普通、雷蛍術師は手に持ったランプに入れた霧虚ろの草に雷元素を匂いで蛍を集めて、ちょっとだけ制御して戦いの道具にする。
だから、戦闘時以外にランプは使わないし、蛍も集まらないわけ。
ブンブンと私の周りを雷蛍が飛び交う。
「つまんないな〜」
そんなわけで普段から霧虚ろの草を服用している私は蛍を寄せ付けながらモンドへの道を歩いていた。念の為に蛍は別でも用意してるけど、それはそうとして寄ってくるんだよね
ちなみに一人きり。
ファデュイの部隊は大体は3、4人程度だし、移動する時もその部隊で移動することが多い。それは、戦闘とか不足の事態に対応するためってわけ。
だから強強雷蛍術師のバーテちゃんは一人で十分ってこと♫
まあ、私も一人の方が楽なんだけど、遊べる子の一人もいないってのはちょっとね〜。
このお薬飲んでると、虐めたい気持ち、嗜虐心ってやつ?が唆られるんだよね。
理性で頑張れば抑えられるんだけど、ずっと薬を飲んでて長い間発散してないと段々溜まって来ちゃう。欲求不満って感じかな♫
そろそろ抑えられなさそうで
ちょっと、イライラ、する、な♫
「うん?」
雷蛍の一匹が妙な動きをしている。雷蛍が反応するのは匂いの他には元素力くらいだけど…
「アハ♫…見ーつけた♫」
妙な動きをする雷蛍の方角にはヒルチャールと戦う金髪の女の子。強気そうで遊びがいがありそう♫
抑えきれないリビドーが溢れるように、周囲に広げ雷た蛍に雷元素が伝播して行く。
戦闘していた女の子がこちらに振り向く。
「っ!?」
バチバチなってる音に気づいたのかな?ま、関係ないか
「アハハっ♫」
集まっていた雷蛍を女の子に向かわせる。
「結構やるじゃん♫」
纏まった雷蛍が散発的に飛びかかるが女の子はそれらを的確に切り落として凌ぎ切る。
「何のつもり!?」
「私と遊ぼ〜♫」
「こいつ話が通じないぞ!」
女の子に隠れていて見えなかった白い小人?みたいな子が声を上げる。
質問してる暇があったら切り掛かってくれば良いのに…躊躇してるのかな?
「それなら…もっと盛り上げてあげる!」
勝手に飛び出していた雷蛍を纏めて塊としてぶつけさせる。
「思ったより操作性が高い…!」
身を捻ってかわしたみたいだけど…纏っていた雷元素で多少は傷ついたみたい。
そんな顔を見ると昂っちゃうな♫
「ふふっ、これくらいはね〜?」
普通の雷蛍術師みたいにランプに入れてたら難しいかもだけど、直接飲んでるからねあんぱん
「風よ!…ッ!」
風元素を使えたんだ。だけど、雷蛍を一箇所に集めたから痺れてちゃってる。
「アハっ、痛そ〜♫」
飢えが満たされるような感覚。口角が上がるのを抑えきれないな♫
「吹き飛べ!」
集めた雷蛍を吹き飛ばす…だけじゃなくてそのまま若干弱い風を吹かせ続けてる。ただの蛍だから弱い風でも飛ばされちゃう。
「考えたね〜♫このまま遊んでも良いけど、ちょっとつまんないなぁ」
「あなたは何で襲って来たの?」
対処法を見つけて少し余裕ができたのか、女の子が話かけて来た。
隙を作ろうとしてるのかな?まあ、いっか♫
「言ったとおり、遊ぼうしただけだよ♫」
「遊びが物騒すぎるだろ!」
「ただの快楽目的で人を傷つけてるの?」
少女は目を鋭くしてこちらに向き直る。
「そーだよ♫」
退屈は猫をも殺す…お薬漬けの猫なら尚更ね。
それを聞いて女の子は本格的に敵意をこちらに向けてくる。
逆に今まで躊躇してた理由がわからないけど「風よ!」!?
女の子が雷蛍の群れから飛び出てくる。構えた剣は私を
「ブリンク!」
咄嗟に雷蛍の方にテレポートする。元素視覚はないけど、抉れた地面を見ればどのように風元素力を使ったかはわかる。
「足に風を集中させた加速…今のはあぶなかったかも♫」
私を満たすのは弱いもの虐めであって、接戦とかはいらないんだよね。だから
「追いかけっこしよっか♫」
「ふざけないで!」
剣を手に走ってくるけど…流石に私の方が先かな♫
バチィ!
女の子の剣が雷元素のシールドに弾かれる。
「君は逃げる側だよ♫」
強い雷元素に反応した雷蛍が集まり、共鳴し、電撃を迸らせる。
それから離れようとする女の子をシールドと共に浮き上がった体を滑らせて追いかけていく。
「待て待て〜♫」
──
「はあ、はあ…」
「そろそろ追いかけっこもおしまい?」
浮いてるだけの私に対して、走り続けた女の子は息も絶え絶え。雷撃にも当たり始めてきちゃって苦しそう♫
結構多くの蛍を制御できるからシールドの展開も長めとはいえ、手間取っちゃったしあの子でもうちょっとだけ遊んだら退散しよっかな〜
「…」
女の子の顔は私の方を向いていない。
「ん…?」
その視線を辿ると
「貴様ら…」
巨大な龍がこちらを向いていた。
「やばっ…!」
更に足元の少年もこちらに目、というか弓を向けて…
「ブリンク!」
──
少し離れたところにテレポートした私は息をついていた。
「あぶなかったぁ…」
あの龍…多分はあれが風魔竜…もそうだけど、緑色の帽子をつけていた少年もそう。
シールドを貼っていたけど、その上からでも殺せるつもりなのが両方から伝わってきてた。
「あのままなら死んでたかも…♫」
無理矢理笑ってみるけど恐怖が胸のそこから立ち上がる。
渇きのように湧き上がっていた欲求も今では感じられない。いくら薬を常用していても、生存欲求には打ち勝てないらしい。
余計なことを考える前に薬を飲む。
「私もまだまだ死にたくないってことかな♫」
目の前を遮るものはなくモンドの街がよく見える。
少し進むと、下が崖になっているのがわかる。
雷蛍術師のローブが崖下からの風でたなびく。
「……」
崖から一歩引いて、モンドへの道を歩み出した。