半人半妖に救えるものはあるのか【魔】   作:紡縁永遠

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ミタキハコトラウマ

 「あなた、どうやって…」

 「一回喰われて、そこから殴り殺しただけだ、まぁよく覚えておけよ、アレが怪異を使い、怪異を纏い、怪異を語り、怪異を口にし、怪異を創る、専門家にして、半人半妖の化け物、銀憑廻喪だ、」

 「事実とはいえ、はたから聞くと悪口だな……大丈夫ですか?マミさん」

 「あ、え、あ……」

 「お前なぁ、目の前で食われてんだぞ、しかも血も出てんだから……というわけで、廻喪お前責任持って今日は一緒にいろ」

 

 目の前で、人が喰われた、事実生きてはいるが喰われて鮮血が舞ったことは揺るぎないことであり巴マミの目に刻まれたことである。その為、巴マミはトラウマとも言える錯乱状態になっている。

 

 「いや、このご時世で、俺が行ったら、何があるか」

 「160が何言ってんだ」

 「お前180の嫌味か?!!」

 「そうじゃねえ、おまえ成長が遅かったからな、ほれさっさといけ、家までの道もわかるんだろ?」

 「おめぇが、長すぎんだよ!」

 

 中一の時から少しは伸びたがそれでも低い廻喪と大きすぎる捌咎、そもそも捌咎が中学二年生女子と共にいて通報されないのも廻喪が小さいながらも、普通にぶん殴れるくらいには仲がよく、言い合いが多いからである。

 

 「はぁ……暁美ほむら、今回の件についてだが、暫く魔女を任せる、捌咎も、もう魔女を殺せるから、」

 「いや、魔女だって生物なんだから碑に限定しなくとも死ぬと思うんだよな」

 「それを最初に言え!!今までの勘違いで聞いてなかっただけじゃねぇか!」

 「悪かった、じゃ、たのむわ、」

 「はぁ…解散」

 

 錯乱した巴マミを背負って巴マミの家に向かっう廻喪、鍵もポケットから盗み取り、扉を開ける。

 

 『……あ?靴が少なすぎやしないか?まだ中学だろ?マンションとは言え一人暮らしか…捌咎のヤツこれ見越してたのか?』

 

 靴の少なさから、廻喪は巴マミの家の実態をなんとなく察する、背負った巴マミを近くのソファに座らせると巴マミが一つ質問をする。

 

 「……ねぇ」

 「なんでしょう」

 「生きてるのよね?」

 「?もちろん」

 「そうよね、だってあなたは喰われて……」

 「食われた程度じゃ、俺は死にませんよ」

 

 孤独を知っている巴マミが恐れていること、己の責任で周りから人がいなくなることである。

 

 「心配しなくとも、ここにいます」

 

 くしゃりと、巴マミの頭を撫でて廻喪は隣に座る。

 

 「でも……」

 「ああいう、仕事をしていれば、血なまぐさいことはよくある、それは、理解してるでしょう?」

 「それでも!もう誰も失いたくないのよ!私のせいで…誰かが離れていくのが耐えられないの!ようやく後輩も見つけたのに、こんなことになって……」

 

 巴マミは向き合って廻喪の胸を叩いて叫ぶ、頼れる先輩としてではなく、脆く儚い、ただの女子中学生らしく、泣いて叫ぶ、魔法少女ではなく、女の子として、少女として、

 

 「そうか?少なくとも、あんな目にあった俺は、ここにいるが、」

 「……」

 「少なくとも、アレくらいのことで、マミさんから、人が離れるとは、思いませんが、一人になりたくないと、そう言うのならば、気の済むまで、ここにいますよ」

 「なら、少しこのままで」

 

 胸に顔をうずめるようにして巴マミは廻喪体を預ける。

 

 「分かりました、好きなだけ」

 

