マシュ・キリエライトしか分からない   作:ats376

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第9話 「皇帝の器-2」

前哨拠点を離れると、鼻を突く甘い香は夜風にさらわれ、あっという間に薄れていく。

ヘリオガバルスは一度も振り返らず、暗い街道を歩み続けた。

 

背後では今頃、ネロの軍勢が拠点へ足を踏み入れているはずだ。

毒や罠を警戒しつつも、限界を迎えた兵たちは水をあおり、泥のように座り込み、重い鎧の留め具を緩めているだろう。

疲弊しきった軍勢は、目の前に『休息』という極上の餌をぶら下げられれば、絶対に足を止めざるを得ない。

ただそれだけのために、ヘリオガバルスはあの拠点を無傷のまま明け渡した。

 

ルグドゥヌムへ続く街道沿い。丘陵の影に母后派の後方陣地が広がっている。

急造の天幕がひしめき、伝令の馬が狭い通路を蹴り飛ばすように行き交う。拠点を戦わずして捨てた直後だというのに陣営に敗北の色はない。獲物を待ち構える蜘蛛のような、鋭利な活気に満ちていた。

 

 

指揮天幕。

巨大な地図を囲み、将たちが声を荒らげている。

街道、橋、丘陵、宿駅、補給庫。石印の傍らには、矢継ぎ早に届く命令書が山と積まれていた。

ヘリオガバルスは席に着かず、真っ直ぐに地図を見下ろす。

将の一人が、痺れを切らしたように口を開いた。

 

「陛下……! 本当に、あの拠点を敵に渡してよろしかったのですか?」

 

濃い不安の滲む声。

神祖ロムルスやカエサル達。強力な客将が次々と退けられ、ネロの軍勢は確実に迫っている。母后派の内部には、すでに底知れぬ恐怖が根を張り始めていた。

 

ヘリオガバルスは、拠点を示す白い石へそっと細い指を置く。

 

「渡したんじゃないよ。――止めたんだ」

 

静かな一言が、天幕の喧騒を凍りつかせる。

 

「ネロ陛下は兵を見捨てる人じゃない。疲れ切った兵たちが穏やかに休める場所を見せれば、彼女は必ず立ち止まる。……止まらなければならないんだよ、彼女は。勝利を喜ぶ民の思いと、戦地で汗を流す兵士の心は同じじゃない。時には足を止めないと、人は保たないのさ」

「それに、彼女たちの足が止まれば、その時間だけこちらが自由に動けるようになるしね」

 

白い石を囲むように、黒い石の駒がカツ、カツと並べられていく。

 

「外周の監視は遠巻きに。近すぎれば警戒されて休ませられないし、遠すぎれば動き出された時に対応が遅れる。丘陵側の小道には騎兵を配置して」

「はっ……!」

「ルグドゥヌムへ続く主要街道には工兵を。橋は補強してもいいし、落としてもいい。どちらでも即座に選べる状態にしておくこと」

 

工兵指揮官が弾かれたように蝋板へ書き込む。

 

「補給庫は一段後ろへ下げますか?」

「うん。前に置くメリットがない。ネロ陛下の軍は思った以上にしぶとい。畑を焼き、水を汚しても、鈍りはすれど止まりはしなかったからね」

 

穏やかな声のまま、ヘリオガバルスは冷徹な判断を次々と下していく。

宝石を散りばめた指輪が灯火に煌めく。駒を置く動きに迷いはない。

 

「進めば進むほど選択肢が狭くなるように罠を張る。一度休んだ兵は、自分の体に溜まった本当の疲れを思い出す。そこへ落とされた橋や断たれた補給という現実を突きつけるんだ」

 

別の将が食い入るように地図を覗き込んだ。

 

「迎撃のポイントはどこに?」

「こことかどうかな」

 

黒い石が置かれたのは、街道が急激に細くなる難所。

左右から切り立った丘が迫り、補給馬車が詰まれば後続の動きも完全に封じられる。大軍を展開しにくく、疲労困憊の兵を迎え撃つには絶好の死地。

 

