とあるライダーオタクが絶望の世界に来てしまった件 作:キラトマト
────平穏など来なくとも、わたしは生きる。人の輝きを、わたしは信じる。だから物語を紡ぐのだ。
突然、拍手が鳴り響く。乾いた音が、瓦礫に反響する。
「所詮、アルターブックなどというつまらぬ被造物ではこれが限界だったか」
階段を昇ってきたのは副機関長、神峰透露。
「神峰透露……!」
「ただの燃えカスになったと……偏見でものを言おうか」
ヴァルキュアは3冊で疲弊し、息も絶え絶え。なのに神峰はあろうことか片手にバックルを掲げていた。
「あれは覇剣ブレードライバー……!」
息を呑む。 神峰は、すでに無銘剣虚無をベルトとして扱えていたのだ。
「ほぉ、そういう名前か。教えてくれて助かるよ、神川賢人くん。君のソードライバーのように自己紹介してくれなくてね」
言いながら、ストボロスの近くに落ちていた小さい方のブックを手に取る。
「……ほう、やはり完成していたか。いやぁ、メギド、というものはあまりに謎が多いブラックボックスでね。色々なことをこれで試していたんだよ」
子供が自身の自由研究を自慢するように、神峰は1人自慢げに声を紡ぐ。
「……怪人を弄んだのか?」
「聞こえが悪いな。なにより怪人と言ったか? だったら人間の敵だろう。倒して何が悪い────と、偏見でものを言おうか」
「怪人にも尊厳はあるんだよ。……特にああいう人間味のあるやつはな」
「人間味……なら私はどちらになるのだろうな」
そう言って、神峰はブックを開く。
『ポセイドンサーガ』
『かつてから伝わる神々の宴が今、開かれる〜』
彼の四方から波が押し寄せる。
「な……!? まずい逃げてください!!」
仲間たちを庇うように前に出る。 ヴァルキュアは歯を食いしばり、神峰へ斬りかかった。
「おぉっと怖い怖い」
軽くかわし、神峰はブックをドライバーに装填する。 次の瞬間、巨大な波が彼を包み込んだ。
「……何が、起こって」
波の中から鼓動のような低音が響く。
────そして。
『……抜刀』
「彼はどう言っていたか……ああ、変身」
『エターナルパワー!! 〜虚無 神獣の力で、全てが無に帰す〜』
波が弾け、装甲となって神峰を覆う。 海のように、すべてを呑み込む圧倒的な存在感。
仮面ライダーファルシオン ポセイドンサーガが今、誕生した。
「なんだよその姿……!! お前その聖剣がどんなものが知ってるのか!?」
「あぁ、知っているとも。全てを無に帰す為の聖剣。彼らには実験台になってもらったよ」
ファルシオンは、ちぎれたアルターブックの表紙を掲げる。
「……さて、ではその癒封剣波癒という聖剣さえ頂ければ……」
魔の手が、仲間たちへ伸びる。息が上がる。 それでも、ヴァルキュアは仲間の前に立った。
「────ッ!!」
2人の間に、1本の聖剣が突き刺さった。 火花と共に、炎が舞い上がる。
「な……んだこの……"炎"は……!」
本来、炎は水に消し飛ばされる存在。……しかしその"赤い炎"は燃え続けていた。
「待たせてごめん。会いたかったよ、神川賢人くん」
ファルシオンの前に、1人の男が立ち塞がった。
「……まさか、もしかして。……なんで」
「……ほぉ、こんなことが起きるとは」
神峰はマスクの下でニヤリと笑う。そして男は聖剣を引き抜き、ベルトにブックを装填する。
『────烈火抜刀!!』
「変身……!」
『ブレイブドラゴン!!』
真紅の龍を纏いし炎の剣士。
「仮面ライダーセイバー……!」
「小説家の神山飛羽真か。まぁ、面白い展開ではある。……が、もうその聖剣は必要ない。大人しく退散してもらおうか」
『必殺黙読 神獣無双斬り!!』
「それはこっちのセリフだッ!」
火炎剣烈火を納刀したセイバーは2回トリガーを弾く。
「火龍蹴撃破!」
回し蹴りが斬撃波を砕き、爆炎が視界を覆う。その隙に、皆を抱え撤退。
「……逃げたか。まぁいい、十剣士の弱点は既に把握している。いくら数を束ねたところで無駄だということを見せつけてやろう」
世界が、静かさを取り戻す。だが、安堵するには早すぎた。彼らは再び、モラトリアムの拠点へ身を寄せることとなった。
「神山飛羽真さん!? 本物!? うわすげぇ……」
「賢人」
「……あ、すみません。それで飛羽真さんは何故ここに……?」
「もちろん、君たちを助けるためだよ。ずっと見てたんだ、君たちの活躍」
「見てた!? 一体どう言う……」
「未回収のライドブックを探していた時に賢人……あぁ、富加宮賢人が行方不明になったんだ。それで手がかりを探していた時にメギド用の本が反応して」
「賢人さんが!?」
「大丈夫、帰ってきてる」
飛羽真は微笑み、続ける。
「で、役に立ってるかな? バイク」
「バイク……ってもしかしてこれの事ですか!?」
賢人はガトライクフォンを手に取る。
「ああ、あの時は物しか送れなかったが……」
