マシュ・キリエライトしか分からない   作:ats376

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地下のやりとり

人の気配のない洞窟を一行は進む。

 

 

 

 

「それでキャスター。残るサーヴァント、セイバーについてなのだけれど真名などは分かるの?何度か戦ったというような雰囲気を出してるけど」

「あぁ分かる。というか、奴の宝具を見れば誰だって分かるだろうよ。おかげで大半の連中は近づけずなかった。シールダーの奴だけは自分から会いに行ってたみたいだが」

 

「強力な宝具ですか....。やはりアルトリアさんですか?」

「ん? 嬢ちゃんは知ってるのか? そうだな。あんたらの時代で最も有名な聖剣使い。その聖剣こそが約束された勝利の剣(エクスカリバー)

「ビッグネームね、それでも勝たなければいけませんが。藤丸、分かっているわね?これからやることが」

「え?あ、はい!気合い入れます!」

「違うわよ!休憩よ、休憩!そんな余裕のない状態で出られては困ります。小休憩よ」

「お、いいねぇ。決戦前の一休みは大切だ。俺も賛成だね」

 

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休憩に入ってしばらくのこと

 

「......その、所長。俺に何か?」

じっと見られたことに耐えれず藤丸が問いかける。

「・・・・・・・。・・・・・・・。えぇとですね。評価はしています」

「所長、流石です。先輩の良さをご理解いただけたのですね」

「違うわよ! ここまでの結果は最低限評価すると言っているのよ。カルデアの所長としてね。藤丸も、何よその嬉しそうな顔」

「いい?偶然でも、結果論でも。上手くいってはいる。たとえ三流でもつい先日まで部外者であってもその功績は正しく扱うと言ってるのよ」

 

 

「遠回しすぎんだろ。不器用なだけじゃ組織回せないぜ、所長さんよ」

「よ・け・い・なお世話よ!!」

 

このやりとりをマシュは穏やかな顔で見ていた。

何度も経験した始まり。それでも前に進めると分かっていると、心に余裕が生まれるのだろうか。

 

「マシュ? あなたまで茶化さないわよね?」

「も、もちろんです! でも、もうちょっとわかりやすく言って欲しいです!」

「.....何よもう。はぁ、もう休憩は良いでしょう。装備を調えて出発するわよ」

「ほら、藤丸。荷物は丁寧に纏めるのよ。細かい準備が成功に繋がるんだから」

 

「所長さん、あんあたやっぱ不器用だな。もうちょい心に余裕持とうぜ、モテないぞ」

「うっさいわね!こっちは真剣なのよ!」

???「」ウンウンとうなずく

 

「ほら、ここにも同意者がい...る...?」

???「ワイトモソウオモイマス」

「アッヒィィ!!! こここ殺される! マ、マシュ! 早く、早く排除して!!」

 

「マシュ、キリエライト、出ます!!」

 

 

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「あれが...この特異点の大聖杯。超抜級の魔力炉心がなぜこんな国に...」

「この場にあっても考え事か。なかなかに余裕があるな」

 

 

一行は声の在処へ目を向ける。

全身を黒い鎧で覆った剣士。その肌は白く、瞳は鋭い。

 

「ギャラハッド卿は退いたか。.....そこの娘。お前からは僅かだが気配を感じるな。お前も律儀に挨拶に来たのか?」

「私はこの特異点解決のために訪れました。あなたへのご挨拶のためではありません。」

「だろうな。そう真面目に返されると話が広がらないぞ? マスター同伴か。だがまだ未熟とみた。サーヴァントと不釣り合いだ」

「おいおい、甘く見てたら痛い目見るぜ? こいつはまだまだ新米だが肝が据わってやがる。いざって時に腹をくくる根性まである。こういう奴を軽んじて痛い目見るってのはよく知ってるだろ?」

「....あぁ、その通りだ。とはいえ、少しお疲れのようだがな」

 

オルガマリーが会話の流れで藤丸の様子を見る。その顔には疲労の色が浮かんでいる。。

無理もない話だ。始めての特異点で過酷な環境を駆け回り、明らかに初心者に向かない戦闘。さらにマシュとの契約だけでなく、マシュの変化によって負担も増した。

あくまでも一般人として生きてきた人間が魔術回路をフル稼働させ続けている。

訓練もないぶっつけ本番。先ほど休憩を挟んだとはいえ、よく持っている方だろう。

 

「大丈夫です、まだやれますよ」

「先輩.....」

 

「本人がこう語るのだ。手を抜く必要はあるまい。こちらは退くつもりなど毛頭無いのでな」

セイバーから魔力が滾る。禍々しく、重たい。トップサーヴァントに恥じない力が。

「お前ら気をつけろよ?あいつは筋肉勝負じゃねぇ。魔力で一撃一撃が馬鹿みてぇに重たい。気を抜いたらお陀仏だ。」

「分かっているようだな、だが」

 

