半人半妖に救えるものはあるのか【魔】   作:紡縁永遠

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サヤカコイタミ

 「場所の捕捉ができないのが問題だな……」

 

 翼を生やしてすぐに降りたのは暁美ほむらの家から一番遠い場所である、廻喪は別の方法で相手の位置を探る方法を知っている、否持っている。それでもしないのは、何となくというやつでもある。

 

 「捌咎も同じ理由で飛んだはずだ……ちっ、確かにな、手間のかからない女の子はいないな……」

 

 面倒くさい女の子を引き寄せる高校生、現FBI、風説課所属、阿良々木暦、彼もまた、女の子に対してかなりの難儀な体質を持っていた。かつて阿良々木暦に対して、中立である専門家は言っている、「手間のかからない女の子なんていない」と。

 時同じくして、他の少女達のうち一人、鹿目まどかは唯一の人間である、純粋なる怪異を見ただけの力がない女の子である。それでも美樹さやかとの関わりはこの中で一番長い。

 

 「見つけた!さやかちゃん!」

 

 鹿目まどかが一番最初に美樹さやかを見つけたのだ。

 

 「っ?!その格好は……」

 

 自身の血で汚れた姿、魔女との戦いで無茶な行動をしたことが読み取れる。

 

 「仁美に恭介が取られちゃう……こんな体じゃだめなんだよ……

 「ん?ああ、さっき魔女にあったから倒してきたんだよ、感覚なんかも消せてさ、もうダメなんだよ、」

 「なんでそんな戦い方を?!さやかちゃんの為じゃないよ!」

 「私の為?アンタ何言ってんの?」

 

 まどかのさやかに対する精一杯の言葉、それは余りに弱く、響かず、傷を生む。

 

 「さやかちゃん…?」

 「アンタは戦ってないからそんなことが言えるんだよ、」

 

 魔法少女の才は精神の脆さ、重いし蟹の件があれども、それは、まどかを突き放すのに十分な言葉だった。

 

 「あんたが戦ってよ」

 

 何も言えなまどかの横を通り過ぎ、そのまま走り去る。その場に残されたまどかは震える手で、スマホをつかむ。

 

 「…?まどかか、」

 

 連絡した先は廻喪だった。

 

 「『ごめん、っぅぐ……止められなかった』」

 「……そうか、場所は……」

 「『河川敷の方……お願い、さやかちゃんを……』」

 「わかった、任せろ」『失恋か、一番やばいのはクチナワか、最低でも告ってから失恋してもらわないと、告白もせずに、失恋もせずに後悔するもんじゃない…これは苛虎か』

 

 まどかから連絡を受け取った廻喪は捌咎に一報した後に走り出す。詐欺師と現人神の数ヶ月の物語と弱さを得た異形の翼を持つ白猫の恋物語を。

 

 「さっきぶりだな、美樹さやか、皆心配しているぞ」

 「まどかから聞いたの?」

 「ああ、」

 「もうだめなんだよ、アタシまどかにひどいこと言っちゃった、それに恭介のことでさ」

 「まぁ、ある程度は知っている、お前の恋情についてもな、」

 

 それは後悔である、結ばれないことに対する絶望ではなく、自分が自分自身が上条恭介も志筑仁美が結ばれるきっかけを作ったことに対する後悔である。

 

 「廻喪は途中からだったけど、私の最初の戦いでさ、仁美を助けた。でも今は、助けなければよかったって思ってる。最低だよね、魔法少女なのにさ」

 「何言ってんだ、汚いことを考えるなんて当たり前だろう、人間なんだから、

 「知り合いに、人のために悪人となった奴がいる、失敗をして、背負う必要すらもなくなったが、背負い続け善人であることを否定し続けている」

 「何の話?」

 

 志筑仁美を助けたことを後悔するさやかに廻喪は神すらも騙す詐欺師が詐欺師に至った物語を語り出す。接ぎ接ぎだらけの物語の一幕を。

 

