半人半妖に救えるものはあるのか【魔】   作:紡縁永遠

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ゼッコウキオクチョウセイヤ

 「ここが調整屋か、何体かいるな、」

 「どうする、このまま放置でもいいが、七海ここの縄張り区画はどうなっている」

 「店に入れば戦闘は不可よ、絶対的な中立、それが調整屋だから」

 「なるほど、つまりここ周辺は戦闘目的の魔法少女は来ないというわけか、」

 

 捌咎は、神浜での魔法少女のルールを聞き、即座に行動に移す。捌咎の売りは攻撃範囲と密度ある。

 

 「十六夜・彼岸花」

 「やっぱ攻撃範囲バグってるだろお前」

 「ほぼ無限に等しい手数持ってる奴が何言ってる」

 「あら、いらっしゃい。初めての子がいるわね私は八雲みたまよ。それにしても随分な大所帯ね、珍しい組み合わせだし、何より何で男がいるのかしら」

 「戦闘をしない条件だったからよ、それに、周辺の使い魔も倒せるわ、」

 「あら〜凄いわね〜それで、何が本題なのかしら?」

 

 中立を保っている調整屋、それ故にどの組織の情報も入ってくる。

 

 「うん、とりあえずはウワサについて聞きたいかな、」

 「噂?」

 「そう、と言うより、ここに来た目的の一つがそれだ。ただの噂な問題はないよ、でも、この街の噂は明らかに異質だ」

 「やちよさんみたいなことを言うな、そんな事が本当なわけないのに」

 「噂を舐めたら駄目だよ、それに人物に対する噂なら俺達も動く必要はない。怪異は人に語られて始めて存在できる。この街にはびこる噂はそれだけ危険なんだ。

 「いいか、異形に対しての物語は、力を生む。風説であるうちに対処したいところなんだけど、それも一部は形となっている。

 「誰かが意図的に広めた噂の中で、おふざけの噂が混じって追えない。だから手始めに絶交について聞かせてもらえるか?

 「アラもう聞いた?誰から聞いた?

 絶交階段のそのウワサ

 フンだ!キライだ!ゼッコウだ!って言ったら見えないけどそこにいる!

 もしも仲直りしようとすると、連れて行かれてサータイヘン!

 友達を落とした黒い少女に捕まると、無限の階段掃除をさせられちゃうって、

 神浜市の少女の間ではもっぱらのウワサ

 ヒーコワイ!―――

 「神浜全域、広まり始めた詳しい時期は分からなかったが、現在神浜内で増えている行方不明事件の大半は、絶交と仲直りの後にある、他にもあるが今聞きたいのはこれだ」

 

 廻喪が語ったのは、交わることを禁ずる言葉の噂、そして問題はこれが神浜に来て1日でつかんだ情報ということである。それがさらに複数、これには神浜で噂を追っていたやちよも驚いた。

 それでも、自身と同じ考えである者を否定することはせずに神浜ウワサファイルを取り出す。

 

 「あるわよ、しかもまさにそのとおり、一応私も追っているからある程度は纏めてあるわ」

 「それは助かるな、それで小さいキュゥべぇについてだが、さっき説明したように、このまちに貼られている結界が原因だ、グリーフシードを回収する調整屋があるからできることだ」

 「恐らくだけどよ、小さいキュゥべぇはキュゥべぇが侵入できないように結界を作る際の生贄、いわば解析のための柱として使われた。要は搾りかすだ。危険視する必要はないし、何より、そっちの環は気がかりがあるんだろ?」

 「はい!」

 

 捌咎も小さいキュゥべぇに対する予測を伝え、キュゥべぇ保護派のいろはに理由を聞く。

 その内容は、小さいキュゥべぇに触れたことで思い出した妹の存在だった。

 

 「なるほど……忘れていた、か」

 「正直、思い出したのが今日なら、わからんなぁ。一応聞いておこうか、お前の家に、たとえ病院に通っていたとしても、何らかの手がかりはあるか?」

 「あっ、それなら私が使っている部屋は共同です」

 「じゃぁ、それの確認だなぁ。他には、ああ、あれがあったな。連絡交換、というわけで、廻喪スマホ」

 「なんで俺なんだよ。というかお前のせいで俺のスマホの大半が女しかいないんだけど」

 「上から誰だ?」

 「母さん、臥煙さん、影縫さん、周防さん、兆間さん、再崎さん、加芽さん、千石さん、まどか、さやか、ほむら、マミ、とまぁこんな感じ、後はもう使われることのないだろう羽川先輩、神原先輩、」