 

セイバーは言葉すら語りきらぬままにほとばしる魔力を剣に注ぎ、--------振り払った。

約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!」

「うぉぉ!?最初からかよ!?」

 

暴力の化身とも思えるような魔力の奔流が初撃から繰り出される。

「防いでみせます!!はぁぁぁ...希望築く人理の盾(ロード・カルデアス)!!」

放たれた力の奔流が防壁へと衝突する。圧倒的火力。理屈のない力。

押し寄せる破壊の波が猛烈な勢いで叩きつけ続けられる。

赤黒い光があたりを覆い、轟音が響き渡る。

並のサーヴァントであればキャスターが言うように蒸発していただろう。

 

しかし、己の答えに辿り着いたマシュは。

 

 

「成る程、貫けないか。数歩後退させた程度とは。少し自信を無くしそうだな」

「今の私であれば盾の騎士として防ぎきります。このように」

「盾の騎士、か。彼奴とは違う。しかし通ずるものがあるらしいな」

少し楽しげに語るセイバーの身体から光が立ち上る。

 

「あぁ? なんでお前、退去しそうになってるんだよ。こちとら決戦のつもりで来てるんだぜ」

「お前の事情など知らん。だがそうだな。確かめたくなった、と言おうか。」

チラリとマシュの方を見ながらセイバーは言葉を続ける。

「マシュと言ったな? 悪くない力だ。本来であれば全てをかけて迎え撃つべきなのだろうが、我が宝具に全てを乗せてお前を試したくなった。聖杯を守るつもりが欲を出してしまった。

だが、あれを防いだのだ。仮にこの剣を振るったところでそう結末は変わらなかったかもしれんな。...それに満足だ。勇者と言えるものがいれば運命は塗替えられるやもしれん」

 

「てめぇ、何言ってやがる...?何を知ってるんだよ。つーか、お前。手ぇ抜いてなかったか!?」

「お前も知ることになるだろう。アイルランドの光の御子よ。聖杯を巡るグランドオーダーはまだ始まりに過ぎんということをな。それと言いがかりは止せ。殺すつもりはあったぞ」

「オイ待てよ、それはどういう---、うぉぉ!? 俺も強制退去するのかよ!? クソッ、仕方ねぇが嬢ちゃん達。後は任せたぜ!」

 

 

 

「.....セイバーとキャスターの消失を確認。私たちの勝利と見て良いのでしょうか。気になる点は多いですが」

「えぇ、そうね。その気になる点を調べるために、この特異点の中心地であるこの場所を調べるわよ」

「「はい!!」」

 

思いがけないほどあっさりと片付いた最後の戦い。

オルガマリーも藤丸もその表情は明るかった。

 

 

 

「48人目のマスター適正者。見込みなしの子供だからと見逃したらこうなるか、私の失態だな。あのときすぐ管制室に来て欲しいと伝えたのに....全く。統率のとれていないクズばかりだ」

 

 

レフ・ライノール。

オルガマリーにとってもマシュにとってもよく知る人物。

.....その意味が異なったとしても。

藤丸にとっては親切な優しい人という認識が強いが、この場に現れたのは異様と言うより他になかった。

 

「....先輩、所長。私の側に。あの方は我々の知るレフ教授ではありません」

「マシュ?」

「何言ってるのよ、マシュ! ようやく救援が来たのよ!レフ!!」

「い、いけません!!所長!」

マシュの制止虚しくオルガマリーは駆け出す。

元々心に余裕がない状況での特異点。所長として相応しくという思いで耐えていたが、限界だった。

マシュの制止は耳に入ることはなかった。

 

 

「もう大変だったのよ!予想外のことばかりで!管制室は爆発するわ、特異点はこの有様だわ、カルデアには帰れないし、マシュはなんかおかしいし!」

「あなたがいればなんとかなるわ!これまでもそうだったもの、今回も助けてちょうだい」

「あぁ、予想外のことだらけで頭にくる。本当に。最も予想外だったのは、君が生きていることだがね」

 

 

 

「_____え?レ、レフ。今なんて、どういう、意味?」

 

 

「あぁ、すまない。失礼した。訂正しよう。肉体はもう死んでいるんだ。トリスメギトスが残留思念の君を親切にここへ転移させたんだ」

「レイシフト適正がないんだ。生身の身体で転移なんて出来るわけ無いだろう? 死んでようやくあれだけ望んだことを実現したんだ」

「カルデアには帰れない。帰れば君の意志は消滅するのだから」

「今のカルデアスがどうなっているか、見せてあげよう。聖杯があればこういう芸当も出来るんだ。見たまえ、アニムスフィアの末裔。あれこそが君たちの愚行の結果だ」

 

