製パン戦争 16日目
「え!?パンを作るのを控えるの!?」
「はい、大変心苦しいのですが・・・」
素っ頓狂な声を上げたのはマリー・アントワネット。製パン戦争においては芳しくない結果を出し続けている陣営だが、個人的に一番エンジョイしている人物。パンについての逸話がある人物ではあるものの、のめり込んでいるのはそれが理由ではないと思いたい。
「ごめんマリー。事情が事情で・・・・、これで特異点解決に一歩進むかもしれないんだ。協力して!」
「別にイヤって言ってるわけじゃないのよ?ただ、はまっちゃって・・・。自分たちで作るだけなら別にいいんでしょ?」
「それなら全然いいよ」
「王妃が言うなら決まりだね。僕もしばらくはレシピの見直しでもするよ」
「サンソン、立ち直ったの?」
マリーの快諾と共に現れたのはサンソン。製パン戦争初期において精神的ダメージにより一時的に燃え尽きていた英霊である。すっかり回復したようだ。
話し合いによりフランス陣営『Le goût de la révolution』は製造を一時的に取りやめる運びとなった。
順位どうこうよりも純粋に楽しんでやっていたからなのか、想像以上にすんなり簡単に話し合いは片付いた。
他の工房も同じようになるといいのだが。
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「断る!!」
「だよね!」
次にやってきたのは『トースター工房』。エジソンの取り仕切る工房である。
アメリカらしいパンへの拘りををかなぐり捨てて家庭用ウルクパントースターを開発して売ることで順位を引き上げたのだ。ここで勝負から事実上降りるようなマネはしたくない。発明王としても商売人としても受け入れられないと獅子頭の男は吠える。
「マスター。君が特異点解決解決のために奔走しているのは分かる。カルデアのマスターとして素晴らしい仕事をしているのだということも」
「エジソンさん、そこまで分かっていてどうして・・・?」
「だって、このまま売り上げトップでシェア1位維持したいじゃん。直流のパントースターを紀元前の特異点で普及させたとなればあの交流野郎も認めざるを得ないだろう」
ホワンホワンホワン
※エジソン脳内イメージ
テスラ「バ、バカな!?紀元前でトースターだと!あり得ない!」
エジソン「このパツパツスーツめ。輝かしい結果が見えないかね?そう、この積み上がった功績と各家庭で食卓を創造するトースターが・・・」
テスラ「俺は認めん!こんな、なにかのカラクリが・・・」
エジソン「フハハハハハ!ぬるいわ、負け犬め!紀元前からやり直せ!トーストビィィーーーム!!!」
テスラ「ぐわあぁぁあぁぁ!!」
「みたいなコトが出来るかなって」
「いや、エジソン。それは流石に無理だと思う」
「しかしな、マスター。私は譲るつもりは無い。心苦しいが、実力行使も伴うぞ・・・!!」
エジソンの周りに電気が迸り始める。なんとしてでも首位を走るこの流れを維持したい。(パンじゃ無いけど)商品開発の苦労。マーケティングの試行錯誤....。
たとえ正しい理由があっても譲れないものがあるのだ。ライバルとの勝負、自身が背負う歴史。容易く崩れては発明王の名が廃る。
「・・・分かったよ、エジソン。でも、こっちにも考えがある」
「致し方ないか。ならば我が力を」
「荒っぽいのはよくないですね~。清く正しく、平和的に解決しませんか~?」
「ん?この婦人はどなたかね?サーヴァントのようだが・・・・」
「色々あって召喚した新人サーヴァントだよ」
間延びする口調で現れたのはつい先日召喚されたアサシン、パンドラ。友好的な雰囲気を伴って現れたが何か策はあるのだろうか?戦うとなればマシュ・パラディーンがいてもクラス相性でパンドラ自身は後れを取る。一体何を画策しているのか。
「エジソンさん、であってますよね~? ・・・貴方は今、幸せですか?」
「マスター、失礼だが怪しい宗教関係者は流石に契約すべきでないと思う」
「本当に失礼ですね~。由緒正しいんですよ~? 言葉が足りませんでしたね~。・・・・今、上手くいっていますか?」
スッとパンドラの目が細くなる。先ほどまでの柔和な雰囲気は薄れてどこか棘のある雰囲気だ。
機械で出来た手をワキワキさせて話を続ける。
