魔物使い、はじめました。   作:YTとりあえずぶん投げてみる

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二章 終末、はじめました。
第25話 チュートリアルを終えて


「よいしょお!」

 

 俺は気の抜けた声とともに金属バットを振り下ろす。

 目の前に飛びかかってきていた、灰色のやたら汚い毛並みの二足歩行の犬――コボルト。

 

 涎を垂らして牙を剥き、俺の首目掛けて飛びかかってくる。

 だが、俺の振るった金属バットのほうが速い。

 

 ドゴっ!

 

「キャイン!?」

 

 スキルの補正が効いてるのか、レベルアップ前の俺なら有り得ないくらいのスピードとパワーで振り下ろされた一撃。

 

 当たった瞬間、コボルトの首が弾けるように地面に落ちる。

 

「うえぇ、汚っ! でも、やっぱりスキル、使えるな」

 

 身体の力を抜きフッと一息つく。

 頭が大変なことになってるコボルトは、光の粒となって俺のスマホに吸い込まれていく。

 

「ふぅ……スキルの試しはこのくらいでいいかな」

 

 ソロで数戦こなすうちに、俺は改めて確認した。

 ゴブ太郎から奪っ……いや、譲り受けたスキルは、想像以上に安定して使える。

 攻撃力の補助、精度、動作の反応速度――すべて問題ない。

 

「……金属バットにもスキルが乗るのはラッキーだったな」

 

 スキル『剣術』『先制斬り』というくらいだから、刃がついてるものだけと思ってた。

 だが、金属バットでも問題なし。

 

 包丁は餞別にとゴブ太郎にあげちゃったし、家にある刃物は果物ナイフだけだったから助かった。

 

「コボルトか……ゴブリン以外のも増えてきたな」

 

 二足歩行の汚ぇ犬・コボルト。

 強さはゴブリンと同じ、いや、犬だけにやや動きが早い。

 まぁ、誤差の範囲だ

 

「……しっかし、まさか引っ越して一カ月であの部屋を出ることになるとは」

 

 アパートは中心街から少し離れた場所にあり、隣近所ともほとんど会話したことがない。

 たまに出勤の時なんかにいくらか見かけたくらいで、特に顔も覚えていない。

 

「昨日のゴブリン騒ぎのあと、誰かが戻ってくる気配なかったしな。みんな死んじゃったのかねぇ……」

 

 建物の影には乾ききっていない赤黒いシミがいくつか残っていた。

 住人がゴブリンに襲われた跡だろうけど、死体は一つ残らず消えていた謎。

 

「夕方までは残ってたんだけど……。ゴブリンどもが食っちまったか、夜の内に他の魔物が持ってったのか、もしくは……」

 

 まぁ、気にしてもしょうがない。

 分からないことはスルーだ。

 

 

 この終末へと向かってる世界で、俺の目的はシンプルだ。

 

 

「生き残ること」

 

 

 そのために必要なのは、強さと安全圏と物資。

 この三つが揃えば死なないで済む。

 少なくとも、今日はな。

 

 レベルを上げて、仲間を増やして、強くなる。

 無理はしない、欲張らない、慎重に。

 モブはモブらしく、堅実に長くしぶとく、生き残るのだ。

 

 

「情報収集も必須だな」

 

 

 俺はアパートを出てから、街の中心部に向かって歩いている。

 昨日までとは違う、未知の領域を探索してリアルな情報を集めるためだ。

 

 昨日ゴブ太郎と彷徨った地域は、半日かけて歩き回ってもゴブリンしか出なかった。

 だから、今日はもう少し人の多いところ――まずは、この街の中心を覗いてみる。

 

 ゴブ太郎たちの気が変わってこっちに戻る可能性を考えて、少しでも距離を取っときたいってのもある。

 

「でも、歩いてくのだるいんだよなぁ。駅まで割と遠かったし――おっ?」

 

 そんなことをボヤきながらフラフラしてると、通りがかったアパートの陰にいいものを発見した。

 

 住人の誰かが乗っていたママチャリ。

 よし、鍵は差しっぱなし。

 もう持ち主はいないだろうし、少しの間、

 

「……借りまーす」

 

 そう呟いて、俺はサドルに跨る。

 漕いでみるとペダルは軽く、ギアの油もまだ落ちていない。

 これなら大丈夫そうだな。

 車やバイクも考えたけど……

 

「道路の状態や音のことを考えたらな。自転車の方がコスパ良いだろ……おっ! またコボルト(経験値)発見! はい、こんにちは、っと!」

 

――ガツン!

 「キャンっ!?」

 

 チャリで爆走して追い抜きざまに挨拶《先制斬り》。

 これ、楽でいいわぁ。

 

 

 

 

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