ヤムチャになったってどうしたらいい   作:茉莉

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第5話

西の都での生活は、ただの居候から「共同開発者」へと変わっていった。俺はブリーフ博士の隣で、前世の知識——重力が人体に与える影響や、効率的な負荷の考え方——を伝え、博士はそれを魔法のような技術で形にしていく。

完成した「重力負荷スーツ」は、俺の肉体を24時間、容赦なく痛めつけた。食事をしている時も、ブルマとテレビを見ている時も、俺の細胞は重力に抗い、密度を増していく。

「ヤムチャ、あんた最近、なんだか体つきが変わったわね。無駄な肉が一切なくなって、岩みたい」

ブルマが俺の腕に触れ、少し顔を赤らめながら呟く。原作のヤムチャならここでデレデレして鼻の下を伸ばすところだが、今の俺は彼女の肩を抱き寄せ、静かに微笑むにとどめた。

「未来の平和を守るための準備だよ、ブルマ。お前の作るメカと、俺の武術。この二つがあれば、どんな敵が来ても怖くない」

俺の言葉に、ブルマは少し驚いたような顔をして、それから嬉しそうに俺の胸に頭を預けた。

「……あんた、本当に変わったわ。昔はただの野盗だったのに。今は、なんだか……凄く大きなものを背負ってるみたい。でも、嫌いじゃないわよ、そういうの」

彼女との絆が深まっていくのを感じる。ベジータが現れたとき、彼女がそちらへ心変わりする隙など与えない。愛もまた、俺の生存戦略の一つだ。

数日後、俺はブルマに作ってもらった「気」の波長解析モニターを手に、庭で操気弾の訓練を行っていた。画面には俺の気の漏れが赤い等高線で表示されている。

「ここだ……ここを絞れば、さらに精度が上がる」

集中力を極限まで高め、気の流出をミリ単位で制御する。モニターの数値が「0.01%」以下を示した瞬間、俺の放った操気弾は真空を切り裂くような速度で舞い、ターゲットの岩を跡形もなく消し去った。

「よし。これでスカウターには、俺がただの一般人にしか見えないはずだ」

そこへ、ブリーフ博士がタバコを燻らせながらやってきた。

「ヤムチャ君、例の『スカウターもどき』だがね、さらに改良して通信機能に翻訳機能もつけておいたよ。これでナメック星語だろうがなんだろうがバッチリだ」

「……博士、まだそこまでは必要ないですよ」

俺は苦笑いしたが、博士の先見の明には脱帽する。

その夜、俺は一人で屋根に登り、星空を見上げた。

悟空は今頃、占いババの宮殿でじっちゃんと再会し、涙を流している頃だろうか。物語は着実に進んでいる。

「次は、第22回天下一武道会。天津飯、そして鶴仙流との激突か……」

原作では足を折られ、病院送りにされたあの大会。だが、重力スーツで骨密度まで高めた今の俺の足が、そう簡単に折れるはずがない。

「……どっちが本当の『暗殺術』か、教えてやるよ。桃白白の仇を討ちに来るのが、今から楽しみだぜ」

俺は手元の通信機を弄り、修行中の悟空にメッセージを送った。

『悟空、修行は順調か? 次の大会、俺は手加減しないぞ。覚悟しとけよ。』

画面に表示される「送信完了」の文字を見つめながら、俺は低く笑った。ヤムチャ転生。絶望の底から始まったこの物語は、今、確実に俺の手で「最強の物語」へと書き換えられつつあった。

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