マシュ・キリエライトしか分からない   作:ats376

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パン Day3

製パン戦争 3日目

 

 

カレーパンで戦いに望むことを選んだ藤丸。

発酵させたパン生地にこだわりの中辛カレーをきっちり包んでパン粉をまぶしてカリッと揚げる。

外はサクサク、中はしっとり。食べ慣れた味。

 

「意外と出来るもんなんだな....。カレーパンって」

「そうですね。先輩の主婦力を甘く見ていました。試作品の味も悪くありません。フジマルパンも夢では無くなりつつあるでしょう」

「あっ、工房の名前本当にそれでいくんだ」

 

各工房は自分たちに相応しい名前をつけている。名前とはブランド力でもあるのだ。それが歴史に名を残した英霊達によるものであれば尚更明確にアピールポイントにしたいのだろう。だが現代人の一般人である藤丸の名前はまるで某大企業のようになっていた。

尊敬する先輩の名前をつけたい______、そんな後輩の強い願いが反映されて安直な名前がつけられた。いいのかこれで。

 

 

「でもマスター。これは厳しいかもしれないよ。僕も調べたけど、あんまり油ぎっているとそれだけで拒まれるかも知れない。スパイスがきいているのは人気になるかもだけど・・・、揚げ料理はちょっとね」

「エルキドゥはそう思うか~。でも一回試しに出してみよう。それで反応を伺って考えてみたいな」

「それもそうだね。試行回数を増やすのは良いことだ。賛成する。じゃあ、このレシピで工房を稼働させるよ?さっき僕も普通のアカルを焼いたし、使い方は分かるよ。レシピを登録してくれ」

 

エルキドゥが工房のギミックを作動させる。

小麦粉が練り上げられて次々と生地になり、発酵区画へ運搬される。その一方ではカレーの具材が指定通りに高速でカットされて鍋で煮込まれる。あく取りも丁寧に行われ、タイミングを見計らって先に配合されていたルーも投入されて煮詰められる。

しばらく時間がかかるとの表示が受けた藤丸達が少し席を外している間も調理は続き、出来上がったカレーは手際よくライン生産により生地へと包まれていく。パン粉をまぶし、なみなみと油が注がれた大鍋へコンベアがカレーパンを連れていく。

ジュワジュワと音を立てて上げられるパン達。タイマーが鳴ればそれに合わせて網付きアームがきつね色になったカレーパン達を回収していく。

こんがりときつね色、店でよく見るできたてのカレーパン。

 

 

           ⦅パンガ完成シマシタ。工房マスターハ、ゴ確認下サイ⦆

 

暇つぶしに三人で七並べをしてたところに通知音声が届く。

出来上がったパンの香りと共に。

 

「あっ、いい匂いですね! 食欲を誘う匂いです!」

「本当に出来るんだ・・・。すごい楽だなぁ。パン焼き放題じゃん」

「早速見に行こうか。問題なければ完成品用トレイゾーン近くにある[流通]ボタンを押せば、精霊によってウルク中へ運ばれていくよ。良い結果が出るといいね」

「ありがとうエルキドゥ。じゃぁ早速」ポチッ

 

 

完成したフジマルパンの第一号たるカレーパン達。

彼らの運命はどうなるのか?

 

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製パン戦争 6日目

 

「予想はしてた。してたよ。でもちょっとへこむなぁ....」

「はい....。やはり現代人にとっては美味でも古代の人々からすれば受け入れられない面があるのでしょうか。ほとんど捌けませんでしたね」

「あぁ。それとなく探ってみたけど、やっぱり油っこさが気になる人が多いみたいだね。食感を気に入る人はいるようだし、中のカレーはわりと好評みたいだ。ただ、油調理がよくないらしい。冷めたときの酸化した香りとかね。ただ、一部の人からはコアな人気があるよ」

 

「コアな人気?どんな?」

「あぁ、肉体労働者達の一部だよ。彼らは手早くカロリーを摂取できるカレーパンを気に入ってるらしい。他のパンも確かにそういうのはあるけど、さっきも言ったようにカレーというアドバンテージが大きい。野菜も肉も入ってて、食感も良い。どうやら彼らはサクサクとした食感とドロっとした中身の組み合わせが気に入ってるようだ」

 

