」

「ああ。……でも、いいさ。奴は消滅したからな」

大魔王が完全に消滅し、キングキャッスルに静寂が戻った。

俺は力尽き、地面に腰を下ろした。悟空もその隣にドスンと座り込み、二人で夕焼けに染まる空を見上げた。

「……勝ったんだな、オラたち」

「ああ。……でも、まだ始まりに過ぎないぜ、悟空。まだまだ、強い奴は沢山いるからな。3年後の天下一武道会に来るだろうさ」

「へへ、楽しみだなぁ! オラ、もっともっと修行すっぞ!」

悟空の屈託のない笑顔。その隣で、俺は自分の右拳を見つめた。

ヤムチャとして転生し、がむしゃらに生き残ろうとしてきた。だが、いつの間にか俺は「死ぬのが怖い」という動機ではなく、「この世界を守りたい」という、気持ち。そして、武道家としての純粋な闘志に突き動かされていた。

三年後の天下一武道会。

マジュニアとの決戦。そして、その後に待ち受けるサイヤ人の襲来。

俺は通信機を手に取り、心配しているであろうブルマに一言だけメッセージを送った。

『終わったよ。少し遅れるけど、飯、期待してるぜ』

「……さあて、次は重力20倍の設定、博士にお願いしねぇとな」

俺は立ち上がり、ボロボロになった道着の埃を払った。

噛ませ犬の運命なんて、もうどこにもありはしない。

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