半人半妖に救えるものはあるのか【魔】   作:紡縁永遠

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ホムラトキワタリ

 「え〜今日は転校生を紹介します、あ、あと上条くんが復帰しました」

 「ふぁ…」

 「流石に早すぎない?」

 「寝てないからな、」

 「佐倉杏子です、よろしくお願いします」

 

 佐倉杏子の転校日、徹夜三日目の廻喪と捌咎は欠伸をしながら、挨拶を聞き流す、席は捌咎の隣である。

 

 「なぁ…教えてくれ、全くわからない」

 「数学とかは他に聞け、文学なら問題ない」

 「そう言えば、英語得意だよね、二人は」

 「現地の仕事は現地の言葉で、専門家としてのポリシーだ、英語、中国、スペイン、フランス、ドイツ、アラビア、ロシア、ルーマニア、ラテン語、この辺だな、」

 「まぁ基本は、英語で十分だけどな、植民地とかは、嫌な顔されるかもだが、支配国の言語を使えば、通じたりもする…ちなみに、読むことはできない」

 「なるほど………」『ここまで関われるようになったのは彼らの恩恵だけど、この空気のなかにはいたくないわね』

 

 学校に通っていなかった佐倉杏子は廻喪に質問をするが文系のみと断られる。それでも高校レベルなら問題なくこなせるくらいには出来るのだが、暁美ほむらが気にしている問題はそこではなく、巴マミと鹿目まどかの廻喪に対する視線である。

 正確には廻喪の隣にさも当たり前のようにいる杏子に対する圧である。

 

 「まぁノートを、取っていれば、問題はないだろ、後は、教師の話を、最後まで聞くことだな、教科書に無い、裏技なんかを、言っている事がある」

 「確かに、テストで出るところを教えてくれる先生もいるわね」

 「そういう問題に限って配点高いんだよな、」

 「主体性を、調べるためだろ、」

 「ああ、最近廃止されるらしいやつだな、けど、知識技能と、思判表は残してくれた方が良いんだがなぁ、」

 「貴方達、勉強できるのね」

 「補修面倒くさいからな、無断欠席多いから、テストで取らないと、」

 

 仕事で海外に行くことは当たり前の二人は素の知識量が異常なのである。というより、扱う怪異性は知識の分だけ強くなるため、制御も兼ねて調べ尽くしてあるのだ。記憶力は羽川翼には劣るものの、専門家としてはトップにはいる知識を兼ね備えている。

 

 「まぁ、先輩に聞けばいいだろ、マミさん、数学できますか?」

 「できるわ、」

 「なら頼みます、昨日の今日で、慣れるとは思ってないけど、それでも、話せるようになったほうが、いいでしよ、」

 「そうね、」

 「それじゃぁ、午後も頑張りますか、」

 

 昼休みを終え、その日の後半戦が始まる。欠伸をしながらも、問題なく授業を進めた廻喪と捌咎は帰る前に暁美ほむらに止められる。

 

 「魔法少女について、だいじな話があるの、ついてきてくれるかしら?」

 「分かった……足止め頼む」

 「了、まぁ止められるかはわからんがな」

 「止めろ」

 「善処する」

 

 専門家は、魔法少女の真実に対して少なからずの予想をしている、臥煙伊豆湖に限っては全て知っているが、二人は知らされていない。

 それでも、内容の予想ができるため、他の魔法少女達に伝えないためである。

 

 「ふぅ……、一応、ある程度の予測は立ててある、」

 「そうなの?」

 「ああ、ソウルジェム、いやSeoul Gemは、魔法少女の魂を封じている、これに間違いはあるか?」

 「?!え、ええ、そうよ、どうしてわかったの?」

 「Seoulは魂、Gemは宝石、魂の宝石となるわけだ、」

 「凄いわね、そんなことにヒントもなしにたどり着くなんて、」

 「ヒントはあった、まぁ専門家でもなければこんな連想はやらないからな、」

 

