魔物使い、はじめました。   作:YTとりあえずぶん投げてみる

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第31話 おお ゆうとよ しんでしまうとは なさけない

 落ち着け、落ち着け、望月友人。

 素数だ、素数を数えると良いって有識者も言っていた!

 

 1……2……3……何……カップ……あるんだ……9……90、いやそれ以上……100……?

 

「……ふぅ」

 

 喉がカラカラだったせいか、水がうまい。

 口の中に冷たさが広がって、少しだけ落ち着く。

 

「……ちょっと、暑くないですか?」

「あ、あー……たしかに、ちょっと暑いかもですね」

 

 避難所の中は人が多くて、空気がこもっている。

 エアコンは動いてるみたいだけど、湿気のせいか蒸し暑い。

 

「すみません、ちょっと上着、脱いでもいいですか?」

「あ、はい、ど、どうぞ!」

 

 俺は「暑いなぁ〜」なんて言いながら、作業着の上着を脱ぐ。

 下はTシャツ一枚。背中に汗が張りつく感覚が気持ち悪かった。

 腹に入れたジャ◯プが恥ずかしい。

 さりげなく背中に回しておく。

 

「そういえば……私も、少しだけ暑いですね」

「なっ!?」

 

 そう言って、梅野さんが薄手のパーカーを脱ぐ。

 その瞬間、俺の世界がスローモーションになった。

 

 ――デッッッッッ!!!!

 

 あれだ。

 さっきの見間違いじゃなかった。

 こいつ、ガチだ。

 反則級のやつだ!

 

「? ど、どうしました、望月さん?」

「い、いえ、でかッ、いや、エッ!?」

 

 マジか……。

 テーブルに載ってるよ。

 小玉スイカ、いや、メロンか?

 

「い、いや、その、さっきの話だけど。そんなだと重くないかなって……いや、性格! 性格の話ね!」

 

「え? あ、はい、そうですね。確かに、私、重い……ですよね」

 

「そ、そうでしょう? いつ、いつからそんな?」

 

「えと、昔からです。小さい頃からこんな感じで……。これが原因でイジメられたりもしましたし」

 

「な、なるほど。そういうの、よく聞きますもんね」

 

 いかん。

 俺何を言ってるんださっきから!

 言葉のチョイスがマズい!

 こんなの今の世の中一発アウトだ!

 セクハラ、ダメ、絶対!

 

 俺は誤魔化すようにペットボトルの水を一口飲む。

 冷たい水が頭を冷静にさせる。

 

 そうか、小さい頃から……。

 やっぱり重いんだなぁ。

 

「……あの、望月さん、大丈夫ですか?」

 

「え、えっと、はい! 俺は至って冷静ですよ! 冷静に事を進めて行きたいと思います!」

 

「はぁ……?」

 

 梅野さんは首を傾げて不思議そうな顔だ。

 ヤバい、おっぱい効果でメッチャ可愛く見える。

 元々顔は可愛らしいなと思ってたけど、今は余計にそう思える!

 

 くっ……!

 これがおっぱいの魔力か……!

 さすが終末世界! 一筋縄じゃいかないぜ!

 クールだ、クールになれ望月友人!

 

「……で、ちなみに、そのおっぱ……それって肩凝らないんですか? ほら、その、色々気遣うでしょ?」

 

「え、あ、肩ですか? まぁ、……凝り、ますね。あの、正直、無理……してます」

 

 ダメだ。

 その「無理してます」って言い方、ズルい。

 俯きながら色気のある声で囁くとか……エロい。

 単純に、エロい。

 

「ですよね! 分かります分かります! 凝るよね、やっぱり! それに、生活にも支障ありそうだし」

 

「……そう、そうなんです。特に、他の人は気になるみたいで。私は普通にしてるつもりなんですけど……」

 

「でしょうね! 俺も気になりますもん! というか、もはやそこしか見てませんし!」

 

 止まらない。

 セクハラが止まらない!

 耐えろ、耐えるんだ!

 これ以上はいけない!

 

「え……望月さんも、やっぱり……。嫌ですよね、こんな根暗で役立たずな重たい女なんて」

 

「いえ! 俺は大好きです!」

 

 はい、大好きです!

 大事なことだから口と頭で2回言います!

 

「だい……え? えぇ……!? あの、それって……」

 

「いやもう、驚きですよ。どうして今まで隠してたんですか!? これほどのポテンシャル、国家レベルの財産ですよ!? あ、性格の話ですけど!」

 

 特別天然記念物、認定!

 いや、何言ってんだ!

 くそっ! まさか俺が脂肪の塊一つ、いや二つでこんな取り乱してしまうとは……!

 自分が情けない!

 

 はっ!?

 違う、これはスキルだな!

 きっとこの子、『魅了』とか持ってるんだ!

 ジョブは『サキュバス』だ、間ぁ違いなぁい!

 

「こ、国家……? あの、そんな大げさな……。その……恥ずかしいです、やっぱり」

 

「恥ずかしがる必要なんてない! むしろ誇ってください! 胸を、胸をもっと張って! 重たい? 結構! なら、俺が支えます! いや、支えてもいいですか!?」

 

 あぁその“恥ずかしいです”の言い方やめろ、やめてくれ。

 声が柔らかくて、語尾に色気が乗ってる。

 耳が喜んでる。

 

 あれ、美鈴さんはサキュバスって言った?

 サキュバスは魔物……なら、雇用できる!?

 

「いやぁ、こんな素晴らしいモノをお持ちだなんて、最初から言ってくれればいいのに! 良ければ、もっとお話したいです!」

 

 言葉の勢いが止まらねぇ!

 何を堂々とボディサポート宣言してんだ!

 いやでも支えたい、全力で支えたい。

 理性の声が小さくなってきてる、やばい。

 

「あ、あの、すみません! あの、あの、恥ずかしいので、そのくらいに……。でも、その、そんなに私の性格を褒めてもらって、えと、ありがとう、ございます……」

 

「いえ、こちらこそありがとうございます! 俺、おっぱい大好きなんで!」

 

「え? おっぱい……?」

 

「え? あ……」

 

 

 ――はい死亡。

 社会的に、俺は今この瞬間、消滅した。

 理性、戦死。

 本能、暴走。

 

 でも後悔は、してない。

 ありがとうございます。

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