雪山を下りきった先の森の中で藤丸たちは野営の片付けを終えていた。
木々の隙間から東へ目を向ければ、その先には遠くまで続く平野が見渡せる。
移動の準備を進めながら、ふと視線を上げた先。
澄んだ朝空に一本の白い筋が伸びているのが映える。
「……飛行機雲みたいだな。こんな時代にあるはずもないけど」
藤丸が何気なく口にすると、隣で荷物をまとめていたマシュも空を見上げた。
最初はただの雲の筋のように見えたそれも、観察を続けるうちに明確な違和感へ変わっていく。
白い筋は横へ流れているのではなく、猛烈な速度でこちらへ向かって真っ直ぐ伸びてきている。というか飛んできている。
「先輩、下がってください!」
危険を察知したマシュが即座に藤丸の前へ出て、大盾を展開する。
ほぼ同時に上空から飛来した何者かが弾丸のような速度で森へ突入し、振り下ろされた巨大な金属の棒が轟音と共に大盾へ激突した。
凄まじい衝撃波が周囲の土や落ち葉を吹き飛ばし、藤丸は咄嗟に腕で顔を覆う。濛々と立ち込める土煙の中から現れたのは、黄金の毛並みと鋭い眼光を持つ、獣人(?)。身体の大きさとは釣り合わないほどの威圧感を放っていた彼は盾の向こう側にいる藤丸たちを睨みつけた後、その背後に立っていた三蔵の姿を捉えて目を大きく見開く。
「お師匠様! 無事だったか! いきなりはぐれちまって心配したんだぞ! 今すぐその怪しい奴らをぶちのめして、俺様が助け出してやるからな!」
「悟空! やめなさい、その人たちは敵じゃないわ! 私が雪山で迷っていたところを助けてくれた、とても親切な人たちなのよ!」
「無理しなくていいんだぜ、お師匠様。どうせそいつらに脅されて、仲間だと言わされてるんだろ? 俺様の目は誤魔化せねえぞ。そのデカい盾を持ってる女、タダモンじゃねえ。お師匠様を騙して攫うには十分すぎる腕を持ってるからな!」
「だから違うって言ってるでしょう! どうしてそうなるのよ! このスカポンタン!」
どれほど説明しても悟空は状況を自分なりに都合よく解釈してしまう。完全に藤丸たちを誘拐犯と決めつけたまま、三蔵の制止を振り切って再び飛び込んできた。
マシュも悟空が三蔵の仲間であることは理解しているため、殺傷を目的とした攻撃は控えていた。迫り来る如意棒の刺突を大盾で受け流して軌道を上へ逸らし、悟空がその反動を利用して藤丸の側面へ回り込もうとすれば、すぐさま地面を蹴って進路へ入り込み、その前へ立ち塞がる。
筋斗雲を自在に操り、上空、側面、背後と目まぐるしく位置を変えていく。如意棒も瞬時に長さを変え、遠間からの刺突を放ったかと思えば、一転して間合いを詰めて打ち込んでくる。対するマシュも大盾を構えたまま一ヶ所に留まらず、木々の間を駆けて攻撃を弾き、時には盾の面で悟空の身体ごと押し返しみ決して藤丸と三蔵へ近づけさせない。
「悟空、いい加減にしなさい! 話を聞かないと本当に怒るわよ!」
「すぐ終わるから下がっててくれ!」
「もう怒ってるのよ! 気遣いを無碍にしないでよ!」
三蔵の声にも悟空は止まらない。このまま防御に徹していても埒が明かず、長引けばどちらかが大きな怪我をする。そう判断したマシュは如意棒を大盾で弾き返し、一瞬だけ生まれた間合いの中で盾を自身の霊基へ格納した。
大盾が消えたことで、一気に身軽になる。
悟空が次の一撃を放とうと如意棒を構え直した時には、マシュはすでに懐へ踏み込んでいた。驚愕に目を見開く悟空の腕へ自らの腕を絡め、前へ出ようとしていた勢いを利用して、そのまま豪快に地面へ投げ飛ばす。
背中から叩きつけられながらも、すぐさま身体を跳ねさせて立ち上がろうとした棒使い。
しかしそこへ足払いが入り、崩れた体勢へ裏拳が叩き込まれる。