 「男は?」

 「貝木泥舟、ドラマツルギー、エピソード、阿良々木さんでもってお前」

 「待って!一つおかしな人いなかった!?羽川って、もしかしてツバサ・ハネカワ!?」

 

 ツバサ・ハネカワ、和製ジャンヌ・ダルクと呼ばれた。直江津市の異常中の異常、恋心で現人神になった千石さんよりたちが悪い。詳細は不明だが、平和のために活動を行いNGOに参加して、地雷原を軍用車で走り回ったりしている。

23歳になる頃には革命家として世界的に知られ、世界中の紛争地域にふらっと現れては片っ端から和平協定を結ばせ、何十本もの国境線を消している。

 恐らく理由は、阿良々木先輩と合法的に付き合うために一夫多妻制の国境を日本に引っぱて来ているのだと思われる。

 

 「そうだよ、と言ってもこれは四年前に仕事先であったときに交換したものだ。あの時はまだ人間らしさが残ってた。多分あの人が人間らしさを見せるのは阿良々木先輩の前だから……いや、現状阿良々木と言う名も使えないのか」

 「そこはいいだろ、とにかく、今日は解散だ。こっちもやることが増えた」

 「まって、その子も調整をしていかないかしら」

 

 廻喪の知り合いの名前の消失という事実の余韻に浸っているところに、捌咎が解散を出す。既に夜中、終わるには頃合いだ。

 そこに八雲みたま、調整屋としての仕事を振る、ただで部屋を使わせる気はないようだ。もちろん相手はこの中で調整をしていないほむらである。

 

 「調整?」

 「ソウルジェムをイジって魔力を強化するの、やってみる?」

 「……分かったわ、やってみる」

 「それじゃぁ服を脱いで」

 「終わったら呼べ」

 

 ソウルジェムが何なのかを知っているほむらは躊躇しながらもそれを受ける事にした。

 ただ、みたまの悪ふざけと言える言葉に男である廻喪と捌咎はすぐに店を出る。服を着ていない雌型の怪異もいるが、それで興奮することもない二人、それでも最低限のエチケットはある。

 

 「それで、服は何処に置けばいいかしら?」

 「じょ、冗談よ」

 「そう、」

 

 判断が早いというか、疑いがないというか、それでも廻喪達が外に出てから服をすべて抜いだほむらに驚きつつ謝罪をするみたま。静かに受け答えまた服を着る。

 

 「それじゃぁ、ここに寝てリラックスをして、

 「しんこきゅー、しんこきゅー、

 「ゆっくり大地に沈んでく……

 「それじゃぁソウルジェムに触るわよ」

 「うっ…」

 「力を抜いてー」

 

 ソウルジェムは魔法少女の魂である、故に不快感があるのか身じろぎをする。それを見ていつの間にか戻ってきた専門家二人は、

 

 「そういや、一回あれの害意100%のやつ食らったよな」

 「ああ、吐き気と脱力と不快感のあれか、でもそのおかげで四歩目使えるようになったんだからいいだろ」

 「諸刃の剣ではあるけどな」

 「……?!」

 「いつ戻ってきたのよ……」

 「あれが嘘なのはすぐにわかったからな。気配消して戻ってきた」

 

 少し悪戯をしながら、かなり危険な過去を語る。

 

 「それに、」

 「終わったわよぉ、最初は少しだるいかもしれないけど、すぐに慣れるからね」

 『確かに魔力が充実して身体も軽くなっている』「ありがとう」

 「どうかしたの?」

 「いや、いろいろ込み入った話だからいいや」

 「……」

 

 廻喪の眼はほむらではなくみたまに向けられ、そのみたまは暗い顔をしていた。その理由は廻喪が予想していたものである。

 

 「ねえほむらちゃん。私ねソウルジェムを弄くるとその人の過去が見えるの…」

 「っ!?!?!か、過去を!?!?」

 「安心して、絶対に口外しないから…その…頑張ってって言ったほうがいいのかしら…ねえ?」

 「……大丈夫よ、今わね」

 

 何度も繰り返した一ヶ月その重みを感じたみたまだったが、ほむらはそれに対して怒るわけでもなく、一度廻喪を見てから大丈夫だと答える。

 そうして、神浜での一度目の調査は終わった。

 野宿するつもりだった二人をほむらの一喝で帰らせたのはまた別の話である。

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