とあるライダーオタクが絶望の世界に来てしまった件   作:キラトマト

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幕間3 甘噛綴の独白 わたくしの想い、今軋みて。

 

 ────わたしはあなたが好きなのだろうか。恋をする、自分が好きなのだろうか。

 

 これは、ひとりの少女の胸の奥に沈む、誰にも触れられずにいた“軋み”の物語。

 彼女自身さえ目をそらしてきた小さな想いが、世界の崩壊という闇の中で、静かに静かに動き始める。

 誰のために戦うのか。何のために傷つくのか。その答えを、甘噛綴はまだ知らない────。

 

 覚えていますか。初めて私とあなたが、会った日のこと。

 私は鮮明に覚えていますよ。

 ……今だから言えることですけれど、最初の貴方のイメージは、パッとしない人。

 根明だけれどひょろっとしていて、剣の握り方はぎこちなくて、正直興味の欠片もありませんでした。

 

 ────でもあなたは黙々と鍛錬を重ねて、誰よりも早く走り、誰よりも強くなろうとした。

 そして、たった一人の女性を守るために、迷いなく命を懸けるその背中を見た時……胸が震えたんです。

 

 惚れたんです。

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 ……………………いや。なんで心の中でさえ本当のことを言えないんでしょう。惚れてなんていません。私は貴方に惚れてなんていなかった。

 ただ、……羨ましかったんです。……あの女が、羨ましかった。

 あの愛が欲しいと、子供が他人のおもちゃを強請るように、妬んだんです。その羨望の眼差しを、その情熱を、私にも向けて欲しいと。私も満たして欲しいと。

 

 ……

 

 …………

 

 ………………嘘。これも嘘っ、彼の気を惹きたいだけの、浅ましい嘘っ。

 ……本当はただ、恋をしてみたかったんです。身を焦がすような情熱も、大げさな奇跡が起きなくてもいい。

 ただ、普通の恋がしたかったんです。なのに貴方はあの女とずっと一緒にいると言った。だから私、諦めようとしたんです。

 

 ……諦めた……はずでした。なのに……貴方が他の女に気を向ける時、何故か胸が傷んだんです。

 あなたは戦って、姿を変えて、みんなを救っているのに。私は何ひとつ変われなくて、釣り合わないまま。

 

 それが悔しかったんです。

 だから、私だって何かしなくちゃって、そう思って飛び出してもあの女が一緒に行動する始末。

 

 ────そして今、私は来栖崎さんを庇って死にかけている。

 あぁ……いっそ、このまま死ねれば……ほんの少しは悲しんでくれるんでしょうか。

 それとも、あの怪物のせいでみんな死んでしまうのかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……嫌だ。それだけは絶対、阻止しなければならない。

 

「……さんを、救います!」

 

 遠くで、愛しい声が聞こえる。誰を、救うんだろう。私かな? 来栖崎さんかな?

 

「甘噛さんッ!」

 

 その数秒後。姿を変えたあなたが、ゾンビの群れの前に立ち塞がった。

 

「安静にしててください!」

 

 自分だって私たちとそう状態は変わらないはずなのに、あなたは血を分けて私たちを回復させた。

 鎧は剥がれ、体勢は崩れていく。何度も、何度も倒されても────あなたは立っていた。

 私が諦めかけたその瞬間、空から落ちてきた乗り物が私たちを拾い上げた。

 あぁもう……本当に。……どこまでも、"皆"のヒーローなんですから。

 ……だからこそ、胸の奥が、また軋むんです。




仮面ライダーセイバー 第32章『僕の想い、結晶となりて』から
次回予告
第2部 本の怪物、渚輪を襲う。
第14章 吹き出す新風、蠢く策動。
現れた2人目の男。そして蠢く白い本棚。
「────裸!?」
「男の後輩ゲット!!」
「火葬作戦だよ! 行っくよー!」
「あの白い剣士が、どれ程のものか、試してみましょうか」
彼らは、新たなる魔の手から渚輪を救えるのか!?

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