とあるライダーオタクが絶望の世界に来てしまった件   作:キラトマト

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第12章 その心は、嘘か真か。

 

 ────あなたに好かれていたい。でもそれは、本心ではない。ただわたしは、環境に甘えたいのだ。

 

 同年 6月29日

 

 ライブハウスを後にし、ポートラル一行は帰り道にある大型ショッピングモール『メグリエ』へ向かっていた。

 

「しっかし、汗臭くてそろそろもたねぇよ、身体が」

「1日風呂入らないだけでこれ……?」

「てめぇも大概────なんでお前臭わねぇんだよっ!」

 

 シャツをパタパタと仰ぎ、周囲に刺激臭が漂わせる姫片。その臭いに賢人は思わず鼻を抑える。当の本人は生前から汗の匂いがせず、気楽なものだった。

 

「賢人の旦那、私はどうかな……?」

「え……それはちょっと……」

「……卑しいよおねえちゃん」

 

 一方の来栖崎は昨日のまま、返り血を浴びた姿で歩いていた。その姿を見て賢人は大興奮。親に学校であったことを話す小学四年生のように大はしゃぎだった。

 

「その返り血浴びてる感じ、アマゾンアルファとかアルティメットフォームみたいでかっこいいです!」

「は? 何言ってんの?」

 

 そんな中、胸がチクリと自分でも分からないほど小さな痛みを覚えた甘噛は、賢人の腕に絡みつく。

 

「けーんと様! 私にも構ってくださいまし!」

「うおっ、あ、甘噛さん! あれ……臭いませんね?」

「それは当然ですわ、今朝シャワー浴びましたもの」

「シャワー!?」

 

 突然のカミングアウト。全員が叫び、荒れ狂う。頭を抱えてしゃがみ込むアドを見て賢人は噴き出す。

 

「し、しししシャワーあったのか? バカガミてめぇ……」

「あら言ってませんでしたか。失礼いたしました。くちゃいですよ姫片さん」

 

 全員の叫びに、甘噛は鼻で笑うように微笑む。

 

「くちゃいだァ……? 私ゃあ猫かぶる女見るとぶち殺したくなる性分なんだよォ」

「ま、タオルドライに時間がかかりまして朝ごはんは食べられませんでしたけど」

 

「え!? 食べてなかったんですか!?」

「そうなんですの」

「それは流石にマズイですって! 朝ご飯は1日のエネルギー源なんですから!」

「あら、その気遣いとても嬉しいですわ。ですが、理想の殿方によく見られる方が大事ですの」

「そりゃ結構なことだけど……せめて来栖崎さんと沙織ちゃん沙南ちゃんには使わせたかったですよ」

 

 その言葉に、またもや胸がチクリと痛む甘噛。恋への憧れだったはずなのに。なぜだろう、賢人の一言が胸に刺さってじんわり熱い。そして、しばらく歩いているうちに賢人たちは巨大なショッピングモール『メグリエ』へと到着した。

 

「ねぇケンティー! ねぇねぇねぇ!!」

「ちょっと静かにしてくれませんかアドさん!?」

 

 賢人が自分で自分にツッコミを入れる間もなく、アドは猛ダッシュでモールへ突入していった。

 

「私が止めて来ますッ、メグリエの入口で待ってますので!」

 

 そして百喰がそれを追う。

 

「あーもうめちゃくちゃだよ……。じゃあ行きましょうか師匠」

「はぁ……」 

「あ! あそこならクマフラーのグッズ残ってるかもですよ!」

 

 乗り気でない来栖崎の耳に、賢人の一言が飛んだ。その瞬間、彼女の動きがピタッと止まる。

 

「……って!! そういうの人前では言わないって言ったでしょう!」

 

 顔面目掛けて蹴りが入れられる。だが────。

 

「はっはっは、残念でしたねぇ師匠! あなたに鍛えられたおかげでもう見切れるように────へぶっ!?」

 

 みぞおちに直撃。そのまま追撃の蹴りが数発入り、来栖崎は颯爽と歩き去った。

 

「がァ……痛てぇ……」

「だ、大丈夫ですの!? 賢人さま」

 

 甘噛は腹を抑えて悶絶している賢人に、心配そうに声をかける。

 

