ヤムチャになったってどうしたらいい 作:茉莉
準決勝でクリリンを破った悟空と、天津飯に完勝した俺。第22回天下一武道会の決勝戦は、文字通り「地上最強」を決める舞台となった。
会場のボルテージは最高潮に達し、実況の声も興奮で裏返っている。
「ついに、ついに決勝戦です! 恐るべき進化を遂げたヤムチャ選手か! それとも、底知れぬ実力を持つ孫悟空選手か!」
俺と悟空は、リングの中央で向かい合った。
「ヤムチャ、オラ、ずっとワクワクしてたぞ。今のヤムチャは、今まで戦った誰よりも強ぇ気がすんだ!」
「……奇遇だな、悟空。俺もだ。お前という壁を越えなきゃ、俺の『生存戦略』は完成しない」
審判の合図と共に、世界が静止した。
次の瞬間、爆音と共にリング中央で拳と拳が激突する。
「ららららららっ!!」
「はあああああ!!」
目にも留まらぬ速さの打撃戦。悟空の野生の勘と、俺の重力修行で研ぎ澄まされた超速の反応。互いの拳が空を切り、衝撃波だけで石造りのリングに亀裂が走る。
悟空が空中に逃げ、かめはめ波の構えをとる。
「か……め……は……め……」
「無駄だ、悟空!」
俺は「操気弾」を両手に二発、同時に発生させた。これを盾のように回転させ、悟空の放った蒼い光線を強引に左右へ受け流す。爆風の中を突き抜け、俺は悟空の懐に飛び込んだ。
「狼牙……瞬光閃!」
最短距離の貫手が悟空の胴を狙う。だが、悟空は空中で身を翻し、如意棒を使わぬ足技で俺の腕を蹴り上げた。
「へへ、捕まらねえぞ!」
「なら、これはどうだ!」
俺は指先を動かし、受け流したはずの「操気弾」を背後から急反転させた。
「うおっ!?」
悟空は咄嗟に残像拳で回避するが、俺はさらにその残像の行き先を「気の探知」で先読みし、本命の回し蹴りを叩き込む。
ドゴォッ!!
悟空がリングの端まで吹き飛ぶが、彼は空中で体勢を立て直し、不敵に笑った。
「すっげえや、ヤムチャ! 本当に隙がねえな! だったら、オラも全力の全力で行くぞ!」
そこからは、もはや観客の目には追えない領域の戦いとなった。
俺たちの放つ「気」がぶつかり合い、会場全体が震える。ブルマたちが息を呑んで見守る中、俺と悟空は互いの持てる全ての技、全ての力をぶつけ合った。
戦いは数十分にも及んだ。
俺のスタミナも限界に近い。重力スーツを脱いだ解放感で動けてはいるが、悟空の底なしの体力は異常だ。
「……はぁ、はぁ……。次で、最後にしようぜ、悟空」
「……ああ……。オラも、もう腹ぺこで動けねえや……。最後の一撃だ!」
二人は同時に、最大出力の「かめはめ波」の構えに入った。
会場全体が白光に包まれる。
「「はあああああああああ!!」」
二つの巨大な光の奔流がリング中央で激突し、凄まじい閃光を放った。会場を揺るがす大爆発。砂埃が舞い上がり、視界を遮る。
やがて埃が晴れた時。
ボロボロになったリングの上で、俺と悟空は互いの拳を相手の顔面スレスレに突き出したまま、二人同時に大の字に倒れ込んだ。
「……あ、あー……。もう、指一本動かねえ……」
俺が空を見上げて呟くと、隣で同じように倒れている悟空が笑った。
「へへ……。オラもだ。ヤムチャ、おめえ……本当につえぇなぁ……」
審判が駆け寄る。
「りょ、両者ダウン! カウントに入ります!」
「ワン、ツー……テン! どちらも立ち上がれません! したがって、今大会の決勝は……史上初の、ドロー!! 同時優勝です!!」
会場を揺るがすような拍手と歓声。
俺は全身の痛みを感じながら、心の底から満足していた。
原作では決勝にすら残れず、天津飯に足を折られていた俺が、今は悟空と並んで最強として認められたんだ。
「……これで、少しは未来が変わったかな」
駆け寄ってくるブルマが泣きそうな顔で笑っている。
俺は確信した。今の俺なら、この後のピッコロ大魔王も、そしてその先のサイヤ人たちも、決して「ヤムチャ視点」で終わらせることはないと。
俺の物語は、ここから加速する。
誰も死なせない。この世界の運命を、俺の力で、書き換えてやる。