半人半妖に救えるものはあるのか【魔】   作:紡縁永遠

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オヤネガイタスケ

 「どういうことだよ、マミが動けなくなったのに行けないって」

 「あそこはイレギュラーが多すぎるんだよ、魔法少女も一人増えているし、生身で魔女倒せる存在が二人もいるんだ、関わるのはお勧めしないよ」

 

 インキュベータは見滝原の隣、風見野にて佐倉杏子の見滝原への干渉を止めようとしていた。正確にはイレギュラー存在が増えないようにだ。

 

 「それにマミが動けなくなった魔女からどうやって逃げたんだよ、それともイレギュラーってのは逃げ足は速いのか?」

 「違うよ、専門家と名乗る人間が、その身を呈して庇ったんだ。名前は「銀憑廻喪」知っているのかい?」

 「まぁ少しな、怪我したのか?」

 「そりゃ、身を呈して庇ったんだからね、行くのかい?」

 「気になってな、」『アイツがマミを助けたのか、変なもんだな、救う、本当に救えるのか?けど身を挺したというのなら……心配だな』

 

 魔法少女を救う、この言葉に佐倉杏子は疑問を覚えていた。かつて自分がやろうとして、失敗したことである。家族と魔法少女、関係はないが、人のために何かできるなんて考えないのが佐倉杏子である。

 一方、魔法少女を救うために動いている専門家二人は、己の過去、過去の咎から来る罪悪感、自己批判から来る事柄への整理をしていた。

 

 「はぁ…」

 「とりあえず、臥煙さんからの伝言、キャスティングが死を許さないんだと」

 「そうか…まぁ何となく」

 『不死性に関しては、廻喪の方が理解してるか、そりゃそうだよな、アイツ自身、妖刀、笛のやつ以外は自身の血肉を叩き上げた物か、どんなに切裂かれようが瞬時に再生し、半人半妖故に、弱点も無効されちまう、扇、羽に戸をするそれで扇か、レイニーデヴィルとくらやみ、そこに初代怪異殺し、俺たちが作ったらそれこそ俺たち以外には勝てないだろうな』

 

 扇、臥煙伊豆湖から聞いた、くらやみを語った創造怪異、レイニーデヴィル、苛虎に継ぐ個人によって生み出された怪異、扇はそれでもレイニーデヴィル、初代怪異殺しとの因縁が少なからずあっての顕現ではあったが、その厄介さは、専門家を複数人相手取れるほどに強力であった。

 直江津にそれができる場が揃っていたこともあったが、それを突破するには、妖刀心渡や、何でも知っているくらいには知っている、後のテロリストが数ヶ月かけてようやく突破するに至ったほどであった。

 

 「なぁ、お前は?ある意味としては、骸を作ったことを、見続けたのは、お前のほうが多いだろ?」

 「そうだな、この身を焼き焦がしても、ぬぐえる気はしないな」

 「そうか…それと、気になってたことが、あるんだが、地獄って、八大地獄だけじゃないだろ、お前なんで、八大地獄だけ持っていて、耐えれるんだ?現にお前、自分の炎で火傷してるだろ?」

 「……確かにな、なら俺自身を罰するのは閻羅を語る奴かな、」

 「なら俺は、先輩と同じくらやみかな」

 

 互いに、可能性として残っている、己を殺しうる存在、個人で産み出した怪異の危険性の第一は、基本的に産み出した本人にしか対処できないことにある。

 レイニーデヴィルしかり、苛虎しかり、産み出した本人が一人で対応をした、苛虎は最終的な一撃に心渡が使用されたが、それまでは産み出した本人が戦っていた。

 扇もそれは変わらず、何でも知っている専門家のアドバイスがアリはしたが、ケリをつけたのは本人であり、そのうちそれを産み出した本人が答えにたどり着くくらいには成っていたと言える。

