マシュ・キリエライトしか分からない   作:ats376

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パン。Day17~

製パン戦争 Day17

 

 

パン流通控え1日目。変化なし。

 

 

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製パン戦争 Day18

 

 

パン流通控え2日目。変化なし。

 

 

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製パン戦争 Day19

 

 

パン流通控え3日目。変化なし。

 

ネロが藤丸の寝床へ突撃。攻撃と判断されてペナルティ。

 

 

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製パン戦争 Day20

 

「全然変化無いね・・・」

「はい、当てが外れてしまったのでしょうか?」

「いいんじゃないですか~?私は編み物機能が稼働させれて楽しいです~」

 

パン工房『フジマルパン』内部で話しあうのは特異点攻略のためウルクへとレイシフト中の藤丸立香とそのファーストサーヴァントたるマシュ・キリエライトと特異点にて召喚したアサシン。

ただパンを作るだけでまるで変化の兆しの見えない現状を打破するべくパンドラの思いつきで流通を断つという思い切った策を実行中である。

しかし既にパン断ち4日目にも関わらず相も変わらず平和そのもの。農夫を手伝って羊の毛を分けて貰う程度に時間も余裕もある。なんならパンドラはその毛で編み物をこなしている。

だが間がいいのか悪いのか。報せというのは唐突にやってくる。

 

 

「やぁ、マスター。今時間いいかな・・・って聞くまでもなさそうだね」

 

現れたのはエルキドゥ。妙に先日のイシュタルの不在疑惑以降、率先して各地を見て回っている。

何やらギルガメッシュとも頻繁に意見交換をしているらしい。

 

「全然いいよ。むしろ退屈しちゃってて。マリー達みたいに俺たちもパンを作ってもいいかもね、なんて考えてたりしてたんだ」

「そうなんだ。あぁ、それで報告だよ。ルールに追加と修正が出てた。さっき戻ってきたときに工房入り口に粘土板が置かれてた。これだよ」

 

 

ルール(改訂版)

①各陣営は割り当てられたパン工房でパンを作り、そのレシピを登録して量産すること。そのパンの人気投票によって勝者が決まる

②略奪、工房への偵察、攻撃などは禁止

③同盟などの協力体制の禁止

④価格は一律で設定

⑤材料は工房で注文すれば自動納入。また、これ以外の材料を使うのは禁止

⑥流通には関わらない。また、開催中はパンの製造を怠らないように

⑦審査員を配置する。審査員から好評を得られれば人気投票に大きく加点

 

 

「ねぇ、マシュ」

「はい、先輩。」

「めっっっちゃ怪しくない?」

 

 

改定されたルール。明らかにこちらの行動に対しての内容が盛り込まれている。

つまり何者かが反応している。

この特異点は製パン戦争。7つの工房が聖杯戦争を模してパンを競い合う。そう定義されていた。だが実際はどうだったかといえば、ルールそのもので競争が禁じられていたに等しい。

工房を増設することは認められず、使えるのは指定の工房のみ。妨害行為や協力は禁止で、価格競争も許されず独自色を出すために自分たちで材料を用意することも認められない。人気投票で決めるとされていたが、投票者達はまるで熱意が無い。「そういう特異点」として用意すればいいのに現地人には特異点の影響がほぼ無い。

 

 

「僕もそう思うよ。⑦は特に怪しい。ここに来てようやく競争心を煽るようなルールだ。だが奇妙な点もある。黒髭の工房が潰れたことが触れられていない」

「ですね~。本当にそう思います。やった張本人が言うのもあれですが、無くなってもなんのお咎めもなしです~。女海賊さん達がまだいるのに工房再建もなしで」

 

「はい、お二人の言うとおりかと。これまでは脱落者を出さないようなルールでした。7つの工房の存続を前提としているのだろうと思っていました。しかし、脱落者が出たのに穴埋めや補填は無く、改訂されたルールにはそういった点を考慮した内容が追加されていません。そもそも脱落者とは言いますが、敗退者ではないというのが重要です」

 

聖杯戦争を模しているなら、進行に伴う欠員は前提にするべきところである。しかし欠員を出さないようにしていたというのは矛盾している。7つの工房が必須であるというならば、何らかの形で補完できるようになっていないとおかしい。これはつまり、工房の数はあまり重要ではないということ。

