魔物使い、はじめました。   作:YTとりあえずぶん投げてみる

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第108話 神託

 ()()()()()()

 

 神は、言った。

 

「異様な魔力を感じたと思ったら……いったい何の騒ぎですか!」

 

 ()()()()()()

 

 神が、揺れる。

 

 大きく白いまん丸とした御神体をこれでもかと揺らしながら、堂々たる足取りでこちらへ歩いてくる。

 

「た、隊長さんだ……」

「あれが噂の……」

 

 ザワついていた門前の空気が一気に変わる。

 

 さっきまで殺気立っていた門番二人も、背筋をピンと伸ばして道を開ける。

 

「た、隊長、違うんです!」

「そうです! こいつがっ、疫病神が!」

 

「疫病神……?」

 

 俺たちの直ぐ側までやってきた神が、そこで初めて俺の顔を見た。

 

 

「あ」

 

 

 神――梅野美鈴こと神乳。

 そのくりくりの丸い目が、ぱちりと見開く。

 

「望月さん……!」

 

「ああ……久しぶり、でいいのか?」

 

「はいっ、お久しぶりです!」

 

「お、おう」

 

 ゆるふわな柔らかい雰囲気はそのまま。

 

 ふわっとした肩までの茶色の髪。

 童顔気味の優しい顔立ち。

 ほんのり垂れた目元。

 控えめに言って、()()()()()可愛い。

 

 しかも以前と違うのは、その表情に迷いがないこと。まぁ、困り顔なのは変わらないけど。

 

 そして何と言っても皆さんお待ちかね――胸だ。おっぱいだ。神乳だ。

 

 この神乳、相変わらず規格外である。

 防具の上からでも分かる圧倒的存在感。

 いや、むしろ防具が仕事を放棄している。

 

 というか防具……なのかこれ?

 え、下着?

 ドラ◯エに出てきそうなエッッッ!なやつじゃん!

 クソデカな神乳が半分くらい外界へ進出してるんだが。

 

 意味わかんない! 恥ずかしくないの?

 でもありがとうございます!

 

「ああ……神よ……尊い……」

 

 横で影山が両手を合わせて拝み始めた。

 うるせぇ黙れ。俺もじっくり拝みたいのにお前ばっかずりぃぞ!

 

「実際に会うのはいつぶりですかね? 茜さんから()()()お話は聞いてますけど」

 

 梅野さんはぱっと花が咲いたみたいに笑って言った。

 

 ……なんか、前よりテンション高いな。

 前はもう少しおどおどというか、常に地雷原みたいな雰囲気だったはずだが。

 こんな破廉恥な格好する子じゃなかったよね?

 

 あとなんか姿勢が良い。

 前はずっと猫背気味、御神体はお隠れになっていて世界の損失が計り知れなかった。

 たが今は背筋を伸ばして本当に――本っ当に堂々としてらっしゃる。

 

「た、隊長!? やめてください! こいつと楽しくお喋りなんて!」

「そうです! こんな疫病神と仲良くしたら……!」

 

「え? 仲良くって、そもそも私たち知り合いというかお世話になった人というか……」

 

 門番たちの言葉に、梅野さんは小さい柔らかそうな唇に指を添え小首を傾げる。

 そして、

 

「私の人生を変えてくれた、大事な人ですよ。と〜っても♡」

 

 目を細めて、妙に艶のある声でそう言った。

 

 

「「「「は?」」」」

 

 

 門番二人が固まる。

 俺も固まる。

 影山は最初から固まってる。

 

 待て。

 その言い方なんだよ、やめろ。

 語弊しかない。

 茜に聞かれたらマズイんだから。

 

「い、いや、俺は別に――」

「私の初めてでした。あんなに激しく、優しく責め立ててくれた人……」

 

「うぉおい!? 何言ってんのっ!?」

 

 頬に両手当てて、いやん、じゃねぇんだよ!

 なんで爆弾ワードを重ねるんだ!

 そんな事実は一ミリもないぞ!

 

「え……嘘でしょ……」

「あの隊長さんが……?」

 

 周囲がまた違う意味でザワついた。

 

「まさか……前に隊長が言っていた気になる人って……」

「よりによってこの、疫病神……」

 

 おい門番、よりによってってなんだよ。俺も知らねぇよ。

 そして影山、お前はなんで俺を睨みながら泣いてるんだ。

 

「茜さんに飽き足らず、僕の、僕たちの乳神様にまで魔の手を……!」

「あなたは黙ってください盗撮魔」

「ひぐっ……!?」

 

 梅野さんの一言で影山が即死。

 前の半殺しの一件依頼、影山に対する当たりが強い。

 ゴミを見るような目で見てるじゃん。

 いやぁ懐かしいな。俺もその目で見られたことあるから知ってる。

 