「マスターからお伺いしましたよ~?なんでもセールスランキング一位だとか~?素晴らしいですね~、すごいですね~」
「婦人、何が言いたい?それと、婦人呼びは失礼だろうから名前をお伺いしても?」
「あぁ、これはご丁寧に。私、『パンドラ』と申します~。パンドラの箱の擬人化ですね~」
「・・・・・・・。え?マジで?マスター、やっぱりやばくない?」
「話を続けますよ~?聖杯から得た知識ですが、何でもアメリカは訴訟大国だとか?いや~、大変ですね~」
「パンドラ殿、もう一度言う。何が言いたい?」
「パンの製造を止めてもらえなかったら、たまたま偶然100%の確率で普及してるトースターに色んな不幸が起きて訴訟の嵐に見舞われるかも~?なんて?」
エジソンの工房内にしばらく静寂が訪れる。時計の針のカチカチという音とパン製造機の稼働音が響く。そして、僅かな逡巡と情けないうめき声の後に怒気の消えたエジソンは先ほどとは打って変わった様な朗らかな雰囲気で藤丸へと向き直り_______
「いやぁ、なんだか気が変わった!製造工程の見直しとかメンテナンスとかね。パン作り以外にやりたいことが出来てしまった。パンの流通控えだったね?喜んで協力するとも!」
少し前にあった誇りや肩書きは訴訟という現実的な脅威の前に吹き飛んだらしい。
そもそもみんなパン作りしてる中で調理器具開発するとか、『ルール⑥流通には関わらない』に抵触してないのか。ギリギリを攻めてまでやりたかったのがライバルへのアピールポイント稼ぎだったというのはなんとも言えない話である。
「あ、そういえばエジソン。廃棄されたパンの行方とか知らない?」
「廃棄食品?さぁ、気にしてなかったな。家畜の餌にでもしてるのでは無いかね?」
「違うらしいんだよ。ロマニ達から調べてって言われてて。でも聞き込みをしても回収業者とかいないらしいんだよ」
「う~む。もしかして、なんだが。そもそも回収されていないのでは無いかね?あぁ、別に誰かが食べてるってことを言ってるんじゃないぞ?工房でパンの材料は支給されているが、それの出所も分かっていないし。私の造ったトースター由来のパンは基本的に食べきられているようだからパンが出来上がった後のことは把握していない。まぁ、ともかくだ。流通停止の件は協力しよう。だから・・・・」
「だから?」
「く れ ぐ れ も! そこのパンドラ嬢の権能とかそのへんは勘弁してくれ」
「そんなに気にされてらっしゃったんですね・・・・」
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「やぁマスター、そちらの進捗はどうかな?」
少しでも早く情報を共有するべくエルキドゥは単身で動いていた。藤丸達と呼びかけ先を分けてウルク各地の工房へ回っていたのだ。
『パンとサーカス』、『クロスブレッド』、『太陽と鷹』の担当となったが、絶妙にコミュニケーションに難のあるサーヴァントであるエルキドゥ。一人での行動の結果は如何ほどに。
「エルキドゥさん、報告をお願いします」
「あぁ。まずニトクリスは二つ返事で快諾してくれたよ。それとあのメイヴというライダーは『お菓子作りしたかったからちょうど良かったわ!』とか言ってたね。スカサハは『戦いか?何、違う?そろそろ出番かと思ったが』って言ってなんか残念そうだったよ」
「ありがとうエルキドゥ。こっちも回った工房は全部話をつけられたんだ。あ、ネロのところは?」
「あぁ、そこはね。薔薇の皇帝が駄々をこねてしまってね・・・・。カリギュラがなだめるのに一苦労だった。了解は取り付けたけどね」
「流石ですエルキドゥさん。しかし、一体どうやって?」
「あぁ、マスターの部屋での添い寝について話を通すと約束したんだ。ほら君、周りに物騒なサーヴァントが常についてるだろう?たまにはいいんじゃない?」
「(俺の安息がさらっと失われてる!)」
どうにか話はまとまったようだ。だが、その代償は小さくない。マスターの部屋はある意味で魔境である。
溶岩水泳部でも侵入は困難。常にビーストサーヴァントが警備し、断り無い入室は高難易度クエストへの突入と同義。特に夜間や休憩中は警備が厳重となるため、一部のサーヴァントはアポを取るという文化を肉体言語で学習する羽目になった。
藤丸がそこまでしなくていいと言ったことで割と緩くなってはいるが、下手をすると藤丸が見ている前で同士討ちに発展するということが十二分に起こりえる。