そういう特異点である、と誤認させるための偽装工作の可能性が浮かんでくる。

思い出してみればこの特異点で求められていたのはパンを作ること。

藤丸は思い出す。パン作りの手順を。マニュアルに沿って機械を動かすあの一連の作業を。

 

「・・・・ねぇみんな。工房でさ。パンを作るときにレシピ登録するよね。あれってどこでデータ保存されてるんだろ。マニュアルとかに全然載ってないし」

「え?さぁ、どうだろうね。なぜそんなことを?同じパンを作るために工房内で保存してるだけじゃない?」

「そういえば皆さんの工房を訪れた際も同じ機械が設置されていました。同じマニュアルもありましたね。同じ機械、同じ仕様。バックアップも全ての陣営が同じ時間に・・・・・、あれ?なんで載ってませんでしたっけ?機械については事細かに書かれているはずですが」

 

 

「いや~厄い香りですね~。お任せパンドラちゃんです?」

 

いつの間にか編み物を終えていたパンドラ。彼女は片手をコネクタのようなものへ変形させながら近づき、躊躇いなく機械へ突き刺す。機械が異常な稼働音を出して各種警告が明滅する。

 

「何してるの!?ステイ!」

「マスターさん、こいつは臭いますよ~。この機械、あとそれに繋がるこの工房に記憶機能とか無いっぽいですね~。与えられた命令通りに動くだけですね~。いやまぁ、言うこと聞けなかった私が言えたことじゃないんですけど。まぁ、それはそれとして回路とかならちょっとならハッキングというか調べ物が出来るのです~。ギリシャのスーパーボックスを舐めて貰っちゃ困ります」

「記憶機能がない?パンドラさん、それはつまり....」

 

「これはあれですね~。工房では無いどこかでレシピデータを集めている。辿るまでは出来ませんが....、この特異点の目的はパンのレシピを集めることだったんじゃないんですかね~?」

「一理あるかも知れないね。レシピを手に入れることが目的ならば工房の数は関係ない。数が多い方が手に入れられる情報が増えるというメリットがあるけれど、数を揃えておかないといけないという理由にはならない。改めてリソースを割いて工房を設置し直すくらいなら現状のメンバーで続ける、そういうことなんだろう」

「なるほど。先輩、一度カルデアに通信をつなぎ報告しましょう。逐一の情報共有は大切です」

 

 

□□□□□□□□□□□□

 

 

 

~カルデア管制室~

 

「なかなか興味深い話だったな。ダ・ヴィンチ。どう思う?黒幕の尻尾が見え始めたと思うが。審査員なんてものがとうとう出てきた」

「・・・・・・」

「ダ・ヴィンチ?」

「いや、気になることが増えてしまった。レシピを集める。それはまぁ分かるさ。でもレシピ集めてどうするんだ?レシピというのは料理の設計図だ。設計図を集める特異点・・・?何がしたいんだ、黒幕とやらは」

 

「まぁまぁ、情報は少しずつ集まるものだろ。それにようやく動き出したって感じなんだ。審査員とやらがなんなのか分かれば、その推理も別の切り口が見つかるかも知れない彼らが助けを求めたときにすぐに動ける態勢を整えておこう」

「君らしいな、ロマニ。だがその通りだ。あれこれ考えすぎてしまうのは悪い癖だね」

 

 

 

□□□□□□□□□□□□

 

 

 

「先輩、とりあえず我々二人だけで審査員の方がいらっしゃるというエビフ山近郊のクタまで来ましたが・・・・、どんな方なんでしょうね?やはりサーヴァントの方なのでしょうか」

「どうだろ。はぐれサーヴァントとかも全然見ないし、案外カルデアのサーヴァントだったりするのかな?」

 

二人が訪れたのはクタ。イシュタルが好き放題した山であるエビフ山を遠望に捉える都市。事前に賢王から説明を受けていたが、都市の至る所をウルク兵が警備のために行き交っている。王様は『イシュタルの奴めがいないなどあり得るか!どこかに確実に潜伏しているに決まっておろう』。そう豪語していたが、エビフ山に近いこの都市は特に警備が堅いようだ。見回る道中で野良フィンクスやバシュムの討伐を手伝うことにはなったが。

 

 

「あら?お二人とも、仲良くこちらまでいらしたのですか?」

「シドゥリさん!貴方こそ、どうしてこの場所へ・・・・・・?」

 

