とあるライダーオタクが絶望の世界に来てしまった件 作:キラトマト
────始まりの鐘は、絶えず響く。それは誰にも、止められない。
生存部隊、
太陽機関によって編成された、グラナトファから世界を救う為の戦闘部隊、及び所属している少女たちの総称である。
作戦中だというのに昼寝してしまっている少年。彼は
そんな彼は過去の夢を見ていた。
『セカイ、休んでもいいのよ?』
『ありがとうママ。でも、やっぱり楽にさせてやりたいしさ』
『子供は外で元気に遊ぶのが一番! ……なんて押し付ける訳じゃないけどね? 小百合だって遊んだりしてる訳だし……』
『その為にもだよ。家族遊ばせる為にってなんかかっこいいじゃん?』
交通事故により母子家庭となった狗飼家。女手一つで育ててくれた母に恩返しする為、セカイは太陽機関の参謀試験勉強を必死で続けていた。
しかし、入隊試験の為九州本土に渡航している最中、『岡山の惨劇*1』が起きた。それにより母と、そして妹は住居とともに記録上の存在となってしまった。
「あれ……俺何を……」
「みゅ、ようやっとお目覚めですか?」
ダイナモ所属の
ここは広島県呉市、かつて『
「宙戮……悪い」
「セカイ様が作戦行動中にうたた寝とは、珍しいこともあるものですね。寝顔、ご相伴に預かり光栄です」
紫色のツインテールが銃口から生じた風圧で靡く。そして彼は時計を確認する。それは12:25を示していた。
「1時間か……」
「ええ、だいたいは」
部隊を仕切る立場でありながら惰眠を貪ってしまう愚行。更に悪夢でも見ていたかのように頭痛もしていた。
「みゅ、お身体大丈夫です?」
「っ、問題ない。軽い頭痛だ」
「痛み止めなら、お尻のポケットにありますけど」
「気にするな」
「ふふ。女性のお名前、何度も呼んでましたね」
「……だとしたら、尚更気にするな」
「ご安心を、他言無用にします」
そこへ、ニヤついた声が割って入る。
「初任務で、その上先輩の前で昼寝とは随分と浮かれてるねぇセカイっち」
「あ、アドさん!?」
「まぁまぁ、疲労も溜まっていたのだろう。狗飼君、戦闘中はくれぐれも、頼むぞ?」
礼音が念を押す。
現在、呉市に確認されているグラナトファは6体。しかし最後の一体が未だ見つからず、作戦開始から1週間が経っていた。
「はぁ……ケンティーが探してくれてるはずなんだけどなぁ……」
「まぁまだ焦るときではないですよアド。きちんと食料は持ってきてありますし」
『発見しました! Bの5付近! 床屋の近くです!』
ヴァルキュアの通信が響き、空気が変わる。
「「了解!!」」
各々、
「ふんっ!」
アドは不可視の毒手『
「うぅ……はぁッ!」
そして、礼音だけは特別製だった。
「ふっ、悪を正義に。正に仮面ライダーだな」
自らの姿を見て、礼音が呟いた。
さらに百喰によりその場の全員の脳内に地図が共有される。そして礼音の白と青の巨大な翼が、戦場を駆け巡る。
「あれが……最初の生存部隊……ポートラル……」
「まだまだいるからね! お楽しみに〜」
アドはそう言って屋上から飛び降りる。虚実の腕が優しく捕え、衝撃が吸収される。
「凄い……」
「感心している場合じゃないぞ
「あっ……そうでした!」
とぴかは参謀補佐として、ダイナモメンバーに指示を出した。彼女たちも
モーニングスター、ハルバード、ライフル、専用脚部装甲。そして一際目立つのが超巨大電磁ハンマー。
「よぉ〜し! 行くんっ、だよ!!」
それを持つのは
身体の全てが大きいが、それでもハンマー『逝き槌』の大きさに比べれば見劣りしていた。
