とあるライダーオタクが絶望の世界に来てしまった件 作:キラトマト
第1章 姉妹の絆、銀の国。
────果てしなく広がる空。それは果たして本物だろうか。疑うものは、明日に嫌われる。
2022年 神山飛羽真によって書かれた続きの世界。
「まさかタッセルさんの偽物がいたなんて……」
ソードオブロゴスでは未回収のライドブック及び無銘剣虚無の捜索を行っていた。
「あぁ、だがひとまずは何とかなってよかった。しかしまだ無銘剣は見つからないんだな」
某県の山中、神山飛羽真と富加宮賢人は遺跡を発見した。
「これはまた……」
山中というには似つかわしくない銀の壁に囲まれた遺跡。
「もしかしたらワンダーライドブックの何かが作用しているかもしれない。慎重に行くぞ」
「あぁ」
2人は歩みを進める。その中央には何か台座のようなものと1冊のライドブック。
「白のブック……? やはり未確認のブックか!」
「賢人! 迂闊に近づくのは! ────」
富加宮は走る。飛羽真が追いかけるもすでに富加宮は取り込まれかけていた。
「やはりだ! これは対応する聖剣が未だ発見されていない白のライドブック! 飛羽真はソフィアさん達に伝えてくれ!」
「賢人ッ! 賢人ォォォッ!!!」
叫びも虚しく、雷の剣士 富加宮賢人は謎のワンダーライドブックに取り込まれてしまった。
「ん……? ここは……」
富加宮賢人は、ゆっくりと上体を起こした。目に飛び込んできたのは、銀色の天井。正確には、天井というより“空”に近い。
幾何学的な光の紋様が層を成し、淡く明滅している。
そこで富加宮はベッドに寝かされ、今目を覚ました。
「目ぇ覚ましたか? 若人」
落ち着いた声が、すぐ近くから聞こえた。振り向くと、そこには一人の少女が立っていた。
彼女は長女の
「一体ここは……君は……」
「ここは銀の国シルヴァニア。お前は異界からの漂流者ってところかのぉ」
そう言ってわだちはにやりと笑う。
「あら、おはよう。迷子くん」
その直後、ぱたぱたと足音が響いた。
「わだち、そんな言い方したら怖がるでしょ?」
柔らかな声と共に現れたのは、穏やかな微笑みを浮かべた少女。その露出度の高さに富加宮は思わず目をそらす。
「目、覚めたのね。よかったぁ」
「そっちは……?」
「蒼朽寂むぐらよ。体調はどう? 痛むところはない?」
「……あ、ああ。今のところは……」
すると突然、時報が部屋全体に鳴り響いた。
『これより、食料配給に時間です。直ちに行動してください』
荘厳な男の声。
「さぁ父さんとの面会だ。お前も行くぞ」
そういってわだちは富加宮の手を引く。
「お、おい説明を……」
「聞いてたらわかるわ。よかったら君にも協力して欲しいな」
むぐらも共に、姉妹の共用スペースへと歩いていく。
「あ! むぐ姉来た!!」
そこには既に残りの3人が食卓に集まっていた。
「その正体不明の怪我人の看病をしてたのよ。そんなのも分からないの姉のくせに」
「ヒイイイ! そこの怪人さんは外の世界からのスパイで私たちの居場所を乗っ取るつもりなんだそうなんだ鬱鬱鬱」
「あれって君たちの家族?
「あぁ。よすが、しずく、ほとりだ。全員私のかわいい妹達だ。いいだろ?」
「あ、あはは……個性的でいいな」
「ほら2人とも、座って?」
むぐらが席を指さす。全員が席に着いたのを確認したのか、アナウンスが鳴り響く。
『食事摂取時間は30分です。大切な戦士の体です。健全な摂取を心がけましょう。では手を合わせて』
「いただきます!!」
アナウンスと同時に姉妹たちは食事を始める。
「いい食いっぷりだな」
そう言って富加宮は姉妹たちを見守っていると、無邪気に身を乗り出してくる少女が1人。
「ほんとに外の世界の人!? すごい! ねえ、空って青いの?」
星を思わせる瞳が、きらきらと輝いている。
「こら、よすが。患者に詰め寄るな」
わだちが低く咎める。
「えー……」
しゅん、と肩を落とすよすが。その様子を、少し離れた場所から冷めた目で見ている影が2つあった。
「相変わらず騒がしい」
「外は敵ばっかりなんだだからこの人も」
「安心しろ、外は嫌な事ばかりじゃない」
富加宮は優しく語りかけ、その一言によすががぱっと顔を輝かせる。
「ほら! やさしい人だよ!」
「……騙されやすい」
しずくが小さく舌打ちする。むぐらは、そんな姉妹たちを見渡して微笑んだ。
「とにかく、今は安静にしてなさい。貴方は数日間眠っていたんだから」
「数日間……? その間……世界はどうなっている?」
姉妹たちは、一瞬だけ視線を交わした。
「それは……」
よすがが言いかけて、口を噤む。代わりに、わだちが一歩前に出た。
「その説明は、父さんの判断を仰ぐ」
「父……?」
「この国の管理者。神峰だ」
遠くで、鈍い鐘の音が鳴る。
「修練場の準備が整ったようね、目覚めの確認は完了」
むぐらが呟き、わだちが踵を返す。
「富加宮賢人。お前には、この世界を知ってもらう」
「……拒否権は?」
「ない」
即答だった。だがむぐらがそっと近づいてきて、小さく笑う。
「大丈夫だよ。銀の国は、こわくない」
その言葉が────なぜか、とても脆く聞こえた。富加宮は、知らず拳を握り締める。
ここが、すべての始まりだと。その直感だけは、確かだった。