魔法少女と専門家が出会って数日、巴マミ主催の魔法少女体験ツアーが開催されていなかった。
「捌咎さんはあなたのほうが向いていると言うから聞くのだけど、貴方達の目的って何かしら?」
それは巴マミの、専門家に対する疑問だった。そもそも巴マミは長年魔法少女として戦ってきたベテランであり専門家というものに始めてあったのだ。なぜ今なのか、なぜ専門家というものがあるのか、それらに対する疑問だった。
「専門家の目的は、魔法少女を救うこと、専門家総出で、臥煙ネットワーク、俺達が所属する、と言うのも違うが、そういった所が、魔法少女を救うために動いている。そして見滝原は、特に危険視されている、理由は知らない、が、暁美ほむらの言動から、なんとなく、予想をしている、」
「鹿目さんに何かあるの?」
「何かはあるだろうが、それが何かは知らない、知っている人も、答える気はないみたいだしな」
「そう、」
廻喪の答えに疑問を覚えた巴マミは質問するが、これには答えはなかった。そして廻喪のスマホの着信が鳴る。
「ん?まどかか、」
「『病院で、孵化しそうなグリーフシードが見つかって』」
「なんですって?」
鹿目まどかからの突然の通達、グリーフシードが魔女の卵があってはいけない場所の中でも最悪な場所にあったことを知らせる電話であった。
「まじか、今日は、病院に行くって言っていたから、捌咎もいないぞ」
「『今、さやかちゃんとキュゥべぇが見張ってるんだけど……』」
「そのまま電話をつなげておいてくれ、巴マミをそっちに送る」
「え?」
「私、メリーさん。今、頼れる人を送ったの」
廻喪は「私、メリーさん」と都市伝説【メリーさんの電話】から来る、あの電話の冒頭からくるセリフを喋った。
【リカちゃん電話】という電話サービスにかけたら人形が話しかけてきて、最終的に背後に迫るという噂が、商標を避けるため【メリーさん】の人形に置き換えられて広まった。
メリーさんという人形を捨てたあと、「私、メリーさん。今〇〇にいるの」と現在地を告げる電話がかかる、メリーさん、及び人形を捨てた後にたどった道を突きつけるように繰り返し、最終的に、「今、あなたの後ろにいるの」という言葉で締めくくられる。すごく一般的な現代怪異の一種。
または、マンションが舞台で、電話の度に自分の住む階に近付いてくる。轢き逃げをしたタクシーの運転手に、被害女性から電話がかかるパターン。名前はメアリー、メリーなど様々で日本人の場合もある。など多くのバリエーションがあるほどに認知されている怪異譚である。
「『え?マミさん?!』」
「『な、なんで?』」
「そっちに飛ばした、それより、グリーフシードは?」
「『あっ、さやかちゃんがいない!』」
「『大丈夫、場所はわかるわね?先に行っているわ』」
「了解……行くか、」
巴マミを鹿目まどかの背後に飛ばした廻喪は、持っていたスマホを捌咎へかけ、己も外に出る、
病院で見つけられたグリーフシードは美樹さやかと共に結界に隠れてしまった。それを追うように巴マミと鹿目まどかが結界のなかにはいるがそれを止めるように暁美ほむらが立ちはだかる。
「あら、なんでいるのかしら?」
「この魔女は私が倒す」
「この場では会いたくなかったわね」
「鹿目まどかを連れて引いて、」
「……イヤよ」
二度己の意思を告げた暁美ほむらだったがそれを聞き入れず巴マミは己の魔法、リボンを使って彼女を拘束する。
「早く行きましょうまどかさん」
「え、でも……」
「廻喪さん無しに話せる気がしないわ」
諦めに近いそれは、美樹さやかがこの場にいず、魔女の結果のなかにいることも要因であった。
「こんな事してる場合じゃないのに……」
「ええ、だからすぐに終わらせるわ」
「待ちなさい!」
暁美ほむらの声も虚しく、巴マミは鹿目まどかを連れて結界の奥に進んでいった。
一方、喫茶店から走って向かっていた廻喪は捌咎と合流していた。
「だから、変に要素を考えるまでもなく魔女は魔女なんだよ、」
「魔女なのは知ってんだって、どんな魔女なのかって話だろ?」
「そうじゃねえ!魔女であることに違いがないんだから、変に要素を出すまでもなく、魔女という一部分をきり取ればいいって話だ」
「何が言いたい?」
「用はハートアンダーブレードとドラマツルギーは違うけど、吸血鬼ではあるから、弱点は……悪い今の無しだ」
「いや、言いたいことはわかった、ソレよりも、ついたぞ」
別行動をとっていた捌咎は、今までの失敗を改めて原点を洗い直し仮説を立てたのだ。それを理解した廻喪は病院に張られた魔女の結界へ向けて拳を握る。
「一歩、入魂」
「さすが、」
「……何をやっているんだ、お前は」
結界をこじ開け、入った先には暁美ほむらが黄色いリボンで拘束されている、言わずもがな巴マミの魔法だ。