 専門家であるが故の気づき、だが、これだけではない。廻喪や捌咎、専門家は総じてキュウベェの事をインキュベータ、孵卵器と呼ぶのである、勿論暁美ほむらもそれに気付いていないわけではなかった。

 

 「そう、ところで貴方達はキュウベェの事をインキュベータと言うけど、それについては?」

 「incubator、意味は孵卵器、これに関しては確信は持てなかったが、魔女の孵化を促進させている、もしくは卵を増やしている」

 「それも正解、正確には魔法少女の成れの果てが魔女よ、インキュベータは魔女が絶望した時に生まれる感情エネルギーを回収する為に動いているの、

 「宇宙の寿命を延ばす為にやっている、感情を持たないインキュベータはそれを生み出せないから、魔法少女を使って回収した後の魔女の間引きと、エネルギー回収先を同時に行う、

 「私は、まどかを魔法少女にしない為に時間遡行を繰り返している」

 

 孵卵器と呼ぶ理由も臥煙伊豆湖からは説明がされていなかった二人だが、それでも的を外さないほどの予想を立てていた。そして、インキュベータに対して嘘つきと廻喪は評していたのだ。

 

 「嘘つきには二種類いる、全てが嘘で塗り固められた存在、そして嘘はつかないが、真実も語らない、インキュベータは後者、この予想も当たるとは、やっぱり何でも知っているのか、

 「インキュベータは鹿目が魔法少女になることを願っていた、それに対してさやかに対してはそこまで執着をしていない、この二つから、魔法少女の才能は、魔女化時のエネルギー回収量を表している。

 「ということは、まどかが魔女になった場合、手につけられないくらい強い魔女が生まれる可能性がある」

 「……なんで?私はそこまでで言ってないけど、」

 「やっぱり合っていたか……

 「暁美ほむら、少し君にとって酷な話になるかもしれないがいいか?」

 「……分かった…」

 

 ここまでの情報から自力で最後まで答えにたどり着いた廻喪はほむらの時間遡行に対する認識を改めようと話し始める。

 

 「まず前提として君は、時間旅行について大きな間違いをしていると思う。

 「時間旅行によって運命を変えることは絶対にできないという、はっきりした現実だ。

 「君が、科学に基づいて復学した最初の世界をルートAとして、一度目の遡行、魔法少女の真実を知った世界をルートXとしようか。

 「君はルートAの過去へ、一ヶ月前の過去に飛ぶつもりでワープしたのだろう、

 「しかし、君がワープした先は、ルートAの一ヶ月前ではなく、ルートXの一ヶ月前だった。

 「そして、失敗を繰り返し、何十何百と世界を渡り歩いた結果、この世界、ルートXどころじゃない、そうだね、ルートΩXЭ2DΣ8Э……の一ヶ月後、つまりはこの現代にたどり着いたと言うわけだ、

 「この言い方だと、そこに暁美ほむらがいない理由になっていないように聞かれるけどそうじゃない、ルートAからルートXに渡った時、ルートXの暁美ほむらは別のルートに行っている、

 「もしくは魔法というくらいだから、都合を付けるために、暁美ほむらが統合されたと言ってもいいかもね」

 

 今この場にいる世界が、己が追い求めた未来に辿りつけないルートにいる事を知ってしまった。それだけではない、守ると決めた相手は、もう別の世界で終わっているという現実を突きつけられる。

 

 「そんな…じゃあ、私がやってきたことは無駄だったの?」

 「何をもって無駄とするかだ、君が今まで見てきた世界に、専門家はいたか?いないのなら、それは大きな武器となるはずだ、都市伝説、街談巷説、道聴塗説、これらは古来より、人がもつ未知という、恐怖という感情からなる存在だ、怪異がいるこの世界なら、インキュベータと交渉ができるかもしれない、」

 「そんなこと言ったって、アレに何ができるかもわからないのよ?」

 「それを何とかするのも專門家だ、こう言ったら何だが、人に危害を加える人ならざるもの、この時点で専門家として動く理由になる、」

 

