半人半妖に救えるものはあるのか【魔】   作:紡縁永遠

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センリャクネガイ

 「嵐の前の静けさと言うか、嫌な空気だねぇ」

 「明日か……めんどいなぁ」

 「そうね、」

 「ごめんね、私は戦えないから、」

 「そんなことはないわよ、」

 「まどか、しっかり勝ってくるから」

 「これが終われば、魔女化対策だっけ?」

 

 魔法少女四人に専門家二人、事情通な一般人一人。台風情報が出ているため、あまり外周ではできないが、最終確認に集まっていた。

 

 「あっ、電話だ」

 「『やあやあ、魔法少女と専門家諸君、こんにちは臥煙伊豆湖だ、鹿目まどかちゃんにはあまり関係ないけど、その他の、美樹さやかちゃん、暁美ほむらちゃん、巴マミちゃん、佐倉杏子ちゃんは、よく聞いておいてくれ、言わずもがなかいもんと、とがくん(捌咎)もだ』」

 「え?」

 「だれ?」

 

 名乗りはしたが、それでも少女達は自分達の名前を知りえている相手に一歩引いてしまう。

 

 「『どうかしたのかい?みんな黙りこくって』」

 「なんでこのタイミングかは、聞かないでおきましょう」

 「『ソレはありがたいね、それでねワルプルギスの夜についてだけど、倒す必要はない、撃退してくれれば問題ない、

 「『理由は終わったら話そう、あと、インキュベータがそこにいるのなら確認しておいてくれ、願いを後に回し、魔法少女になれるか、これについてね。

 「『それと、神浜は知っているかい?

 「『知らなくても、二人は行くことになるんだけど、そっちでも魔法少女救済運動があるんだけど、如何せんやり方が問題でね、

 「『内容は専門家に有利だから、君達が介入して止めてほしいんだ。だから今回のワルプルギスの夜については倒さなくてもいい、

 「『別のところで似たようなものが生まれても面倒だからね、と言うわけだ、よろしく頼むよ』」

 

 臥煙伊豆湖の報告、それはほむらが知る一ヶ月よりも先のことを見通したものだった。専門家として、自分達が死んだ後のことも考えなければならない、この場で見滝原の魔法少女のみが事実を知って救われるのでは、別の街で問題になる。それを危惧しての発言だった。

 

 「『それにね、君達なら、世界滅亡級の怪異なら、国家滅亡級の怪異相手に、余裕を持って戦える。

 「『力だけの世界じゃないのは知っているだろう、怪異世界で重要視されるのは、影響力だ。

 「『昔話の怪異化レベルの事は慎重にやったほうがいい、本物ではないから、偽物だから許される、私の姉がそうであったように、判断を間違えないでくれ』」

 「「…………了解」」

 

 世界滅亡級の怪異、これは単体で成せるものもいれば、組み合わせで崩れるものもある。

 例えば、距離を無視する力に、空間を繋げる力を合わせたら、偽物などではない、本物の地獄が顕現する。

 例えば、一日に二人鬼にして、鬼にしろという命令と共に繰り返したら、22日で世界は鬼で溢れ出す。

 例えば、人に化け、人を喰らい、喰らった人に成る。これを続ければ、バレたとしても勝って、疑心暗鬼に同族殺しが増えていく。

 世界など、怪異にとっては取るに足らないものと言えよう。

 

 「これで、圧倒した上で、勝たないようにすればいいという方針が決まったな」

 「となれば、十六夜ってできるか?」

 「問題ない、出力調整が楽になるから使う、後は妖刀、呪怨作の方は壊す気でいったほうがいいかもな……」

 「いいの?」

 「ああ、親父も、こういう時にこそ使えって言うはずだから、出し惜しみはしなくていい、勝てる相手には未来を見て、勝てない相手には今を見ろ、そう言うだろうな。専門家としても、人としても勝てるとは思わないな……この件が終われば話してやるよ」

 「そう、なら私が持ってる銃火器についてよ」

 

 臥煙伊豆湖の方針から少女達はすぐに動けなかったが、それでも専門家二人の、父親の形を破壊するというさ言葉に、今の状況を理解し直す。

 今できることを、そういう方針が、未来を見てできることを、という方針に変わった。これは暁美ほむらが想定した作戦からは大幅に変わるものではあるが、それでも魔法少女を救うための一つの方法として、全員が作戦に加わる。

 

