とあるライダーオタクが絶望の世界に来てしまった件   作:キラトマト

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第30章 襲来、忌むべきプレイヤー。

 

 ────ただわたしは、生きたいだけなのだ。自由気ままに、なんの責任もなく。でもわたしは、人間が好きだ。

 

「……は? ……!? なんだよこれ!?」

 

 突如、空間に浮かび上がった五線譜が、賢人の身体を縛り上げた。

 音符が実体を持ったかのように絡みつき、身動きが取れない。

 

「もう面倒だから一気に決める。最終楽────」

 

 その瞬間。

 投げ飛ばしていた雪蚕の通信機器が、甲高い電子音を立てた。

 

「……なによこんな時に」

 

 苛立ちを隠しきれないまま、雪蚕は応答する。壊れていなかったことに一瞬だけ感心しつつ。

 

「はぁ!? こいつほっとけって言うの!? アドリブ挟むなっつったでしょ!?」

 

 通信の向こうから、ねっとりとした声が割り込む。

 

「雪蚕さぁん? これ以上の盟主への乱雑な言動は看過できませんよぉ?」

 

 次の瞬間、白と黒を基調とした装束の女性が空間を裂くように現れた。

 

「またお会いしましょう? ヴァルキュアさん」

 

 彼女は雪蚕を抱え上げると、音もなく────いや、音速すら置き去りにする勢いで九州方面へと飛び去った。

 

「……な、なんだったんだ? アイツは……?」

 

 拘束が解け、賢人は変身を解除する。

 

「賢人様ーッ!!」

 

 その時、山中から聞き慣れた声が響いた。

 

「お、綴! あの人たちは避難させたか?」

「もちろんです! ……というか先程対峙していた女性は一体……」

 

「見てたのか……。いや正直わかんないことだらけでさ。魔化魍は出るわ音楽少女が現れるわでもう……」

「音楽……私も聞いたことありませんわね。でもまぁ、とりあえず戻りましょう? 私たちの寮に」

 

「報告もしないとだしな……あぁもうせっかく綴と山デートだったのに」

「あら、賢人様も楽しく思っていたのですか?」

 

「そりゃそうだろ? こんな可愛い女の子とデートだなんてありえないもん」

「そう……ですわね!」

 

 一瞬だけ視線を落とし、すぐに笑顔を作る綴。

 

「そんじゃ、太陽機関まで戻るか!」

 

 白馬を召喚し、二人は帰還した。

 

 

 

 ────太陽機関。世界の復興を目的として設立された国際的浄化組織。日本本部は、かつて福岡県と呼ばれた地『新東響』に置かれている。

 

 本州へと渡った渚輪区の人間たちの一部は、厳しい試験を経て加入していた。そして組織が提携している部隊毎の寮に帰ってきた2人を見て寮長は理由を問う。

 

「あら、もう帰ってきたの? せっかくの有給だというのに」

 

 寮長はスマホから目を離さず、軽く手を振った。

 

「いや途中で仕事になりまして……。一応時間外労働になるか今から長官に聞いてくるところです」

「そうなんだ〜。お疲れ様〜」

「あはは……。そんじゃ綴は待ってて。……まぁあんま期待はしないでね」

 

「えぇ。……わたくしは賢人様といられることが嬉しいのですけれどね」

「ん? 何か言った?」

「いえ! 気にしないでくださいまし!」

 

 2年が経った今も、2人は真の意味で繋がってはいなかった。

 そして賢人は太陽機関本部の最上階へ行き、長官室の扉を叩いた。

 

「生存部隊ポートラル 神川賢人です」

「入れ」

 

 椅子に腰掛けて待っていたのは深い赤を纏い、猫耳を付けた大人の女性。その名は妃崎傘子(きさきざきかさこ)

 

「妃崎長官、本日の有給の件ですが……」

「サンから報告を受け、既知の情報だ。そして、既に対応済みだとも言っておこう」

「えっ」

 

「恐らくだが、これからも今回のような出来事は続くだろう。その為の制度を"浄化局局長として"提案した。少し時間はかかるが……待っておけ」

 

 そう、彼女は2つの役職を兼任しているのだ。浄化局の局長と、それを含めた各局を取り纏める太陽機関の長官。

 

「いやそれ職権濫用……」

「何か言ったか?」

「い、いえ!」

 

 賢人は逃げるように部屋を後にし、廊下には少年が1人待っていた。

 

