半人半妖に救えるものはあるのか【魔】   作:紡縁永遠

12 / 21
マドカオモイカニ

 「じゃ、行ってくるからよろしく」

 「はいはい、迷惑かけないように」

 「じゃぁ行ってくる」

 「おう、風見野の方は任せろ捌咎に」

 「おい!」

 「さやかと相性悪いだろ、なら風見野の方を、やったほうがいい」

 

 平日の為授業などはあるがそれでも、捌咎と美樹さやかは願いの内容から少なからず傷ができていた。そこで今は誰もいない風見野に捌咎を回したのだ。

 

 「ったく、なら頼むぞ、」

 「任せろ」

 「一応内容は聞いてるけど、最悪の場合、鹿目まどかにも影響を与えかねんぞ」

 「……知っているが、自覚ができていないのも問題だろ」

 「……それも、そうだな、」

 

 美樹さやかの考え方は、実現できる場が整っていない。孤独を対価に何えたことである。そして、周りに戦える者たちしかいないく、取り柄がないと勘違いしてしまった少女が、いることも問題である。

 

 「なんで?昨日のカニのせい?」

 「どうした?太ったのか?……っ?!それはどうしてそうなった」

 

 鹿目まどかは昨日、帰り道にて蟹に行き逢っていた。そして体重を奪わていたのである。

 

 「とりあえず、病院に…」

 「まって!」

 「なんだよ、あきらかな異常だぞまどか、これを解決できる方法があるのか?」

 「わからない、けど、できそうな人は知ってる」『けど人ならざるものに対する専門家なら、蟹とかもなんとかならないかな……』

 

 鹿目まどかは人として異質な体重から魔女ではなく、魔法少女ではなく、専門家を頼ろうとした、そしてそれは正解である。

 

 「なるほどねぇ、正解だよこっちに来たのは

 「【オモシ蟹】、九州山間部の民間伝承で、【重いし蟹】、【おもいし神】、【重石蟹】とも呼ばれる。

 「蟹であったりウサギであったり、美女の姿をとることもある、細部はバラバラだけど、共通しているのは【人から重さを奪う】こと。

 「まぁ、蟹に逢ったというのなら蟹なんだろうけどね」

 「それは何なんだい?というより蟹なんて、こんなところで会うわけがないだろう」

 「場所自体に意味はない、そういう【場】ができればそこに生じる。この場合は鹿目まどかの心の問題だ、ああいうものは何処にでもいる、鹿目さんの視点、心の持ちようできり替わる」

 「それじゃぁ、なんで体重計も反応するんだい?」

 「それは、単なる未知に対する理解ではなく恐怖による固定だ、ありえないという考えが出すものだ、それと、鹿目さんには悪いけどね、

 「君は誰かのせいでそうなったんじゃない、

 「酷なことを言うようだけどな、

 「被害者面が気に食わない、

 「重さを奪われた原因は鹿目まどかにある、」

 「そっか…」

 

 体重がなくなった、それに対する相談は専門家であった。未知に対する恐怖とは別に、鹿目まどかにある気持ちは周囲の人間が影響していた。

 

 「まぁ、時間はあるし、学業くらいは……いや、まぁいいか、それじゃあ、話し合いといこうか、勿論言いたくないこともあるだろうから、鹿目淳子さんがいる事に関してはそっちで決めてくれ」

 「はぁ…何か巻き込まれていることは理解してたつもりだけど、言わないつもりか?」

 「うん、」

 「分かった…ただし、お前だけの命じゃないことは理解しろよ、」

 「分かった…」

 

 そうして、私服状態の廻喪が戻ってくる。

 

 「ああそうだ、一応非礼をしたのはこちらだ、つまりは下手に出でお願いする立場だ、冷水で体を洗い清めた後、清潔な服、あまり着ない服とか、冠婚葬祭とかに着る服がいいかな、」

 「分かった…」

 『にしても、臥煙さんも酷なことを言う、蟹に合わせて、精神を少しでも強くしろなんて、保険だろうけど、もう少しやりようはあると思うんだけどなぁ』

 

 今回の蟹の一見はすべて臥煙伊豆湖の方針である。ただし蟹に行き逢うかどうかは鹿目まどかの精神状態によるものであったが何でも知っているというだけあり、そこに確信はあったというわけだ。