 

街をうろつく二人の雨に現れたのは祭祀長のシドゥリ。彼女が言うには、自身が審査員となるようにイシュタルから呼ばれたというのだ。

そして奇妙なことに、この話をクタ市街以外の場所で口にしてはならない、とも。彼女は一応はイシュタルを敬うウルクの民である。駄女神であっても彼女にとっては大切な存在。呼びかけに応じるのも要求に応えるのも彼女としてはまずあり得ない話なのだから。・・・ギルガメッシュに止められれば流石に控えると思われるが。

 

「審判の役目を仰せつかったのです。果たして見せましょう。ただ、言いづらいのですが。あまり皆様のパンについては詳しくなく.....。幾度か口に運んだことはありますが、合う合わないがやはりありまして。公平に出来るかどうか、という点ではご期待に添えないかも知れません・・・・」

「いやいや全然!俺たちの知るシドゥリさんならきっとうまく出来ますよ。あのイシュタルもちょっと控えめになるくらいですし」

 

 

???「盛り上がっているようだね。これは審査員として私も気合いを入れなければ」

「っ、あなたは!?」

 

シドゥリとの会話に花を咲かせていた二人の前に現れたのは奇妙な・・・いや本当に奇妙な男。多分男。そして多分サーヴァント。ドラムのようなものに車輪(?)が付いたボディ、左右から機械の手足とにドラム中央には顔が浮いている。なんとも珍妙なデザインで思わず全員が言葉を失う。

そしてこの人物。こんな見た目なのにすごい真っ当に喋る。

 

「あぁ、すまないね。驚かせてしまった。私はこの特異点に召喚されたはぐれのサーヴァント。名前も言ってしまおうか。審査員に選ばれた以上はどうせ耳に入ることになるだろう。私の名はネビル・シュート。地獄から舞い戻った詩人だ。よろしくお願いするよ」

「(!!、ネビル・シュート!? あの有名な!?)」

「(だ、誰!?)」

 

ネビル・シュートと名乗る男。彼は自身のこれまでの特異点における経緯を語る。

気がついたら召喚されていたこと。やることも無く各地を放浪していたこと。そして色んなパンが食べれて満足だったこと。

そして.....得体の知れない女性に唐突に審査員として働くように命じられたこと。やることが特に無かった手前、要請に応じてこのクタまで来たのだと。

 

「と、言ったもの・・・、実は私も君たちと状況はさほど変わらない。誰が私に依頼をしてきたのかがよく分からないのだよ。そちらのレディと同じくここに来るようにだけ求められて来ただけでね。呼ばれた以上は何かしらあるとは思うんだが」

 

4人がどうするかと真新しい神殿を眺める。ここは冥界神の都市、クタ。

多くの権力者たちが神殿を建て、祭儀を行うために形作られていった街。その都市の片隅に建造された神殿が今回の審査員の配属される場所である。

三人の審査員がいるというが、あと一人は誰だろうと話しているともう一人近づいてくる影。

真っ白の髪に燃えるような赤い瞳。人工的とすら思える美貌の女性。そして純白の衣装。

 

 

「初めまして、皆様。私はフィリアと申します。あなた方と同じくこの特異点のこの場所へ喚ばれたサーヴァント・・・、つまり審査員です。共に励みましょうね。メソポタミアには縁はありませんが己の役目を果たしましょう」

 

藤丸も息を呑む美しさ。これまでに何度も美麗なサーヴァントとは出会ってきたが、妙に目が離せない。シドゥリも同じようだ。

マシュが自身を呼んでいるような気がしてハッとする。

 

「!?な、なんだったんだ今の・・・・・?」

「先輩、大丈夫ですか?急にぼーっとされていましたが」

 

「あら、ごめんなさいね。悪気は無かったのよ。私って人間が好きだから、ついね」

 

 

うっかりなら仕方ないか~なんていうよく分からない理屈で場が流れかけたとき、遠くから無数の光弾が降りそそぐ。反射的にパラディーン霊基となったマシュがシドゥリと藤丸を抱えて飛び退き、ネビルもまた慌てて回避する。

フィリアは既にそこにいない。否、一人だけ空中へと逃れていた。

 