 インキュベータとの交渉を確定事項と断言する廻喪、助けようと時を渡り続けたにもかかわらず、守る相手は自分が知らないまどかということに、ほむらは諦めを感じていた。

 それでも、廻喪は専門家として、動くことを決定する。

 

 「なんで?そんな判断ができるの?」

 「精神の問題だ、魔法少女は総じて脆い……はぁ足止め失敗か……もう少しやってくれよ」

 「ほむら!開けろ!」

 「流石に失礼だろ」

 「隠さなければ済んだ話でしょ?何で隠したの?」

 「専門家としての判断だ、昨日言われたはずだろ、お前らは脆い、魔法少女は総じてな」『廻喪から、空木返しで一方的に聞かされたが、どうするつもりだ?』

 

 空木返し、天狗倒し、木伐り坊とも言われる怪異。炭焼小屋や岩窟の中などに寝ていると夜中に木を伐る音が聞こえ,やがて大木の倒れる音が響き渡る。翌日その辺りにいっても何もかわったことがない、音だけの怪異である、対象を絞り込むことで廻喪はほむらが話した内容を捌咎に伝えていた。

 そして、昨日十重から魔法少女に伝えられた事柄、精神面の弱さ、これは専門家として、安全とはほど遠い内容である。

 怪異に行き逢う人間は精神に何らかの問題を抱えているが、それでも人として生きていられるかは、この事実が最も非情と言える。

 

 「それで、どうしたのよ、鬼灯さんからは何も言われなかったはずでしょ?」

 「お前が廻喪にだけ、魔法少女についてだいじなことを話してるんだろ?」

 「……何で?」

 「アタシたちに伝えないで、何で廻喪達だけなの?」

 「魔法少女として大切なことなんでしょう?」

 「インキュベータの告げ口だ、安心しろ、黒焦げにしてきた」

 「だって、真実というのは共有されるべきだろ?人間誰だって知りたがることじゃないか、だから教えてあげたんだよ」

 

 鹿目まどかに抱えられたインキュベータがさも当たり前のように、伝えた理由を語る、だがそれにいち早く反応したのは、ほむらではなく廻喪であった。

 

 「自分では伝えなかったのにか?随分と都合がいいな、孵卵器、まぁそれはどうでもいい、てめぇに何言っても無駄だからな、とりあえず、この件には邪魔だ……雷獣……マヨイガ」

 

 窓を空け、インキュベータを投げ飛ばした後、紫電一閃、雷獣を利用した雷で焼き切り、その後マヨイガにて、結界を発動、インキュベータの侵入のみを否定する空間が作られた。

 

 「……これから話されることは真実だ、それでもいいか?どんな内容であれ、知る権利はあるからな」

 

 そして語られる、魔法少女の真実である。

 

 「じゃあ、アタシたちゾンビにされたようなものじゃないか!」

 「あ、ああ……」

 「……っ!」

 「あっ、さやかちゃん!」

 「……こうなるから、黙っていた、それにまだ話していないことがある」

 

 聞かされた事実から逃げるようにその場からいなくなったさやかを見送り、今度は魔女についてが語られる。

 

 「……そんな、じゃぁアタシ達は人を殺してきたっていうのかよ」

 「それは…?!杏子!よけ「はぁ゙っ!」……え?」

 「マミさん……?」

 

 魔法少女の成れの果てが魔女である、それに対して言葉に出したのは杏子であったが、その事実に行動で示したのが巴マミだった。

 リボンでほむらと杏子を拘束した後、杏子のソウルジェムを砕こうとしたのだ。ただ、マミが撃ち放った弾丸は、廻喪の裏拳によって弾かれる。

 

 「落ち着け巴マミ、お前は魔女にはなりたくないだろ」

 「それでも、魔法少女が魔女になるというのなら、みんな死ぬしかないじゃない!」

 「させるかよ……」

 「イヤ!離して!」

 

 廻喪はマミに攻撃をやめさせようと言葉を発するが、魔女になるという事実から、死を選び、今度自分の頭にあるソウルジェムへと銃口を向けるも、廻喪がマミに抱きついたことにより、腕が上がらずそれも失敗に終わる。