 

 「それじゃあ始めようか

 「リラックスをして、数を数えよう」

 「一、二、三、四、五、六、七、八、九、十」

 「質問をしていくよ、

 「君の名前は?」

 「鹿目まどか」

 「誕生日は?」

 「10月3日」

 「通っている学校は?」

 「見滝原中学校」

 

 雰囲気作り、さらに言えば鹿目まどかの精神状態、【心の壁を取り払い】【信頼関係を作り上げる】【彼らから信頼を得る】信じる者は救われる、己が救われると信じているものは

 

 「小さい時の失敗談は?」

 「言いたくないです」

 「好きな本は?」

 「招き猫のワルツ」

 『もう一つくらいは聞きたいけど、流石にないかな』「一番辛いことは?」

 「……私は、何も持っていない、マミさんやほむらちゃん、さやかちゃんみたいに戦えるわけじゃない、頭もいいわけじゃない、運動もそこまでできない、廻喪さんみたいに色んなことができるわけじゃない……何もできないことが辛い」

 

 折り紙をしながら淡々と質問をしていく廻喪は辛かったことに対して、否定をする。蟹の形に折ってそれを地面に置く。

 

 「違う、そんな程度、辛いに入らない、他人と違うのは当たり前で、皆ができることができないのは当たり前だ。だから、まだあるだろう?」

 「……何もできなくて、できないのに、みんなに頼ってばっかでお荷物になり続けて、それでも一緒にいてくれる、それなのに、怖いと思っちゃった、魔女に食べられて、それでも平気そうに、それが当たり前みたいに魔女に立ち向かう。ここまでしてくれる人を、私は否定してしまった。何も持っていない私が、持っているものを捨てようとした」

 「捨てようとして?」

 「捨てようとして、それでもそれを無かったことにして、まだ頼ってる、そんな私に何の意味があるの?こんな私に出来ることってないの?」

 「劣等感、と言うやつかな?けど、そこまでして、そう思うだけのことがあって、君は何をしたのかな?いや、今は違うみたいだね……」

 「見える、あの時の、昨日の蟹が見えるよ」

 「うん、俺には見えないよ、でも、何かいうことはあるだろう?」『もともと俺のだから見えるけどな、』

 「わ、私は、あの時、魔女に見せられた映像を見たとき、死ぬべきだったと思う、だって命をかけた人に対してするべきことじゃなかったから!」

 「本当にそう思うのかい?」

 「思、います」

 「ならそれが【君の思い】だ、どれだけ辛くても、どれだけ罪悪感を感じようとそれは君が背負うべきだ、

 「他人任せにしちゃいけない、

 「君が自暴自棄にならないように、これ以上捨てないように、君の【おもし】を支えてくれた、御人好しの神様に御礼を

 「ここだけの話、神ってのはみんなロリコンだ、古事記にも書いてある、少女の涙には弱いんだよ」

 「あっ」

 

 廻喪の言葉に鹿目まどかは顔を上げるが、それに反応してか紙の折り紙がまどかに向かってとんでいき壁に叩きつけようとする。

 

 「おっと、これはまずい」

 「え?」

 

 それを既のところで、廻喪が蟹を掴むことによって阻止される。

 

 「せいのっ

 「まったくせっかちな神だ、祝詞もまだあげてないってのに」『まぁこれは阿良々木先輩ご立ち会った蟹の再現だ、大元が俺のだから、動いた瞬間に捕まえられる』

 「え?いや、それって……」

 

 廻喪はひっくり返した蟹を押さえつけるように足蹴にしている。神を踏みつけにした、敬意もなく、乱暴に。

 

 「蟹なんてひっくり返せばこんなもんだ、どうだろう、まどか、俺としてはこのままグチャリと踏みつけても構わないんだけど、」

 「けど…!私を守ってくれた神様で……」

 「たった数時間でもかい?」

 

 まどかの劣等感はここ数週間で起きたものであり、蟹についても廻喪が仕向けたように憑かせたもの、時間にして、十二時間は最低として、一日も経っていないのだ。

 