さらに身体を捻った勢いのまま回し蹴りが側頭部を捉え、悟空が咄嗟に両腕を上げた時にはマシュの両手がすでにその腕を掴んでいた。
逃れようと力を込めるより早く、がら空きになった顎へ鋭い膝蹴りが突き上がる。
「ぐっ……!」
連撃を受けて大きく体勢を崩した悟空をマシュはそのまま地面へ押さえ込んだ。それでも力任せに振りほどこうと暴れ続けるため、片腕を取って関節を極める。
「申し訳ありません……!」
「がっ……!? いってぇぇぇ!」
関節が外れ、悟空が苦悶の声を漏らす。それほどの痛みを受けてもなお戦意は消えず、身体を捩りながら、残された片腕で地面に転がる如意棒へ手を伸ばそうとしていた。圧倒的タフネス。
「先輩。これ以上は互いに深刻な負傷を負うだけです。別手段による強制的な制圧を要請します!」
マシュの要請を受けて藤丸は頷く。
悟空に悪意がないことは分かっている。
三蔵を助けようとしているだけなのだろうが、ここまで言葉が通じず、物理的に押さえ込んでも止まらない以上、戦う手段そのものを奪うしかない。
藤丸は深呼吸を一つし、令呪の刻まれた右手へ意識を集中させた。
通常のサーヴァント召喚のように霊脈を探る必要も、マシュの盾を触媒にする必要もない。
体内に存在する極限の生命体たるORTが、彼と獣冠英霊たちとの強固な繋がりを仲介している。
戦場の空気が一瞬だけ軋み、すぐ傍にガラスへ亀裂が走るような線が現れた。それは現実そのものを引き裂くように急速に広がり、中を虚無に染めた巨大な裂け目を形成する。
「な、なに……?」
三蔵が息を呑む中、その裂け目の向こう側から二つの影が静かに戦場へ足を踏み入れた。
「あら、朝からずいぶん派手にやってるわね。……あの子を止めればいいのかしら?」
余裕のある笑みを浮かべて現れたのはエレナ・ブラヴァツキー。その隣には両手にナイフを握ったジャック・ザ・リッパー。
「おはよう、マスター。あれが今回の獲物? 敵なら、私たちが処分してあげる!」
「ちっ、伏兵がいたってのか。だが、俺様を止めるには少しばかり足りねえぜ!」
悟空はマシュを振りほどき、外れた関節を強引にはめ直すと筋斗雲を呼んで上空への離脱を試みる。
が、彼が飛び上がろうとした瞬間、エレナが軽く指を鳴らす。
周囲に生じた魔力の光から幾条もの鎖と枷が放たれる。如意棒で何本かを弾き、筋斗雲を急旋回させて木々の間を抜けようとしたものの、四方から食らいついてくる鎖のすべてを捌き切ることはできない。足首へ絡んだ一本を皮切りに手足と觔斗雲まで拘束され、そのまま枝を折りながら森の中へ叩き落とされてしまう。
「痛っ! なんだこの鎖……!」
悟空が悪態をつきながら身を起こした時には、ジャックの姿がすでに霞んでいる。本体に加えて現れた数体の分身は一ヶ所に固まることなく、木々や岩の間へ散るように姿を消した。
一瞬後、悟空の背後から刃が迫る。
気配を感じて如意棒を振り払ったが、そこには誰もいない。代わりに側面から滑り込んできた影が足首を蹴って重心を崩し、脇腹へ刃を走らせる。反撃するより早く木々の向こうへ消えたかと思えば、今度は頭上から別個体が飛び込み、それを如意棒で弾いた直後にはまた別方向から本体が急所を狙ってきた。
「このっ! ウザいんだよ!」
悟空の如意棒が唸りを上げ、幹ごと一体を薙ぎ払う。吹き飛ばされた分身が木へ叩きつけられる間にも、別の一体が背後から襲いかかり、すんでの所で身体を捻ってその刃をかわしながら石突きを振り返した。
数こそ多くないものの、どれも単なる囮ではない。姿を見せた一体へ意識を向ければ別の一体が死角へ回り込み、接近すれば刃だけでなく足払いや崩しまで織り交ぜてくる。悟空も目を凝らして木々の間を睨み、僅かな枝葉の揺れや動きを拾おうとするが、相手を視界へ捉え続けること自体が難しかった。
