ヤムチャになったってどうしたらいい   作:茉莉

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第17話

第23回天下一武道会、決勝戦。

俺と悟空は、修復されたばかりの石造りのリング上で、数メートルという絶妙な間合いを保ち、静かに対峙していた。

「……行くぞ、ヤムチャ」

「ああ、来い、悟空」

互いの声は静かだったが、その言葉を合図に、空気の密度が一段階上がった。

最初は慎重な探り合いだった。悟空が軽く踏み込み、鋭いジャブを放つ。俺は首をわずかに傾けてそれをかわし、返しの掌底を放つ。悟空もまた、それを最小限の動きで受け流す。お互いに相手の力量、間合い、反射速度を、肌に触れる空気の揺らぎだけで計っていた。

しびれを切らしたのは悟空だった。

「はああああっ!」

不敵な笑みを浮かべた刹那、悟空が弾丸のような速さで突撃してきた。一撃一撃が岩をも砕く重さの連撃。だが、俺は重力修行と神殿での「無」の境地で、その猛攻をいなし続けた。

悟空の右ストレートを紙一重でかわし、その力を利用して彼の体勢をわずかに逸らす。猛烈なラッシュを柳のようにしのぎ切り、悟空が体勢を立て直そうとした一瞬の隙。

「そこだ!」

俺の貫手が悟空の脇腹を捉えた。

「ぐっ……!?」

そこから一気に乱打戦へと雪崩れ込む。俺の拳と悟空の拳が空中で火花を散らすように激突し、凄まじい衝撃波がリングの砂埃を吹き飛ばした。互いに数十発、数百発という拳を撃ち合い、その反動で一度大きく距離を取る。

「へへ、やっぱり凄いや……! だったら、これはどうだ!」

悟空が両手から連続で気功波を放つ。だが、操作性において「繰気弾」を極めた俺に、単純な気弾は通用しない。

俺は指先を指揮者のように動かし、自身の気弾で悟空の攻撃を次々と撃ち落としながら、その隙間を縫うようにして一発の「繰気弾」を悟空の背後に回り込ませて命中させた。

ドォォン!

背後からの衝撃に、悟空がわずかによろめく。だが、彼は楽しそうに笑っていた。

「……へへ、今のがウォーミングアップだなんて、贅沢すぎるな」

「そうだな。そろそろ……『本番』といこうか」

俺たちは同時に、これまで抑えていた気を解放した。

ドォォォォォォォン!!

会場全体が、地震のような轟音と共に激しく揺れた。俺と悟空の周囲から立ち昇るオーラが、物理的な圧力となって武舞台の石畳を粉々に砕き、隆起させる。解放された「気」と「気」がぶつかり合うだけで、周囲に稲妻のような放電が走り、とてつもない衝撃波が観客席を襲った。

「な、なんだ……! 全く見えん! 何が起きているんだ!?」

実況の叫び声が聞こえるが、もはや一般の観客には、空中で炸裂する爆風と、石畳が次々と砕ける音しか感知できない。

瞬動。

一歩踏み出した瞬間、俺と悟空の姿は消え、次に現れたのはリング中央で拳を交差させた瞬間だった。

「らららららららっ!!」

「はあああああああ!!」

超高密度の殴り合い。音速を超えた打撃の応酬が、衝撃波の塊となって会場を震わせる。

だが、戦いの流れは徐々に俺へと傾き始めていた。

神殿で磨いた「気の消去」と、ブリーフ博士の科学的解析に基づいた「最短の幾何学攻撃」。悟空の攻撃はことごとく俺の腕に阻まれ、逆に俺の拳が悟空の肩、胸、腹部を的確に捉え始める。

重い一撃を食らい、悟空の体が大きく仰け反る。

「……決めるぞ!」

俺は追撃の手を緩めない。畳み掛けるような連撃。悟空は必死に防御し、その合間を縫って反撃に転じようとするが、俺の「アンチ・エネルギー」が彼の気の出力を無効化し、悉く防ぎ切る。

終始、俺が悟空を圧倒していた。

このまま押し切るか――そう思われた瞬間。

スッ……。

俺の左ストレートが、悟空の顔面を捉える寸前で空を切った。

「……ッ!?」

悟空の動きが変わった。これまでの必死な防御ではなく、どこか脱力したような、流れるような動き。

続く俺の右フックも、悟空は最小限の首の動きだけで回避した。さらに、俺の放った連撃の「リズム」に、悟空の呼吸が重なり始める。

「……見えてきたぞ、ヤムチャ。おめえの動き……すっげえ速ぇけど、だんだん分かってきた!」

悟空の瞳に、野生の鋭さが戻る。

これまで一方的に受けていた悟空の拳が、ついに俺のガードを掠め、頬をかすめた。

見切られ始めている。天才・孫悟空。戦いの中で進化し続ける、サイヤ人の本能が目覚めようとしていた。

「へへ……ここからが本当の勝負だ!!」

俺の頬から一筋の血が流れる。

俺は口角を上げ、再び拳を握り直した。

「……面白い。そうでなくっちゃな、悟空!」

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