藤丸のカレーパン、その味は申し分ない。現代人であればの話だが。

全体をまんべんなく揚げるというのは油をたっぷりと染みこませることになってしまう。

だが、ここで得られた高評価も捨てたくない。

フランス英霊達のように自分たちのやり方を守り抜いた上で適応を模索するのは素晴らしいことだ。だが藤丸は日本人。食の魔改造や新しい調理法の開拓を受け入れてきた国民性を持つ男。

そう、重要なのは

 

「まぁ、美味しいならいいか」

「え?いや、他のメニュー考えるんじゃないのかい・・・?」

「だって、カレーパンそのものがダメなんじゃなくて油っこいのが嫌がられてるだけなんでしょ?じゃぁ、作り方変えるよ。カレーパンの」

「しかし先輩。カレーパンは揚げ料理のはずでは?」

「焼きカレーパンにするかなぁ。好きなんだよね、俺。折角だし、パン生地も控えようかな。もっと楽なやつにしよ」

 

「パン生地を使わないのですか?製パン戦争ですよ?」

「うん。この間暇つぶしに発注できる材料見てたらさ。ホットケーキミックスがあったんだよね。それ使うよ」

「なんであるんですか!?」

 

 

藤丸は試作品を作る。もう慣れたものだ。

ホットケーキミックスと卵を混ぜ、牛乳...のかわりにウルクの人のことを考えて羊の乳を加えて固まるまで捏ねる。

出来た生地を伸ばし、手際よく切り分ける。そこへいつものカレーを乗せて生地でくるみきれいに包み込む。

が、この男は妙なところでこだわる。刷毛で溶き卵を表面へ塗ってパン粉をまぶすことを忘れない。そして出来上がったものをそのままオーブンへイン。......そう。油で揚げていないのである。油のくどさを排除した焼きカレーパンが仕上がった。

ちなみに、パンに卵黄を塗る作業はフランス語でドレと言う。あんまりベタベタ塗らないことが、艶のあるパンの仕上がりに繋がるのだ。

 

「試作品出来た!マシュ、食べる?」

「是非、いただきます」パク

 

「!これは、美味しいですね。サクサク感は揚げたものほどはありませんが生地には甘みと香ばしさがあります。少し辛めに設定されたカレーのスパイスが際立ってよろしいかと!」

「そうなんだ。あれ?でも、前に君たちはイースト菌の発酵は受けが悪いとか言ってなかった?」

 

エルキドゥの指摘はもっともである。

忘れられがちだがこのホットケーキミックス。多くの場合、ベーキングパウダーが使われている。その主成分は.....重曹、つまり炭酸水素ナトリウム。所謂ふくらし粉である。そう、これもまたイースト菌に頼らないもの。子供にさっとおやつを用意したいときに悠長に発酵させる?そんなものを企業努力が許すわけが無い。

そしてホットケーキミックスにはもう一つの特徴がある。配合油脂である。その配合によってサクサク感の演出や生地の質感、さらには口溶けに至るまで調整がなされている。藤丸の『とりあえずこれでいくか....』はあながち間違っていなかったのかもしれない。

 

 

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製パン戦争 8日目

 

藤丸が新型カレーパンのレシピを完成させ、流通前に市中を見て回っていたときのこと.....

 

 

「やぁマスター。そちらの調子はどうかな?」

「デオン!こっちは調子良いよ」

「そうか。たとえ陣営は違っても情報共有をしておきたいことがあるんだ。少し時間良いかな?」

 

デオンの話は意外だった。なんでもこれまで低迷していたフランス流のパンが少しずつ伸びてきているというのだ。

ここに来ての変化。デオンの予想はこうだった。

「意外とウルクの民、慣れてきてるんじゃないか」説である。

見たことも無い食事は当然警戒するだろう。現代人でもそうなのだ。食事が命に関わる古代の人々となればことさらそうなっておかしくない。

とはいえ社会には他の人と違う行動をする人間というのは必ずいるものである。型にはまらない行動を行うものは新しい発見と出会うもの。新しい食文化との遭遇は未知との出会いではあって、これもまた例外ではない。異文化のパンに舌鼓を打った者が他者へ広めていったのだろう。

ウルクでは静かに食の文明開化が起きつつあった。

 

「なるほど~、ありがとうデオン。嬉しいけど、言って良かったの?」

「あぁもちろん。それにマリー王女からの依頼でもあるからな。我々は確かに競ってはいるが、目指すべきは特異点の解消なのだろう?ならば共有できることはすべきだ。感謝の言葉は王女へ」

