「それじゃあ、始めようか」
「暁美、出し惜しみをするな、確実に守るからよ、次の世界は考えんな……」
「ええ、」
「さやかさんと杏子さんの援護を中心とするから、」
「それでいい、まどかの方は母さんが付いてるから、なんとかなる」
暴風荒れる中で、軽い打ち合わせと共にビルのうえに立つ少年少女、既に変身をした状態で、穢れが発生しないように、捌咎の炎で暖を取っている。
専門家二人は、私服ではなく、これまた己の血肉や髪の毛を利用して作った、戦闘服に着替えている。白と黒のこれまた和服、さらに呪怨の形見である妖刀も本来の形で持っている。
一方、避難所の方では鹿目家と共に十重がいた。
「……心配?」
「はい、」
「大丈夫よ、あの二人はあの程度に負けないよ。曲がり何も世界滅亡級だから、
「家族に話さないのはいいこととは思わないからね、何かあれば対応するよ、私も専門家だからね」
鹿目家ではまだ状況が理解できない、長男、たつやをあやす知久と、まどかの挙動不審を訝しむ淳子の三人が避難所にて二人の会話を見ている。
「最近、まどかが何かを隠している、ソレの問題解決に貴方の息子さんが携わってくれたと言うのは聞きました、だが、まだ何かあるんですか?」
「そうだね、一般人を巻き込むのは専門家としてもあまり勧められるべきことじゃない、でもね、知る権利は誰にだってある……あくまで権利だ、そしてソレを話さない権利も私は持っている。黙秘権と言うやつだ。
「私は話さない、大人が口を出す事じゃないよ、大人じゃ薬になれない、それどころか、毒になってしまう、自分を傷つけるね、
「命は保証しよう、そのくらいの領分はあの二人もあるし、何より廻喪もソレの対処は得意だからね、
「これで納得はしてくれないだろうけどね」
鹿目淳子が事情を一番知っているであろう十重に聞くがソレを専門家として、言葉を武器にする人間として、断る。それでもそれは道理にならない。
「そうだな、ならまどか、行くつもりか?」
「……うん、いざとなれば」
「何をするつもりかはしらないが、専門家がいるならそちらに任せればいい、蟹と同じならなおさらな理解しているだろ。素人が動くな」
「……あっ…………コレ……」
何も言えないまどか、それでも今の状況を知るすべはあまりない、一つを除いて、廻喪が暇つぶしで作った道具、怪異を何もせずに見ることはできないのか、その純粋な疑問とともに、作ったもの、完成するころには自前でいろいろ見えるようになったため、無用の長物となったもの、双眼鏡の形をしたもの。
「これがなんだい、何か見えるとでも……コレはっ!…」
「見たのなら、踏み込んだのならしょうがない、説明しようか……ここからは専門家が請け負う、まどかちゃんは見逃さないようにね」
「はい!」
鹿目淳子が折れなかった、知ってしまった、ならば専門家として動かざるを得ない。銀憑十重は会社員ではあるがそれでも専門家である。人を殺す過去を持つ半人の部類ではあるが、それでも、人と人ならざるもの、この世ならざるものとの橋渡しをする。
チラリと、息子達の方を見てから、目の前の加害者に向き直る。
『しっかりやりなよ、』
少し遡って、開戦の時間へ、
「キャハハハハハハハハハハハ!!」
ワルプルギスの夜、舞台装置の魔女、国家滅亡級の怪異、暁美ほむらの時間遡行、繰り返しのおいて最大の壁の到着である。
「……阿鼻 地獄」
一泊おいて、叫んだ捌咎、八大地獄において最下層の最大火力の焔によって開戦の火蓋が開けられる。
「時間停止……解除!」
焔が消えたと同時に、ワルプルギスの夜の周辺には銃火器の弾が展開される。言わずもがな暁美ほむらの固有魔法、時間停止の間に設置されたものである。中にはタンクローリーや戦車の砲弾などが混じっている。
それでも意に介さないように進むのがワルプルギスの夜である。だがその行進はすぐに止まる。
「女郎蜘蛛」
「行かせない!」
蜘蛛の糸と黄色いリボンがワルプルギスの夜を拘束したのである。この戦いの目的は防衛、ワルプルギスの夜が諦めれば勝ちなのである。
「さすが……鉄の処女、美樹、佐倉!」
「わかってる!」
「もちろん!」
動きが止まったところに捌咎が鉄の処女でさらなる拘束、及び串刺しにする。そこに美樹さやかと佐倉杏子が互いに自分の武器を複製して、ワルプルギスに投げつける。
「酒呑童子、熊童子、虎熊童子、星熊童子、金童子、魏石鬼八面大王、大獄丸、鬼童丸、茨木童子、
「一歩入魂、二本縮地、三歩、必殺」
間髪入れずに、廻喪の鬼の怪力を重ねがけした拳が、ワルプルギスと歯車を繋ぐ軸に叩き込まれる。