「いえ、無事に逃げることができて……本当、何度もお世話になりました。……ってあの時はってことは飛羽真さんもそれ使って来たんですか?」
「ああ、あまり長い時間はいられないけどね……だから贈り物だ」
飛羽真は懐から何冊ものライドブックを取り出した。
「それは……!」
「あぁ、それと大秦寺さんから伝言。新しい聖剣、いつか触らせてくれって」
「あ、あはは……」
そして飛羽真は世界からはじき出され、元の世界へと戻って行った。
「……飛羽真さん」
「あの人が賢人様の憧れ、ですか?」
「ああ、小説家兼剣士。しかも世界の続きを書いた英雄なんだ」
賢人は少し早口になり、興奮気味に答える。
「世界のつづき……?」
「……まぁ今はあの神峰透露を止めることが先決、そうだろ賢人」
「あぁ」
決意が、心に響く。次は俺の番だ、と。
「……あれ、発症しない」
ふと、来栖崎が呟く。先程の特訓で波癒に押し切られた来栖崎。覚醒した聖剣に触れたせいか、時間が経っても感染症状が起こらないのだ。
急いでやいとに診てもらう来栖崎。
「えぇ、確かに治まってる……っていうか完全に消えてる。まさかこの剣が────」
すると、拠点の扉が強く叩かれた。
「……誰だ?」
緊張が走る中、扉が開く。立っていたのは、見慣れた顔だった。
「……久しぶり、とは言わないわ」
「……私荷崎さん」
ハルノートの面々が、揃ってそこに立っていた。
「拠点、変えたのね。探すのに骨が折れたわ。……あなた達、ずいぶん派手にやったみたいね」
敵意はない。だが、まだ距離がある声。
「それで……何の用?」
来栖崎が一歩前に出る。不絵は一瞬だけ視線を伏せ、それから、はっきりと告げた。
「あなたたちの側に乗るわ」
「……!」
賢人の目がぱあっと明るくなる。
「もう、どちらが正しいかじゃない。この島で何を残すかを考えた結果よ」
彼女は賢人を見る。否定でも期待でもない、評価の目で。
「あなたに、あの人たちと同じ物を感じた。それなのに黙って見ているだけなんてできなかった」
一拍置いて、付け加える。
「ハルノートは中立を降りる。戦うわ。あなたたちと一緒に」
空気が変わった。それは同盟ではなく、選択だった。
「……ありがとうございます」
賢人は深く頭を下げた。
「礼はいらない。どうせ地獄なら、自分で選んだ場所に立つだけよ」
不絵は賢人に手を差し出し、彼もそれを握り返した。
「……あの、もしかしてそこにいるのは蜂ノ巣やいと先生……?」
そして、クシュナが声を上げた。
「え、えぇそうだけど」
「やっぱり……! 私あなたを尊敬していて……風邪の特効薬を開発したって聞いてて……私は違う分野だけれど」
「知っててくれてたのね……? ……でも大したことはしてないわ。ただ薬に極微細なAIナノマシンを入れて症状を極限まで無くすだけだもの。……それよりも神川くんのその剣よ」
「はい……!」
彼の目に希望が満ちる。
「もしかしたら完全ゾンビ化した人間も元に戻せるかもしれないわ。来栖崎さんがウイルスと共存していた期間は、外で彷徨いてるゾンビたちとそう変わらないもの」
「共存って言い方はキモイからやめて」
その言葉にやいとは苦笑する。
「……俺の聖剣で全員を」
「あ、あまり背負い込みすぎないでね?」
「分かってます。手の届く範囲が助けられる範囲って……あの人も言ってましたから」
「ただねぇ……肝心の場所が分からないなあ……」
アドが腕を組み、地図を睨む。
「生存組合、PAL研、メギド……全部が繋がってるはずなのに、決定打がないんだよねぇ」
沈黙。その中で、百喰が小さく声を上げた。
「……あ」
「ん? どしたん、モグッチ」
百喰は顎に手を当て、記憶を探る。
「前に……斜目病院で、妙な死体を見た」
「ゾンビ化してない。でも、明らかに普通じゃなかった」
「斜目病院……?」
「……ああ!」
アドが声を上げた。
「それだよ! 斜目病院は元研究区画! 表向きは閉鎖されたけど、地下施設が残ってるって噂があった!」
「つまり……」
礼音が言葉を継ぐ。
「ゾンビ化しない死体が出る場所」
「実験施設があると考えるのが自然ね」
「PAL研の本拠地……ここね」
来栖崎が指し示した地図の一点。一同の視線が集まる。
「モグッチ、お手柄だよぅ!」
アドが百喰の背中を叩く。
「あの時、アドたちを追いかけて正解でした」
「あの時……?」
「百喰お前そんな遠くまで行ってやがったのか」
「えぇ……まぁ」
あの時味わった屈辱は無駄ではなかった、アドの役に立てたと、百喰は口角を無意識に緩める。
「ありがとう、百喰さん」
そして、アドが大きく手を叩く。
「さあさあ皆!! 三大生存組合連合、渚輪区救出作戦! 開始だよーッ!!」
アドの号令で、島を掛けた一大作戦の最終章の幕が上がった。
Tips.アビリティ各キャラに設定されたものだぞ。強くなれるぞ。同キャラであげることが出来るが、全キャラに使えるアビクマが手軽に手に入るのでおすすめはしないぞ。