とあるライダーオタクが絶望の世界に来てしまった件   作:キラトマト

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4話 禍根:F 食料調達作戦!

 

 ────混沌。わたしは乱れる心が好きだ。だからわたしは繰り返す。わたしは壊すために、人の心を学ぶのだ。

 

 翌朝。大感染、2日目。

 夜明けは、思ったよりも静かに訪れた。  誰一人、熟睡してはいなかった。

 

「昨日、襲撃があった」

 

 低い声で道長が切り出す。全員の空気が、目に見えて張り詰めた。

 

「え?」

「お前に手、かけようとしていた」

 

 そう言って道長がミカの方を向く。

 

「……へ? 私?」

「あぁ。……悪い、取り逃がした」

「い、いや道長さんが謝ることじゃないよ!」

 

 震える声でそう言いながらも、彼女の視線は自然と周囲を彷徨っていた。

 

「……あ! 言ってなかったね。このバスガイドさんは祢音ちゃん、でこっちのちょっと怖いのが道長さん!」

 

「おい、怖いってなんだよ」

 

「そういうとこだよ。……それで、今聞いちゃったことは……あまり気にしない方がいいかも」

 

 祢音が道長にツッコみ、そして真剣な面持ちでみんなに語りかけた。

 

「どういうことかしら。こんなとこに1人で来れる奴なんて居ないだろうし、この中の誰かが犯人なんですわよ?」

 

「だからだよ綴ちゃん。せっかく生き残れたんだよ? 犯人探しで分裂してる余裕はない」

「一理は……ありますわね」

 

 その言葉に、誰も反論できなかった。 疑念は、沈黙という形で場に残る。

 

「……話を変えましょう」

 

 クシュナが一歩前に出る。

 

「昨日一晩考えてみたんだけど……。やっぱり救助をただ待ってるだけじゃジリ貧になると思う」

 

「えー? その根拠は〜? トルリーンちゃん」

 

 まにかの茶化しに構っている暇はないと、クシュナは語り始めた。

 過去起きた大規模地震の救助が2ヶ月もかかったのはその他の災害が連鎖して起こったことによる複合的なアクシデントである事。

 しかしそれを考慮しても渚輪区という大規模な都市全体のバイオハザードなら政府の決定など含めて半月────最低でも14日間は自分たちで生き残らなければならないこと。

 

「半月……」

 

 昨日半日の逃走でさえ命懸けだったのに、と重すぎる重圧がのしかかる。

 

「だから食料を確保して安全なところに隠れるしかない」

「……食料は、ボクのだけじゃだ、ダメかな……?」

 

「もって2日ってところかしら。確実に言えることは足りないってことだけ」

 

「そ、そそそそんな……。せっかく……」

「2日は持つんだよ。ほたるちゃんのお陰で」

 

 祢音はそっと手を取る。

 

「鞍馬さんも甘やかすのはやめた方がいいと思うけどな〜?」

「まにかちゃんもそういうの、治した方がいいよ」

 

「治す? どういうことかな〜wikiで調べよ〜っと、ってネット繋がらないんだったっ!」

 

 誰も笑わなかった。

 

「……それで提案なんだけど、安全な場所なら私の家、があるんだけど……」

「クシュナさんの……家?」

 

「お医者さんだし広いんですか?」

「広いかどうかは分からないけど……新消ヶ谷(しんけしがや)の住宅街、で伝わるかしら」

 

「え? 新消ヶ谷って、あ、あの白金(しらがね)通りのですの!?」

「あら、甘噛さんは知ってるのね。そうそう」

 

「知ってるも何も……」

「あれ? 有名なところなの綴ちゃん」

「あ……桜井さんは知らないんですか?」

 

 1坪1000万は超える超高級住宅街、それが新消ヶ谷だった。

 

「4桁……」

 

 道長は頭の中で霜降り肉をどれだけ後輩に食べさせられるか計算し始めた。

 

「祢音ちゃんの家とかもそのくらいじゃない?」

「うん。まぁ……ね」

 

 あっけらかんと言って見せた景和。祢音はバツが悪そうに答えた。

 

「なんでそんなすごい人がバスガイドやってたんですか!?」

「お仕事体験みたいな道楽!?」

 

 ルナと灯里が口々に祢音に質問する。

 

「まぁ……遠からずって感じだけど……。って今はそんなこと関係ないよ! クシュナ……ちゃんでいい?」

「ごめん、多分祢音さんより年上かも」

 