添い寝とか地雷原を広げるようなものなので控えて欲しいというのが本音である。
「っ、この際仕方ないか・・・・」
「先輩、すごい辛そう顔に」
「マスター大丈夫ですか~?何かものすごい胃を痛めてそうな顔ですが~」
頑張れ藤丸。カルデアの安寧はお前の采配にかかっている。
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「・・・・で、最後の一つに来たわけだけど」
一行が到着したのは最後の工房『海賊の飯屋』。海賊が運営している都合、話し合いで終わる見込みは薄いだろう。
だからこそ全員でまとまった来たのだ。中にいるのはアンメアと黒髭。癖の強い英霊の中でも特に癖が強い者達がよりによって固まっている。
「でもやるしかないよね。だからこそこうして最後に回していたんだ。僕たちがいるから万が一あっても押し通せるようにしてるよ」
「はい、可能な限り話し合いの解決を目指すべきなのは変わりませんが、これまでのことから考えて上手く行く可能性は・・・その」
自由奔放、やりたい放題。己の欲に素直。そういう人物だからこそ海賊の英霊として人理に召し上げられたのだ。
エルキドゥとマシュの言葉からも警戒感が伺える。
マスターだからといって頼み込んでも聞いてもらえるかは分からない。海賊としての筋を通してけじめをつけなくてはならない。
特に黒髭とはそういう男なのだから。
「あ、マスターだ」
「マスターですわね」
「アンさんとメアリーさん!工房の中から現れました」
「二人とも急で悪いんだけど、話を聞いて欲しい」
「「いいよ/かまいわせんわ」」
[事情説明中]
「・・・・なるほど?」
「パンを作っても意味が無い、ですか。それで工房に声をかけて回っていらっしゃると」
「うん、そういうことなんだ。この特異点に変化をもたらすために協力して欲しいんだよ」
「ちょっと待ってもらえる?」
二人は少し離れた場所で顔を見合わせてコソコソ話す。二人もマスターを色んな意味で狙う人物達。先ほどのエルキドゥの交渉術を思い出して藤丸の手にじんわりと汗が滲む。絶対に何か要求される。経験則からそんな不安が拭えない。
第一特異点から第七特異点、さらにその他の特異点も歩んできたが露骨に(性的な意味で)マスターを狙っていることが周知の事実なサーヴァントは少ない。
モルガン(獣)によって割と本当に危ない状況に陥ったこともあるのにこの2人はなぜ学ばないのか。
「お待たせしましたわ、マスター。一つご相談が」
「(来た!)」
「僕たちはここで働いてたわけだけどさ。・・・・いい加減、あいつ(黒髭)のところで働くのウンザリなんだ! なにが海賊のことは一番分かってるだ。海賊が他人に従い続けるわけ無いってあいつに教えてやりたい」
「つまり何が言いたいかというとですわね・・・・。あの男にいい加減痛い目を見ていただきたいのです」
二人の話を要約すると、『あいつがずっと偉そうでうざい』という身も蓋もないものだった。
メイン商品は乾パン。海賊の食事を再現して一定の結果を出せていたのは確かに黒髭の手腕である。それが確かなのは二人も理解している。だが、あんな簡単な調理で偉そうにされるのがいい加減許せない、なんで上から目線で顎で使われるんだと。折角のんびりと休暇をこの特異点で楽しむつもりが台無し。そのツケを支払わせようというのが二人の思惑である。
「マスター、僕たちはかなり意気込んでたけどどうやら彼女たちの不満は相当らしいね。これなら黒髭を袋だたきにするだけで済みそうだよ」
「(この人、爽やかな笑顔でめっちゃ物騒なこと言うじゃないですか~。カルデアって怖いところです?)」
「ですが好都合です。皆さん、ここは協力して黒髭さんを無力化しましょう」
「さっきから隠れて聞いてたら・・・・拙者を軽んじる言葉しか聞こえてこないんですけど!?」
マシュの言葉が終わると同時に建物の影から現れたのは件の男。
いつも通りの顔だがその目は笑っていない。
「マスター、悪いが俺はこのまま従うつもりはねぇ。結構上手くやれてるんだ。俺たちが散々食べたあの乾パンがおそらく一番輝いてる・・・!拙者はこのまま進みますぞ」
「本音はどうなんですか、黒髭さん」
「他の工房がパン作りやめてるなら一位になれるかなって」