「どうだった? 手当は貰えそうか?」

 

 サンだった。2人は寮に帰りながら話を交わしていた。

 

「うんまぁ。……てかあの人不正しようとしてたぞ。お前からなんか言えよ。技術局局長だろ?」

「無理だよ怖ぇし」

 

「まぁお前じゃ無理か、あのスミロドンドーパントは」

「……ぷっ。ハハハハハ!! やっぱお前の例えいいなぁ! 面白い!」

 

 賢人とサンは秘密裏に長官にあだ名を付け、されど敬い、そして親しみを持っていた。

 

「ちょっとあなた達。妃崎センパ……あ、長官で遊んでいるんじゃないでしょうね」

 

 突然、背後から声をかけられる。

 

「あっはは!! そうなんで────」

 

 続けようとする賢人の口を慌ててサンが塞ぐ。

 

「総隊長殿! そんなことは話していないであります!!」

 

 彼女の名前はルティア・葛羅(かずら)峰銛(みねもり)。全生存部隊を束ねる総隊長である。

 サンは姿勢を正し敬礼、次いで顔を見た賢人もすぐさま姿勢を正す。

 

「ふぅ、センパイで遊ぶのも程々にしなさいよ」

「……長官じゃないんですか?」

「それはそれ! これはこれよ! 貴方達と話していると調子が狂うわね本当……」

 

 そう言ってルティアは賢人たちの歩いていた道を戻っていく。

 

「先輩かぁ……。あ、そういえば最近大量に新人来たの知ってるか?」

「あ〜、確か2部隊分増えるんだろ?」

「初めての後輩だからな」

「なんなら先輩部隊もいないからな」

 

「あ、そういえばハルノートの皆は?」

「いや最近連絡が取れないんだ。無事だとは思うけど……」

 

「てかあの子たちのマネージャーは? そこから連絡取れないのか」

「いやそれがルナも連絡取れないらしいんだよ。だから今はマネージャー業に専念するんだと」

「……そんなに知ってるなんて暇なんだな。局長なのに」

 

「なんだ? 仕事が早い僕への嫉妬か?」

「違ぇよ」

 

 小気味いいやり取りの中、突然構内に警報が鳴り響く。

 

『博多区にて異変発生! 現在出動可能な人員は直ちに現場に急行せよ!』

 

「異変……?」

「グラナトファ案件ならグラナトファって言うもんな……何か別の……」

「確かさっきの魔化魍からライドブックが……ぁあ!!」

「どうした急に!?」

 

「ブックから生まれた怪物は本自体をどうにかしない限り何度でも生まれ続ける。……つまり魔化魍の可能性が高い」

 

「……だったら行くぞ賢人! 人喰いのバケモンをほっとく訳にはいかないだろ!」

「当たり前だッ!」

「貴方達! 早く! 民間人に被害を出す訳には行かないわ!」

 

 先程長官室に行ったルティアが戻ってくる。彼女は飛行艇の方を指さす。

 

「いえ! 大丈夫です! 俺にはこれがありますから!」

 

 賢人はユニコーンを呼び出す。2人はそれに騎乗して窓を割って飛び出す。

 

『Superior unicorn!』

 

「あぁ!! 何やってるの貴方達!!」

「すみません!! 弁償代は賢人の給料から天引きでお願いします!」

「何言ってんだよお前のが貰ってんだろ!!」

「実行犯はお前だっ!!」

 

 空中で争う2人に、ルティアが叫ぶ。

 

「折半ですし、まずは始末書です!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 博多区 私立(わたくしりつ)しらなみ幼稚園。送迎バス。中では、子供たちがその日の教育が楽しかった、給食のおかわりの量、明日ブランコを使うのは誰など、和気あいあいと賑やかに話していた。そんな中、バスが急に止まる。

 バス停に立ち、止まるよう手を振る女性がいたからだ。

 

「すみませんお客様、こちらのバスは送迎のバスなんですよ〜。もう少しおま────」

「アッハハ! あ! 箱の外から殺しちゃった!」

 

 その女性は所謂地雷系の服を着ており、長いネイルから滴る液体は地面と、運転手の顔を溶かしていた。

 

「きゃあああああ!!」

 

 最前席に座っていた先生はその惨状を見て叫ぶ。

 

「あ、逃げたらポイントにならないじゃん! あーもう……あ! でも幼子は逃げれないっか!」

 