 「それでも…!」

 「君は襲われた、今回のこれは被害者側でいい、コイツらは人とは違うんだよ、

 「鹿目さんが顔を上げたことに怒ったのか、涙を流したところに欲情したのかは知らない、そんな事、俺達にわかりっこない

 「言葉が通じないのなら戦争しかない

 「結局、こういうのは心の持ちようだからさ、【相手にお願いができないのなら】危険思想に持っていくしかないんだよ」

 「っ!」

 「このまま潰しても、君の願いは叶う、草抜きじゃなくて、草刈りみたいになるけどね、この際それもありだ」

 「それは…」

 「君は重みを奪われたわけじゃない、差し出したんだ、まどかが重みを渡したことで、鹿目さんは何かを得ているはずだ、等価交換と言うやつだ。

 「ズルをするならとことんやろう、受け取ったものを返さずに、重みを返してもらうというのなら、殺すしかない、そうだろう?」

 「待って廻喪さん、私、できるよ、できるから

 「ごめんなさい、ありがとございました、

 「けど、これは私の【思い】だから、私が自分で背負います、なくしちゃいけないものだった。

 「どうか私に、重みを返してください

 「私があなたから受け取ったもの、私が楽になるためにしてくれたことを、お返しするから

 「だから、貴方がくれた、みんなとの思い出を、縁を返してください」

 

 「どうか私に友達を返してください」

 

 「私はお荷物だから

 「でも、

 「それは間違いでした。

 「今だからこそ分かる、それは手放しちゃいけないもので、だから

 「私に友達を返してください……

 「みんなが、繋げてくれた命は、私だけの物じゃないから、だから…」

 

 

 「別に、悪いことじゃない、立ち向かえば悪いってことでもない、逃げたきゃ逃げればいい。

 「でも、君がこういう形を選ぶなら、それが君の【想い】なんだろうね

 「()()()が心配で、みんな来ちゃったみたいだ、連絡してなかったのか?」

 「え?あっ!」

 

 鹿目まどかは今回の一件について誰にも伝えていなかった、だがインキュベータは都合がよければどんな状況でも現れる、友としての縁を切られた程度では、暁美ほむらの目的は崩れない、それがインキュベータにまどかの状況を吐かせる要因となった。

 その結果、専門家という橋渡しのおかげで、会派をある程度できるようになった巴マミはほむらからの連絡を受けてこの家に集まった。

 タイミングよく十重と佐倉杏子も帰ってきたため、廻喪は席を外す。

 

 「積もる話もあるだろ?少し出てくる」

 「いってらっしゃーい……

 「ある程度は把握している感じ?それならいいんだけど

 「まぁ、君達の精神は脆いんからね、杏子ちゃんも頑張って取り繕っているけど、ちょっとした角度から小突いてやればすぐに崩れる、もともともろい心という柱に、突貫工事という支えを作って、作るにあたりもろい部分ができるという悪循環、専門家はその突貫工事をとめるためなんだよ、」

 「あの、単純って思いますか?この気持ち」 

 「……隅におけないね、私の息子は、まぁ魔性ということを見ればそうなるのも仕方ないかな、薬にはなってるみたいだね、それもかなりの薬に、まぁいいと思うよ、ライバルは増えるだろうけど、

 「まどかちゃん、君は何も持ってい、そう思っていたみたいだけど、そんなわけないでしょ、だって人に助けてもらえるそんな人間が何も持っていないわけがない、

 「どれだけ、劣等感を抱いてもこの数週間から、今後も続く魔の物語は君に、君たちに大きな糧となる、

 「それにこれを仕掛けたのは専門家だ、万が一なんてありえない、億が一もね、

 「まどかちゃんが成長するために起こした出来事であり、君が魔法少女ではなく人として何処までできるかを、知るためのものだ、

 「次は……いや、何でもない、今日は泊まる?早めに決めないと、料理当番に怒られるから」

 

 種明かしを含めた、説明、それでも全ては語られず、鹿目まどかの成長の為の一日となった。




化物語要素全開でやらせてもらった今回の話ですが、魔法少女を救う過程で、まどかをどう救おうかと成った時に、魔法少女にするわけにもいかないから、ということで、箱の魔女で廻喪を恐れてしまった、という所や、元々の劣等感を利用して重いし蟹を憑かせました。ひたぎさんは母親との縁を切られましたが、まどかは友達との縁を切りました、その証拠にこの物語で主人公にはまどかを苗字+さん付け呼びという少し距離を離したやり方にしました。気づいてくれたら嬉しいです
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。