「戦うかどうかはまだ決めなくていい。でも、いつでも殺せる形にはしておこうか」

「……承知いたしました。では、中立都市への布告は?」

「すぐに送って。『皇帝ヘリオガバルスはネロ陛下と対面し、敵兵を休ませる慈悲を示した』でも、『敵軍の戦力を悠然と見定めた後、余裕を持って退いた』でもいい。言葉の飾り付けは任せるよ。食いつきが良さそうなのにはしてね」

 

傍らのロクスタが、我慢しきれないように吹き出した。

 

「慈悲にも余裕にも聞こえて、ついでに最大級の嫌がらせにもなる……ふふ、本当に便利ですねぇ。その『皇帝』っていう肩書きは」

「……言い方に気をつけてよ」

「褒めてますよぉ。皇帝様らしくて素敵です。優しい顔をして、相手が一番嫌がることを平然となさる」

 

ヘリオガバルスは不満げに眉を寄せたが、すぐに視線を地図へ戻した。

 

「嫌なことを考えられない皇帝なんて、ただの操り人形でしかないからね」

 

将たちの筆が一瞬止まる。

軍事的な指揮ではない。ヘリオガバルスという少年の内側から漏れ出した、生々しい感情の吐露。

お飾りの傀儡だと思っていた少年が、今、自らの意志で冷酷に戦盤の駒を動かしている。

ヘリオガバルスは顔を上げた。

 

 

「アグリッピナ様へは僕から直接報告する。各部隊は直ちに命令通りに動くように」

 

将たちが深く一礼し、天幕を後にする。

外に出た途端、怒号と活気が陣営を支配した。馬具の擦れる音、革紐を締める音、伝令の叫び声。

天幕に残ったのは、ヘリオガバルスとロクスタの二人だけになった。

 

ヘリオガバルスは地図の前から動かず、細い息を吐き出す。

壇上で見せていた凛とした姿勢が僅かに崩れ、小さな指先が袖の刺繍をなぞる。

 

「……ロクスタ」

「はいはい、何でしょうか」

「僕……皇帝らしく、振る舞えていたかな」

 

香炉の蓋を弄っていたロクスタは、意外なものを見たように目を丸くし、すぐにいつもの食えない笑みを浮かべた。

 

「少なくとも、あの偏屈な将軍たちは皆、貴方を信じきってましたよ。立派な『皇帝陛下』でした」

「……本当に褒めてくれてる?」

「褒めてますよ。見られるべき場所で、求められる顔を作ってみせる。それも皇帝の立派なお仕事でしょう? ご安心下さい。ネロ様のことよく見てましたから、一家言ありますよ!」

 

ヘリオガバルスは寂しそうに少しだけ笑う。

だが、その笑みはすぐに消えた。

 

「僕は……前もそうだった。誰かに綺麗な服を着せられて、高い場所に立たされて、みんなが期待する通りの顔をした」

 

天幕の外を慌ただしい軍靴の音が過ぎていく。

 

「でも……結局、ちゃんとできなかったんだ」

 

ロクスタは茶化さない。香炉の蓋を閉じ、金属の冷たさを確かめるように指先を置いた。

 

「今度は……今度は、ちゃんとやり遂げなきゃいけないんだ!! そうじゃないと……」

 

皇帝として担ぎ上げられた少年の言葉ではない。自分が都合のいい駒でしかないと知っている子供の、消え入りそうな独白。

ロクスタは軽く肩をすくめ、出口へ歩き出す。

 

「なら、まずは倒れないことですねぇ。皇帝が不安そうな顔をしていれば、周りの人間はもっと不安になりますから」

「……難しいことを言うね」

「簡単な皇帝なんて、歴史のどこを探したっていませんよ」

 

 

ヘリオガバルスは再び地図へと目を落とす。

白い石の周りを、黒い石の駒がじわじわと囲んでいる。

相手の進撃を止めたのだ。ならば今度はその止めた時間を使って、自分はこの歪な盤面を動かし続けなければならない。

 

