魔物使い、はじめました。   作:YTとりあえずぶん投げてみる

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第15話 危険ですから真似しないでください

「よし、そうと決まれば、ゴブ太郎!」

「ゴブ!」

「お前、囮になれ! ここからは別行動だ!」

「ゴブ!?」

 

 キラキラした目で俺を見ていたゴブ太郎の顔が、再び悲しそうな顔なる。

 

 レベルアップのおかげか、ゴブ太郎の表情が最初より読み取れるようになってきた気がする。

 ……ゴブリンの表情や仕草なんて、これっぽちも知りたくないんだけど。

 

「待て待て、何を勘違いしてるか知らないが、俺は今からアイツラを一網打尽にする素晴らしいアイテムを用意する。上手く行けば全員それで片付けられるぞ。だから、それを準備できるまでお前に時間を稼いでもらいたい」

「ゴブ、ゴブ?」

 

「お前が一緒に来ると匂いでバレるだろ。こいつら、お前のよく分からん匂いを追ってきたんだし」

「ゴブ……」

「幸い、まだこちらに気づいてないからな。やるならバレる前にサクッと片付けたい」

 

 どれだけ嗅覚が凄いのか知らんが、アパートにゴブ太郎の匂いがまだ残ってるから、あいつらまだウロウロしてんのかもな。

 部屋にいないのに気づいたら、ここもすぐバレそうだ。

 

 ゴブ太郎が心配そうな顔をしてこちらを見ている。

 そんな震えるワンコみたいに俺を見るなよ、とってもブッサイクだぞ。

 

「心配するな、そのまま逃げたりしないから……たぶん」

「ゴブゴブ!」

「はいはい、指示は例のスキルでしよう。あいつらが動きそうなら、駐車場に出ていって引きつけておいてくれ。ゴブリンの掟ってのがあるらしいから最悪死にはしないだろ、頼んだぞゴブ太郎!」

「ゴッブ!」

 

 

 ★☆★☆

 

 

「よし、これを載せてっと。あとは……これもいっちゃうか」

 

 ゴブ太郎と別れて30分。

 俺はアパートから遠すぎず近すぎない、いい感じの一軒家のガレージに勝手にお邪魔していた。

 

「……こんな感じで良いのか? ホントに大丈夫か、これ」

 

 その家の駐車場に停めてあった軽トラの荷台に、ガスボンベをガムテープでしっかりと固定する。

 ガレージに置いてあったバイクのオイル、ネジ、工具、スプレー缶、金属部品も目についた物は全部載っける。

 ついでに、この家の台所から拝借したお酒や食用油、小麦粉などの粉類、とにかくよく燃えそうなものを適当に箱に詰めてポンポン積んでいく。

 

 最後は、その辺の車数台から抜いてきたガソリンをポリタンク数個に抜き取って、これも軽トラの荷台に積めるだけ積んでロープでガチガチに固定。

 

 導火線はガスボンベのバルブを弄って時限式に……しようとしたけど、どうやればいいんだ、コレ?

 いくらやっても素人には無理っぽいので、拝借したガソリンと食用油、ガレージに転がっていた空き瓶で火炎瓶を複数作ってみる。

 

 ゲームで得た知識で見様見真似でやってみたけど、意外と様になってんじゃないか?

 こいつらもガムテープでグルグルに巻いて……よし、完成だ!

 

 突っ込む前にこいつに火をつけりゃいけるだろ……タイミング間違えて自爆とかしないよな?

 

「車の鍵が差しっぱで助かったな。家も鍵が空いてたし。でも、素人がやるもんじゃないな、これ。咎める人がいないってわかってても普通に心臓バクバクだわ。はぁ、これで俺もいよいよ泥棒か……『盗賊』ジョブにしたほうが良かったかな?」

 

 俺が他所の家に不法侵入して作っていたのは、即席爆弾だ。

 材料のメインはガソリンだ。

 そして、ガスボンベや食用油で火力をアップ。

 小麦粉とかの粉類は、昔読んだ漫画で見た、みんな大好き粉塵爆発を期待して適当に。

 金属片やネジは、某終末ゲーの手作り爆弾っぽくしてみた。

 ゲームや漫画で得た知識、フル回転だ。

 

「うぇ、ガソリンのニオイ、キッツいな」

 

 ビビりながら汗だくで作業を進める。

 ガソリンは揮発性が高いって言うし、今火花でも散らしたら……と考えると手が震える。

 ゲームなら「クラフト成功!」ってな感じで一瞬で終わるのになぁ。

 

 これが成功するかは知らん。

 ガソリンやガスボンベなら燃えるだろって知識しかないからな。

 小麦粉とかは好きだった漫画で粉塵爆発とかあったから適当に入れただけだし。

 

 

「ふぅ、準備OK。ゴブ太郎、そっちはまだ大丈夫か?」

《ゴブ!》

 

 俺はスキルでゴブリンたちを監視しているゴブ太郎と連絡を取る。

 

「動きそうか!? よし、今から急いでそっちに向かうから引き留めておけ! できるだけ一箇所に集めろ! あと……気をつけろよ!」

《ゴ、ゴブ♡ ゴブゴ――》

 ピッ!

 

 なんか騒いでたけど、急いでるから無視して通話をピッと切る。

 耳に当てていたスマホの画面を見ると、そこには『ゴブ太郎』の文字。

 

「普通に電話だな、コレ。便利なんだけど……ファンタジー感ゼロだ」

 

 ゴブ太郎のゴブリンサーチ&デストロイのおかげで俺のレベルも上がり、新しくいくつかスキルを取得している。

 

 その一つが、今使っていたスキル『魔物通話』だ。

 遠隔で仲間の魔物と連絡を取れるスキルで、アプリから仲間を選んでタップすると直接相手の脳内に話ができる、というものだ。

 

 うん、普通に電話だな。

 ゴブ太郎曰く、応答しないといつまでも頭の中に謎のベル音が鳴り響くらしい。

 昔ながらの黒電話の音、といえばわかるだろうか。

 

 あれが応答しないとずっと鳴り響くそうだ。

 まるで休日にこちらが電話に出るまで延々とかけてくる上司の電話みたいに。

 着信拒否? 『魔物通話』にそんな便利なものはない。

 

「……あれ、精神的にくるんだよな。有給休暇だっつってんのに、かけてくんなや」

 

 かつての上司を思い出す。

 嫌がらせに使えそう。

 俺はブラック上司じゃないからしないけど。

 ホントだよ?

 

 このスキルによって遠隔でゴブ太郎に指示を出せるのはデカい。

 やろうと思えば、ゴブ太郎一人に魔物刈りをさせて俺は拠点で優雅に終末を楽しむ、なんてこともできちゃう。

 

『魔物使い』は仲間が倒した敵の経験値も自分のものにできるらしいからな。

 遠隔でもそれは有効ってのはネットの「魔物使い総合スレ」の有識者に確認済みだ。

 まぁ、俺はゴブ太郎と離れるのは怖いからやらないが。

 

 正直、今だって本当は離れたくなかったんだ。

 大切な俺の相棒《肉壁》だからな。

 ゴブ太郎には言わない、そんなこと言ったら絶対に騒ぐから。

 

 よし、じゃあ一発かましてくるか!

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