 「汚いことをすることに対してだよ、

 「ソイツは悪人であるために詐欺をしている、俺はソイツを卑怯だとは言わん、汚いとも言わん、それはソイツなりの思いだから。

 「上条と付き合うなんてかったるい事は代わりにどっかの馬鹿がやってくれるだろうよ」

 「何言ってるの?かったるい?私の気も知らないでそんな事言わないでよ」

 『失敗、いや到着か』

 

 さやかは今だに魔法少女の姿のままだった、故に、ソウルジェムはよく見える、それがどんな輝きをしているか、穢れているのか。

 さやかの持つソウルジェムは黒く黒く、穢れに染まっていく。

 

 「罪焼(ざいしょう)……廻喪!」

 「……ああ!」

 

 諦めた奴を救うほど廻喪も捌咎も、御人好しではない、だが、無償で諦めた人間を救うときがある。人が人ならざる化け物になるときだけは、二人は何があっても動く。

 捌咎の炎に反応して、剣を投げ続けるさやかの攻撃を防ぐこともせずに、あいていた数メートルの距離を瞬時に詰めて、廻喪は目を合わせる。

 

 「吸血鬼……瞬間、魅了、解除」

 「あっ…………」

 「うまくいったか、」

 「何をしたの?」

 「穢れは、人間の負の感情だろ?だから燃やしたんだよ、罪悪感を、それでも付け焼き刃だ、廻喪が瞬間、一瞬だけ魅了を発動して、思考を落とさなきゃ意味がないけどな」

 

 荒業であるが、とめどなく溢れる穢れに対しては最善の方法と言える、燃えた罪悪感から、別の負の感情が湧き出る可能性は拭えないが、一度思考を停止したことで、話し合いができる状態にはなった。

 

 「落ち着いたか?」

 「なんで?アタシ、アンタに攻撃もしたんだよ」

 「そうだな、でもあの程度は怪我にはいらないし」

 「何のために、止めるのさ」

 「お前が失恋するまで、告白もせずに失恋なんぞできるものか、告白くらいしろ、それとも、告白もできないってか?

 「だったらお前は、そんなかったるい事は終わりにして、他のかったるい事をやれば良い」

 

 告白もせずに失恋した気になっている、これは弱さを知らない白猫が数ヶ月、募らせた()情だった。

 美樹さやかは告白していない、告白する権利すらも捨てようとした。

 

 「上条恭介に振られたら、お前に価値はなくなるのか?

 「お前のやりたいことはそれだけだったのか?

 「お前の人生はそれだけだったのか?

 「やりたいこともしたいことも他にいくらでもあるだろう?あっただろう?違うか?」

 「それでも私は魔女だよ、化け物だ、」

 「人間だろ、そもそも専門家から討伐すらされず、救おうとしてくれるものがいる時点で人ならざるもの、この世ならざるものではないことが証明される。

 「だから、痛みを捨てるな、人であることをやめるな、化け物となろうとするな、

 「唯一の人間なんていない、かけがえのない事柄なんてない。

 「人間は人間だからいくらでもやり直せる」

 

 本心とは限らない、これは詐欺師の言葉である、自ら悪人と名乗る詐欺師の嘘つきの言葉である。

 

 「なんで……」

 「なんで、か、俺としてはお前が失恋しようが関係ない、というより、お前が好きなのは上条恭介なのかという疑問すらある、

 「けどな、失恋するならしっかり失恋するんだな」

 「はぁ?」

 「何もせずに失恋した気になってんじゃねぇよって話だ、

 「時間ならあるんだろ?行ってこい、行って玉砕してこい、」

 「酷いなぁでも、行ってくる」

 

 さやかを見送り、廻喪は捌咎にぶん殴られる。

 

 「おい!」

 「そこは嘘でも成功してこいとかいうもんだろ」

 「関係悪化してた奴は誰だよ!というか気付いてるだろお前」

 「そりゃな、」

 「え?どういう事?」

 「一番付き合い長いの鹿目だろうが……美樹が上条の事を喋る時、基本的にバイオリン弾いていることだけなんだよ、」

 