 

 

-----------------------------------------

 

 

前哨拠点。ネロ軍が束の間の休息に入る。

ドレイクが空っぽの倉の棚を指で叩き、冷めた笑みを浮かべる。

 

「物資の一つも残しちゃいませんね。あるのは屋根と壁と水だけ……ですが、今の私たちには金貨よりそっちの方が価値がある」

「敵がわざわざお膳立てしてくれた価値だがな」

 

リチャードは壁際に寄りかかり、外の様子をうかがう。外周のわずかな動きも見逃さず、戦闘になれば瞬時に飛び出す構えだ。

 

ブーディカは負傷兵たちの元へ足を運ぶ。膝を抱えて座り込む兵に水を渡し、兵舎の奥へと肩を貸す。放つ気配に怯える兵もいたが、差し出された水の冷たさを拒む余裕は誰にもなかった。

 

兵たちはようやく重い鎧の留め具を外し始める。

革製の水袋が鳴り、馬が飼葉を咀嚼する音。焦げ跡の残る壁に背を預けた若い兵は、座り込んだ瞬間に気を失うように目を閉じた。

 

敵が譲った場所で休む薄気味悪さ。それでも、ここでの休息は彼らにとって休息は命を繋ぐための絶対条件だった。

ネロは中庭の中央に立ち、声を張り上げる。

 

「よくここまで進んだ! 今はただ休め。水を飲み、傷を癒やし、足を休めるのだ。これは次に進むための、誇り高き休息である!」

 

兵たちが一斉に頭を下げる。

皇帝の力強い声に、疲れ果てた顔が僅かに上を向いた。

ネロは笑う。威厳に満ちた、太陽のように明るいいつもの皇帝の貌で。

 

 

だが。

兵に背を向けた瞬間、将達から報告用の蝋板を受け取るネロの手が一瞬止まった。

 

「陛下、外周警備の配置ですが……」

「第三隊を門側へ配置せよ。第二隊は井戸と倉の守備に回せ」

「補給車列は中庭へ入れますか?」

「半数だけだ。残りは外で円陣を組ませろ。中へ詰め込みすぎるな」

 

返答に迷いはない。判断も的確だ。

それでも、声の奥は砂を噛んだように掠れきっている。

 

ヘリオガバルスの放った陛下という呼び声。ロクスタの親しげで残酷な笑顔。背後に透けて見える母后アグリッピナの影。

目に見えない巨大な重圧が、ネロの細い肩にじわじわとのしかかっていた。

 

藤丸は声をかけようとして、足を踏み出せない。

横からモルガンの声が飛ぶ。

 

「マシュ。端末の記録を確認してよろしいですか? ロムルス、カエサル、夜襲の例の三騎。――敵サーヴァント消滅直後の反応値を時系列で並べなさい」

「はい……ロクスタさんのあの発言と照合するのですね?」

「ええ」

 

モルガンはずっと一点を見つめている。

黒い影。英霊の消耗という表現。聖杯戦争という概念をなぞりながらも、粗雑で歪められた嘘。

マシュが不安そうに視線を送ってくる。藤丸は短く頷いた。

 

「行って。こっちは大丈夫だから」

「……すぐに戻ります、先輩」

 

マシュはモルガンと共に兵舎跡の石室へと向かった。

二人の足音が遠ざかり、石室の奥で魔術の光が点る。

中庭には、篝火が爆ぜる音と水を汲み上げる音、遠くの兵たちの話し声だけが残された。

 

 

気がつけば、藤丸の近くにはネロ一人だけ。

崩れた柱の影。兵たちの喧騒からは死角になる場所。

ネロは立ち尽くしたまま、微動だにしない。

 

「……ネロ陛下?」

 

そっと声をかける。

ネロはいつものように返そうとしたはずだ。胸を張り、快活に笑い、「余を案じるとは大胆不敵な奴め!」と茶化してみせる。いつもの完璧な自分を演じようとした。

けれど、声が出ない。

喉がヒクつき、空気を呑み込む音だけが小さく鳴る。

藤丸は無意識に一歩距離を詰めた。

 

