アタランテが林の奥へ姿を消してからも、一団はすぐには動き出せなかった。矢は止み、風の音だけが戻ってきたというのに、つい先ほどまで肌を刺していた殺気の名残がまだ誰の身体にも貼り付いていて、避難民も兵士もようやく自分の呼吸を取り戻したばかりという顔で立ち尽くしている。
助かったという安堵が先に来る者もいれば、もう一度来たらどうするという不安が先に立つ者もいる。
そのばらつきこそが今の危うさであり、崩れていないだけで安定しているわけではないと、マシュにははっきり分かっていた。
盾を下ろしてもなお彼女は林から視線を切らなかった。アタランテは退いたが勝ったわけではない。こちらの形を見て次にどこへ矢を打ち込めば最も効率よく一団を乱せるか、その判断を持ち帰っただけだと考える方が自然だった。
「先輩。追撃の気配は今のところありません。ですが完全に脅威が去ったとは考えない方がいいと思います。あのサーヴァントはこちらを試したうえで次の形を選ぶはずです」
「うん、俺もそう思う。だからこそ休ませるにしても無造作には止まれないし、まずは被害の確認だ。動ける人と今は動かさない方がいい人を分けよう」
藤丸の返答は早かった。戦いの直後だというのに声が上ずっていない。
それは余裕ではなく今ここで自分が迷えば、その迷いがそのまま一団へ伝わると理解しているからだろう。マシュはその横顔を見て自分まで落ち着きを取り戻していくのを感じた。
負傷者の確認が始まる。浅く肩を裂かれた兵士、荷車を庇って転んだ老人、抱えていた子どもを守るために膝を打った母親。死に至るような傷は出ていない。
だが、こういう傷の集積こそが後で効く。誰かが痛みに耐えて無理をし、その誰かを庇ってもう一人が足を止める。そうやって一団の流れは鈍り、そこへ次の揺さぶりが差し込まれる。
マシュも手当てに回ろうとして、そこで一人の男に気づいた。
見知った顔だった。すらりとした細身の体躯に、黒いコート。指先の動きだけが妙に正確で、傷口を見る眼差しには必要以上の感情がない。冷たいという意味ではない。ただ迷いなく切り分けている。どこまでなら歩けるか、どこから先は止めるべきか、その線引きを呼吸するように行っていた。
「その腕は動かさないでほしい。傷は浅いが開けば深くなる。今は戦意を見せるより血を止めて立っていられる時間を延ばす方が重要だ」
言い含められている若い兵士は悔しそうに唇を噛んだが反論はしなかった。反論させないのではなく、納得させるだけの説得力がその男の声にはあった。
藤丸も同じ違和感を覚えたのだろう。短く目配せを交わし、二人は男へ近づく。
「すみません。手当てをしてくれて助かります。けど、見ない顔です。あなたは――」
「警戒はもっともだ。だが安心してほしい、少なくとも今この場で君たちに敵意を向ける理由はない。僕もまた、ついさっきこの戦いの噂を聞きつけて来た側の人間だからね」
男はそう言ってから、手を止めずに軽く会釈した。
「シャルル=アンリ・サンソン。職業柄、傷と死には詳しい。だから今は、それを生き延びるために使わせてもらっている」
死を知る者特有の奇妙なまでに整った距離感がある。嫌悪ではない。かといって親しみでもない。ただ死を感情とは別のところで数えてきた者の手つきだった。
モーツァルトが背後から覗き込み、わざとらしく肩をすくめる。
「なるほど、これはまた随分と厄介な肩書きの男が来たものだね。人の首が飛ぶ寸前の呼吸まで知っていそうな顔をしているが今はそれを止める側に回ってくれるらしい」
「皮肉は受け取っておくよ、アマデウス。だが今は役に立てる場面だと思っている。無駄な死を減らせるならそれだけで来た意味はある」
そのやり取りにマリーが近づいてきた。土と灰に汚れていても不思議と気品を失わないその姿は、この荒れた朝に似つかわしくないほど明るい。
