とあるライダーオタクが絶望の世界に来てしまった件 作:キラトマト
────わたしは守りたい。そして必ず取り戻す。わたしの希望を。
同年 3月21日
彼女たちは動き出した。
ニュータウンの外れ、かつて倉庫街と呼ばれていた一角。そこに、生存者たちが「自治」と称して集う区画があるという情報を掴んだのは、礼音とアドだった。
生存者の意識改革と条約制定。
不絵、毛糸、来栖崎班の生存者散策と仲間救出。それを同時にこなせる案件が、アドによってもたらされた。
「場所はここから北。……5人で足ります?」
待機のミカが心配そうに見つめた。
「大丈夫! こっちには最強のヒサギンがいるんだよ?」
その言葉に、少し来栖崎が顔を赤らめる。
「……じゃあ行こうか不絵」
恋人が仲間に囲まれて、少し声を落とす毛糸。
「そうね」
鉄柵と簡易バリケードで囲われたその一帯は、一見すると秩序立っているように見えた。
見張りは交代制、焚き火は管理され、配給の時間も決まっている。
だが、その秩序は“内側の者”にのみ与えられるものだった。
外れた場所から様子を窺う不絵の視界に、見覚えのある背中が映る。
────ほたるだった。
「ほた────」
呼びかけて、不絵は止める。彼女の腕には即席の縄。足取りも重く、まるで監視されるように歩かされていたから。
「……捕まってる」
「保護じゃない」
不絵の声は震えていた。毛糸が低く言う。
「ありゃ拘束ね」
来栖崎の言葉が重く響く。彼女は無言で双眼鏡を下ろした。
敵意も殺気も、まだ見せない。ただ、全体を把握するための静かな視線。
不絵は一歩、前に出た。
「待って。不絵」
毛糸が腕を掴む。
「今行っても、助けられない」
「でも……仲間が」
「“助けたい”と“助けられる”は違う」
毛糸の言葉は冷たく、しかし真剣だった。それでも、不絵は、引かなかった。
正面から区画に姿を現し、見張りの女たちに声をかける。
「すみません……ここに、私たちの仲間……友達がいるはずなんです。返して、もらえませんか」
その言葉を聞いて、見張りは顔を見合せ嗤った。
「返す?」
「保護してやってんだよ」
「医療も、食い物もな。感謝されたいくらいだ」
不絵の胸に、鈍い痛みが走る。
「……保護、じゃない。……あの人たちは、縛られてた」
「逃げられたら困るだろ」
「ここは安全なんだ。外より、よっぽどな」
その瞬間、不絵は理解してしまった。ここにあるのは善意ではない。独善と支配だ。
背後で、低い衝撃音がした。一人の女が、宙を舞って倒れる。来栖崎がやったのだ。
「はい。交渉終わり」
静かな声。しかしその中には静かな怒りが込められていた。
「あなた達は、守ってるつもりで縛ってるだけ」
武器を構える者がいたが遅い。刃が一閃し、鉄パイプが床に落ちる。
「支配っていうのはね」
来栖崎は一歩踏み込む。
「力がある側がやるものじゃない? 弱い人間が、力を独占した“つもり”でやるから、始末に負えない」
数分もかからなかった。血は最小限。
だが、抵抗の意志は完全に折られていた。
拘束されていた仲間たちは解放された。
しかし、その中に────まにかの姿はない。
「もう1人、いなかった?」
「は、はぁ……? そ、そんなの知らないわよ。……あ、もしかしてあの暗い赤髪の子?」
「っ、そうその子」
「あの子なら……連れ去ろうとした時に軍服を来た人に連れていかれたわよ」
「……軍服?」
そして、離れた場所でアドが小さく呟く。
「これが、派閥化の始まりだよ」
生存者たちの世界は、もう元には戻らない。だが彼女たちは、進むことを選んだ。
「よし、二手に別れよう」
生存者の対応班、そして調査班に別れることにした面々。
「申し訳ないですけれど、私は廻栖之さんを取り戻すことには反対です。あの方は……危険すぎる」
「え……? どういうこと綴ちゃん」
「いえ、私の考えを言っただけです。探したいのならお好きにどうぞ。私は樽神名さんの班に付きます」
「……分かった」
「それじゃあ行ってくるよ」
不絵たちはニュータウンに唯一存在する軍事基地へと、生存者組織"ポートラル"として最後の作戦に望んだ。
この話は、ギーツのサブタイトル命名方式を徹底するためのかさ増し回ですが、それにしては上手くかけたと思います。
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