 廻喪と捌咎の応酬に他四人は疑問を浮かべる。その内容はひどく単純で、勘違いという言葉が当てはまるものだった。

 

 「誤解を解く努力をしないというのは、嘘をついているのと同じ、この手のやつで自分に嘘付いてるヤツを初めて見た」

 「というより、俺等の知ってる恋愛がおかしいんだよ」

 「基準阿良々木先輩だからな……あの人よく生きていられるよなぁ………」

 

 二人がしるなかで最も女遭難が酷い先輩の一年間を思い出しながら青い顔をする。

 問題のさやかはというと、上条恭介を呼び出していた。

 

 「どうしたの?」

 「ごめんね、こんな時間に呼び出しちゃって、好きだったよ恭介、」

 「え?」

 「好きだった、だから、バイオリンを続けてほしい、せっかく直ったんだから……」

 「な、何言って……」

 「けじめはつけないとって思ってね、それじゃあ」

 

 想いは伝えた、だが、美樹さやかは自身の勘違いに気づいたのだ、好きだった姿と己が己にし続けた嘘に。

 ケリをつけた。

 

 「どうだった?自ら振られに行った告白は」

 「何でも知ってるんだね」

 「何でもは知らない、知らないことだらけだよ、自分のことはなおさらな、」

 「説明できてないこともあるから、さっさと行くぞ、」

 「うん……」

 

 そうして語られた、暁美ほむらの繰り返される一月を、魔法少女の真実を。

 

 「待って、少し整理するから」

 「ごめんなさいね、事情も知らずにあんな事しちゃって」

 「問題ないわよ、もともと一人でやるつもりだったから」

 「グリーフシードは二人から受け取ってるけど使うか?」

 「いや、いいよ、杏子、正直魔女化よりも、ほむらが見てきた私の方が衝撃だったから」

 

 ほむらが繰り返して来た一ヶ月にて、さやかは毎回のように魔女化をしており、理由は九割九分同じであり、上条恭介が志筑仁美に取られたからというものである。

 

 「私って本当にバカ…」

 「そうね、あなたは馬鹿よ、愚か者よ」

 「それは酷くない……」

 

 「仲良くなれたみたいだな」

 「ああ、さて詐欺師、聞きたいことがある」

 「詐欺師とは失礼だね、ボクは嘘をつかないよ」

 

 さやかとほむらの応酬を尻目に、廻喪と捌咎は結界の外で聞き耳を立てていたインキュベータと話を始める。

 

 「まどかが魔女になれば手を引くんだっけか?」

 「そうだね、君達のせいで全く進まないけど」

 「なら一つ質問だ、魔女に対して、魔法少女になるときに願ったことを、叶えさせたら、その魔女はどうなる」

 「さぁ、考えてこともなかったよ、それに、その場を見ていなければ、どんな魔法少女かもわからないしね」

 「そういうものか……卵が先か、ニワトリが先か魔法少女はどっちなんだろうな……」

 

 魔法少女と魔女の関係から、立てた仮説、それは実現することはなかった。あくまで彼ら二人が見るのは、魔法少女であり、魔女ではない。

 

 「怪異に触れられないお前らをどうしようかね」

 

 怪異とは、人の想念によって作られる。それらは未知に対する恐怖、敬意、畏敬、理解、数多あるが、感情エネルギーという分には、これほど十分なものはない、感情エネルギーの塊であるが気の持ちようで触れられる。踏み入れる、それは感情を持たないインキュベータにらできないことだった。

 

 「ボクとしては何でもいいよ、それにワルプルギスの夜が来ればまどかに頼らざるを得ないしね」

 「魔女の夜宴か……逃げたか……」

 

 言葉一つで、答えにたどり着く、専門家はインキュベータにとって天敵である、そのため、廻喪が出した訳に、インキュベータはその場を去っていった。

 

 「対策会議といきますか」

 「だな、」

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