「まあ、サンソン。こんなところで再会するなんて、少しばかり運命が悪趣味ではなくて? でも来てくださったのなら嬉しいわ。こういう時に落ち着いて人を見られる方はそれだけで皆の支えになりますもの」
サンソンは一瞬だけ言葉に詰まった。だがすぐに視線を逸らさず、静かに応じる。
「・・・・あなたがそう言うのなら、せめて期待を裏切らないよう努めよう。僕にはそれくらいしか出来ない。だが、それでも今は十分だろう」
マリーはふっと笑う。その笑みには、責めも皮肉もない。ただ相手が一歩退かずに立っていることを、そのまま受け入れる広さがあった。
「ええ、十分です。こういう時に必要なのは、大きな奇跡より目の前の人をちゃんと助けられる手ですもの。もちろん奇跡もあれば素敵ですけれど、今日はまず地道な方をお願いしたいわ」
「王妃にそう言われると断る余地がないね。まったく君は、こういう場面で人を乗せるのが上手すぎる。褒め言葉かどうかは半分くらい怪しいところだけれど」
モーツァルトがそう言うと、マリーはいたずらっぽく首を傾げた。
「褒め言葉として受け取ります。だって、今はそうでもしないと皆が辛いでしょう。少しくらい上手に振る舞わせてくださいな」
その空気の軽さに、さきほどまで張り詰めていた兵士たちの顔つきがわずかに緩む。マシュは小さく息を吐いた。これだ、と彼女は思う。何度も味わった旅路でもそうだったようにマリーの明るさとモーツァルトの皮肉は単なる賑やかしではない。切羽詰まった場面で人の呼吸を整え、重さを抱えたまま前へ進ませるための、立派な支柱だ。
藤丸が全体を見渡し、声を張る。
「動ける人が大半だ。だったらここで長く止まる方が危ない。歩けるうちに進むけど、その代わり無理はさせない。傷が深い人は荷車のそばへ、子どもは中央へ寄せて兵士は広く守る形を維持しよう。それでいい?」
「賛成です。探索の効率だけを考えるなら分散の方が有利ですが、今は敵がこちらの乱れを待っている段階です。ならばまずは一団として崩れないことを最優先にすべきでしょう」
ジャンヌ(ルーラー)が旗を持ち直して言う。正しさだけでなく現実も見ている声だった。
それに合わせてサンソンも短く頷く。
「歩ける者と歩かせるべきでない者は僕がその場で見分ける。勇敢さと無謀は違う。今必要なのは前へ進むことだが、それは潰れるまで使うことと同義ではない」
そう言って彼は先ほど肩を傷つけた若い兵士へ視線を向ける。
「君はまだ動ける。だが最前列へ戻る必要はない。荷車の横で支える側へ回れ。立っていられる時間を稼ぐ方がこの先の役には立つ」
「・・・・しかし、自分だけ下がるのは」
「下がるんじゃなくて役割を変えるだけだ。今ここで倒れれば君一人では済まない。守るつもりが足手まといになる、その順序の狂いだけは避けるべきだ」
兵士は逡巡ののち深く頷いた。サンソンの言葉には慰めよりも強い説得がある。死を日常に置いてきた者だからこそ、どこで人が無駄に壊れるかを知っているのだと、聞いているだけで伝わってくる。
一行は再び動き始めた。
歩き出してしばらく、あえて誰も大声を出さなかった。荷車の車輪が軋み、靴裏が土を踏む音が重なり、それが一つのリズムになる。その単調さがむしろありがたかった。余計な物音がないというだけで人は次に来るはずの恐怖を勝手に膨らませる。だが同時に足音が揃っている限りはまだまとまりが生きているとも分かる。
モーツァルトが藤丸の横へ並ぶ。
「先ほどの狩人、実に嫌な戦い方をする。正面から勝つつもりがないのではなく、最初から“崩す”ことを主題にしているんだ。そういう相手は一度相手をすると後を引くよ」
「分かる気がする。倒すよりも持ちこたえる方を考えないと駄目なやつだろ。しかも倒せるのに倒さないから余計に面倒」
「その通り。悪意だけで動く敵ならむしろ話は早い。だが正しさを抱えたまま敵に回っている者は自分が正しい分だけ手加減の位置も計算してくる。だから読みづらいし効くのさ」