「湯布院さんは遅いんですから私に乗ってくださいッ!!」
そう言って自分の肩を指差したのは
「落とされないでくださいよ────!」
「わああああ!!! はっ、やいんだよおおお!!」
「疾風迅雷、だな。では私も行くとするか!」
部隊長の
「それじゃあセカにゃん、帰ったらご褒美ね〜」
そんなふうに猫なで声を出すのは
「
「もちろんです────!」
最後にとぴかはセカイを右肩に乗せ、跳躍する。
身長差で言えば逆の行動だが、参謀職と
着地、跳躍、着地、跳躍と、地面に小規模なクレーターを開けながら跳んでいく。
「はッ! よいさッ! みゅみゅみゅッ!」
小柄な体格に似合わず、彼女は特殊ブーツと脚力でビルの外壁を駆け上がる。
「屋上着きます!」
10秒程度の垂直クライミングを経て、とぴかとセカイは12階建てのビルの屋上に到着。2キロ以上も離れた場所のグラナトファを目視する。
7m程の全長、ゴーレムのように岩のような外皮。しかし形状が千差万別のグラナトファにしてはあまり大きくはなかった。
「……ま、小さくもないが」
セカイは呟く。
「ビガァァァ!!!」
そしてそんなグラナトファとポートラルの面々は、既に戦闘を開始していた。
「よいっと! だ〜れだ!」
「礼音さんはあまり手を出さずに! すぐに倒してしまいます!」
アドは不可視の腕で視界を塞ぎ、百喰は戦闘指示を出す。今作戦はあくまでも新人部隊のサポート。先輩であるポートラルがとどめを奪ってはいけないのだ。
「承知した! なら……!」
羽を1枚抜き取り、近接戦に移行する礼音。そして、上空から声が聞こえる。
「お待たせなんだっ、よ!!」
蕾の足裏を、
バゴォォンッ!! それは、グラナトファの左半身を削り、地面に超巨大なクレーターを作り出す。その衝撃が周囲に小規模な過重力を発生させ、奴の動きを鈍らせる。
「そんなの……関係ありません!!」
そんな場所でも
一方のセカイととぴか。彼女の方はスコープを覗いて驚嘆する。
「凄い……遮蔽物が一切ありません……」
市街地の建造物の標高を頭に入れ、射程ギリギリ且つ射撃可能ポイントを割り出す。それは参謀職にとっては持っていて当たり前の技能。
……そして彼の、血のにじむような努力の賜物だった。
「当たり前だ。狙撃準備に入るぞ!」
その一言にどれ程の重みがあるのか、とぴかは気づかない。
「了解なのですっ」
セカイからライフルを受け取ったとぴかは屋上の縁に走り、飛び込むようにうつ伏せになる。
「
『生体認証承認
音声を認識したライフルは、グリップから針を伸ばす。そしてとぴかの手のひらに刺さり、血液をライフル内に循環させる。
『エネグノスの循環を確認。射撃可能です』
「限界は何発だ」
「1……いえ2発はいけます」
「余り無駄打ちしすぎるなよ。貧血で死ぬぞ」
少し冷ややかに、しかしセカイは彼女たちを気遣う。
「勿論────」
「残った腕と足を狙え」
「必中させます……!」
とぴかの右目の前に、光るホログラム照準が現れる。
「いいか、訓練通りだ。ゼロインは仮想演算で3回、誤差10mm以下なら本番……いや難しいことは考えなくていい。大丈夫、お前ならできる。息を整えろ。心音にも耳を貸せ」
「……いつでも、いけます」
「全部隊に通達。5秒後に、ヤツの四肢を奪う。着弾まで数秒ある。射線に入るな」
2km先の動く目標への射撃。賢人が生きていた時代……どころかこの時代でも不可能であるはずの所業。
「狙い打ちます────! 」
『Fire』
血液の入った弾丸が発射される。超高速で迫る弾丸はグラナトファの右脚に着弾した瞬間、その中に留まる。