 「近代兵器が効かないのはそういうものと割り切る、ソッチのほうが楽だ、だから、目くらましに使う、」

 「そうね、効果範囲が大きいものは、最初の波状攻撃に使えばいいから……」

 「グリーフシードの使用タイミングは?」

 「各自でになるだろうよ、俺の炎もそこまで万能じゃねぇから」

 「なら、どうやって撃退するかだよ?」

 「進めなくすればいい、」

 「え?」

 「見滝原を通ることが目的なら、見滝原よりこちら、進行方向には進めないように足止めする。つまりは道を変える、進む道をこちらが制限する」

 「なるほど、確かにその方法なら、防衛ラインも引ける、なぁ……廻喪、薬になれんのはお前だけだ、後方での指揮を頼む、俺が最前線に出る」

 「それでも……毒にはなれるだろ」

 「そうだな、でも、受け止められねぇよ、俺じゃ」

 「火力不足になれば」

 「馬鹿がよ、説得したのはテメェだろ、最後までしっかりやれ」

 

 この戦いでの、重要な鍵は全員生存である、どれだけ破壊されようが、人がいれば復興できるのだ。自己犠牲は認められない、それが廻喪の考えだった。

 対する捌咎は、魔法少女を救うに値する薬の保管だった。これまでの事で、彼が魔法少女にできたことは少ない、それは彼自身が理解していることであり、地獄の側面からなる考えからだった。

 

 「いや、二人とも、まどかの事も考えないとでしょ……」

 「ああ、そうだったな、さっき言われていた……インキュベータ」

 「なんだい?ワルプルギスの夜と戦う諦めでもついたかい?」

 「な訳ねぇだろ、願い保留というものは出来んのか?」

 「……できるよ、でも魔法少女が持つ魔法は願いに左右される、本来の力は出ないよ、」

 「そうか、魔法少女が先か……よし、まどかを魔法少女にするならソッチにしろ、願いを叶えないと魔女化しないだろ?」

 「そこも織り込み済みなのか……やっぱり君達専門家はボクの天敵だ」

 「なに、そこまでわかれば十分だ、これである程度の作戦が固定できる」

 

 インキュベーターは、宇宙の寿命を延ばすために、少女が願いを叶える際に生じる強大な感情エネルギーを収穫している。それらを三点に分類したうえでの、一つの仮説。

 

1. エントロピーと宇宙の危機

 

 物理学的背景から【エントロピー】とは無秩序さや乱雑さを表す概念であり、熱力学の法則によると、宇宙のエネルギーは常に【使える状態】から【使えない状態】へ向かい、いずれ秩序がなくなって枯渇するという危機(熱的死)に瀕してい

 宇宙の寿命: インキュベーターは、このままでは宇宙が寿命を迎える(エネルギーが枯渇する)と考え、それを抑止するためのエネルギー源を求めている。

 

2.【願い】によるエネルギー転換

 

 感情のエネルギーはインキュベーターが、少女が魔法少女になる際の【奇跡を起こす願い】と、魔法少女が魔女になる瞬間の【絶望】への変化に、物理法則を覆すほど莫大なエネルギーが含まれていることを発見した。

 交換のシステムは魔法少女は願いを叶える代わりに、インキュベーターに【感情のエネルギ一】を供給する役割を担うことで成り立つ。

 魔女の役割は魔法少女が絶望の末に魔女になる過程で放出される感情エネルギーを、この宇宙的危機を回避するための資源としての回収・利用の手段である。

 

3. 魔女【絶望】への転換

 

 因果の行き着く先は魔法少女は魔女と戦い続けることで魂を削り、最終的には自分自身が 【魔女】へと転化とすること。

 この【願い→魔法少女→戦い→絶望 →魔女】という仕組が、最大のエネルギ一収穫システム【永久機関】としての機能、負の連鎖となっている事となる。

 

 願い、【希望】が【絶望】が変わる瞬間に膨大なエネルギーが生まれる、魔女となる。ならば、願い【希望】という過程を外してしまえば、絶望に変わることなく、魔女へと成ることもなくなる。それが専門家がたどり着いた、魔女化を食い止める方法であった。

 

 「いざとなれば、願いの先送り見言う方法でまどかを魔法少女にする、これなら、戦力も増やせる……」

 「うん、いいよ、それで、」

 「よし、後は全力で足止めをするだけだ」




なるべく矛盾がないように、魔女化阻止について考えてみました。
前回の話で「卵が先か、ニワトリが先か」というセリフを出したのですが、魔法少女に置き換えた時に、

魔法少女だから願いを叶えられるのか、
願いを叶えたから魔法少女になるのか、

という風になります、今回は魔法少女を起点に考えました。願いを起点にしたものは、【鹿目まどかの兄だった】という別作品にて取り上げます。
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