 専門家は総じて化け物である。

 化け物以外には成し得ない。純粋なる人間が、己に呪いという名の罰を七年、現在は十六年続けることができるものなのか、全知を謳い、悪者であり続け、寝床を消して、歩く道すらも無くした。偽物であれ、本物であれ、精神においては、化物をも凌駕ができると言って過言ではない。

 

 「ま、できることは手伝いだけどな」

 「たぶんオメェはそれが続くことはねぇよ」

 「……そうか、やっぱり、白黒はっきりしないか、」

 「オレはそれでもいいと思うがな」

 

 バランサーができないことなど、廻喪も理解していた。それは自分の仕事ではないことに、

 

 「「薬になれなきゃ毒になれ、でなきゃ俺はただの水、魔女狩りといこうか」」

 

 それでも何者かになるために、動く、薬に慣れずとも毒にはなれるように。

 

 「そうか、今のあなたじゃ、戦えない、それは理解しているのに?」

 「それでも、ついて行くくらいはできる!」

 「分かった……美樹さやかが魔法少女になった、理由は願いは、友達を助けるため、恐らく、今日明日で、壁にぶつかるはずだ、」

 「そうね、それに私が動けないと知ったら、あの子が来るかもしれないし、」

 

 放課後、巴マミの家で廻喪は今後も起こったことへの説明をしていた。

 それに対して自分も動くと、まだ回復していない精神でありながら断言をしたマミだった。

 

 「なら、早めに行きますか、さやかの性格から、多分、一人で行動しそうだ」

 「そうね、行きましょう」

 「その件についてだけど、急いだほうがいいよ、すでに戦闘が始まっている、捌咎がいるから多分大丈夫だと思うけどね」

 「あ〜ならいいか、」

 

 美樹さやかは捌咎と共に、魔女の使い魔と戦っていた。

 

 「あたらない!」

 「頭に血が上りすぎなんだ、少し落ち着いたらどうだ」

 「いや、なんでアンタは攻撃しないのよ!」

 「それじゃ意味ないだろ、魔女であるならいざしれず、この程度に苦戦してるんだ、それに、客のようだ、久しぶりだな、佐倉杏子だっけ?」

 「せっかく育てた使い魔を相手にされるとはね、」

 「原則、サーチアンドデストロイなんでね」

 

 捌咎とは、一度しか顔を合わせていないが、それでも実力くらいは理化しているのだ。魔女相手に臆せず火を放つ、そんな化け物じみた精神力は、すでに露見している。

 

 「だが、育てた、このセリフは聞き捨てならんな」

 「なんで?四、五人喰わせてグリーフシードを手に入れたほうがいいじゃん」

 「そうか、その解は?」

 「なに?アンタ人助けのつもり?魔法少女を救うって言ってたけど、そもそも人助けなんて意味がない、それとも、そっちのアンタは正義だなんだって理由で契約でもしたの?自分の為にすれば、自業自得で済むのにな」

 

 全て自業自得にすることで納得する、諦めをつける、佐倉杏子が魔法少女として身につけた己を守るための武器である。その考えは、専門家の中でも、絶対に中立を守る忍野メメの考えと酷似している。ならばそれは捌咎にも理解できることである。

 

 「確かにな、人はひとりでに助かるだけだ、誰かが誰かを助けるなんてありえない。上条恭介だっけ?美樹には悪いがバイオリンの音色、気持ち悪いとしかいいようがない」

 「アンタ!なんてっ!」

 「気があ「レイニーデヴィル×猿の手……ったく、口下手は理解してるが、今のはお前が悪いぞ、捌咎、」離せ!」

 

 捌咎に、自分の好きな上条恭介が弾いているバイオリンの音色を否定された美樹さやかは、怒りを表すが、行動に移す前に、佐倉杏子を拘束するように猿の左手が掴みかかる。

 

 「捌咎、お前ソイツらとそこにいろ、巴マミもあまり顔を合わせたくないだろ、と言うわけだ、少し付き合え」

 「ちっ!」

 