「うん、必ず伝えるよ。また会いに行くって言っておいて!あとこれこっちの試作品」

「あぁ、そうすれば王女も喜ぶだろう。試作品もありがたく頂戴する。お互い良いパンを作るために励もう」

 

デオンは籠を下げて風のように去って行く。人並みを縫うように駆けていく様はやはりサーヴァント。その様子を見送りながら藤丸は考える。相手はパンの国フランス。競合相手に思うところがあるのだろうか。

 

 

「それにしても......」

「デオンって結局どっちの性別なんだろ。わからない・・・・」

 

 

パンで悩めや。

 

 

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製パン戦争 11日目

 

「マスター、現時点でのご報告を。この経営補佐たるマシュが務めさせていただきます」

「頼んでないなぁ」

「まあいいじゃないか、マスター。本人がノリノリだし聞こうよ」

 

「ありがとうございます。エルキドゥさん。現在我々の順位は.....3位です。序盤のアドバンテージを維持していた『海賊の飯屋』は4位へ。『クロスブレッド』は2位。そして首位は『トースター工房』です」

「えっ、エジソンがなんでそんなに?」

「なんでも家庭用ウルクパントースターを開発し、家庭と店の両方から攻めているようです。職人のパンには劣るものの一定の市民権を獲得しつつあるようで、本場の味がやはり強いようです」

「なんか一人だけ違う戦いしてるね、彼」

 

 

ここに来てまさかのエジソンの躍進。これまでの大がかりな釜による加熱を家庭単位へ落とし込むというのは人々の生活へ余裕を生むこととなる。さながら、電球によって夜でも安定した明かりが広まって活動時間が延びたように。製パン戦争は大雑把に言えば人気投票である。自分の食を押しつけるものではなく、選ばれるものを作って売り出すというのは最適解と言っていいだろう。世論の指示を獲るには世論のニーズに応える、まさに民主主義の大統領である。否、大統王である。

 

 

「ウルクの人達の味覚が変わったとはいえ、やっぱ現地の味って言うのはあるんだろうね。マシュ、俺たちはどうすべきだと思う?」

「はい、確かにカレーパンは強力な兵器です。味、食感共に好評を得ており、年齢層も広く受け入れられています。弁当として使う方もいるとの報告もあります。ここで一つ、新たな商品開発を行いより多くのニーズに応えることで『フジマルパン』の力を誇示するのが最善かと。『フジマルパン』ブランドに惣菜パンメーカーという特色を持たせることで、他陣営の支持層へ食い込み、その支持層を奪うのです」

「パンの話してるよね?なんか物々しくない?新製品か.......、焼きそばパンとかにするかな」

 

「そういえばマスター。君は冷蔵庫に何か入れてたよね。あれも開発したパンなのかな?」

「あれ?あれは楽しみに作ったやつだよ」

 

 

藤丸はこの特異点で過ごす中で必然的に毎日パンを食べていた。バリエーションは豊かで飽きは来ない。来ないのだが.....やはり飽食の時代の人間故か、他の主食が恋しくなってしまった。そこで彼は材料の一部を流用して小麦粉と水と塩で別のものを個人的に作っていた。日本人であればみんな好きな温でも冷でも美味しい料理。

 

「うどん生地作ったんだ!焼きうどんにして食べようかなと思ってて。生地だけ作って寝かせてたんだよ。結構たくさん用意したから、二人も食べる?」

「そうだったのですか。ではお言葉に甘えて私もいただきます。お手伝いしますね」

「とりあえず冷蔵庫開けるか」ドアガチャ

 

 

取り出されたうどん生地を机の上に置く。まな板と包丁、打ち粉の用意を調えて準備をする。焼きそばパン用の鰹節を流用してだし汁も鍋に備える。

不格好でもうどんはうどんだろ、そんなテンションで生地を切り分けるために礼装で自身の魔力を活性化して身体強化。力仕事はこの手に限るとうどんに触れたその時。

 

「うん?マスター、うどん生地が光り始めてるけど、うどんって光るのかい?」

「ゑ? うわっ、なんか光ってる!普通に作ったのに!?」

「先輩、一応私の盾の後ろへ!」

 

丹精込めて作ったうどん生地はなぜか光り輝き、神々しさすら感じる。

科学的な話ではあるが、トウモロコシ由来の色素を用いれば光る食品は作れる。だがそれはケミカルな輝きであって今展開されているようなまぶしい輝きでは無い。

光がひときわ輝き、収束する。そこには・・・

 

 