「だ、だいじょぶだいじょぶ……これくらいなら平気だから……」

「もう、来栖崎さんも最低ですね……賢人様の気遣いも知らずにこんなこと……」

「あ、あはは……」

 

 甘噛の呟きに、賢人は苦笑する。

 

「暴力振るう女性は最低です」

「最低って……それは違うよ……」

 

 チクリ。

 

「わたくし、来栖崎さんが羨ましいですわ」

 

 甘噛は、自分でも気づかないうちに、勝手に口が動いていた。

 

「え、どういうこと……?」

「わたくしも来栖崎さんみたいに感染したいなーって、そしたら賢人さまと四六時中一緒にいられるのに、なんて」

 

 その言葉と態度にただならぬものを感じ、彼は立ち上がって甘噛に呼びかける。

 

「そ、そんな縁起でもないこと言わないで!? ほら、明るい話題でいきましょ! そうだな〜、あ! モールでなんか服とか選びましょう!?」

 

 無理にテンションをあげて甘噛の手を引き、メグリエへと足を進める賢人。

 

「おおおおおっきいいいよぉぉおお!!」

 

 アドが辺りのものが飛び散りそうになるほどの大声を上げた。

 

「まじで子供じゃねぇか!」

「先程から五月蝿いですふたりとも!!」

「「すみません……」」

「とにかくだ。女性陣は女性陣で探したい物もあるだろう。悪いが、班分けをして探さないか?」

 

 賢人とアドは同時に謝り、礼音はコホンと咳払いをし場の空気を締める。

 

「さーんせーい!!!」

「アド!!」

 

 アドが勝手に賛成し、班分けが決まる。

 

「どうしてこうなった……」

 

 賢人から離れられない来栖崎に離れない甘噛と、何故か夢氷姉妹。

 

「いやいやいや、明らかにどう考えても人数バランスおかしいでしょ!?」

「でもぉ〜サオリンとサナミンがその班に入りたいって言ってるんだから〜、優先しないとね〜」

 

 賢人の言い分は倫理には適っているが理には適っていないアドの意見によってかき消された。五人は最上階のファッションフロアへ、夢氷姉妹は隅にある小さな本屋へ。その自動ドアは半分開いたまま止まり、床には買い物袋が転がっていた。そんなことなど気にせず、意気揚々と5人で歩みを進める。

 

「衣替えだーっ!」

「ちょ、ちょっと待ってくださいまし賢人様!」 

「師匠も甘噛さんも! 見ててください! 俺の! 変身!」

 

 賢人は服を両手いっぱい抱えて試着室へ飛び込み、カーテンを勢いよく閉じた。

 

「これもいいしこれもいいな……」

 

 どうやら運良く虫食いには遭っていないようで、そうやって選んでいる間、甘噛と来栖崎は行儀よく試着室の前で待っていた。

 

「どう!?」

 

 カーテンを開けた賢人は、黒ベストに白シャツ、サルエルパンツという動きやすそうな格好だった。

 

「す、すごくかっこいいですわ!」

「ま、いいんじゃないのー」

 

来栖崎が適当に言ったそのとき、ふと視線を向けた先に小さな影が見えた。

 

「……ってあれは沙織ちゃん?」

 

 

 

 

 

 その頃、夢氷姉妹は本屋の隅で遊んでいた。

 

「これもええと思う……おねえちゃんに似合ってるよ。……っていうか、おねえちゃん露骨過ぎ。ただでさえライバル沢山いるんやから」

 

 沙南が服屋の方から持ってきた服で、姉を着せ替え人形にして遊んでいたのだった。

 

「でも前見してもらった漫画に書いてあったで?」

「それはそれ! これはこれ! だからこれ読み!」

 

 沙南が恋愛の成就の方法の書いてあるいかにもな本を手に取る。と、そんな時、沙織は不思議な本を発見する。

 

「おねえちゃん!!」

「な、なんや!?」

 

 その時、奥の通路で何かが倒れる音がした。びっくりして手に持っていた本を落としてしまった沙織はそれを拾い直し、妹の指さす方向を見た。

 

「……ばけもの」

「賢人の旦那に知らせやんな!!」

 

 入口からゾンビが静かに入り込んでくるところだった。沙織は急いで賢人たちのいる服屋へと向かった。




仮面ライダーセイバー 第17章『古の使者は、光か影か。』より

Tips.装備は武器と防具、DNAに分かれているぞ。

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