ヤムチャになったってどうしたらいい   作:茉莉

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第24話

地球で敗れたベジータを乗せた宇宙船は、暗黒の宇宙を孤独に突き進んでいた。船内のモニターには、自身のボロボロになった姿と、あの忌々しい地球人たちの顔が何度も浮かんでは消える。

「……くそっ……この俺が、あんなゴミ共の連携に……。だが、見ていろ。不老不死さえ手に入れれば、カカロットも、あの薄汚い技術を使う男も、まとめて塵にしてやる……」

数週間後、宇宙船はフリーザ軍の本部へと帰還した。ハッチが開くと同時に、医療班が駆け寄る。ベジータの体は見る影もなく損壊していたが、その瞳に宿る野心の火だけは、以前よりも激しく燃え盛っていた。

メディカルマシンの緑色の液体に浸かり、傷が癒えていく中で、ベジータは確信していた。サイヤ人は死の淵から蘇るたびに、その戦闘力を爆発的に高める。回復し、最新型の戦闘服に身を包んだ時、彼の戦闘力はかつての自分を遥かに凌駕していた。

「フン……準備は整った。待っていろよ、ナメック星……」

ベジータは誰にも告げず、再び小型ポッドに乗り込み、緑の惑星へと針路を取った。

一方、フリーザ軍の巨大な本拠地。その最深部にある、広大な展望室。

静寂が支配するその部屋で、宇宙の帝王フリーザは、スカウターが捉えたベジータとナッパの通信記録を、優雅にワイングラスを傾けながら聞き終えた。

「……ほう。ナメック星に、願いを叶える珠、ですか。それはそれは……興味深いお話ですね」

フリーザの声は透き通るように穏やかで、一見すれば丁寧な物腰だった。しかし、その背後に漂うプレッシャーは、傍らに控える側近のドドリアとザーボンを蛇に睨まれた蛙のように硬直させていた。

「ベジータさんも、案外可愛らしいことを考える。不老不死……。この私にふさわしい、最高のプレゼントではありませんか。ザーボンさん、ドドリアさん。すぐに準備をなさい。その『ナメック星』とやらへ、私自ら出向いてあげましょう」

「はっ、直ちに!」

慌てて退室する部下たちの背中を見送ることなく、フリーザは窓の向こうに広がる星々を見つめた。

「願いを叶える珠……。ククク、もしそれが真実なら、私を苛立たせるこの宇宙の寿命も、永遠に私の手の中で弄べるというわけです。……楽しみですねぇ。ナメック星の方々には、精一杯のおもてなしをして差し上げるとしましょう」

フリーザの瞳に、冷酷な光が宿る。彼にとって、一つの惑星の文明を滅ぼすことなど、ただの余興に過ぎない。

数日後、フリーザの巨大な宇宙船は静かに発進した。

 

 

 

 

 

 

大気圏を突破し、激しい衝撃と共に着弾したポッドのハッチが跳ね上がる。そこから這い出したベジータは、荒々しく首の骨を鳴らし、周囲の空気を深く吸い込んだ。

「ふん……ようやく着いたか。辺り一面、虫唾が走るほど穏やかな気で満ちてやがる」

地球での敗北を経て、死の淵から蘇ったベジータの肉体には、以前とは比較にならないほどの力が溢れていた。彼は自身の掌を見つめ、不敵に歪んだ笑みを浮かべる。

「カカロット、そしてあのヤムチャとかいう小癄な男……。貴様らのおかげで、俺の力はさらに高まった。今の俺なら、フリーザの側近どもですら赤子同然だ。見ていろ……フリーザの鼻先でドラゴンボールをすべて掠め取り、この俺が宇宙の真の支配者になってやる」

ベジータはスカウターに手をかけ、周囲の反応を探った。いくつかの巨大な気が動いている。その一つ、ひときわ冷酷で巨大な力の源を察知し、ベジータの顔が険しく引き締まる。

「……やはり来やがったか、フリーザ。だが、貴様の思い通りにはさせんぞ」

音もなく飛び上がったベジータは、自身の気を極限まで抑え込み、獲物を狙う猛禽類のように低空を滑り出した。

 

 

一方、ナメック星の平原に鎮座する巨大な円盤型宇宙船。その中では、静寂の中に不気味なまでの「支配」の空気が充満していた。

フリーザは小型の浮遊椅子に深く腰掛け、窓の外に広がるのどかな風景を眺めていた。その傍らには、すでに数個の巨大なドラゴンボールが、まるで安価な飾り物のように無造作に転がっている。

