ヤムチャになったってどうしたらいい   作:茉莉

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第25話

ナメック星の美しい緑の空が、村々から立ち昇る黒煙によって汚れ始めていた。

俺と悟空は、気配を殺しながら低空を滑るように飛行していた。スカウターを過信しているフリーザ軍に、俺たちの正確な「気」の位置を悟らせるわけにはいかないからだ。

「……いたぞ、悟空。あそこだ」

眼下の村では、巨漢のドドリアが幼いナメック星人の首を無造作に掴み上げ、高笑いしていた。傍らでは、フリーザが浮遊椅子に座り、まるで演劇でも鑑賞するかのように、冷徹なまでの静寂を纏ってその光景を眺めている。

「……もう見てらんねぇ。ヤムチャ、いくぞ!」

「待て、悟空! 闇雲に突っ込んじゃダメだ。まずは子供を助ける。俺が合図したら、一気に仕掛けるぞ」

俺は「剛気纏」を限界まで高め、肉体の密度を鋼鉄以上に引き上げた。そして、指先に小さな、だが超高密度の「繰気弾」を生成する。

「……今だ!」

俺の合図と同時に、悟空が「界王拳」を爆発させて一直線にドドリアへと突っ込んだ。

「なっ……何奴だぁ!?」

驚愕に目を見開くドドリアの腕を、悟空の鋭い蹴りが真横から弾き飛ばす。掴まれていた子供が宙に浮いた瞬間、俺が影のようにその背後に現れ、子供を優しく抱きかかえて後方へ着地した。

「……ほう。驚きましたね。私の目の前で、これほど鮮やかな泥棒を働く方がいるとは」

フリーザがゆっくりと椅子を回転させ、俺たちを正面から見据えた。その瞳は、深海のように冷たく、底知れない。

「ザーボンさん、ドドリアさん。スカウターの数値はどうなっていますか?」

「はっ……! 測っておりますが、二名とも戦闘力はたったの『3』……いや、『5』です! 故障でしょうか!?」

ザーボンが焦ったようにスカウターを叩く。

「……ククク、故障なわけがないでしょう。ベジータさんが言っていた、気をコントロールする種族……。どうやら、例の地球人たちのようですね」

フリーザは優雅に立ち上がり、一歩、空中に踏み出した。彼が動いただけで、周囲の大気が重く沈み込み、地面の小石が恐怖に震えるように跳ね上がる。

「お初にお目にかかります、地球の皆さん。私はフリーザ。宇宙の帝王……と、巷では呼ばれております。わざわざナメック星まで、私のドラゴンボールを届けに来てくださったのですか?」

「……フリーザ。お前の噂は界王様から聞いてるぜ。だがな、この星の連中をこれ以上傷つけるってんなら、俺たちが相手だ」

悟空が構える。俺もまた、白銀のオーラを全身から噴き出させた。

「……威勢がいいですね。ですが、少しばかり身の程を知る必要があるようです。ドドリアさん、その汚い野良犬たちの首を跳ねなさい。少々、遊びが過ぎました」

「がははは! 承知いたしました、フリーザ様! 貴様ら、スカウターの数値に騙されて油断したな! 死ねぇーーーっ!!」

 

巨漢のドドリアが、大地を割らんばかりの勢いで突進してくる。その突進力は並の戦士なら一撃で肉体を粉砕される破壊力を秘めていた。だが、地球からナック星への旅路で「重力300倍」の地獄を潜り抜けてきた俺にとって、その動きはまるでスローモーションのようだった。

「遅いぜ、ドドリア」

俺は一歩踏み込み、最小限の動きでその猛攻をかわすと、ドドリアの突き出された腹部へ「剛気纏」を集中させた掌を叩き込んだ。

「狼牙……瞬光衝!!」

ズドォォォォォン!!

物理的な打撃を超えた、高密度の気の爆発がドドリアの体内を駆け巡る。

「ご、ごふぁっ……!?」

絶叫すら上げられず、ドドリアの巨体が数メートル後方の岩山まで吹き飛び、土煙を上げて埋まった。

「な、何だと……! ドドリアが一撃で!?」

ザーボンが信じられないといった様子でスカウターを叩く。一方、浮遊椅子に座るフリーザの瞳に、わずかに冷酷な「興味」が宿った。

「……ほう。驚きました。今の技、単なるパワーではありませんね。気の出力を一点に収束させ、相手の内部で炸裂させた……。地球人というのは、これほど面白い技術をお持ちなのですか」

フリーザがゆっくりと指を立てる。その指先から放たれる死の予感に、俺の背筋が凍りつく。修行の成果があってもなお、この男の底知れなさは異常だ。

「ザーボンさん、遊びは終わりです。その方々を、今すぐ始末なさい」

「はっ……! 承知いたしました!」

ザーボンが動く。だが、彼は俺たちに向かってくるのではない。その鋭い爪を向けたのは、俺たちの背後で震えていたナメック星人の子供、デンデだった。

「動くな! このガキの命が惜しくなければな!!」

ザーボンの手がデンデの細い首にかけられる。卑劣な手口だが、フリーザ軍にとっては効率的な手段に過ぎない。

「貴様……! ザーボン、そいつを放せ!!」

悟空が界王拳の赤いオーラを微かに滲ませる。だが、ザーボンは冷笑を浮かべ、指先に光を溜めた。

「動けばこのガキの頭を吹き飛ばすぞ。フリーザ様の前でこれ以上の失態は許されんのでな」

膠着状態。フリーザの冷たい視線が、俺たちの焦りを楽しんでいる。

(くそっ……人質か。今の俺たちならザーボンを瞬殺できるが、デンデの安全を確保しきれない……!)

その時だ。

「みんな、伏せろ!!」

岩陰から飛び出してきたのは、別行動で潜伏していたクリリンだった。彼は両手を顔の横に掲げ、全身の気を一点に、光へと変換する。

「太陽拳ーーーーっ!!」

ドォォォォォォン!!

ナメック星の三つの太陽さえ霞むほどの、猛烈な閃光が村全体を包み込んだ。

「ぐわぁぁぁっ!! め、目がぁぁぁ!!」

ザーボンが叫び、思わずデンデを離して顔を押さえる。フリーザもまた、不快そうに目を細めて顔を背けた。

「今だ! デンデ、こっちへ!」

俺は瞬時にザーボンの懐からデンデを奪い取り、脇に抱え込んだ。

「悟空、クリリン! 一旦退くぞ! まともにやり合うには、まだ状況が悪い!」

「おう!」

俺たちは気を極限まで抑え込み、太陽拳の残光が消える前に、地形を利用して迷路のような渓谷へと姿を消した。

数分後、渓谷の深い岩陰。

「……ふぅ、助かったぜ、クリリン。ナイスタイミングだ」

「へへっ、ヤムチャさんの背中を見てたら、体が勝手に動いちゃったよ。でも、あのフリーザって奴……とんでもないな。離れて見てるだけで、足が震えて止まらなかったぜ」

俺は震えるクリリンの肩を叩き、デンデを地面に下ろした。

「ああ、あいつは別格だ。だが、これでフリーザも俺たちの存在をはっきりと認識したはずだ。……隠れん坊はもう終わりだな」

俺は遠く、怒りに震える巨大な気配を感じながら、自身の「剛気纏」をさらに鋭く研ぎ澄ませた。

 

 

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