「母上は……」

 

掠れた声が、ひび割れた唇からこぼれ落ちる。

 

「母上は、余に皇帝になれと言ったのだ」

 

藤丸は何も言わず、ただ耳を傾ける。

 

「余はそれに応えようとした。余なりに、このローマを見守ろうとした。民を、兵を、芸術を……。すべてをこの腕に抱えようとしたのだ」

 

「だが……母上は、別の『皇帝』を用意した」

 

呼吸が目に見えて乱れ始める。

 

「神祖までもが母上の盤上に置かれていた。ロムルスだぞ……! ローマそのものである御方を、母上はただの駒として扱ったのだ!」

「ロクスタもいた……。あやつは、余の側にいたはずなのに」

 

堰を切ったように、言葉が次々とこぼれ落ちる。

 

「余の将も、官僚も、貴族も……皆去っていった。余の知らぬところで、余ではない別の名に跪く者がいる」

「毎日だ! 毎日報告が来る!! 食料が足りない、橋が焼かれた。属州での支持が揺らいだだの、貴族が返事を遅らせただの!! 母上が次に何をするか、余には、もう……分からない」

「勝っているのだ!」

 

目を見開き、ネロが藤丸を真正面から見た。

 

「余たちは、勝っているはずなのだ! 神祖すら退け、幾度とない襲撃を凌ぎ、補給も繋ぎ、軍は前進している! ……なのに! 余は、次は何を失うのかということばかり、そればかりを考えてしまう……!」

 

遠くで兵たちの笑い声が響く。束の間の休息を得た誰かが、仲間と冗談を言い合ったのだろう。

ネロは反射的にいつも通りの皇帝の貌を作ろうとした。兵を安心させるための完璧な笑顔を。

 

 

 

失敗した。

唇が不格好に震え、笑みとも泣き顔ともつかない、酷く歪な表情が浮かぶ。

 

「……ローマで権力闘争に敗れた者がどうなるか、余は嫌というほど知っている」

「追放、暗殺、処刑……。名を消され、一族を潰され、従った者までが奈落へ道連れにされる。余だけではない……。余に従った兵も、余を信じてくれたお前たちも……今の母上にとっては処理すべきゴミでしかないのだろうな……」

 

ネロが、幽鬼のように一歩ずつ藤丸へ近づく。

 

「……お前たちが、いなければ。余はもうとっくに敗れていた」

「母上の送り込んできた客将達……あんなもの倒せるわけがなかった。余一人では何一つ越えられなかった……余は皇帝だ。皇帝であるはずなのに……っ。余だけでは、何も成し遂げられぬのだ!」

「それは違います!」

 

反射的に否定するが、ネロは弱々しく首を振る。

 

「違うものか。余には分かっている。……お前たちが居たから、余はまだ立っていられるのだ。お前たちが、お前が居なければ余は――」

 

言葉が途切れた。

ネロの細い手が伸びる。

藤丸の袖に指先が触れ、次の瞬間、崩れ落ちるように藤丸の腕に縋り付いた。

爪が布越しに食い込む。皇帝の命令ではない。一人の少女の、剥き出しの懇願。

 

「……助けてくれ」

 

藤丸は金縛りにあったように動けない。

 

「何でもする……」

「余にできることなら何だってする! 褒美も、地位も、財も、名誉も……! お前が望むなら余の持つすべてを差し出そう! だから……っ」

「ネロ陛下!」

 

声を荒らげても、彼女は止まらない。

 

「助けてくれ……余を見捨てないでくれ! 余はもう……これ以上は……戦えぬのだ……っ!」

 

篝火が爆ぜ、火の粉が舞う。

藤丸は、袖を必死に掴むネロの手を見つめる。

白くなるほど力が入り、小刻みに震え続けている手。この手を振り払うことなど絶対にできない。

 

けれど。彼女が口にした条件だけは絶対に受け取ってはいけない。

藤丸は、ネロの手の上に自分の手を静かに重ねた。

 