 

 「魔女が魔法少女の成れの果て、とんでもない言葉遊びだ、少女や、少年というのは成長過程を指すからな。

 「魔女になった少女達が今だ意志を残しているかも俺にはわからない。

 「だが、希望を届ける意志が、絶望を撒く存在になった、人ならざるものになった、そこに止めてもらいたいという意志すらも残っていないのかもしれないが、

 「それでも、人ならざるものを殺したことを、悲観するな。絶望するな、」

 「それでも、魔女は魔法少女から、人からなるものでしょう、人を殺したことにかわりはないわ!」

 「まどかには、昨日言ったことだけどな、

 「言葉が通じないのなら戦争しかないんんだ。しかなかったと割り切れとは言わない、だけど、いや、だからこそか、

 「魔女へと成った魔法少女が出来なかったことをしろ、魔女に成ったら止めてやる、人は一人で生きていく、独りでに生きていけないの化け物だ、俺や捌咎がそうであるように。    

 「化け物と成ったら止めてやるよ。だから化け物になろうとするな、人を殺そうとするな」

 

 人を殺した過去を最も二人の専門家、魔女を人ならざるものとして、魔法少女に人を殺した業を背負わせまいと、必死に説得をする。

 人を殺して化け物になることだけは二人にとって絶対に許せないことだからである。

 

 「そんなの、屁理屈じゃない、魔女になって、助からないのなら、今死んだほうが!「ふざけるな!」!」

 「助けてくれる存在はいなくとも、手伝ってくれる存在はいるだろう、

 「一人ではあるが独りではない、

 「言葉に出さなきゃ頼ったことにはならないのか?助けてって言わなきゃ、助けを求めた事にならないわけでもないだろ、軽はずみに言えないことなんていくらでもある、

 「それでも、頼れ!己を化け物とするな、俺達みたいになるな!人を殺してしまえば、こうなってしまえば本当に化け物だから……」

 「でも……」

 「何のための専門家だよ、人ならざるものに対する専門家だぞ、任せろ、絶対に救ってやる。だから生きろ、魔女になることを理由に死ぬな、」

 「私達は…生きて……生きてていいの…………?」

 

 泣きながら、懇願するように、今にも消えてしまいそうなか細い声で廻喪のといたマミ。その頭を撫でながら、廻喪はしっかりと、確かに頷く。

 

 「当たり前だ」

 

 つられて、捌咎を除く三人も泣いて二人を見る。

 

 「ほんとにいいのか?」

 「凄い…何度やってもできなかったのに……」

 「ありがとう……」

 「ああ、」

 

 杏子、ほむら、まどかの頭をくしゃりと撫で後に、廻喪は立ち上がりほむらにこの後の展開を聞く。

 

 「この後は?」

 「……あっ…えっと、多分だけどさやかさんは、志筑仁美が戻って来た上条恭介に告白することを聞かされるの、ソウルジェムについて知っていて、想いを伝えられないって思い込んでしまい、絶望して魔女になる可能性が」

 「なるほど、それでアイツ思い詰めた顔してたのか」

 「上条恭介も美樹さやかの思いに気づかずに」

 「そうか、マミ、杏子、グリーフシードで穢れを取っておけ、すぐに探すぞ……怪異の刻……」

 

 そのまま、蝙蝠の翼をはやして窓から飛び出す廻喪の後を追うように、捌咎も黒い翼を出して飛んでいく。

 

 「怪異の刻で魔法少女にもなれるから、好きに使え、」

 「魔女化の阻止、それが今回の仕事だ」




「こうはならないでね、鬼いちゃん。人間は化物になってしまえば―おしまいだ」
憑物語にて斧乃木ちゃんがありゃりゃ木先輩に行った言葉、吸血鬼になった時でも人であることをやめなかったキキララ先輩が鬼になり始めた時に、人であることを確約した言葉、魔女になることを知らされた魔法少女に深く刺さる言葉でもある
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