 佐倉杏子を掴んだまま廻喪はその場から消えた。消えたあとに残った捌咎は気まずそうにしながら、廻喪がいないことで起こる、視覚情報からなる勘違いを解消するために、姿を変える。

 

 「変罪……」

 「姿変えられるのね」

 「ん?ああ、副次効果だから体力消費が激しいんでな、あまり使わない、絵面の問題だ」

 

 165cmくらいの姿になった捌咎は少し気まずそうに美樹さやかへと向きなう。

 

 「悪かったな、だが、助かることを諦めたやつを、助ける事はできない、そう決めていた、だから?あの音色には(しん)がない、そう感じた」

 「しん?」

 「あ?何で分からない、用はココだココ、やろうとする意思はあるが、できないと諦めた。それでもできる、そんな状態でまともにできるわけねぇだろ、」

 

 自身の胸を叩きながらそう断言する捌咎。白黒はっきりした者しかいない、そもそも白がなく黒しかない地獄を怪異生として持つ捌咎は中途半端な考えを否定する。自身のあり方に揺れる廻喪だが、それでも答えを出した上で最前線で動く為、そこに文句はないが、人前で見せるものとして不完全なものを、完璧だと偽ることを嫌う。

 美樹さやかの願いで回復した手に上条恭介の意思は干渉しない。そこを気持ち悪いと表現したのだ。

 

 「あの音色にお前はいらない、そもそも存在しなかった、それくらいはわかるだろ、」

 「それは酷いんじゃないかしら?」

 「うん、」

 「それでも、あそこに、あの場に、美樹さやかは必要だったのか?」

 「……もういい、」

 

 巴マミと鹿目まどかも擁護にはいるが言い返せずに美樹さやかはその場を去る、

 

 「私はいい薬になったと思うけど」

 「暁美さん!」

 「そうでしょ?この手の専門家の言葉を無視して契約したのだから、あれくらい言われても文句は言えないはずよ、佐倉杏子と話したかったのだけど、遅かったわね」

 

 佐倉杏子に会いに来た暁美ほむらにとっては、捌咎の言葉には計画を見てもいい方に転がる可能性があるのだ。

 

 「そうだな、あの精神は巴に似ているが、友がいる美樹にはできん……」

 「確かに一人だったけど……」

 

 巴マミの戦い方、精神は、一人だから成し得たものであり、その証拠に、学業以外を魔法少女として生活していたマミは友達と言えるものはいなかった。

 

 「悪いとは言ってない、ただ、その分人といれば崩れやすくなる」

 「そうね、」

 「…………げ、」

 「どうかした?」

 「佐倉杏子が今晩俺たちの家にお世話になるらしい、ソレより母さんが帰ってくる」

 「そう……」

 「たぶん何日かいるはずだから、数日したら会いにくればいいだろ」

 「いや、さすがにそれは……」

 

 捌咎は美樹さやかの説明に失敗するがそれ自体は気にせず予見してたというように見切りを向けるが、そこに送られてきたLINEに嫌な顔をする。

 内容は廻喪と捌咎の母、銀憑十重が帰ってくるという知らせだった。佐倉杏子がお世話になることは予想していたのかそこまで反応はない。

 鹿目まどかの落ち込む姿を見て捌咎は謝罪する。

 

 「悪いな、関係悪化になって、」

 「でも、考えがあったんでしょ?」

 「ああ、暁美はお前が魔法少女になることを注意してたが、美樹もはいってんだよ、まぁ契約、それも人の為の願い、という勘違いで契約させちまったのは俺達専門家の落ち度と言えるからな、そこは気づいて欲しかったが、フラレでもしない限りは無理そうだ……それと、この事言うんじゃねぇぞ、余計悪化する。廻喪に任せた方がいい……じゃぁな」

 

 専門家として何かに関わる時の見方というのは重要で、被害者と思い続けた人間が、現人神にまでなかった事例もあるのだ、勘違い、誤解、という嘘ほど、危険極まりないものはないのかもしれない。

 そして、この一件の要因の一人である佐倉杏子はというと。

 