 段々と何が起こっているか理解する子供たち。死への恐怖。それは人間の原初の本能。なのに1人の先生は、子供たちの前に立つ。

 

 ────勇敢にも。

 

「大丈夫だからね? 先生が守るからね!?」

 

 ────そして無謀にも。

 

「だぁッ!!」

 

 突然、バスが白い炎に包まれる。

 

「あったかい…」

「うッ……」

 

 子供たち、先生たちが温もりを享受する中、ザザルだけは苦しみ悶えていた。

 

『エナジーユニコーン!!』

 

 バスの前に立つヴァルキュア。彼は前方の窓を突き破り、後部の窓まで貫通して地雷服を外まで連れ去った。

 サンはその後子供たちと先生を連れて、バスを降り避難させた。

 

「邪悪は、この俺が倒す!」

「お前はクウガ? 違うっぽいね。特別点じゃないならタイパ悪いし……」

「逃がすわけないだろ!!」

 

 撤退しようとする彼女の足元に、波癒が突き刺さる。

 

「ねちっこいヤツ嫌い!」

 

 地雷服はサソリの意匠を持つ怪人に変化する。

 彼女の名前はゴ・ザザル・バ。『動く箱の中』の人間(リント)を殺すというルールの"ゲーム"の参加者だった。

 ザザルは舌に空いたピアスを引きちぎり、それが鉤爪になる。そして超強酸性の体液が滴り振るわれる。

 

「あぁ知ってるぜ! 中和剤はねぇけど、避ければいいだけだ!」

 

『爆走うさぎとかめ!』

『ユニコーンリザード! 増刷! とある物語!』

 

 2冊のワンダーコンボに、更に物語で特殊効果を重ね、高速で近寄る。ヴァルキュアはザザルの眼前で剣を振り上げる。

 

「そんなんじゃ誰も当たんねぇんだよバカが!」

「……ふふっ。ざ〜こ。えぁ〜」

 

 ザザルは口を開け、舌を突き出す。それは二又に別れており、そして滴る揮発性の超強酸性の体液。

 

「そんなの……知らねぇぞ!?」

『賢人!! 危険だ離れろ!』

「離れたらまたあのクソエイムの毒弾だぞ!?」

 

『……ッ、だったら仮面を重ねろ!』

「仮面……? そうか!」

 

『please call me スペリオルユニコーン!』

『封神仮面演義! 1リーディング! ヒールボンバー!』

 

 黒の装甲を身に纏い、手甲にブックをリードさせる。ブックの力を宿したヴァルキュアは仮面が厚くなる。

 

「人中長くなってんのウケる‪w‪w‪w‪w‪w‪ えぁ〜」

「興味ねぇよそんなもん! はぁ────」

 

 ヴァルキュアは振り下ろしかけた剣を直撃しないようにズラす。それを見たザザルは首を傾げる。

 

「え? なにおにーさん怪人フェチ?」

 

 断じて違った。こんなところで倒したら爆発で周囲一帯は火の海。だから躊躇ってしまったのだ。

 更に、遠くから"車輪"の音が聞こえてくる。

 

「「!?」」

 

 奇跡的に、ヴァルキュアとザザルの反応が一致した。

 

「カシャ!? 魔化魍まで来んのかよクソ……!」

「なによあの気持ち悪いの! 耳なし芳一!?」

 

 人型に白い体表、猫の頭に火炎の首輪。そしてなにより恐ろしいのは、身体中に書かれた経文。

 

「プロデューサー繋がりかよクソ……!」

 

 魔化魍は、浄めの音でしか完全に倒せない。

 

 ────しかし。

 

『皆さ〜ん! せーの We are 仮面ライダーSISTERS!!』

 

 電光掲示板で、アイドルの歌が流れ始める。それは今まさにとある場所で行われているライブビューイングだった。

 それを聞いた魔化魍 カシャは苦しみ出し、爆散し土になり、本が弾き出される。

 

「なっ……あの子たち……」

『賢人! グロンギの倒し方、案がある』

 

 驚いているヴァルキュアに、サンが通信をかける。気づかれないよう、小声で。

 

「つまんな。何この歌。これならまだゲラグの方がいいでしょ」

 

『大剣豪浦島二郎! とある物語!』

 

 音楽に気を取られているすきにか、ブックを剣に読み込ませるヴァルキュア。すると剣が釣竿の形をとる。

 

「よぉいしょッ!!」

 