「クシュナさんの家なら……食料はあるんですか?」

「うぅ……ごめんね、引っ越して3日でほぼないの……」

 

「いや責めないですよ! それじゃあどこかから調達しないと……だよね」

 

「2日目だし、まだあると思う。……ただ、回収は時間との勝負になりそうだな」

 

 そんな毛糸の言葉に、不絵がはてなマークを頭に浮かべる。

 

「────え?」

「ん? どうした不絵?」

「回収って……まさか盗む気?」

 

 空気が静まる。次いで、そんなこと気にしてる場合じゃないという視線が不絵に向けられる。

 

「不絵……今災害時」

「……うん?」

「つまり、緊急事態」

「そうね……」

 

「無事に残ってる食料があるなら、生存者で分けるのも仕方ない」

「で、でも……盗みはダメじゃ……」

 

 そのやり取りを聞いて、餌を与えられた鯉のように、まにかが声を上げた。

 

「痛ッ! イタタタタタタ!! あ〜痛い! 何これ痛すぎるよよよよ!?」

 

「……」

「────あ、これ持病の腰痛の話ね?」

「……ないでしょ」

 

 それを聞いて景和は一瞬、誰も気づかないほど一瞬目を変えてすぐに不絵に優しく微笑みかける。

 

「不絵ちゃん。君の言ってることは平時では正しいことだし、俺たちも同意する。だから店先にこれ、置いていこう?」

 

 彼は懐の財布から名刺とお札を取り出した。

 

「これなら盗ったことにはなりませんわね」

「えーそれってとんちじゃな〜い? それは一休さんだから許されるのであって────」

「廻栖之さんは黙ってて」

 

 景和は笑っているが、目は笑っていなかった。

 

「それでっ、どこ行くかは決まったのか!」

 

 道長が、呼びかける。少し凍った空気を感じたのだろう。彼女たちは食料調達の為に街に繰り出した。

 

「これは……まずいな」

 

 たった1日で、街は崩壊していた。そこかしこのビルが倒壊寸前、火の手が上がり聞こえる悲鳴。地面もひび割れていた。

 

「お前ら! 衝撃の準備しとけ!」

 

 ゾンビを巻き込みながら、道長はアクセルをベタ踏みする。

 ドンッ、ドンッ。と車内に衝撃が伝わる。

 

「着いたぞ!!」

「俺がバスを見張る!」

 

 そこはコンビニ。そして作戦はシンプル。道長がバスからブザーを投げ陽動している隙に食料をバッグに詰める。

 

「ハァっ!」

 

 投擲と同時に、残りの全員が走った。とにかくなんでも良いから詰め込む。それを信条に、各々が詰め込んでいく。

 

「不絵っ、これいる?」

 

 ミカが指し示したのは雑誌。なんでも、とは言ったが……。

 

「いらないっ」

「これとこれと……」

 

 祢音はメイク用品……などではなく缶詰や生理用品など、実用的なものを詰めていく。そして景和は名刺とお札をレジに置く。

 

「よし! みんな出よう!」

 

 そう、クシュナが呼びかけたその瞬間だった。

 空が、燃えた。

 

「きゃああ!」

 

 火災旋風。舞い上がった死体が、落ちてくる。

 

「な、何!?」

「分からないけど走って!!」

「わっ……」

 

 転けそうになる不絵の手を、ミカと毛糸が同時に掴む。

 

「っ、ありがとうっ!」

 

 バスが遠く感じる。

 

「クソっ!! 掴まれ!」

 

 道長が、バスから手を伸ばす。しかし間に落ちてきた死体に封じられる。そして燃える死体から引火したバスが爆発し、彼女たちは吹き飛ばされる。

 

「うッ!?」

「ほたるちゃん!」

「不絵ちゃん!」

 

 祢音と景和も2人を庇い、爆炎の中に……。

 

「……ぁ」

 

 地面に転がる、不絵。仲間の姿が、見えない。煙の向こう。

 

「ふっふっふー。お困りのようだねぇ〜」

 

 見上げた先にいたのは。

 

 ────裸の少女だった。




Tips.感染少女 感染者本人の能力を良くも悪くも引き出した形態。とても強く、開始からスキルを放てるうえ、突破率突破力が大幅上昇するため、クエスト時短になる。初心者はひさぎか綴をリセマラしてでもゲットするべきだろう。

この子達に生き残って欲しい?

  • はい
  • いいえ
  • どうでもいいくらいキャラが薄い
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