ジャンヌ(ルーラー)がその会話へ加わる。
「……それでも、完全に救えない相手だとは思いたくありません。あの方の矢には迷いがありました。迷いというより、自分で最後の一線を引いているような感触が」
「君は本当にそういうところが変わらないね。美徳だとは思うが戦場では時々それが重しにもなる。悲しむのは構わない、ただしその悲しみで足を止めないことだ」
「ええ。止まりません。止まれないからこそ、せめて見失わないようにしたいのです」
その言葉に、ジャンヌ(ランサー)が静かに口を挟んだ。
「見失わないことは大切です。ですが守るべきものが定まっているなら、迷いを長く抱える必要はありません。マスターが前へ進むと決めた以上、それを妨げるものは排除すべきですから」
声音はあくまで穏やかだったが、その中身は冷たいほど真っ直ぐでだからこそ危うい。
マシュは無意識にジャンヌ(ランサー)へ目を向ける。穏やかで優しい、その表層は間違いなくジャンヌだ。けれど世界の焦点があまりにも藤丸へ寄りすぎている。正しさや救済ではなく、あの人を中心に善悪が決まる構造は、理解できるからこそ怖かった。
――自分はどうだろう。
その問いが、嫌になるほど自然に浮かぶ。
自分だって、先輩を守るためならかなりのものを切り捨てられると思っている。境界記録帯の果てまで繰り返し、救えなかったものと救われたものを数え続けた果てになお隣へ立ちたいと願っている。その重さは、ジャンヌ(ランサー)と本質的にまったく違うと言い切れるのか。
「マシュ」
不意に名を呼ばれて、彼女は顔を上げた。藤丸が少しだけ首を傾げている。
「さっきから考え込みすぎてる顔してる。大丈夫? 無理して平気なふりをしてるなら今のうちに言ってね」
「・・・・はい! 大丈夫です。少しだけ、考え事をしていました。ですが今やるべきことは見失っていません」
「ならいいか。考えるなとは言わないけど、一人で抱え込みすぎないで。今の俺たち、誰か一人が無理して回すにはちょっと人数が多すぎる」
それは冗談めいた言い方だったが内容は本気だった。マシュは小さく頷く。
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて、必要な時はちゃんと相談します。先輩も同じですからね、一方的に抱え込むのは禁止です」
「うわ、返された。分かった、善処する」
そのやり取りに、少しだけ空気が和らぐ。だがそれは次の異変の前触れでもあった。
一団の後ろ寄りで、誰かが足を止めかけた。
「・・・今、呼ばれた気がした」
その声は小さかった。けれど、不思議とよく通った。
近くにいた男が眉をひそめる。
「誰にだ。後ろには誰もいないぞ」
「いや確かに。母の声で――」
そこで言葉が切れる。本人も自分の口にした内容へ半信半疑なのだと分かった。
マシュは瞬時に振り返り、隊列の後方を確認する。人影はない。敵の姿も、矢の軌跡も見えない。なのに違和感だけが確かに残っている。
「先輩。後方の流れが揺れています。まだ崩れてはいませんがこのままではじわじわと足が止まります」
「分かった。止まらずに均す。ここで立ち止まったらそれこそ相手の思う壺だ」
藤丸は即答した。ジャンヌ(ルーラー)がすぐにそれを支える。
「皆さん、顔を上げてください。今ここにいる人を見てください。聞こえたものが何であれ、手を離さなければ大丈夫です」
マリーも振り向き、後ろの者たちへ声を届かせる。
「怖いのは分かります。でも、振り向いて確かめなくてもいいのです。今見えるもの、触れられるものを信じて、一歩ずつ前へ出ましょう。それが出来れば次の一歩もちゃんと続きます」
その言葉の最中、モーツァルトの表情が変わった。いつもの皮肉げな笑みが薄れ、耳を澄ますようにわずかに顎を上げる。