「俗っぽい理由過ぎる・・・・!」
想定通り譲らない黒髭。マシュからの問いかけにもあまりにも「らしい」返答を行う。
「埒があきませんね~。ここは私が。皆さんは後ろへ(相手はライダー、アサシンの私ならやれる・・・!!デビュー戦を華々しく飾ってみせる!)」
パンドラが一人前に踏み出す。こちらもこちらで割と不純な動機だが。既に多方面からの初対面イメージが最悪であるというのは経験済み。「実は戦闘とかをこなせて貢献できるサーヴァントなんです」アピールをにするにはこれ以上無い機会。その士気は高く、体からも魔力・・・というかなんか出てはいけないオーラが漂っていた。
パン工房『海賊の飯屋』前で霊基を再臨させた大男と風に上着が靡く機械少女が向き合い――
「初手宝具だ!海賊舐めんなぁ!!アン女王の復讐[クイーンアンズ・リベンジ]!!」
やはり海賊。聖者を相手にしているとは思わない方がいいらしい。召喚された船より砲弾の雨がパンドラへ降りそそぐ。
回避行動を見せるそぶりもなく、その全てを受け入れる。流石は伝承に名高き人物、というか箱。躱す必要はないというのだろうか。
轟音が鳴り止み、煙が晴れるとそこには――――
「ふ、ふふふふふ。やりますね・・・・」ボドボド
「「効くのかよ!」」
普通に大ダメージを受けていた。彼女は耐えてこそいるが、決して無視できないダメージを受けているのは明白である。黒髭は勝利を確信し不敵な笑みを浮かべながら裏切り者のアンメア、営業停止命令を出しに来た藤丸達へと向き直る。
「グフフフフ、マスター。拙者は鬼ではありませぬぞ。そこにいるおてんば海賊を差し出せばこのように痛めつけることなどはしませぬとも」
「なに、勘違いしてるんですか~」
「っ!?」
黒髭が向き直るとそこには先ほどよりも妙に禍々しい気配が増したパンドラ。異様な雰囲気が漏れ出し、黒髭は思わず工房内部へと跳ねて距離を取る。
「いや~、参っちゃいますよ~。かっこよく決めようとしたら上手いこと宝具発動が出来なくて。でももう大丈夫そうですね~。さぁ.....ご開帳といきましょうか」
『全ての贈り物(パンドラボックス)』
機械の体の各所が開かれ、中からドス黒い靄がパン工房の周りを満たす。だがその靄はただの煙や霧の類いでは無い。気体のように見えているだけだ。そしてそれらは開け放たれていたドアから内部へと、黒髭を目指して流れ込んだ。機材に、床に、壁面に。あらゆる箇所へと靄が染みついていく。それはただインクを紙に零したように色が付くのでは無い。厄災を呼び出す即席魔術が刻まれていっているのだ。
当然黒髭の体にも不幸と災いが刻み込まれていく。
「ぬおぉぉぉ!?なんじゃぁこりゃぁぁ!あとさっき絶対聞いてはいけない言葉が聞こえたんだけど!?」
黒髭の体を覆い尽くすようにに刻み込まれた魔術が作用していく。皮膚や内臓は水分を失い、骨がクッキーのようになって砕け、筋肉は石膏のように固まっていく。
工房は急速な劣化によりあちこちが錆び、原因不明の火災が発生。さらに工房周辺は草花が枯死し尽くし、鳥の鳴き声も絶えた。
ほんの僅かな時間で工房は火に包まれ崩れ落ち、黒髭が再びこの特異点に姿を見せることは無かった。
アン&メアリー「「・・・・・・・・・」」
藤丸「・・・・・・・・・」
マシュ「・・・・・・・・・・」
エルキドゥ「うわぁ・・・・・」
パンドラ「どうですか、マスター。これがパンドラの箱の力なのです。これからも是非ご愛顧お願いします~(言葉も出ないほどだなんて・・・、これは掴みはバッチリですね♪)」
一同絶句である。すごい破壊力とか、ものすごいパワーアップだとかサーヴァントが多いカルデアでは多種多様な宝具を見る機会がある。だがここまで明らかに「あっ、これやばいやつだな」となるものはそう多くない。すごいのではない。『やばい』のだ。
そんなとんでもないものを放ってから当の本人は堂々とした風体で誇らしげにマスターへと語る。
固まっていた一同からマシュが最も早くパンドラへと言葉を向ける。
「あの・・・パンドラさん。」
「なんです?」
「無力化が目的であって工房ごと消すことは、その、違うのではないでしょうか」
「あっ」
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「―――ということがあったんだ。ダ・ヴィンチちゃん。当初の目的通りパンの流通は抑えることが出来たよ」
