ヤムチャになったってどうしたらいい 作:茉莉
西の都にそびえ立つ、巨大なドーム状のカプセルコーポレーション。俺はブルマと共に、その豪華なエントランスをくぐった。
「お父様、お母様! ただいま!」
「あらあらブルマ、お帰りなさい。あら、そちらのイケメンさんはだぁれ?」
出迎えてくれたブルマの両親に、俺は最大限の礼儀正しさで挨拶をした。前世の営業スマイルが役に立つ。豪華な食事と温かいもてなしに、少しだけ戦いの緊張が解けるのを感じた。だが、俺にはやらねばならないことがある。
食後、俺はブリーフ博士の書斎を訪ねた。
「博士、折り入ってお願いがあります。修行のために、特殊な部屋を作っていただきたいんです」
「ほう、修行かい? どんな部屋かな」
「重力を自在にコントロールできる部屋です。まずは地球の10倍まで。高重力下で負荷をかけ、基礎体力を爆発的に引き上げたいんです」
博士はタバコをくわえ直し、興味深そうに目を細めた。「10倍か……面白い。君の体の構造も調べさせてもらうよ」と、快諾してくれた。
それからの数日間、重力室の完成を待つ間、俺はブルマとデートを重ねた。ショッピングに付き合い、美味しいものを食べ、彼女のワガママに付き合う。
「あんた、砂漠にいた時よりずっと優しいじゃない」
そう言って笑うブルマを見ていると、「絶対に死ねない」という決意がより一層強くなった。
重力室のプロトタイプが完成すると、俺はすぐさま「修行の旅」に出ることを決意した。
「……まずは、ここだ」
見上げるような巨塔、聖地カリン。悟空が登るより数年早く、俺はあの大空を突く塔に手をかけた。三日三晩、筋肉が悲鳴を上げ、肺が焼けるような感覚。だが、俺は止まらない。登頂した俺を待っていたのは、杖をついた一匹の猫——カリン様だった。
「ヤムチャよ、お主の動きは無駄なパフォーマンスが多すぎる。狼の真似など二の次じゃ」
その一言に、俺の脳内を雷が走った。俺が誇っていた「狼牙風風拳」は、ただの「型」に過ぎなかったのだ。俺はカリン様との超聖水の奪い合いを通じ、動きから一切の虚飾を削ぎ落とした。最短、最速、必殺。それは「狼」ではなく「牙」そのものへの昇華だった。
さらに俺は、カリン様に土下座をして頼み込んだ。
「カリン様、将来的にとてつもない脅威が来ます。その時のために、仙豆を数粒……ストックさせてください」
俺の必死さに免じて、カリン様はいくつかの仙豆を預けてくれた。
西の都に戻った俺は、完成した重力室に籠もった。
5倍、10倍。内臓が押し潰されそうな圧力の中で、俺は新たな技を練り上げた。
「操気弾・連!」
指先の動き一つで、十数発の光弾が宙を舞い、全方位から仮想の敵を穿つ。さらに、スカウター対策として気を完全に封じ込める修行も並行した。
脳内では、あの日見た「クレーターで横たわる自分」を何度も殺した。自爆する栽培マンを1万回倒し、恐怖を克服した。
そして、第21回天下一武道会。
会場の熱気の中、俺はジャッキー・チュンの前に立っていた。
「ヤムチャくん、ずいぶん雰囲気が変わったのう……」
「じっちゃん……いや、ジャッキーさん。最初からフルパワーで行かせてもらう!」
合図と共に、俺は加速した。常人の目には消えたと映る速度。
「狼牙風風拳・零式!」
無駄な咆哮を捨てた拳が、ジャッキーを追い詰める。驚愕するジャッキーに、俺は多重操気弾を放ち、逃げ場を奪った。
「ほ、ほう……! これほどの気のコントロール、ワシでも若き頃には出来なんだわい!」
空中に逃げたジャッキーに、俺は最後の一撃を放つ。
「か・め・は・め……波ぁーーーっ!!」
本家を凌駕する熱線が舞台を飲み込んだ。爆煙が晴れた時、俺の拳はジャッキーの鼻先で止まっていた。彼の足は、わずかに場外の線を踏んでいる。
「……場外、かな?」
俺は不敵に笑い、あえてスタミナ切れを装って膝をついた。ここで優勝して、悟空の成長を止めるわけにはいかないからな。
「ヤムチャよ……お主、一体どこでこれほどの力を?」
「……まだですよ。本当の化け物は、これからゴロゴロ出てくるんですから」
観客席のブルマが手を振っている。
俺は確信した。もう俺は、あのクレーターには戻らない。