「・・・・なるほど。これは残響だ。しかも自然に残ったものじゃない、意図して擦りつけている。さっきの狩人とは質が違う、音で心を乱す類の手合いだ」
エレナが肩をすくめる。
「ええ、自然な錯乱じゃないわね。場そのものに染み込ませてる。面倒なことをする子がいるものだわ」
そこでジャックがふっと藤丸の影の近くへ現れた。さっきまで姿を見せていなかったのにいつの間にかそこにいる。
「これきらい。悪そうな匂いがする。見つけたら切っていい?」
藤丸は首を振る。
「まだだ。飛び出したら崩れる。今は見つけても知らせるだけでいい、勝手に追わないでくれ」
「・・・・うん。マスターがそう言うなら、待つ。でも近づいたらだめだよ。だめなのは、だめ」
幼い口調なのにその中にある警告だけは冷えきっている。マシュは背筋の奥に薄い寒気を覚えた。
見えない敵が一団の後方から静かに触れてきている。アタランテが引いたその先を継ぐように今度は別の悪意が舞台を整え始めていた。
そしてそれは矢よりもじわじわと効く類のものだと、誰もがまだ言葉に出来ないまま察し始めていた。
□□□□□□□□□□□□□□
異変は音としてではなく“ズレ”として広がり始めていた。
最初に現れたのは足並みの乱れだった。誰かが一歩遅れ、その遅れに釣られてもう一人が歩幅を崩し、やがてその小さな歪みが一団の後方からじわじわと前へ伝わってくる。明確な命令違反でも混乱でもない。ほんのわずかな集中の欠落が連鎖しているだけだ。だがそれこそが、戦場では最も危険な兆候だった。
マシュはそれを見逃さない。
「先輩。まだ崩壊には至っていませんが、確実に流れが削られています。このまま放置すれば、後方から順に止まり始める可能性が高いです」
「分かってる。止めるな、そのまま進ませる。止まった瞬間に、あいつのやり方に飲まれる」
藤丸の声は短いが迷いがない。その判断に、ジャンヌ(ルーラー)がすぐに応じる。
「皆さん、前を見てください。今は歩いていることそのものが守りになります。乱れても構いません、止まらないことを優先してください」
マリーも振り向きながら声を重ねる。
「大丈夫です、遅れても置いていきません。歩幅が合わなくても、進んでいれば必ず追いつきますから、焦らず前へ進みましょう」
言葉は柔らかい。だが、その芯は明確だった。
その最中、再び声が混ざる。
「・・・・聞こえるだろう」
どこからともなく響く低い囁き。それは耳で捉えるものではなく、意識の奥へ直接触れてくるような感触だった。
「振り返れば、そこにある。お前たちが見たいものが、確かにそこにあるのに、どうして目を逸らす」
後方の一部がわずかに止まりかける。完全な停止ではないが足が鈍る。その一瞬の遅れが次の揺らぎを呼び込む。
モーツァルトが舌打ちするように息を吐いた。
「やれやれ、実に性質が悪い。音として認識させないまま、意味だけを滑り込ませてくるとはね。これでは防ぐ側が“気づくまで”に一拍遅れる」
「対処は出来るか」
「出来るとも。ただし完全に消すのは無理だ。あれは消すべきものではなく、“上書きするもの”だからね」
そう言ってモーツァルトは歩調を変えずに呼吸を整える。次の瞬間、一団の中に別の流れが走った。
はっきりとした旋律ではない。ただ、一定の拍を持った呼吸のようなリズムが空気に重なり、ばらつきかけていた足音をゆるやかに揃えていく。
「いいかい、聞こうとしなくていい。合わせようともしなくていい。ただ、今の自分の歩幅を崩さないこと、それだけ意識してくれれば十分だ」
それだけでいい、という言葉が効いたのだろうか。過剰な指示ではなく、出来る範囲のことだけを求める。その簡潔さが一団の緊張をわずかにほどく。
サンソンがその様子を見て、小さく頷く。
「理にかなっている。恐怖に対抗するには、より強い刺激ではなく、維持できる基準を与える方が崩れにくい。……ならば、こちらも合わせよう」
