ヤムチャになったってどうしたらいい 作:茉莉
ピッコロ大魔王との死闘から三年間、俺は「最強の噛ませ犬」という運命の残滓すら消し去るため、文字通り地獄のような日々を過ごした。
修行の一年目、俺はカプセルコーポレーションの地下に籠もり、ブリーフ博士に懇願して重力室の限界を地球の五十倍まで引き上げてもらった。内臓が押し潰され、血管が悲鳴を上げる過酷な環境下で、俺は「操気弾」のエネルギーを自身の肉体に薄く纏わせることで、外部からの圧力を中和する新技術を開発した。これは後の界王拳にも通じる、肉体の限界を超えさせるための布石だった。
二年目には科学の力をさらに武術へ取り込んだ。ブルマが改良を重ねた「気」の波長解析装置を使い、敵の気の振動を瞬時に見極め、それと正反対の波長をぶつけて威力を打ち消す「アンチ・エネルギー」の感覚を指先に叩き込んだ。同時に、カリン塔へ定期的に足を運び、万が一の事態に備えた仙豆の備蓄を確実なものにしていった。
そして三年目、俺は再び神殿へ向かった。悟空が神様の下で修行している気配を遠くに感じながら、俺はミスター・ポポとの組手を通じて「無意識の極致」を追求した。ポポに「お前、もう人間じゃない。神に近い気を持ってる」と言わしめた時、俺の力は遥か高みに領域に達していた。
そして迎えた第23回天下一武道会。俺はカプセルコーポレーション特製の耐水・高密度道着を羽織り、会場の門をくぐった。
「ヤムチャー! こっちよ!」
ブルマの弾んだ声に導かれ、俺は懐かしい面々のもとへ歩み寄った。美しさを増したブルマ、相変わらずの亀仙人、そして精悍になったクリリンや天津飯。天津飯は俺の顔を見るなり、三つの目を戦慄に震わせた。今の俺が纏う「静かなる威圧感」が、彼らには化け物のように映っているのだろう。
そこへ、ターバンを巻き、見違えるほど背が伸びた青年が現れた。
「よお、みんな! 久しぶりだな!」
悟空だった。再会を喜ぶ悟空は、俺の前に立つなりその瞳を鋭く輝かせた。
「すっげえやヤムチャ! おめえ、体から溢れ出す気が、とんでもねえ!」
「お前こそ、神様の下で最高の仕上げをしてきたみたいだな。だが悟空、今日こそはドローじゃ終わらせないぜ」
二人が拳を合わせた瞬間、背後から氷のような殺気が突き刺さった。マジュニアだ。かつての大魔王の分身が、不敵な笑みを浮かべて俺たちを睨んでいる。俺はマジュニアの視線を真っ向から受け止めた。お前が後に仲間になることは知っているが、この大会では俺がお前に「絶望」を教えてやる。
予選を瞬く間に突破した俺たちは、本戦の舞台へと進んだ。掲示板に張り出された一回戦のカードを見て、俺は口角を吊り上げた。
第一試合、ヤムチャ対シェン。
中身が神様であることは百も承知だ。原作では情けなくあしらわれたこのカードで、俺は神様に証明してやる。俺はもう、運命に翻弄されるただの人間ではないということを。
「……さて。神様、俺の三年間、たっぷり味合わせますよ」