 もう一度優しく頭を撫でる廻喪は巴マミが泣きつかれて寝付くまでそれを続けた。寝てしまった巴マミを抱きかかえ、寝室に運び、外に出てから、平日だったため来ていた制服のみを怪異の力で盗む。と言ってもブレザーとスカートをハンガーに掛けただけに終わり自分は、部屋の隅で座ったまま眠りにつく。

 

 「……」

 「おはようございます」

 「……」

 「何ですか?」

 

 壁を介して覗くように睨む視線で起きた廻喪は質問するも終始無言のままの巴マミである。

 

 「見た?」

 「……ああ、見てない、見ずに服を脱がす、怪異もある」

 「そう……責任、取って」

 「……できることならなんなりと」

 「なら、暫くあの子達を頼むわ、多分かなり傷ついているはずだから」

 「それはアンタもだろう、指震えてるぞ」

 

 巴マミとて、年頃の女の子である、知らぬ魔に寝室にいて下着姿で寝ていれば警戒もする。それでも廻喪は涼しい顔をしながら受け答えをする。

 そして、落ち着かせるために柔らかな言葉を使っていた廻喪は砕けた喋り方をしながら、巴マミの状態を見抜く。

 

 「……でも、私は魔法少女だから」

 「そうか?巴マミは、ただの少女だと思うが」

 「それでも、私は魔女を倒さないと」

 「そんな状態で、させるわけにはいかない、今日は平日だが、自分の事を注視しろ」

 「……」

 

 廻喪の言葉に用意していた学校鞄を下ろす。かといって自分がそうするわけでもなく、廻喪は外に出ようとする。

 

 「報告とかもあるから、俺は行くけど、魔女退治に、行くなよ」

 「うん、分かった…」

 

 廻喪は忠告を一つした後で学校へと向かう。途中で捌咎と合流して。

 

 「状態は?」

 「かなりまずい、何とか頑張ってみるけど、あの二人には、これからも、喋ってもらわないと」

 「孤独、か」

 「ああ、病は気から、と言うが、そうなりそうで怖いな」

 「なら、さっさと終わらせていくんだな」

 「了解」

 

 授業は何事もなく終わり、廻喪はそのまま巴マミの家へ、捌咎は静岡へ向かう。

 

 「懐かしい……」

 「悪いね、魔法少女を救うためにここは重要になりそうだからね」

 「必要ないだろ、」

 「いいや、必要だ、彼女達は脆すぎる、特にかいもん(廻喪)との相性は悪い意味で良すぎる、君みたく白か黒かの判断を苦手とするかいもんは、魔法少女にはいい薬だけど、最悪の場合、中毒になりかねない、巴マミはすぐにでもそうなるだろうね、」

 「なるほど、五歩目の対策か、」

 「そうだ、これに関しては手折の考えではあるが、キャスティンが君たちに死を許さない、君たちの存在を決定づけるのは、怪異譚だ、あのハートアンダーブレードの一人目の眷属、初代怪異殺しと同じようにただ死ぬことはない、何があろうとも復活出来る。それは君もだ、キャスティングの外から動けるのは完全に中立でなぬてはいけないからね」

 「まぁ、少なからず気づいているだろ、アイツなら」

 

 静岡には、廻喪と捌咎が実験を受けていた場であり、現在臥煙伊豆湖が買い取り改装された建造物がある。何でも知っていると謳う臥煙伊豆湖が廻喪の毒性を魔法少女が侵された時の対策として使用することを決めた。

 

 「なるようになれ、どうせ、俺にできることなんて無いんでね」

 「いや、あるよ、特にソウルジェムについては君のほうが適任だ。恐らく近いうちに暁美ほむらから話されるだろうね」

 「そうかい、」

 

 未来を予言するように断言した臥煙伊豆湖に見送られ捌咎は見滝原へと帰っていく。廻喪から悪い知らせが来ることを予感しながら。

 その悪い予感というのは、巴マミの家にお邪魔していた廻喪に一つの知らせが届いたことから始まる。

 