「ザーボンさん、ドドリアさん。どうやら、お客様が到着されたようですよ」

フリーザが優雅に指先を向ける。その視線の先には、ベジータが着弾した際に生じたわずかな煙がたなびいていた。

「……ほう、ベジータですか。しぶとい男ですねぇ。あれほど無様に敗れておきながら、まだ私の邪魔をしようというのですか。全く、サイヤ人という種族は、身の程を知るという教育を受けてこなかったのでしょうか」

フリーザの声は、どこまでも丁寧で、穏やかだった。しかし、その背後に漂うプレッシャーに、周囲の兵士たちは呼吸することさえ忘れて立ち尽くしている。

「いいでしょう。彼が勝手に動き回る分には、ナメック星人の村を炙り出す手間が省けるというものです。泳がせておきなさい。……ですが、もし私に手を出そうものなら……その時は、彼が経験したことのないような、最高に苦しい死を与えてあげなくてはなりませんね」

フリーザはワイングラスを傾け、真っ赤な液体を口に含んだ。

「さあ、始めましょうか。私の『永遠の命』のための、ささやかなパーティーを」

冷酷な帝王の号令と共に、フリーザ軍の精鋭たちが各方面へと飛び散っていく。

 

 

 

 

「ふん……見つけたぞ」

荒野の影から、ベジータは眼下の小さな村を見下ろしていた。かつての彼なら正面から派手に吹き飛ばしていただろうが、今の彼は違う。フリーザに気づかれぬよう、自らの「気」を完全に消し去り、影のように村へと降り立つ。

「お、お前は……! その服、フリーザの仲間か!?」

怯えるナメック星人の長老の前に、ベジータはゆっくりと歩み寄る。

「あんな連中と一緒にされるのは心外だな。俺が欲しいのは、ドラゴンボール1つだ。……よこせ。さもなくば、この村を地図から消す」

拒絶の言葉を待つこともなく、ベジータの指先から一閃、光が放たれた。村の広場が爆発し、絶叫が上がる。地球での敗北は彼を慎重にさせたが、その一方で、王族としての冷酷さをより研ぎ澄ませていた。

「フリーザに怯え、俺に怯える。……貴様らナメック星人の運命など、強者の前では羽虫にも劣る。さあ、ドラゴンボールを出せ。俺が最強の力を手に入れるための供物になれ」

無慈悲な略奪。ベジータは自らの手で一つ目のドラゴンボールを掴み取ると、それを近くの湖の底へと沈めた。一箇所に集めず、分散させる。それが帝王の目を盗む、彼なりの「王の戦術」だった。

 

 

 

一方、別の村では。

「ザーボンさん、見てごらんなさい。あの方々のあの顔。……絶望に染まった瞳というのは、いつ見ても美しいものですねぇ」

フリーザは浮遊椅子に座り、優雅に足を組みながら、燃え盛る村を見つめていた。彼の目の前では、ドドリアがナックルでナメック星人の戦士たちを文字通り「粉砕」している。

「さあ、村の長老さん。早く珠を差し出しなさい。私はこれでも気が短い方でしてね……。あなたが頑なに拒むたびに、一人、また一人と、同胞の首が飛ぶことになりますよ?」

フリーザは人差し指をスッと立てた。その指先に集まる小さな赤い光。それは容易に星すら貫くエネルギーの凝縮体だ。

「……そうですか、まだ黙秘を続けますか。素晴らしい精神力です。……ドドリアさん、あちらの子供を。……ええ、まずは足の骨から丁寧に折って差し上げなさい」

「ひ、ひいぃぃっ!!」

逃げ惑うナメック星人の叫び声。フリーザはそれを極上の音楽でも聴くかのように、目を細めて楽しんでいた。

 

 

その頃、着陸したばかりの宇宙船のハッチが開いた。

「……ヤムチャ、感じるか? あのひでぇ気を」

悟空の顔から笑顔が消え、厳しい戦士の表情になる。

「ああ。……震えが止まらないぜ、悟空。怖くて、じゃない。……あいつをぶん殴りたくて、体が疼いてやがるんだ」

俺は白銀のオーラを静かに、だが密度濃く立ち昇らせた。剛気纏、そして界王拳。修行で得た「力」が、今、解放の時を待っている。

「行こうぜ、悟空。ナメック星の連中が、俺たちを待ってる」

 

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