その攻防から少し離れた場所で、エレナはジャックへ加勢するでもなくじっと悟空を観察する。
悟空が如意棒を伸ばし、筋斗雲を呼び、何かの術を使おうと魔力を巡らせるたび、エレナの視線がその動きを追っていく。傷を負った身体がどう反応するか、何をきっかけに力が流れ、身につけた品々がどのように本人と結びついているのか。実際の戦闘で次々と表へ出てくる情報を拾い上げながら、悟空という存在そのものを少しずつ読み解いていた。
「ちょこまかと……! なら、数には数で対抗してやる!」
苛立った悟空が後頭部へ手を伸ばし、自分の体毛を抜こうとする。
その動きをジャックは見逃さない。指先が毛へ届く直前、上空の枝から落下してきた分身の一体が悟空の手首へナイフを突き立てる。
「ぐっ!?」
悟空の手が弾かれ、掴みかけた毛が指の間から零れ落ちた。
「こいつ……!」
何をしようとしていたのか確かめる暇も与えず、ジャックがさらに懐へ入り込む。悟空は痛む腕のまま如意棒を横薙ぎに振り抜いて追い払い、続けて飛び込んできた分身へ蹴りを叩き込んだ。
その一連の動きまで見届けたところで、エレナが小さく目を細める。
「あら……なるほどね。いいものあるじゃないの」
何かに気づいたらしい彼女の視線が、初めて悟空の頭部へ向く。そこに嵌められているのは、西天取経を終えた今となっては、とうに戒めとしての役目を失っているはずの金色の輪。
「が、あああああっ!?」
突然頭を締め上げられ、悟空が如意棒を支えに片膝をついた。
「な、何しやがった……!」
「せっかく使えるものが残ってるんだもの。ちょっと働いてもらっただけよ。ダメじゃない。道具はしっかり使わなきゃ」
それ以上を説明するつもりはないらしく、エレナは楽しそうに笑う。
悟空は歯を食いしばって立ち上がろうとしたが、先ほどまでとは明らかに勝手が違う。筋斗雲を呼ぼうとしても反応が鈍く、無理に力を巡らせようとすれば、頭を締め上げる痛みが一段と強くなっていく。
当然、迫るアサシンはその隙を待ってくれない。
木の陰から飛び出した分身が肩口を裂き、悟空が如意棒を振り返せば、今度は別方向から本体が足元へ潜り込んでくる。緊箍児に意識を削られ、術も筋斗雲も思うように扱えないまま、悟空はそれでも如意棒と体術だけで食らいつき続ける。
傷は増えている。
それでも、ただ追い回されているわけではない。
何度も交錯するうちに彼もジャックたちの動きを読み始め、木の陰へ退いた一体へ如意棒を伸ばして幹ごと薙ぎ払い、続けて飛び出してきた別の一体を返す一撃で吹き飛ばした。
「舐めんなよ……!」
荒い息を吐きながら周囲を睨む。
木々の隙間に、一体。
その奥にも、もう一体。
悟空は狙いを定めると如意棒を一気に伸ばし、まとめて叩き潰そうと大きく振りかぶった。
「そこだっ!」
「あら、そっちに夢中なのね。いけないわ」
悟空が振り返った時には、巨大な魔力の塊がすでに目前まで迫る。
最初の一発が身体をまともに捉え、爆発と共に悟空を吹き飛ばす。そこへ間髪入れず二発目が炸裂し、さらに追い打ちの一発が周囲の木々まで巻き込みながら森を大きく揺らした。
立て続けの轟音が森の外まで響き渡り、土砂と折れた樹木が空高く噴き上がる。悟空の身体は爆風に押し流されるまま幾度も地面を跳ね、最後には岩肌へ激しく叩きつけられる。
「悟空!」
突如として始まった死闘に、岩陰から様子を窺っていた三蔵の悲鳴が響く。
土煙がゆっくりと晴れた先で彼はまだ生きていた。全身は傷だらけになり、片脚まで失っているというのに、残った腕を地面へついて身体を起こそうとしている。
戦う意志はまだ強い。その手に再び如意棒を掴まんと___
が、悟空がそちらへ手を伸ばすより早く、棒が地面から浮かび上がる。そのまま宙を滑ってくるくるとエレナの手元へ飛んでいき、受け止めた彼女の腕が僅かに沈んだ。
