オルガマリーは警戒こそしていたが、楽観的でもあった。
(マシュが藤丸のことを高く評価しているのは今更。サバフェスとかいうイベントがあるこ
とも把握済み。多分、それ用の小説の類いなのでしょう。そうじゃないとあまりにも...
あまりにも、何? 言葉で表現できないんだけど。そう、まだ可能性だから。多分たいした
ことには....)
しかし、現実とは非情である。
「そうですね。何から話しましょうか....。やはり先輩との出会い。つまり、先輩がカル
デアに来られてから、でいいでしょうか?」
オルガマリーは拍子抜けした。
もっと頓珍漢な情報の暴力が押し寄せるのではないかと身構えていた手前。
自分でも知っている話を振られて肩の力が抜ける。
「え、えぇ。そうね。彼が居眠りしてたこととかも覚えているわ...。」
「そうですね。いきなり拉致されて連れてこられたあげく、右も左も分からないまま得体
の知れないシュミレーションを経験して疲労困憊にもかかわらず、きつく当たられてい
た。当時の先輩は少々お気の毒でした...。」
「なんか言葉に棘生えてない?心はガラスなのよ?」
コホン、と咳一つ。言葉を仕切り直して
「で?あなたが言う彼が来てからの流れっていうのはどうだったのよ?」
マシュが話をする。それは自分も知るレフによる工作、大怪我をした彼女が藤丸の手を取り、英雄の力をその身に顕わしたこと。そして....特異点Fへの出撃。
オルガマリーは内心穏やかではなかった。悍ましい日々。カルデアスへの投下。
自身の身に降りかかったことだけでなく、藤丸達が歩むこととなった過酷な旅路を思い、気持ちが少し沈んでいく。
(一般人が経験して良いことじゃないわね。私も余裕がなかったとは言え、随分とこの子
達に...ふさわしい振る舞いをしてあげられなかったわね)
「-----そして、初めての特異点。冬木へと我々は転移しました。」
「そうね、そこで私とも合流したわね。」
「はい。合流して4人行動です。あ、フォウさんも居ましたね。」
「たしかキャスターも居たわね。」
「あ、この時点ではまだ合流できてませんね。もう少し先です。」
「そうだったわね。あれ?じゃあ誰が?」
「先輩に同行していたORT(汎)さんですね。」
「_____なんて?」
「えっ?だからORTさんですが。あっ、南米異聞帯の個体とは当然別ですよ?」
「いや......いやいやいや!! なんで急にそんな怪物が!? 話の導入の仕方として唐突すぎるでしょ!? なんでいるのよ!?」
メガネをかけた少女、マシュは不思議そうにしているがオルガマリーが正しい。
なぜ南米に落ちてきた未確認生物が拉致されてきた男と一緒に居るのか。まるで意味が分からない。
誰だってそうだ。多分全員そう。大体はそう。
「それは先輩から教えていただいたのですが...、まぁそれは別の機会に。今は特異点Fのお話ですからね。」
まるで「知っているでしょうし、詳細は後でも良いですよね?」という態度。
オルガマリーの胃にチクリとした痛みが走った気がした。
「えっと...あれよね? サバフェスとかっていうのに使うようの本の設定よね?」
「実体験ですが。」
「では話を戻しましょうか」フフッ
このときのマシュはオルガマリーにとってなにか得体の知れないものに見えていた...かもしれない。
======ナレーター(マリス)=====
この本(ファーストサーヴァントは譲れない)によれば、どこにでもいる一般人藤丸立香は盾の英霊マシュ・キリエライトと
世界を取り戻す旅に繰り出すこととなった。
喜びあり、怒りあり、哀しみあり、楽しみあり。
永い長い、それでいて刹那のような旅がこの特異点Fから始まるのです。
まず起こったことは....おっと。少し話しすぎましたね。
では、ここからは最高のシールダーにしてグランド後輩を自負するマシュ・キリエライトの過去の旅を聞き入るとしましょう。