「巴マミに拘束されたのよ……そんなことより、早く行ったほうがいいわ、本来魔法少女以外が関わるようなことじゃないのだけど、このままじゃ巴マミは死んでしまうから」
「……」
「信じてくれないでしょうけど」
「そうか、情報提供感謝する」
「え?」
「あとで解いてもらうように掛け合っておこう」
暁美ほむらの言葉を、根拠のない未来を廻喪は信じた。それには理由がある。ここに来るまでに廻喪は一度死んでいる、その死を対価に廻喪は未来を予見した。
件、江戸時代から伝わる、人面牛身(人間の顔、牛の体)の姿をした予言妖怪。牛から産まれ、数日で死ぬ間際に飢饉、疫病、戦争などの重大な事象を予言し、その予言は必ず当たると言われている。
重大な不吉を予見する。本来の伝承と違うのは、変えられる未来をみることができるということである。ただし、あくまでそれはあやふやな未来であることが前提であり、今回廻喪が見たものは、【誰か一人は死ぬ】ということであった。
それを踏まえた上で、廻喪は結界の最奥魔女のいる空間へと足を踏み込む。その時は魔女を拘束し倒したと気を抜いた巴マミを喰らおうとする魔女の巨大な口が開かれた瞬間であった。
「
足の肥大化による超加速、その加速で巴マミと魔女の間へと立つ、間に入る。もちろん魔女の開いた口は廻喪を標的に変えて閉ざされる。
「え?」
「寄るな触るな障り猫……
一人死んだ、つまり【誰か一人は死ぬ】この予言はまさしく事実となった、不死者の怪異譚を多く持つ廻喪であるから成せた技であり、前提として件よ予言は避けることはできずに、その対象をずらしているだけである。
そして【障り猫】、あるいは【しろがねこ】【白銀猫】、尻尾のない猫の怪異で、道端で死んでいる尾のない猫を供養した善良な人間の善性につけこみ取り憑き、善良であるはずの宿主の体を使い暴れまわるという性質を持つ猫である。故に障ってはいけない、触れてはいけない。
それを躊躇なく噛み付いた魔女は精気を吸うに吸われて口を離す。
「大丈夫ですか?マミさん」
「え?いや…でも…」
「とりあえず、こっちへ、」
廻喪は巴マミを連れて捌咎のいる美樹さやか、鹿目まどかが隠れている場所へと誘導する。
「もう一人じゃないって、言ってくれたのに……期待に……」
「とりあえず落ち着いてください」
後輩達に励まされた後に目の前で人が死んだ、隣で生きて動いてはいるが確実に食われて死んだ、それをまた巴マミは恐怖と同様に狩られていた。
「だめよ、無事だったなら逃げるべきよ……」
「……問題はない、俺達は専門家だ、人ならざるものに対するプロフェッショナルと言える。一度目の遭遇は名前をつけたことで、別の要素を追加してしまった。二度目の遭遇は【魔女】に追加された要素を理解しようとした。三度目の遭遇で【魔女】という土台についてを改めて理解した。元来魔女は火によって殺される。そこまで分かれば十分だ。魔女は恐怖になり得ない」
「後ろ!」
「塗壁」
高らかに宣言した廻喪の後ろから噛みつこうとした魔女であったが、文字でできた一枚の壁に阻まれる。
「さて、」
右腕を、肩の高さに上げ振り向き、怪異の名前をつらつらと並べていく。
「火車、輪入道、火前坊、飛縁魔、松明丸、火の車、鼬、不知火、苛虎、人魂、遺念火、化け火、青鷺火、ほいほい火、叢原火、陰火、簑火、老人火、ふらり火、じゃんゃん火、天火、むさ火、亡霊火、亡者火、鬼火、古籠火、不知火、権五郎火、古戦場火、小右衛門火、地黄煎火、金火、ケ火、蜘蛛火、海月の火の玉、狐松明、狐火、狸火、筬火、天狗火、提灯火、釣瓶火、姥ヶ火、遊火、野宿火、二恨坊の火、たくろう火、アヤカシの怪火、悪路神の火、金の神の火……一歩入魂、二歩、閃撃」
火、怪異の火、それを右腕、拳に重ねがけをし続けて、塗壁を消して叩き込む。二歩閃撃、歩剛術、とある剣術流派の足さばきを魔改造した踏み込みとともに放たれる拳、常人では視認することは不可能であり、同じ踏み込み、足さばきがある者以外では対応は不可能である。
炎の拳で魔女は焼き殺すに至った。だが、それで終わるわけではなく、いまだ縛られている人形のような魔女に向けて、廻喪は笛を構える。
廻喪が持つ笛は、廻喪の父呪怨の骨肉を叩き上げた武器を封印した姿である。その実態は剣のような矢という独特な物であり、鏃が剣のように大きく、それでも遠距離武器としての形は崩れることはなく、廻喪はこれを投擲武器として扱う。
「妖刀・解」
炎を纏った右手で持った矢を人形のような魔女に投げ貫いて、この戦いは幕を閉じた。暁美ほむらが懸念した巴マミの死亡という未来は、銀憑廻喪のその身をもった身代わりと、再生という方法で回避された。
歩剛術、これはとある漫画をもとにしたものです。
薬丸自顕流と言えば伝わるでしょうか、