「あら。本当に重いのね、これ」
「返し……やがれ……!」
「まだそんな元気があるの?」
半ば感心したように目を丸くするエレナの横でジャックはすでに動き始めていた。
大量の血を流し、まともに立ち上がることすらできない。それでも悟空が生きている以上、彼女にとって敵はまだ排除されていない。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す。
死ね。
「おしまい。マスターの敵だから、死んでね」
ナイフを握り直し、悟空の首を刎ねるべく一気に踏み込む。
「やめてええええええええ!」
その瞬間、三蔵が弾かれたように飛び出し、横からジャックの身体へしがみついた。
「駄目! もう充分でしょう! お願いだからやめて!」
「邪魔しないで」
自分の身など顧みず、両腕でジャックを抱き込んで強引に足を止めようとする。しかし、戦闘状態にあるジャックの反応はあまりにも速かった。拘束された瞬間に三蔵の腕を掴み、身体を沈めて重心を崩すと、そのまま地面へ押し倒す。
一瞬で背後を奪い、後ろから首を腕で固め、そのままねじ切ろうと
「ジャック、ストップ!」
その声を聞いた瞬間動きがぴたりと止まった。三蔵の首から手を離し、つい先ほどまで殺そうとしていたことなど気にも留めていない様子で藤丸の元へ戻ってくる。
解放された三蔵は首を押さえ、何度も激しく咳き込んだ。それでも息が整うのを待つことさえせず、這うようにして重傷の悟空の前へ回り込む。
「お願いです……どうか悟空を殺さないでください。この子は私を助けようとしていただけなんです。勝手に勘違いして、何度止めても聞かなかったことは私からきつく言い聞かせます。だから、どうか命だけは……!」
三蔵の必死な懇願に、藤丸は悟空へ視線を向けた。
片脚を失い、武器も奪われ、全身に傷を負っている。
さすがにもう戦える状態ではなく先ほど三蔵が自分を庇ってジャックに殺されかけた時から、あれほど剥き出しだった敵意も鳴りを潜めていた。
藤丸が頷くと三蔵は目に見えて肩の力を抜く。
「……お、お師匠様」
掠れた声で悟空が呼ぶ。
三蔵は袖で涙を拭いながら振り返ると、その頭をベチッとひっ叩く。
「バカ弟子! だから最初から言ってるじゃない、この人たちは私を雪山から助け出してくれた恩人なの! 何度説明しても勝手に決めつけて、最後まで人の話を聞かないからこんなことになるのよ!」
「いや、だってお師匠様が知らない連中と一緒にいたら、普通は――」
「普通はまず本人の話を聞きます! こういうことは何度もあったでしょう!」
間髪入れずに言い返され、悟空が口を噤む。
改めて三蔵の顔を見て、それから藤丸とマシュへ視線を向ける。ようやく自分が何を勘違いしていたのか飲み込んだらしく、気まずそうに顔を逸らした。
「……そういうことかよ。ちくしょう、俺様の早とちりだったってのか」
「最初からそう言ってるでしょうが!」
「……悪かったな、お師匠様。それに、そっちの連中も」
「もう、本当に寿命が縮むかと思ったわよ。……腰抜けちゃった」
張り詰めていた空気がようやく薄れ始めた頃、森の奥から枝葉を掻き分けながら近づいてくる騒がしい音が聞こえてくる。
足音はかなり速く、時折何かを怒鳴る声まで混じっている。
悟空が一人で飛び去った方角からは少し前から轟音が何度も響き、最後には木々の向こうからでも分かるほどの大爆発と土煙が上がっていた。馬と大量の経典を連れている以上、筋斗雲のような速度で追うことはできない。それでも何か尋常ではないことが起きたと察した豚と河童は、可能な限り急いでここまで駆けてきたらしい。
「悟空ぅ……お前なぁ、ちったぁこっちのペースってもんも考えろよ~! 筋斗雲で一人だけ先に行っちまったと思ったら、遠くで森が吹っ飛ぶわ、とんでもねえ音はするわで、俺たちがどれだけ慌てて――」