これはワルプルギスの夜の名前を聞いたと後に廻喪と捌咎が出した案である。
舞台装置を動かす最大の軸、ほむらが描いた、ワルプルギスを見て考えたもの、舞台装置の本質は、単なる背景や装飾ではなく、【空間の再構成】【物語世界の具現化】【俳優と観客のコミュニケーションの最大化】を担う、総合的な演出手法の基盤である。
ソレを支えるものは何なのか、大きな歯車に吊るされている魔女、ならば歯車をきり離せば、舞台装置の機能は失われる、
さらに、ワルプルギスの夜から連想されたもう一つの仮設、ワルプルギスの夜は単体の魔女ではなく、複数の魔女の集まりであること。
これは舞台を形作るのは一人では不可能だということと、魔女の夜宴、宴会、を示唆する名前から来るものであった。夜宴を一人で表現するのは不可能である。
「さすがに、一発じゃ無理か、コトリバコも効かんだろうし」
「同士討ちになるからやめろ……」
「動きは止まったけどこれからどうするの?」
「決定打にならなければどうすんのさ、」
「「ぶん殴る」」
歯車から切り離せなく、一度仕切り直しとなり、専門家二人は攻撃にすべての力をさく。
「愛宕太郎坊 、比良山次郎坊、鞍馬山僧正坊、飯綱三郎、大山伯耆坊、彦山豊前坊 、白峰相模坊 、大峰前鬼坊 、鴉天狗、鎌鼬」
暴風一閃、八大天狗の風に、鎌鼬の斬撃付与、ソレを殴った場所に寸分違わす叩き込み、その効果がきれないうちに、ギロチンをセットする。
「魔女狩りには一般的だろ」
それでも少し切傷ができた程度に終わる、
「無駄だったな……」
「みたいだな、」
「効いてないんじゃなくて、ヒットポイントが高いと見るべきか」
「なるほど、複数の魔女の集合体なら、可能だな」
「全員、最大火力をぶつけ続けてくれ」
「わかったわ」
最大火力、つまりは必殺技を連射し続ける、これにより、ワルプルギスは推進力を大幅に減少、行動に対して後手に回ることになる。
後手に回りできた隙は廻喪の必殺技に近い攻撃により塗りつぶされる。
「簡易儀式、怪異百体、コロシアム方式にて、残った蛇を使用……蠱毒」
「呪いを使うな……摩訶針特魔」
「このレベルで動きが止まると……このまま放置でいいかな……もう帰れよ……」
「運んだほうがいいだろ、海までそうすりゃ諦めもつく」
「それもそうか……マミ、リボン!」
「ええ」
「幽霊船、船幽霊、ダイダラボッチ、動けない今のうちに、別の場所へと動かす」
動きを完全に留めたワルプルギスを幽霊船にて牽引して、見滝原から離していく。ただし、これはあくまで凍っているからできたことであり、捌咎は八寒地獄を今日初めて使用したのである、斑があるのは当たり前で、すぐに解凍される。
「ちっ!ポルターガイスト」
「廻喪くん?!」
「離れるぞ!あのバカ、本気だ」
「十六夜・燐……ああ、これはいいな、温度調節を気にする必要がねぇ、獄寒……三歩、獄熱必殺」
ワルプルギスの近くにいた廻喪は、捌咎のしようとしている事柄に気づき、同じ場所にいたマミを連れてその場を離れる。
離れたと同時にワルプルギスを襲う、骨の髄まで凍り、その身を砕く、冷気、直後に炎をまとった拳がワルプルギスの軸に叩き込まれる。
「あっははは、さっすが…」
「嘘でしょ……なんで一人で壊せたの?」
「そういえば、あいつの本気は見たことないんだったな。
「気を使ってたんだよ。アレが、死後の未知から生まれた怪異譚、地獄を扱い、罪を鎖し、咎を燃やす、専門家にして、地獄そのもの、鬼灯捌咎だ、」
八寒地獄と八大地獄の同時使用、これによる温度調節の最適化、及び自身の肉体に対する温度上限の突破、本来の鬼灯捌咎の怪異性の形である。
「壊れ……?!おいおい、知らねぇぞ、これは」
「そりゃそうだね、ボクもあれは久しぶりに見る、ワルプルギスの夜の正位置だ、」
「正位置、なるほど、あの状態が本来のワルプルギスで、今までは手加減されていたと……」
「あの人絶対知っていただろ」
「たぶんな、」
「ちょっと!これからどうするの?私はこの先を知らないわよ!」
「しゃぁない、アッチも話がついたみたいだ、頼ってみるか、」
戦闘シーンってなんでこんなにも難しいんですかね?
ちなみにですが廻喪も捌咎もワルプルギスの夜とタイマンできるくらいには強いですが、あくまで相手は魔女であるので、主軸を魔法少女に、とまではいきませんが、動いています。
さらにこの二人、曲がりなりにも世界滅亡級なので、条件さえ整えばワンパンできます。
倒し切るのを禁止されているので無理ですがね
次回マドマギ編完!