「なんて乱暴なマネを・・・・。公正で平和的な特異点でこんな野蛮なマネ。よくありませんよ?」

「そうかな。君からは嫌な気配しかしないからね。僕がこうして実力行使に出たのは極めて自然な流れさ」

 

「いきなり何を!?」

「すまないね、マスター。驚かせてしまった。ギルとあれこれ話し込んでたら遅れてしまった。イシュタルの気配がしたからね。探してたんだ、ずっとね」

「イシュタルが・・・?一体どこに」

「目の前にいるだろう。彼女がそうだ」

 

エルキドゥの攻撃により立ち上る土煙、そのただ中で空中に浮かぶ女性を藤丸達は見る。相変わらず微笑みを絶やさない様子で余裕が伺え、その姿はやはりイシュタルとは違うように見える。記憶にある依り代の女性の特徴が出ている姿とあまりにもかけ離れているのだ。しかし、チラリとエルキドゥを見るその視線には確かに抗議の色が含まれている。幾度となく特異点を巡って藤丸も人を見ることには慣れていた。だからこそ、ある程度は判別が出来る。

____この目は嘘をばらされたくない者がする瞳だと。

 

 

「・・・マシュ、戦闘態勢」

「....分かりました。パラディーン、出ます。ご指示を」

 

「もう。あなたたちまで、騙されちゃダメじゃない。エルキドゥの言葉に唆されちゃ。でまかせよ、そんなの」

「フィリアさん、私は何度もイシュタルさんとお話ししたことがあります。だからこそ言えます。あなたは別人です」

 

マシュの言葉にフィリアは満足そうに微笑む。だが、マシュの言葉に藤丸が続ける。

 

「俺はイシュタルと契約してる。今までよく分からなかったけど、こうしてよく観察するとあなたからはどことなくだけど、よく知ってるイシュタルの気配がする。でも違うんだ。イシュタルはとんでもないことをするけど分かりやすい悪意みたいなのは出さない。あなたからは嫌な感じがする」

「失礼な言い方ね」

「すいません。でも、直感を大切にしてここまでやってきたんです。あなたを特別扱いはしません」

 

 

この場に自分の味方はいない____。この短時間で追いやられたような気分に真っ白な女性はため息を一つ。よく分からないドラムみたいなサーヴァントとシドゥリはどうでもいい。エルキドゥは関わるのはお断り。目の前の少年と少女は一筋縄ではいかない。

わざわざ自分が表に出てきて動こうと思ったらその矢先であっさり頓挫してしまった。せっかちになりすぎたかもしれない、なんて思いを巡らせてから。

 

 

「あー、そう。じゃあもういいわ。私の台本に沿って動けない人間なんてもういりません。私の目的も大体達成されたもの。ここで殺すわ」

「「!?」」

「やっぱりそう来るよね。君はそんな神だ。だからこそ彼にも来てもらった。忙しいのを無理してもらってね」

 

 

え?という顔をしたフィリアへ無数の魔力の矢や鎖が襲いかかる。だが、軽やかな動きでその全てを避けきる。

鎖を渦のように絞り上げ、矢をいなして華麗に宙を舞う。

風に靡くのではなく風を従え、迫り来る魔力のつぶてを躱しきり、建物の屋根へ降りて彼女は嫌そうな顔で口にしたくも無い名を呼ぶ。

少し乱れた髪をかき上げながら。

 

「わざわざ来たの?賢王サマ」

「来ていただいてありがとうございます、だろう?口を慎め駄女神。相変わらずドブ臭い気配が漏れているらしいな。ジグラットまで漂ってきておったわ」

 

現れたのはギルガメッシュ(術)。顔は愉快そうに笑っている。目は笑ってない。怖い。

 

「雑種よ、貴様の思いつきのあの作戦。思ったよりも効果があったらしいな。待てが出来ない駄犬を釣るのには実に効果があったらしい。一週間も我慢できずに出て来おったわ。・・・・さて、フィリアとやら。いやもう面倒だからイシュタルでいいだろう。貴様、何を企んでいる?よくもまぁ、俺の庭でコソコソ動いてくれたな」

「あ~ら、そっちも大概口が悪いわね。鏡見て人と話す練習した方がいいんじゃない?私の目的?別にいいわよ、教えて上げても。だってもう、勝ちは揺るがないもの。私の手元にある聖杯。これを利用してあなたたちに働いて貰った甲斐があったわ。女神のために働くのは実に素晴らしいことでしょう?」