息を切らしながら豚の獣人(?)が森の中から飛び出し、その後ろから大荷物を抱えた細身な男と馬も続いてくる。
が、愚痴は途中で止まった。というか言葉を失ってしまった。
彼らの名前は猪八戒、沙悟浄。そして玉龍。
薙ぎ倒された木々の間には爆発で大きく抉れた地面が広がり、その中心には見慣れない人間たちがいる。三蔵は首を押さえて座り込み、一人の手には悟空の如意金箍棒。そして当の悟空は片脚を失ったまま血まみれ。
八戒はしばらく呆然とその光景を見回し、最後にもう一度悟空へ視線を戻す。
「……えっ? な、なにこれ。大妖怪との最終決戦でも終わった後みたいな惨状なんですけど」
沙悟浄もさすがに言葉が出てこないらしく、経典を抱えたまま立ち尽くしている。
事情を説明するだけでもそれなりの時間が必要だった。
悟空が一人で先行して三蔵を発見し、藤丸たちを敵と勘違いしたまま襲いかかり、本人から何度止められても戦い続けた末にこの有様になったと聞かされた八戒がどんな顔をしたのかについては、悟空の名誉のためにも触れない方がいいかもしれない。
ともあれ、これで三蔵、悟空、八戒、悟浄、玉龍。そして彼らがここまで守り抜いてきた経典まで、ようやくすべてが揃った。
散り散りになっていたことが帰還できない原因だったのなら、今度こそ唐へ戻れるはず。
三蔵は改めて静かに祈りを捧げてみる。
藤丸たちもその様子を見守ったが何も起こらない。
しばらく待ってから三蔵がもう一度試してみても結果は同じで、やがて彼女は困ったように眉を下げた。
「……やっぱり駄目みたい。私たちがはぐれていたから帰れなかった、というわけじゃないみたい」
「ええ。全員と経典が揃っても変化がない以上、帰還そのものを妨げている何かがあると考えた方がよさそうです」
マシュも木々の向こうへ広がる平野に目を向ける。その先に続くのは、本来ならば三蔵たちが帰り着くはずだった唐への道。
「原因を調べるためにも、私たちが同行して東へ向かいましょう」
「もちろん。こっちからお願いしたいくらいよ」
三蔵もすぐに頷き、八戒と悟浄も異論はないらしい。
こうしてカルデアの調査隊と、ようやく再集結を果たした三蔵一行は、帰還を阻む異常の原因を探りながら共に東へ向かうこととなる。
ただ、実際に歩き出すより先に三蔵の視線がふと悟空へ戻る。
重症のうえ、片脚まで失った弟子はさすがに今すぐ旅を再開できるような状態ではないのは明白。
しばらくその姿を見つめ、それから額へ手を当てて深々と息を吐いた。
「……悟空。まず、その脚のことを考えましょうか」
???「どうよ、中々だったじゃ~ん。パンドラ、私ちゃんの所長ちゃんへのインパクトはどぉーだったよぉ!」
パンドラ「いやぁ~、ただの不審者でしたね~。一貫して頭おかしいだけの関わりたくな人でしたよ~」
???「Oh…、私ちゃんのフレンズは相も変わらず毒舌だっぜ!」
パンドラ「そ~いえば~。あの所長室にあった本って私達出るんですか~。だからこその登場なんですよね~?」
???「え? いや? 無関係だけど?」
パンドラ「……え? ではあの一幕は一体…?」
???「なんか召喚されたけどマスターには会いに行けないしで、とりあえず? 私ちゃんはこんなクソ田舎の特異点は似合わないからね、しょーがない」
パンドラ「じゃあマスターにお呼ばれしたら~?」
???「どこでも行くから。絶対に。まぁ、クソ湿度高い英霊女史はちょっとニガテなんで…人選はよろ~って感じ。ランサーのデカパイの人は感情がグラヴィティ過ぎてこっちが潰されそうだからね…。マスターの道具連盟として、聖剣のイフとか属性強すぎ~」
パンドラ「急にメッチャ喋るじゃないですか~」