 しかしこの子。

 強くなってる。

 精神的にも、たぶん立場的にも。

 

「それで……何があったんですか?」

 

 梅野さんがすっと表情を引き締める。

 さっきまでの柔らかさが消え、スンッと隊長らしい顔になる。

 

 門番二人が慌てて説明を始めた。

 

「い、いえ! こ、こいつが門前で威圧してきたんです!」

「しかもステータスも見せず、中に入れろと!」

 

「違ぇよ。そっちが先に喧嘩腰だったろ」

「うっ……」

 

 図星らしい。

 梅野さんは門番、俺、影山の順に見て、小さくため息をついた。

 

「……望月さん」

「はい」

 

()()、何かしました?」

「またってなんだよ。してねぇよ」

 

「本当に?」

「たぶん」

 

「たぶんなんですね……」

 

 疑うなよ。普段の行いで判断するのやめろ。

 まるで俺がいつも問題起こしてるみたいじゃん。

 

 ……起こしてないよ? 俺は悪くない。

 

 梅野さんはこめかみに指を当てて少し考え、それから門番たちへ向き直る。

 

「この方は松下さんの客人です。通行証も本物。通してください」

「で、ですが隊長! こいつのせいで――」

 

 だが門番の二人はここでも引かなかった。

 

「あの時、コイツのせいで仲間が死んだんです! コイツが連れてきた魔物のせいでっ!」

「そ、そうだ! また魔物を使って避難所《ここ》を襲うかもしれない! だから俺達は……!」

 

 だから襲わねぇって言ってるだろ。

 つーかあの時も別に俺が襲わせたわけじゃないし。

 

「その件はみんなで話し合って、もう終わったはずです」

 

 梅野さんの声は静かだった。

 

「そもそも望月さんがいたから……竹原の乱もアプデ後の混乱も、あの程度の被害で済んだんです。あなた達も彼に助けてもらって、それは分かってるはずですよね?」

 

「そ、それは、コイツの力なんかじゃない! 俺たちを助けてくれたのは、ほとんど血霧姫《ちぎりひめ》のおかげで……」

 

 ちぎ……なんて?

 

「(おい影山。ちぎなんたらってなんだ?)」

「(知らないんですか? 『血霧姫』、血液魔法を華麗に操る、茜さんの二つ名です。まず茜さんの血液魔法により血を霧状に纏って――)」

「(うん、そこまで聞いてない。黙れ)」

 

 また暴走した影山は安定のスルーだ。

 

 てか、なにその二つ名。

 あいつ、いつの間にそんなかっけぇ名前つけられたの?

 ズリぃぞ、俺なんて疫病神なんだが。

 

「その茜さんも、望月さんが仲間にした魔物である吸血鬼ですけど。望月さんがいたから茜さんもいるんです。つまり、全部望月さんのおかげです」

 

「それはっ……! 」

 

「はぁ……私、予定が詰まってるんです」

 

 梅野さんがまだ引かない門番二人を見据えて――

 

 

 

「通してください」

 

 

 一言。

 

 

 ――ピキッ。

 

 

「「ひぃっ」」

 

 

 おぉ、俺の時と同じくらいの圧だ。

 梅野さんから門番へ、魔力の圧が叩きつけられる。

 

「もう一度いいます。通してください」

 

 にこっ。

 笑顔だった。

 なのに門番二人の顔色がサッと青くなる。

 

「「……はい! 申し訳ありません!!」」

 

 え、怖っ。急に態度変えるじゃん。

 俺、思わず一歩引いたわ。

 

「どうぞ、望月さん」

「……あ、ああ」

 

 梅野さんはそのままのニッコリ笑顔で中へと促す。

 

「あと、そこの盗撮魔も。入るんだったら早くしてください」

「ありがとうございます! さすが乳神様! お優しい!」

「……きっも」

「酷い!?」

 

 当然だ。だって気持ち悪いしお前。

 

 重い鉄扉がギギギ……と開いていく。

 その向こうには、人の声と熱気、そして生き延びようとする連中の気配が満ちていた。

 

 要塞の内部だ。

 梅野さんはくるりとこちらを振り返り、にっこり笑う。

 

「ご案内しますね。……積もる話もありますし」

 

 そう言って一歩踏み出すたび、

 

 ()()()()()()

 

 世界に――神託が響いた。

 

「……影山」

「はい」

「すげぇな!」

「はい!」

 

「……あなたも相変わらずの変態ですね、望月さん」

 

「そんな褒めないでよ。オーク肉しかあげれんぞ」

 

「……褒めてないです」

 

 梅野さんは呆れたように、少しだけ笑ってため息を吐いた。

 

 

 

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