「あ、どうも~。初めまして~。私はアサシンで~す。よろしくどうも~。......なんで私の足下に食品があるんですか?」

「マスターの国の料理はサーヴァントを喚べるんだね。知らなかったよ」

「俺も知らない・・・・・」

 

 

 

(現状説明中)

 

 

 

 

「つまり、私は製パン戦争なるイベントで喚ばれたってことですか~?というかこれ、喚ばれてすら無いですよね、還った方がいいんです?」

「いや、還らなくていいけど.....。なんか、ごめん........」

「別にいいんですけど。早速ご馳走になってますしぃ~」

 

唐突に召喚されたアサシンを加えてざるうどんを楽しむ4人。マシュは露骨に警戒し、エルキドゥは態度にこそ出さないがいつでも戦えるように間合いを計っている。

すごいすんなり混ざったが、目の前の召喚された女性...女性(?)は何者であろうか。紫のフードとマント付き上着。四肢がメカメカしい。外見から判断できる特徴が薄い....。これではなんというサーヴァントか名前の判断など出来n

 

 

「あ、そうだ。今更なんだけど名前聞いてもいい?」

「(先輩、躊躇いとかないんですか!?)」

 

「んぇ?私ですか~?いいですよ~。というか召喚者に対しては話さないといけませんね~」

「ありがとう、じゃあ早速」

「(いいんだ・・・)」

「こちらも警戒しなくていいからね。味方になってくれるなら助かるよ、そうだよねマシュ?」

「あっはい」

 

 

「では名乗りましょう。出身はギリシャ。神から派遣されて汚名を背負った存在.....我が名はパンドラ。世界一有名な厄災の化身なり。まぁ、ただの箱なんですけど~」

 

語られたその名は爆弾そのもの。うっかり召喚しちゃった☆で許されるようなものではない。

パンドラの箱、その逸話は大変有名。パンドラという女性が神より預かった箱を開けたことで、その中に封じられていた疫病や犯罪、恐ろしい怪物というあらゆる災いが世に解き放たれたというもの。だが目の前のパンドラが言うには、『本体は箱の方で、肉体は女性のパンドラがベースになっている』らしい。つまり、人々に語られ続けたパンドラとその箱は一体化してしまっており、召喚されるときは合体したような出現になっているとのこと。

 

「これは・・・すごいサーヴァントです、先輩!」

「俺も知ってる話だけど、でも・・・」

「でも、なんですか~?この私に何か落ち度でも~?」

「ここ、パン作り特異点なんだよ・・・・」

「どうやら私に出来ることはなさそうですね~。やはり還ります、マスターの魔力がもったいない....。こんな地雷女養うなんて、申し訳が立たない」スゥゥゥ....

「待って待って、判断が早い」

 

「神に創られた。なんだか僕と似てるね、君」

「えぇ?いや、こんな木っ端ボックスと一緒にするのはどうかと思いますよ~?」

 

説得の結果フジマルパンの協力者となったパンドラ(箱)。

新商品である焼きそばパン開発にも携わるなど、"役に立つサーヴァント"として精力的に動くのであった。

 

 

 

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製パン戦争15日目

 

「・・・ねぇ、マシュ。なんかおかしくない?」

「はい、私も薄々感じ始めていました。特異点がまるで進みません!ただパンを作っているだけです!」

 

藤丸達が来てから二週間を超え、各陣営はあーでもないこーでもないとパンを作り続けた。ウルクの人々の生活に少しずつ浸透し始めるほどに。人気投票を知らせる掲示は書き換わるが、だからといって特異点解消の兆しも聖杯出現の予兆も無い。来たときと根本的な状況はまるで変わっていないのだ。カルデアからの定期連絡でもその焦りの様子はジワジワと伝わってくる。

パンを作っていればいつかこの特異点は解決できるだろう。この特異点の成立に関わっている要素と言えばパンなのだから。

そんな予測は誤りであったことを身にしみて実感し始める一行。

 

「ロマニやダ・ヴィンチちゃん達も言い淀んでたけど、こういうことかだったのか・・・。人気は増えてるけど、解決策が見えないのはどうしようもないよ」

「う~ん?マスターさん。前から思ってたんですけど」

「何?」

「これって意味あるんですか?パンを流し続けても何も変化ないんですよねぇ?一回わざと流通止めたらどうなるんですか~?」

「パンドラさん、それは...。この特異点はパンで解決を....あれ?確かに変です!パン作りで解決するなら何か兆候があってもいいはずなのに、何も無い。つまりこれは・・・」

