ヤムチャになったってどうしたらいい   作:茉莉

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第18話

悟空の動きは、確かに俺のスピードに順応し始めていた。鋭い眼光で俺の筋肉の動きを読み、最小限の回避から反撃のタイミングを計っている。

「へへ……捕まえたぞ、ヤムチャ!」

悟空が確信に満ちた笑みを浮かべ、俺の踏み込みに合わせてカウンターを狙う。だが、その瞬間、悟空の瞳から俺の姿が「消失」した。

ドォォン!!

「がはっ……!?」

何でもない、ただの真っ直ぐな正拳突き。それが見切れなかった。悟空は吹き飛び、受け身を取る暇もなく地面を転がる。信じられないといった表情で立ち上がるが、俺の攻撃は止まらない。

次々と突き刺さる拳。悟空はそのすべてに見当違いの反応を返し、為すすべもなく打たれ続ける。一度大きく距離を取り、荒い息を吐きながら体制を整える悟空。そこへ俺はさらに追撃を仕掛けた。

「……くっ、そこだ!!」

悟空は間一髪、勘だけで俺の蹴りを見切ったが、その表情には混乱が色濃く浮かんでいた。

(おかしい……。動きは見えるのに、気が、タイミングが合わねぇ……!)

その秘密は、俺が神殿での修行で体得した「気の瞬時消去と爆発」にある。攻撃を繰り出す直前まで気を完全にゼロにし、接触する刹那にだけ最大出力を吹き出す。気の探知に頼る達人であればあるほど、その「無」から「最大」への落差に翻弄される、極大のフェイントだ。

「……そうか、分かったぞ! 気が消えたり出たりしてやがるんだな!」

悟空が叫ぶ。だが、分かったところで対応できる代物ではない。神経の反応速度を超えたON/OFFの切り替えに、悟空は防戦一方となる。

「……だったら、これならどうだぁ!!」

追い詰められた悟空が、全身の気を最大まで練り上げ、周囲の空気が発火せんばかりの勢いで突撃してきた。一見すれば、フェイントを無視したただの無謀な特攻だ。

俺は冷静にその中心を捉えようとするが、衝突の直前、悟空の放つあまりに巨大な「気の光」が網膜を焼いた。

「……ッ、目くらましか!」

最大出力をあえて「輝き」として放ち、俺の視覚と探知を一時的にマヒさせる。俺が悟空を見失ったその一瞬、死角から重い拳が突き刺さった。

「はあああああっ!!」

今度は俺が猛攻を受ける番だった。怒涛の連撃が俺の肉体を叩き、石畳が砕け散る。

やがて砂煙が晴れたとき、俺と悟空は肩で息をしながら対峙していた。二人とも道着はボロボロで、全身傷だらけだ。次の一撃が、間違いなく最後になる。

「……最高の勝負だな、ヤムチャ。最後は、これで行こうぜ」

「ああ……。望むところだ、悟空!」

互いに腰を深く落とし、全てのエネルギーを両手に集約させる。

「「か……め……は……め……」」

「「波ぁーーーーーーーーっ!!」」

巨大な蒼い奔流がリング中央で激突した。

凄まじい衝撃。俺の気の純度は高いが、サイヤ人としての底知れぬ生命力を持つ悟空の気が、じわじわと俺の気を押し戻し始める。

「ぬうっ……うああああああっ!!」

悟空の猛烈な押しに、俺の足がリングを削りながら後退する。数度、気が押し戻され、負けの二文字が脳裏をよぎる。だが、俺にはまだ、科学と技術で磨いた最後の手札がある。

俺はかめはめ波を放ち続けたまま、片手の中で「繰気弾」を高速回転させ、それを自身の光の奔流の中に叩き込んだ。

「融合しろ……! 繰気・かめはめ波ぁ!!」

螺旋を描く繰気弾がかめはめ波と一体化し、出力が爆発的に跳ね上がった。ドリル状に回転する光の先端が、悟空の気を強引に突き破り、その中心を貫いた。

「うわああああああああっ!!」

光の爆発が会場を包み込み、審判の宣告が響き渡る。

「……ご、悟空選手、場外! 勝者、ヤムチャ選手!!」

静寂の後、割れんばかりの歓声が沸き起こった。

俺は崩れ落ちるように膝をついた。勝った。あの悟空に、ついに勝ったんだ。

試合後、仙豆で回復した悟空が俺のもとに歩み寄ってきた。その顔には悔しさが滲んでいたが、同時に晴れやかな、どこか清々しい笑みが浮かんでいた。

「負けたぞ、ヤムチャ。おめえ、本当にすっげえなぁ! おら、もっともっと修行して、次は絶対に勝つからな!」

「ああ、待ってるぜ。俺も追い抜かれないように鍛えておく」

悟空は観客席から駆け寄ってきたチチの手を取り、笑顔で筋斗雲を呼び寄せた。二人は幸せそうに寄り添いながら、大空へと飛び去っていった。

俺はその背中を見送りながら、右拳を固く握りしめた。

自分の運命を、ついにこの手でねじ伏せた。

 

「……ヤムチャ! 本当に勝っちゃうなんて、あんた最高よ!」

ブルマが駆け寄り、俺の首に抱きついてくる。その温もりを感じながら、俺は静かに勝利の余韻を噛み締めていた。

「……さあ、帰ろうぜ、ブルマ。次の戦いに向けて、もっととんでもないもんを準備しなきゃならねぇからな」

俺はブルマと共に、未来への一歩を踏み出した。

 

 

 

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