 「なるほど、アレルギーは?」

 「ないけど」

 「嫌いなものは?」

 「無い…」

 「だって!」

 「その流れなら、自分で作れよ」

 

 十重が佐倉杏子の相手をしている間、米を研ぎ捌咎の材料を待つ廻喪は文句を垂れる。

 

 「買ってきたぞー」

 「お帰り〜捌咎、廻喪に彼女できたなら教えなさいよ」

 「彼女じゃねぇぞ、というより迷惑かけんな、一応客だろ、なんで家主が一番失礼なんだ」

 「そう?でも分かったこともあるからね、」

 「何ですか?」

 「君の家がないことかな?だって君、杏子ちゃんだっけ?私が帰ってきてから一ともスマホを使ってないでしょ?今の時代、連絡手段くらいは持っているはずでしょ?後はさっきから食べているお菓子、普通のお菓子もあるけど、カロリーメイトとかの保存食、栄養食なんかが混じってる。安定した食事がない事を表してる、どう?」

 「あってる……」

 

 この予想はほとんどが偏見ではあるが、すべて的を得ている答えだった。

 

 「辛気臭い話は、後にしてくれ、飯ができたぞ」

 「じゃぁ、この話は後にしましょうか」

 「あ、ああ」

 「「「「いただきます」」」」

 

 廻喪が作った豚汁と捌咎の漬けていた漬物、そこにご飯と完璧なる和食を食卓に並べ、食べ始める。

 

 「……あっ…………」

 

 食べ進めていると、佐倉杏子の顔に雫が垂れる。

 

 「どうしたの?」

 「いや、慣れてたはずなのに……なんで、誰かと、一緒に過ごすなんて、ご飯を食べるなんて……久しぶりだから、嬉しくて……」

 「……そう、なら喉に詰まらせないようにね、」

 

 佐倉杏子にとって、家族との別れはあまりいいものとは言えない。杏子にとって親との別れは、魔女と人の別れで終わってしまったのだから。自業自得と割り切っても、杏子の願いは家族の為の願いであり、家族を想う気持ちはあるのだ。

 その後も涙交じりのご飯を食べ終えて、また話し合いが始まる。

 

 「「「「ごちそうさま」」」」

 

 「さてと、ココからが本題、二人の徹夜行動は慣れてるけど、杏子ちゃんも似たような理由かな?一応私も専門家だからね、ソレについては何も言わないよ、でも君は中学生でしょ?義務教育を受ける権利がある、安心して、強制はしないから、私は君の親じゃないからね、あくまで権利だから。でも杏子ちゃんが行きたいって言うなら、私が口利きをしてあげよう、」

 「いや、流石にソレは……」

 「私個人としては言っておいたほうがいいよ、自立できているのは認めるよ、現に廻喪と捌咎の二人は学費を自分で払っている。けど、それでも子供だ、親へ甘える権利は持っている。もちろん、この家も君が帰る場所となることもできる、あとは君次第だね」

 「でも!私は……それに迷惑じゃ……」

 「迷惑というのなら、私はこの提案をしていないわよ、それじゃあ、私よりこの家を使っている二人に聞いてみようか、どっちがいい?」

 「家にいないだけで、家主は母さんだろ、こっちの事情も、ある程度知っている、問題はない」

 「同じ理由で、というか家主の決定を否定するのはねぇぞ」

 

 追い出されても生活できる二人だが、今の場を気に入っている二人は最高権力者(家主)に逆らわず、賛成意見を出す。

 

 「なら、お願いします!」

 「よし、それじゃあ、廻喪、捌咎明日は出かけるから、乙女の買い物に男は不要」

 「ああ、うん、」

 「乙女……」

 「何か言ったかしら?」

 「「すいませんでした」」

 

 年齢を仄めかす言葉に切れた十重は笑顔で質問をする。もちろんその圧に勝てる訳もなく二人は即座に謝るのだった。




恋愛表現って難しいですね
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