「あぁ、僕も言われてみてなんとなく察した。これはパン作りは解決手段にならないかもしれないね。あえて開発も生産も中止して、一度様子を見るのはありだろうね」

 

 

何気ない一言で藤丸達はカルデアへ通信をつなぐ。パン生産を自分たちがストップし、他陣営に同様の対応を頼んでみるという提案を伝えるために。状況が動かないならば、今やっていることを続ける必要は乏しいのだから。

 

 

「・・・・というわけなんだけど、一回放置してみていいかな?ロマニ、直接の解決は無いかもだけど変化が起きるかも知れない」

「なるほど。事情は分かった。こちらも多方面に考えを巡らせて迷走した挙げ句、オリジナルレシピなんて考えてたけどその必要もなさそうだね。その案を承認するよ。念のために期限は設けておいてくれ。もしもこれで変化が起きれば....きっとその時は小さい変化ではなくかなり大きい変化になるだろう。戦闘になるかも知れない。準備だけはしておいてくれ」

「お任せ下さい、ドクター。先輩はこのパラディーンが何が何でもお守りします」

 

「あと、パンドラって本当に大丈夫?大惨事起きてない?管制室からしてもすごい不安なんだけど。逸話が逸話だからね」

「念のために僕が付いてるからね。不穏な動きも無い。人手が増えて助かってるくらいさ」

 

似たようなルーツを持つエルキドゥはパンドラを受け入れてこそいたが、危険視もしていた。神と人の狭間の存在は常に不安定なもの。ふとした拍子に自身のあり方に強い不安や疑問を感じてしまうものだ。......他人ごとではないと強く理解しているからこそ、パンドラを見張っていた。

 

「そうか、なら一安心だ。万が一があるから、最低限の報告をマメにしてくれ。こちらでも観測は続けるから、何かあれば連絡する」

「了解しました!」

 

 

 

□□□□□□□□

 

~カルデア管制室~

 

「いや、盲点だった。あえて作らない。たしかに全然ありの提案だ」

「あぁ。黒幕がいるとして、そいつを引きずり出すために作り続けることばかり考えていた・・・・。人気投票なんてさせてるんだから、その行為に意味があると思い込んでたよ。成る程、作ることを要求しているのだから作ってもらえないのは大変困るだろうね。ボイコットとは主催者側からすればこのうえない面倒ごとだ」

 

ここ数日で一番表情が明るい二人_______ロマニ・アーキマンとレオナルド・ダ・ヴィンチ。

悩み抜いた果てにダ・ヴィンチがやたら凝ったパンを考え始めて困惑していたところに差し込んだ一筋の光明。カルデア職員からしてもこの提案はありがたいものだった。

パンは食べ物であって芸術作品として作ることはなんかもう....迷走どころでは無い。

 

 

「しばらくは彼らも気を休めることが出来るだろう。パン工房があるとはいえど労働は労働。軽い気持ちで送ったつもりがより大変なことになってしまっていたからね。少しヤキモキしてたんだ」

「全くだよ。藤丸君達はこれで少し余裕が持てる。敵の動きには気をつけないといけないけどね」

 

「なぁロマン。実はもう一つ謎があるんだ」

「まだ何かあったか?それらしいものは大体語ったが」

「あぁ、ある。自分もそこまで気にしてなかったが、この機会にあえて言いたい。消費されなかった在庫ってどこに行ったか記録できてる?」

「うん?いや、どうだったかな・・・。流石に在庫チェックまではカルデアではしてないね」

 

「おかしくないか?ここ最近ようやくウルクの人々は各工房のパンを積極的に手に取り始めた。それまでも各陣営はそれなりにまとまって作っていたが、我々の知るとおりそれらは消費しきられていない。かといって畑の肥やしや家畜の餌になったというデータも無い。行方が分からないんだ」

「廃棄食品か・・・・。なるほど確かに。あの時代ならば、急に生ゴミが増えれば処理が追いつかないだろう。なのに何の変化もないというのはヘンだ。あとで藤丸君達に追加で調査を依頼しておこう」

 

 

 

僅かではあるが特異点への活路が見いだされたDay15。黒幕は誰なのか?目的は何なのか?そもそもなぜパンなのか。なぜギルガメッシュ王はこの期に及んで働き続けているのか。

謎は今だに尽きないが、たとえ一歩であっても答えに近づきつつある。真実が明らかになる日は近い・・・?

 

 

 

 




※火星で発見されたワケではありません
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