そこに現れるのは真っ赤に焼けたようなカルデアス。異常事態が起きているのは誰の目にも明らかだった。

人理を保障する天球____そんな言葉が嘘であるとでも言うかのように。

 

 

「オルガマリー、君の行いの結果こそがこの有様だ!」

「ーーーふざ、ふざけないで!!わたしの責任じゃない!私は失敗してない!私は死んでなんかいない!! アンタ、誰なの!? 私のカルデアスに一体何をしたっていうのよ..!」

()()カルデアスではない。最後までうるさい小娘だったな、君は」

 

 

レフが言い終わるとオルガマリーの身体が何かへ引かれるように浮き始める。

早いわけではない。しかし、その行く先は焼けたようなカルデアス。

「最後の慈悲だとも。君の宝物に触れると良い」

「な、何言ってるの...?そんな、カルデアスは高密度の情報体よ、次元が、異なるのよ。やめて、お願い」

「そうだな。終わりを向かえた天体のようなものだ。人間が触れれば分子レベルに分解されることになる。生きたままの無間地獄を味わい給え、遠慮はいらないとも。これまでの面倒ごとの対価だ。ざまぁみろ、というものだよ」

 

 

藤丸は動けない。精神と肉体の疲労、そして得体の知れない出来事に理解が追いつかない故に。

マシュは動けない。藤丸の側を離れて危険が及ぶかもしれないといいう考えが離れなかったから。

 

「どうしてよ!? なんでこんなことばっかりなのよ!? 誰も評価してくれない!! みんなが私を疎んでた!!こんな、こんなの、イヤイヤイヤイヤ! だって、まだ」

「私、何もしてない!! 生まれてからずっと、誰にも、一度だって、認められたコトなんてーーーー!」

 

 

短い絶叫。オルガマリーは苦しんだのち、言葉を失い、そのままカルデアスへと消えていった。

最初からそんな人は居ないというような静寂が残されて。

そしてレフは満足げに語り出す。

 

「やぁ待たせたね。君たちもご苦労だった。カルデアはともかく、外の世界は終わりを迎えているだろう。マシュ、君は強くなったようだが我々の勝利は確定している」

「改めて自己紹介しようか。私の名はレフ・ライノール・フラウロス。貴様達人類を処理するために遣わされた2015年担当者だ」

「カルデアは用済みとなった。カルデアスが深紅に染まった時点で未来は焼却されたのだよ。お前達もまた、燃えくずと成り果てるのだよ!」

「君達に手は下さない。私にも仕事があるんだ。失礼するよ」

レフはそう締めくくり立ち去ろうとする。

それまで黙っていた二人。藤丸はオルガマリーの最後に絶句し、マシュは拳を握りしめていた。

 

「レフ教授」

「...何かな?マシュ」

「すいません、我慢できません」

「何をいっt」

マシュの凄まじい跳躍は、レフがゆっくり言い終わるよりも早くその拳を届けていた。

 

 

 

 

レフの顔面へと。メキョォ...というおよそ人体からしてはいけない音を鳴らしながら。

「うっぐぉう!?」

 

ふらついたレフへさらに追い打ちのラッシュが襲いかかる。

肩、腹、さらに顔面へのお代わりが何度も何度も。割と理由のある暴力がレフ・ライノール・フラウロスを蹂躙する。

パラディーンとなったマシュの力は凄まじいものだった。拳の速度も威力も尋常ならざるもの。それをレフは十数発受け続け____

 

 

「うぶぉぉ...」

 

ボロ雑巾のように倒れ伏していた。ハッと我に返った藤丸が慌てて駆け寄りマシュの肩を押さえる。

「マシュ、落ち着いて!!

「離して下さい、先輩! ボディタッチは嬉しいですが、まだ足りません!!これくらいは許されるべきです!」

「どっちに対して言ってるの、マシュ!?」

 

先ほどまでいかにも黒幕然としていた優男はガクガクと体を震わせながら立ち上がり、蚊の鳴くような声で語り出す。

「マ、マシュ。ナ、ナニガアッタカハシラナイガ...ゴボッ...。ワレワレノケイカクハ、ハァハァ....ト、トメ、トメラレナイ...ゾ...」

 

レフはスゥ...と世界へ溶けるように姿を消した。二人だけが地下空洞へと取り残された。

否。もう一人、もとい、もう一体が残っている。

恐らくこの場に最も居るべきでない存在が。

 

 

「藤丸よ、やることは片付いたか? 話がある」

自称同居人が再び動き出した。

 

 

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