御坂美琴がその場を通り過ぎた
その直後、彼女の背後から足音が近づき、例の四人組に声が掛けられる。
明石「やっと見つけた」
震える声だった。
必死に息を整えながら、青年は深く頭を下げる。
明石「一か月間、探し続けました。「正義の拷問師」を僕の彼女を殺した犯人を見つけて拷問してください。お願いします」
涙をこぼしながら懇願するその姿に御坂美琴は足を止めた。
美琴(「正義の拷問師」前に佐天さんが言ってた、あの噂?)
気づかれないように、彼女は少し距離を取って聞き耳を立てる。
陽炎「いいよ。その依頼を受けてあげる」
あまりにもあっさりとした返事に、明石は顔を上げる。
陽炎「ここまで必死に私たちを探したんでしょ?
それ自体が、復讐の覚悟を試されてるってことだから」
そう言いながら、陽炎はさりげなくテレパシーを使い、明石の思考を覗く。
そこにあったのは、歪みも偽りもない後悔と喪失、そして消えない憎しみ。
その瞬間に御坂美琴は確信する。
美琴(噂は本当だったのね)
彼女は踵を返し、四人の前へと戻ってくる。
美琴「ちょっと待ってよ」
鋭い声が裏路地に響く。
美琴「アンタたち「正義の拷問師」とか言ってるけど、人を殺すつもりなの? どんな理由があっても、そんなの絶対に許されないでしょ」
美琴「復讐で何かが解決するなんて、思わないで」
その言葉に、空気が一変する。
不知火は静かに一歩前へ出て、僅かに重力で威圧する
不知火「御坂美琴か、、」
不知火「私達は、依頼者の意思を無視してまで無理に拷問をするつもりはない。それなら、3位が明石さんを説得すればいい」
美琴は歯を食いしばり、不知火を睨み返す。
御坂美琴「どこかで見た事があると思ったら第8位か、」
そして彼女は、明石の方を向く。
美琴「ねぇ、復讐なんてやめなよ」
美琴「そんなことしても、彼女は戻ってこない。明石さんまで壊れるだけだよ」
美琴「それにさ、アンタの彼女さんも、明石さんが復讐することなんて望んでないと思うよ」
明石「うるさい」
声を荒げた直後、堪えていた感情が一気に溢れ出す。
明石「犯人は今も逃げ続けて捕まってない。アンチスキルですら捕まえてくれない。誰が犯人を裁いてくれるんだよ。返せよ有里を、頼むから返してくれ有里を」
そう言って、明石は慟哭する。
その様子を黙って見つめていた正義の拷問師たちが、ゆっくりと口を開く。
不知火「3位の正義感は立派だと思うよ。それは否定しない。でも、みんなが3位みたいに強い人間じゃない」
黒潮「せや。別にどっちが正しいとかやのうて、価値観の違いっちゅうやつや」
睦月「全員が御坂美琴みたいに強くはなれない。弱さがあるから、人間なんだよ」
そして、不知火は視線を御坂美琴へ向け、淡々と言い放つ。
不知火「それでも3位の正義を通したいなら、私たちと勝負しない?」
不知火「明石さんの彼女を殺した犯人を、どちらが先に捕まえられるか。期限は2日」
不知火「私たちが先なら、拷問した上で殺す」
美琴「勝負?人の命を何だと思ってるのよ!」
怒気を含んだ声が響く。
不知火「嫌ならいいよ。私たちは、いつも通り犯人を捕まえて拷問するだけだから」
美琴「分かったわよ」
一瞬の沈黙の後、強く言い切る。
美琴「受けて立つわよ。絶対に、私たちの力で犯人を捕まえる」
不知火「捕まえられたら、いいね」
黒潮「明石さん、巻き込んでもうてすまんな。でもな、犯人は絶対に2日以内に捕まえる」
明石「お願いします。どうか、捕まえてください」
震える声で頭を下げる。
明石「私にとって、正義の拷問師は最後の希望なんですから」