 

 

フィリアそう言うと同時に空から轟音が響き、エビフ山を覆う雲から金色の影が現れる。

山から吹き下ろす暴風と雷鳴を伴い現れたのはグガランナ。突如として現れた存在にクタの民が逃げ惑い、兵士達が集う中でフィリアは告げる。

 

 

「私の手元にあるグガランナ。この子を使って私はずっと欲しかったモノを永遠に手に入れるのよ。でもそれだけじゃ足りないから、あなたたちカルデアの人間達にも役立って貰ったわ。聖杯で出した食材を適当に出してたから懐も痛まなかったし。お陰でたくさんのレシピがグガランナに届いて、あとは作り続けるだけよ」

「・・・イシュタル様、何をなそうとしておられるのですか?此度の異変は貴方様が要因であると、仰られるのですか。民が空腹に悩むことのないようにするためのお慈悲だったのでは・・・・」

「え?違うけど」

 

 

エルキドゥ達がグガランナを警戒し満足に動くことは出来ずにいる中でフィリアは勝利宣言のように自身の目的を堂々と語る。

曰く____人類が生きる限りお金を集めたかったのだと。

 

パンとは何か?

人類が農耕を営み、それによって得られる最終的な主食。国が違えど、文化が違えど、民族が違えど多くの人間が消費する。それは紀元前から今に至るまで変わらない。フィリア、否、イシュタルはそのパン文化を独占することであらゆる形で人類から金銭を巻き上げるためにこの特異点を作ったというのだ。パン工房もグガランナの機能を移して作ったもので、レシピを収集するための設備に過ぎなかったと。

パン文化が産まれたバビロニアを起点にして遠い未来まで自身がパンという食料の作成権利を人類から召し上げ、自身の宝具を改造して創り上げたグローバルパン工房「グガランナ」で特異点由来で集めたレシピを生産し続ける。完成品を世界へ売り込み(押し付け)、暴利を貪る謙虚さの無い企み。

 

「これが私の狙い。これなら黄金律が欠けてようとも問題ない。だってそうでしょう?金銀財宝を直接集めるのでは無く、あくまでも間接的に収集するだけなんだもの。それに人類の食糧事情も解決。どう?誰も苦しんでないわ。我ながらいいことしてるって思うのだけど」

 

 

 

一同絶句。

動機が短絡的すぎる。なんだその意味不明で完全な私利私欲。宝石に対して無意識的に手が伸びるイシュタルよりも酷い。

 

「おい、雑種。黙ってないで何か言え。俺からはもうかける言葉も無い」

「無茶言わないで下さい。脳の容量を使いたくありません」

「言うではないか。だが許そう、俺も同じだ」

 

「酷い言われようじゃない。私はこれからやることがたくさんあるからこのまま失礼するわ。パンの人気投票なんてくだらないことはもう終わりよ。グガランナにパンを作らせなきゃいけないんだもの。構っていられないわ、ごめんなさいね」

 

イシュタルはグガランナへと乗り込み、そのままエビフ山へと去って行く。

________________得体の知れない敵を残して。

 

「マスター!、下がって下さい!!あ、あれは、まさか!」

「俺たちが作ったパンが、巨大化して動いてる・・・・?」

 

空からばらまかれて迫り来る巨大パン物体達。困惑する一行にカルデアより通信が入る。

 

『よし、聞こえているかな? 緊急だから回線をつながせてもらったよ!』

「ドクター!? これは一体何なのですか!」

『魔力の量からしておそらく聖杯から補給というかサポートを受けている。数が数だから一体当たりの受けている支援はそこまで大きくないだろう。だがあれらは間違いない....!敵の正体は君たちが作ったパンと酷似している。だが、そのままでもない。あれらをよく見るんだ!』

 

 

                《 パンエネミー が 現れた !! 》

カレーパン(売れ残り) Lv.35

バゲット(売れ残り) Lv.28

コーンブレッド(売れ残り) Lv.41

 

 

「廃棄食品....ってコト!?」

『あぁそうだ、イシュタルは食べ物を粗末にしている!!許すわけにはいかない、すぐに態勢を整えよう!』

 

 

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~ジグラット、フジマルパン工房にて~

 

 

「本当に!本当に!本当に申し訳ありません!!」

 