「うん、ご苦労様。仕事の速さは流石だね。パンドラは____しばらく大人しくさせよう。うっかり戦闘になって宝具が炸裂したらどうなるか分かったものじゃない」
当初の目的であったパン供給網の停止。すなわち製パン戦争そのものの停滞を達成し、直ちにカルデアへと報告する藤丸達一行。
約一名が貴い犠牲と化したがこれもまた必要な犠牲。黒髭は犠牲となったのだ。
ロマニからも今後の対応について指示が行われる。
『あぁ、かなり早い対応だ。一日かからなかった!ここからは様子見だ。何が起こるのかは分からない。何も起こらないかも知れないがその時はその時だ。まずは我慢比べといこうか。特異点成立の前提を覆しかねない展開を相手に押しつける。もし犯人がいるなら行動を起こすはずだ』
『ロマンはこう言っているが一応確認したいことがある。さっきのパンドラの話だ。改めて製パン戦争のルールを書かせて貰う
①各陣営は割り当てられた魔術工房ならぬパン工房でパンを作り、そのレシピを登録すればあとは工房で量産される。そのパンがウルクへと広く販売され、人気帳票によって勝者が決まる。
②略奪、工房への偵察、攻撃などは禁止。
③同盟などの協力体制の禁止。
④価格は一律で設定
⑤材料は工房で注文すれば自動納入。また、これ以外の材料を使うのは禁止
⑥流通には関わらない
パンドラの行動は②に当てはまらないのかい?何かペナルティとか。そもそも工房操業停止のやりとりが③と⑥に抵触しているような気がしてきたんだが』
ダ・ヴィンチからの真っ当な指摘に対してマシュとエルキドゥが返答する。マシュは思うところがあったのか、少し歯切れが悪い。
「それは・・・たしかにそうですが。何の問題も起きていません。時間がそれほど経過していないことがあるのもありますが、何か変化が起きた、と言うことはありませんね」
「確かにね。だけどまだ流通している在庫がある。それらが無くなり、補充も無くなったときに変化が起きる可能性はある。それとこちらからも聞きたいことがあるんだがいいかな?Dr.ロマン」
『なんだい?エルキドゥ』
「イシュタルはそちらにいるかな?工房に声をかけて回るときにギルにも一応話を通したんだけど、その時に聞かれてね。そういえば僕も見てないんだ。山の方にでもいるのかと思ったけどちょっかいを何もかけてこないのはおかしいからね。彼女が大人しくするのはまずあり得ない」
『え?メソポタミア出身のサーヴァントは全員そちらに行っているんじゃないのか?こっちも見てないけど』
ロマニの回答にダ・ヴィンチも同意する。彼女も迷走の果てにウルクのパンについてメソポタミア出身のサーヴァントに声をかけようとしてカルデア内には該当する人物がいないことは確認済みだったからだ。
一同「「・・・・・・・・・」」
全員思う。怪しい。あまりにも怪しすぎる。前例があるのだ。しょーもない理由で特異点成立に関わって好き放題した前例が。
だが同時に彼女とも言えない理由もある。グガランナも関わっておらず、金銭や宝石も特異点においてまるで影響していない。いくら駄女神と言われても、証拠が無いうちに疑うのはよくないだろう、マシュと藤丸はそんな目配せをする。だって、あまりにもあまりだ。まさかパンを食べたいからと言う理由で特異点を作るわけは無いだろう。流石に。
『ま、まぁ、とりあえず現地のサーヴァントと協力して状況の監視を行ってくれ。何か変化があれば報告するように』
こうして製パン戦争の名を冠しながらもパンが流通しない奇妙な状況が生まれることとなる。果たして何が起こるのやら。
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「順調順調。ここまで上手くサンプルが集まれば後は実行に移すだけ・・・・」
「まぁもうちょっと集めようかしら。私の為に頑張って貰わないと」
「・・・・・・・? え? なんで工房がどこも稼働を減らしてるのよ!?それに、一個無くなってるし」
「こっちの指示に従えない連中がいるってワケ?いい度胸じゃない」
「でも、派手にやるのも良くないわよね。それとなく、でもそれらしい理由を後付けしましょう」
「この特異点で"全部穫りするのは『私』なのよ。楽しみで仕方ないわ」