「……何もしなくて、いいです」

 

ネロの瞳が驚愕に揺れる。

 

「褒美も、地位も、名誉もいりません」

「……なぜだ? なぜ、そんな……」

「そんなものが欲しくて、ここにいるんじゃないからです」

 

自分でも驚くほど声が震えている。

気の利いたセリフなんて言えない。正しい答えを出せている自信もない。けれど、ここだけは間違えたくない。

 

「……助けます」

 

ネロの指から、僅かに力が抜けた。

 

「でも、それはネロ陛下が何かをくれるからじゃありません」

「ネロ陛下が……俺たちを信じるって言ってくれたからです」

 

ネロは言い返そうとして、唇を強く噛んだ。

 

「……余は、皇帝だぞ」

「はい」

「皇帝がこのような……無様な真似を……」

「皇帝だって人間です」

「怖いなら、怖いって言っていいんです」

「余が……余が恐怖を口にするなど……」

「俺だって怖い」

 

倒れた兵士達。失われた日常。血に塗れた数々の光景が脳裏をよぎる。

 

「分からないことだらけです。毎回これで合ってるのか、自分が間違ってるんじゃないか……。今だって、正直何が正しいのか分かりません。でも、一人に全部背負わせるのは絶対に違うと思うんです」

 

袖を掴む手は離れない。

 

「俺たちは、ネロ陛下の代わりに皇帝になるためにここにいるわけじゃありません」

「あなたが……ネロ陛下がローマを取り戻すために、俺たちはここにいるんです」

「……余が。また折れてしまったら?」

「また、支えます」

「……何度も、か?」

「何度でも」

「……まあ、マシュには『先輩、甘すぎます!』って怒られるでしょうけど」

 

 

ネロを取引という冷たい場所から引き戻す、精一杯の言葉。

ネロは笑わない。けれど、浅く乱れていた吐息がゆっくりと長く吐き出されていく。

 

 

「……そなたは。いつも……簡単に、言うのだな」

「簡単じゃないです。……全然。でも、言わないよりはずっとマシだと思ったから」

 

ネロの手から、ようやく強張った力が抜けていく。

袖を掴む手はまだそこにある。それは縋りつくというより、確かな温もりを確かめるような柔らかな触れ方に変わっていた。

 

石室の方から足音が響く。マシュとモルガンだ。

ネロは反射的に藤丸の袖から手を離した。

乱れた息を呑み込み、背筋をピンと伸ばし、一瞬にして『皇帝ネロの貌』を作り直す。

あまりに鮮やかで、痛々しい仕草。

それでも、藤丸には分かる。彼女の内側にある震えは、まだ完全には消えていない。

 

マシュが中庭に戻ってくる。

藤丸とネロを見て歩幅が僅かに小さくなった。決定的な空気が動いたことを察したのだろう。だが、何も問い詰めない。

モルガンの目は、一層冷たく冴え渡っていた。

 

「マスター」

「……何か分かった?」

 

モルガンは静かに、けれど断固として告げる。

 

「……断定するにはまだ材料が足りません。ですが、ロクスタの説明をそのまま真に受ける必要はありません。あれは……『聖杯戦争』などという高尚な儀式ではありません」

 

マシュがタブレットを示しながら補足する。

 

「敵サーヴァント消滅時に発生するあの『黒い影』……あれは勝敗を刻むためのものではないようです。――霊基情報の、強制的な『回収』に酷似した反応を示しています」

「回収……?」

 

ネロが問い返す。作り直したばかりの皇帝の貌が再び強張った。

モルガンの視線は、ルグドゥヌムの方角へ向けられている。

 

「英霊を戦わせ、削り、その残滓をどこか一点へ流し込んでいる。……『器』という言葉が、単なる比喩であることを祈りましょう」

 

 




投稿できたよ。ありがとうノッポさん
でもさ、ノッポさん。第三特異点って思ったより内容を書き直すの難しいね

ワクワクさん、ストレッチマン、僕はどうしたら?

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