彼は後方へ目を向け、短く言葉を投げる。
「無理に整列しようとするな。今は揃える必要はない、自分の歩幅を守れ。転ばないこと、それだけで十分だ」
兵士たちが息を吐く。整えようとする負荷が抜けることで、逆に崩れが収まっていく。
その中で、再び“それ”が来た。
「それでも、見ないのか」
今度は、はっきりと近い。誰かの耳元で囁くような距離感で、声が滑り込む。
マシュは即座に盾を持ち直す。
「来ます。物理的な攻撃ではありませんが、意識への干渉が強まっています。このままでは数人単位で行動不能が出る可能性があります」
「なら、その手前で対処だ。崩れる前に支える、それでいく」
藤丸は即断する。ジャンヌ(ルーラー)が旗を掲げる。
「恐れはあって構いません。ですが、それに足を止めさせないでください。今はまだ、進めています」
マリーもまた続ける。
「見えないものは怖いですよね。でも、今ここにいる人たちはちゃんと見えています。だから大丈夫、手を離さなければ、それだけで進めます」
その言葉の重なりが、流れを繋ぎ止める。
だが――
それでも、完全には防げない。一人の兵士が足を止めた。
「……そこに、いるんだ。分かる、声じゃない、でも確かに――」
その瞬間、影が揺れた。実体ではない。だが確かに“何か”がそこにいた。
ジャックが即座に反応する。
「いた。見えないけど、いる。切っていい?」
「まだだ。位置だけ押さえて飛び出すないで」
「……うん。マスターが言うなら我慢する。でも逃げる前に覚えておくね」
その言葉通り、ジャックの気配が薄く広がる。捕捉ではない。だが“逃がさないための印”のように場に残る。
ジャンヌ(ランサー)が一歩踏み出しかける。
「この距離であれば、強引に排除も可能ですが――」
「今はやらない。追えばあ向こう側の思うつぼだと思う。さっきのアタランテもまだいるかもしれないし」
しかし藤丸が即座に止める。ジャンヌ(ランサー)は一瞬だけ沈黙し、それから頷いた。
「承知しました。では、この位置で抑えます。マスターの判断を優先します」
その一言で、全体の均衡が保たれる。
そして――ふっと、圧が抜けた。
完全に消えたわけではない。だが明確に、こちらへかかっていた重さが軽くなる。
モーツァルトが肩を回す。
「・・・・退いたね。満足したのか、それとも観察が終わっただけか。どちらにせよ今は引いたらしい。だが確実に削られている。肉体ではなく精神の方がな、これは後で効いてくる類だ」
藤丸は短く息を吐く。
「それでも、止まる理由にはならない。このまま進む、ここで足を止める方がリスクが大きい」
誰も異を唱えなかった。マリーが静かに笑う。
「ええ、その通りです。怖かったけれどそれでも私たちは進めています。それだけで十分に誇っていいと思いますよ」
ジャンヌ(ルーラー)が頷く。
「はい。今はそれで十分です。この一歩を繋ぐこと、それが次へ続きます」
マシュはそのやり取りを見ながら静かに理解する。自分が経験した戦いと内容が変わっている。
目に見える敵だけではない。削り、揺らし、崩す、そのすべてが戦場の一部になっている。特異点の戦いは確実にその様相を変え始めているのだと。
Q.藤丸君はなぜ出し惜しみをして警戒をするの?
A.テスト運用をシュミレーターでやったときにDie惨事となってしまったからです。
軽い気持ちで「○○を倒して!」みたいなことを言ったことで、SAN値がごっそり逝ってしまう経験をしたので警戒気味です。
一般人がいきなり虐殺兵器持たされたようなものですから、使い方なんて分からないんです。ORTは完成を渡してくれましたがマニュアルとかチュートリアルはありません。
目標をセンターに入れてスイッチ、なんてことをしようものなら仕事は早く済んでも残業と始末書に追われる未来が来ます。