ゴブリンを倒した達成感に浸りながら、コンビニの入り口を見る。
ゴミ箱がひっくり返されてるけど、店内はまだ無事っぽい。
物資補充のチャンスだな。
でも、さっきのゴブリンが単体だった保証はない。
SNSで見た情報だとゴブリンは群れで行動するって話だ。
もしかしたら近くに仲間がいるかもしれない。
慎重に動かないと、囲まれてあっさりゲームオーバーじゃシャレにならん。
自動ドアが半開きのまま止まってるコンビニに、金属バットを握りしめてそっと踏み込む。
「よし、物資ゲットしてさっさとアパートに帰るぞ……ん?」
店内に入った瞬間、鼻をつく異臭。
なんか、腐ったゴミみたいな……いや、もっと生臭い、鉄みたいな匂い。
薄暗い店内、蛍光灯がチカチカしてる。
棚はめっちゃくちゃに荒らされてて、床にはパンやおにぎりの包装が散乱してる。
惣菜コーナーは特に酷い。
コロッケや唐揚げが床にぶちまけられ、プラスチックの容器が踏み潰されてる。
ゴブリンが目についた食べ物をかっさらったんだろうな。
でもよく見ると、棚の奥の方とか飲料コーナーとかはまだそんなに荒らされてない。
異常事態になってまだ1時間強しか経ってないからか、商品は結構残ってる。
「よし、いいぞ! この分なら物資確保はバッチリだな!」
リュックを下ろして、棚の奥から保存の効く携帯食や缶詰をガサガサ詰め込む。
ペットボトルの水とスポーツドリンクも追加。
そういや、さっきのゴブリン戦で汗かいたし、塩分補給も大事だな。
ポテチも1袋…いや、2袋入れとくか。
目についた物資を確保して、ふと、カウンターの方に目をやると――
「うっ……!?」
そこに、店員らしき制服を着た人が倒れてる。
いや、倒れてる……じゃない。
頭が……ぐちゃぐちゃに潰されていて、血だまりが床に広がってる。
なにか硬いものでしこたま殴られたみたいな、ひどい状態。
「さ、さっきのゴブリンの仕業、か?」
その惨たらしい有様の死体をマジマジと見てしまった。
俺の胃がグッと締め付けられる。
「うぉ……うぇっ……!」
たまらず床に膝をついてゲロを吐く。
朝食べた食パンとサラダが、胃液と一緒にドロッと出てくる。
「げほっ、げぼ、うぇ……」
くそっ、ゲームじゃ死体なんて慣れっこなのに……!
現実の死体、マジでキっツい。
ただの一般人の俺には刺激が強すぎる……。
ゴブリンを倒した時は平気だったのに……。
「はぁ……はぁ……。落ち着け、俺。ゲームだ。これはゲーム、お前の好きなゲームだと思え!」
なんとか気を取り直して、作業着ズボンに入っていたハンカチで顔を拭う。
「これはゲーム、ゲームゲームゲームっ……!」
死体から目を背けながらカウンターの裏にレジ袋を見つけて、ヒィヒィ言いながらさらに物資を詰め込む。
インスタントコーヒー、電池、簡易包帯……使えそうなものは、もうなんでもかんでも持ってく。
でもな、俺は一線は越えない。
ちゃんと代金は払うぞ!
あとで泥棒扱いされたら嫌だし。
財布から1万円札を2枚、レジの横に置く。
「これで足りるよな……? 終末世界でも、ちゃんと払っとかないとなんかモヤモヤするな……」
リュックはパンパン、レジ袋も2つ抱えて、コンビニの出口に向かう。
重いし動きも鈍るけど大事なことだ、仕方ない。
これでしばらくの食い扶持は確保できたぞ。
「あとは……」
いい感じのスライムでも見つけて、魔物雇用を試して、さっさとアパートに帰る。
ただの一般人の俺は無理しちゃダメだ。
安全にコツコツとゆっくりレベル上げが一番だ。
ただのしかばねになった店員さんに両手を合わせ、自動ドアをくぐって外に出る。
朝の空気が冷たく感じて、心地よい。
遠くでまだサイレンが鳴ってるけど、さっきより静かになった気がする。
辺りを見回すと、あちこちに黒い煙が立っているのが分かる。
魔物に襲われて火事でも起きたんだろうか。
アパートまでは徒歩5分。
金属バットを肩に担ぎ直し、リュックとレジ袋を抱えて歩き出す。
「魔物に見つかる前にさっさと……あっ!?」
が、……道の向こう、俺のアパートがある方向に新たな影がチラチラ動いてる。
1体……2体か……いや、3体!?
緑色の肌で、ボロ布の服。
1体は棍棒を持ち、1体は何も持たず素手だ。
もう1体は……なんか鈍い色した板切れ持ってる?
うわ、マジかよ、あれナイフか!?
「くそ、いきなり3体とか! てか、刃物は駄目だろ、刃物は!」
しかも、こっちをガン見してる!?
獲物の姿を捉えて、意気揚々とこちらに向かってくるゴブリンの群れ。
「うおっ、マジか!? ど、どうする? どうしようっ!?」
一瞬、さっきの店員さんを思い出し、店内を振り返る。
頭をボコボコに潰されて殺される、そんな未来を想像して、心臓が口から飛び出そうなほどバクバクしている。
「くそ、……やる、やるしかねぇか!」
向かってくる魔物の群れを睨みつけ、俺は覚悟を決めた。