美しさすら感じる土下座を披露するのは祭司長のシドゥリ。

「あっ、イシュタル神が不在だけどパンが供給されてて人々は飢えから遠ざけられている....。きっと崇高なる意志を果たされているのでしょう」というような気持ちで静観していたら方々に迷惑をかける事態になったことを平身低頭、必死に謝っているのだ。別に彼女個人が悪いわけでは無いのだが、祭司長という立場故に責任を感じての行動であるため藤丸達も止めるに止めれない。

お互いが配慮し合ってどうしたらいいか分からない、絶妙に気まずい空気が工房内に漂っていた。

 

「落ち着いてよ、シドゥリ。マスター達が困ってるよ。それに謝ることじゃなくてこの先どうするかを話しあわないといけないからね。顔を上げて、意見を出すことを手伝って欲しいな」

「皆さん戻ってきてから変な雰囲気ですからね~、町中で元々食べられてたパンがなくなっていって、どっかで見たことのあるパンが無理矢理並ぶようになりまして。市中の方々が困ってましたよ~」

 

エルキドゥが諫め、パンドラが現在の状況を簡潔に話す。そう、本来のウルクのパンが姿を消したのだ。がめついあの女神はパンエネミーをばらまいてパンを奪い、グガランナ製現代パンの押し売りを始めている。被害は各地で出ており、特異点が拡大し始めているというカルデアからの通信も入った。このままいけば確実にメソポタミアを起点として、パンと食卓がイシュタルに独占されるという意味不明な未来が現実のものになりかけているのだ・・・・!!

 

「グガランナは強大な存在です。私が如何にパラディーンであったとしても真正面から勝てる相手ではありません。エルキドゥさん達のお力を借りてなんとかなるかどうか・・・・」

「そうだね、イシュタルだけなら僕やギルがいれば抑えれるかもしれない。でも流石にあれは厳しい。聖杯も確保されているしね」

「でもですよ~?パンが毎日食べれるようになって、食べるのに困らないなら人類的にはプラスでは~?」

「いいかな?イシュタルのことだ。どうせ値段を引き上げてふっかけてくる。彼女に期待してはいけないよ」

「え、メッチャ辛辣じゃんこの人」

 

各自が工房内であれこれ話しあう中、藤丸は悩んでいた。結果論とはいえ、自身の作ったカレーパンの売れ残りもまたパンエネミーとして人々を苦しめている。

丹精込めて、楽しみながら仲間達と作った料理を侮辱されたこと。レシピが欲しいから、お金が欲しいから。それだけの理由でこんなに多くの人から笑顔を奪ったイシュタル(駄女神)になんとか一泡吹かせられないかと。

 

 

                   《ピンポーン》

 

「え?何ですかこれ。先輩、この音は一体?」

「あ~、これはですね~。チャイムです。工房にチャイムついてたんですよ~。そんなところにこだわる理由とか無いのになんでついてるんですかね~?」

 

                   《ピンポーン》

      

「マスター、応対してもいいんじゃないかな?なんかこのまま鳴り続けるような気がするよ。あ、僕が出ようか?」

「いいの?お願い」

 

 

エルキドゥがチャイムに応答して工房の出入り口へ向かい何やら話し込んでいる。

藤丸はその間にシドゥリへと話しかける。ずっと気になっていたことを。

 

「あの、シドゥリさん。聞くのが怖くて聞いてなかったんですけど、王様ってどうされてるんですか」

「カンカンです。もう、本当に。あちこちから来る苦情に明確にブチ切れてます。イシュタル様は恐らく無事では済まないでしょう....。流石に自業自得ですが」

 

「まぁ、そうでしょうね。あ、先輩。ORTさんって今どうされてるんですか?」

「え?あぁ、ちょっと前に起きる気配がしたんだけど、特に何も無いかな。なんかすごい動こうとしてたみたいだけど場の空気を読んでくれたのかも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスター、いいかな。お客さんなんだけど協力者みたいだ。それも結構頼りになるかもしれないよ。マスターも顔見知りだから安心だね」

「え?誰?」

 

 

「暫くぶりですね、お母さんです。お母さんとして、食べ物をぞんざいに扱う子をお仕置きに来た。よろしく」

「えっ、嘘でしょ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そ、そんな....イシュタルが犯人!?

こ、こんなことが許されていいのか!?


ウワー、イガイダナー
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