 ザザルの開いた口に釣り糸が放り込まれ、体内に入り込んだそれはある部位を追尾する。それは魔石ゲブロン。グロンギが変化するため腹部に埋め込まれた鉱石。

 

「なっ……にする……気……!」

「なんだと思う……?」

 

 遂に見つけ出し、釣り針にかかるゲブロン。勢いよく引っ張り、石が口から宙に飛び出す。

 

『習得一閃!』

「俺に釣られろッ、はあッ!」

 

 ────爆散。そしてザザルの呼吸は荒くなり、次第にその呼吸すらも出来なくなってしまう。

 

「……なめんじゃ……ないわよ!」

「こっちのセリフだッ!」

『命の水! 習得一閃!』

 

 最後の悪足掻きで、ザザルは体液が辺り一帯に飛び散らせる。しかしヴァルキュアのブックによりそれも敵わず、彼女はゲームオーバーとなった。

 

「ふぅ……」

 

 夕日に照らされたヴァルキュアは、サンに向けて親指を立てた。

 

「危なっかしい奴だなったく……。ってそこに落ちてるのライドブックじゃないか?」

「ん? ……あ!! そうだそうだ! これ忘れちゃまた出てくるからな……」

 

『An Ancient Game GURONGI』

「へぇ……そんな名前なんだ。……じゃなくって! これアルターブックだろ? 小さいし……はッ!」

 

 魔化魍、グロンギの痕に残った本に彼は波癒の力を込める。

 

『ア ニューレジェンド クウガ』

『音撃伝響鬼』

 

 変身を解除し、2冊のワンダーライドブックを持って帰ろうとする賢人。その時、背後から大きな声と素早い足音が聞こえた。

 

「貴方が生存部隊のヴァルキュアですね!!」

「!?」

 

 新手かと思い思わず剣を向ける賢人。その瞬間、その女性はペンとメモノートを取り出す。

 

「おぉ……あ、記者さんですか?」

「おっと自己紹介を忘れてました。私は栄田(さかえだ)真実(まなみ)。夕日新聞の記者をしております」

「へぇ夕日新聞……朝日新聞じゃなくて?」

 

「朝日新聞はその前身の新聞です。その名前を覚えているとは博識なんですねヴァルキュアさんは!」

「え、博識ぃ? あ、アハハハハ!! そんなことないですよぉ」

 

 褒められて悪い気はしない賢人。その頭をサンが叩く。

 

「では取材させていただきますね。先程は戦っていましたけど、あれはどういった存在なのでしょうか?」

「あれは魔化魍とグロンギっていって……あ! でも安心してくださいもう出現することはないですので!」

 

「出現しない……それはどういう────どこへ行くのですか!」

 

 賢人は無理やりサンに引っ張られ、取材は中断となる。

 

「おいバカ! お前口軽いから何言い出すかわかんねぇんだよ! 帰るぞ!」

「……あ、でも始末書」

「逃げるなよ?」

 

 

 

 

 

 

「オルテカ様……私は貴方を超えます」

 

 リバイスが活躍していた世界。そこでも仮面ライダーが放送されていた。そこからやってきたのはかつてとある宗教を信仰し、そして教祖(オルテカ)に殺された青年。彼は一度、元の世界へと戻り、ジョージ狩崎の研究室からバイスタンプを奪った。

 

 そして彼が転生したのはゾンビに支配された世界。全てを利用し、彼はかつての教祖を超える為に怪人を生み出しているのだ。

 

 ──────────────────────

 

 9/5

 デートしてたのになんか魔化魍現れた最悪。もうちょっとタイミング考えろ。てかグロンギもだけど生で見ると怖すぎだろ。スーツよりも絶対ディテール細かいだろ。そういえばあの取材の記事いつ公開されるんだろ




『魔化魍嵐』
『目を覚ませ 人を喰らいしレジェンドメギド』
元ネタは熊獣害小説 羆嵐
『An Ancient Game GURONGI』
『目を覚ませ 古より蘇りしズーメギド』
元ネタはクウガのライドブック A new legend クウガ

オトロシ
元ネタ 響鬼本編のサイの怪物+鳥山石燕の画図百鬼夜行のおとろしの毛むくじゃらの姿

カシャ
元ネタ 響鬼本編の狐 焚字+鳥山石燕の画図百鬼夜行のカシャの猫の姿と雰囲気出しの経文

ゴ・ザザル・バ
クウガ本編の2000年代初期のストリートファッションではなく、25年の地雷服イメージ。+舌ピ
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