 「マミ、鹿目まどかが魔女の襲われたよ」

 「?!すぐに?」

 

 インキュベータの魔女を知らせる言葉だった。

 だが、巴マミは魔女のもとに向かおうと立ち上がってすぐに崩れ落ちる。

 

 「な、なんで、」

 「すぐに戻ってくる、動かないでくれ、今のままじゃ戦えん」

 「……ごめんなさい、お願いするわ」

 「……言ってくる…インキュベータ、場所は?」

 「こっちだよ」

 

 髪を崩すように頭を撫でた後、外に出てインキュベータを追う廻喪、本来ならばインキュベータは巴マミを呼ぶ必要はない、すでに戦えるものは暁美ほむら、鬼灯捌咎、銀憑廻喪の三人以外に新たな戦力が増えたのだから。

 それでも巴マミのもとに来たのは、巴マミの精神状態をみての策略である。

 現在襲われている鹿目まどかの方は、一度はその脅威を逃れていた。

 

 「これで、自殺はなくなったけど……なんで?私が廻喪さんを怖がったから?」

 

 魔女の口付けによる一種の催眠からなる集団自殺、二種の洗剤を混ぜて発生するガスでの自殺は、鹿目まどかの機転によって防がれた。だが、それが原因で結界に閉じ込められてしまったのだ。

 青い水中のような円柱状の空間であり、周りには輪状になっているメリーゴーラウンドがあり、メリーゴーラウンドの木馬はドット絵で作られて、木馬の代わりにテレビが上下していたりもしている。

 メリーゴーラウンドには一定間隔で棒があり、その様はフィルムのようにも見て取れる。

 テレビから流れる映像には、魔女に喰われたのにもかかわらず、平気で立ち、燃え盛る腕を気にもとめず、当たり前のように殴り殺す、廻喪の姿であった。

 

 『怖いなんて、思ったから、こうなったのかな?私が悪いのかな?バチが当たったのかな……』

 

 自責の念から思考が低下していった鹿目まどかを救ったのは、暁美ほむらでも、銀憑廻喪でもなく、青髪にフォルテシモの髪飾りを付け、剣を携えた美樹さやかだった。

 

 「さやか…ちゃん?」

 

 溢れ出す使い魔を切り裂き、距離を詰める美樹さやか、だがその剣先が魔女に届く前に、結界にヒビがはいる。

 

 「一歩入魂、外に洗剤転がってたとこを見るに、洗脳系か?自力は低いと見たが、結界の位置から、合ってそうだな、美樹さやか、お前の魔法少女化については、あとで聞く。まどかを守ってやれ」

 「え?うん……」

 「……妖刀と言っても刀じゃないが…マヨイガ、隠れ神…鉾槍(そうふ)

 

 霧がかった手元から槍斧、ハルバードを取り出した廻喪は、魔女を一刀両断に切り捨てる。

 

 「さて、美樹さやか、質問だ」

 

 廻喪は普段人の名前を呼ぶときは、下の名で呼ぶことが多いが、怒りや真面目な仕事のときなどは、姓名両方を使って呼ぶ。

 

 「な、何」

 「何を願った、まぁ、何となく予想はしているが、一応聞いておこう」

 「恭介を助けるために」

 「助けるか、そうか、後悔は?」

 「してない!」

 「分かった…ならいい、それと、他人を助ける、なんて思わないことだ、助かる気がないやつは、俺は助けん、意味がないからな」

 

 上条恭介、美樹さやかの幼馴染であり、事故で入院をしている。技術が高いこの見滝原でも治せないと診断された手を見て、願ったのだ、治ってほしいと、それが美樹さやかの願いであり、暁美ほむらの知る呪いの一つでもある。

 

 「インキュベータの奴と話すなら、専門家を介したほうが、いいといったんだがな、契約したなら、意味がない、後悔はすんなよ、今後、何があろうと、自業自得ということになる、手伝うくらいしか、俺達専門家は、できないんでな」

 「うん、」

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