「左腕だ。撃て」
『エネグノス リチャージ』
「ぐっ……」
ライフルは再度、血液を吸う。とぴかの顔色がみるみるうちに青くなるが、眉に力を入れて照準を安定させる。
『Complete 射撃可能です』
「ふっ……ふぅ……」
「撃て」
『Fire』
2発目も、寸分違わず右腕に着弾、弾は同じく体の中に留まる。
そしてとぴかが指を鳴らすと弾が破裂。
とぴかが貧血で倒れる直前、セカイがそれを支えて血を飲ませた。
「後はアイツらに任せた。……ゆっくり休め」
────そこから先の戦闘は、あまりにも一方的だった。口から触手を出そうとすれば
そして最後の逃げ道は、今ポートラルによって塞がれた。
「核が見えた! 今だ! 戦香!」
グラナトファは不死身である。例え絨毯爆撃に遭おうと、粉微塵にされようと何度でも再生する。
しかし弱点があった。それが聖なる力。
────聖剣と、
「はあああッ!!」
そして
────しかし。
「ヤメテヨ、オネエチャン」
「なっ……!」
グラナトファは、残った体力で少女の姿に化けた。
「先輩擬態です!! 躊躇わないでっ!!」
彼女自身、そんなことは知識として知っている。この行動がグラナトファの打算によるものだと。
しかし理性と本能は違う。人間の姿を破壊することに、躊躇わない人間などいない。
その為戦香はしくじり、攻撃を逸らしてしまう。グラナトファはそれを見て少女の姿のままニヤリと笑い、顔を裂き再生した触手を伸ばす。
「────くっ!!」
戦香はもろに直撃を喰らい、右肩を貫かれる。しかしそれは相手も同様だった。
『やれ、恋葉奈』
つわりの通信機に、セカイの声が響く。
「はいですにゃ〜セカにゃん♡」
棘が付いた巨大な鉄球。モーニングスターが少女ごと核を圧殺した。
「だいじょうぶ〜?」
「ああ……私としたことが。妹に似ていてつい……な」
「ありゃ、痛々しい怪我だぁ」
その言葉通り、左肩に裂傷が起こり、今すぐにでも手当をしなければならない状況。しかし彼女は懐から赤い液体が入ったパックを取りだし、そこから体内に注入する。
すると肩の傷はみるみる塞がり、元通りになる。
『……よくやった皆。帰還だ。1週間ぶりの、な』
セカイは全体に繋ぎ、そして通信を切り呟いた。
「……グラナトファは世界の癌だ。消し去らないと」
大切なものをもう奪わせない。その為の力だから。
作戦終了後の夜、1週間ぶりに内地に戻ってきたセカイはとある場所に向かっていた。
「
婚約者である
しかし今日、弓歌は出かけていた。生存部隊というのは帰って来れる時期が不定期であり、出会える日=記念日とも言えるほど激務だからだ。それも別々の職業なら尚更。
「死の恐怖で絶望しろ!!」
「な……んで……」
そんなタイミングで、弓歌はファントム バハムートに襲われていた。
ワイズマン無き世界の為、ゲートを絶望させる必要はもう無かったのだが、過去の恐怖からの強迫観念により、弓歌を襲っていた。
「やめろ!!」
参謀職に、戦闘能力はない。しかし付近にあった鉄の棒を手に、セカイは果敢にも立ち向かっていった。
「邪魔だっ! ────ん?」
ファントムはそれをいとも容易くへし折る。それでも尚向かうセカイを振り払い、弾き飛ばす。
「お前もゲートか」
見ると、セカイの顔に紫色のヒビがはしっていた。それは絶望の証。完全に絶望しきった時、ゲートは死に、新たなるファントムが生まれる。
「この女はお前の大事な人か? だったら都合がいい。2人まとめて絶望してしまえ!」
弓歌の首が折られる直前、ハルバードがバハムートの体に突き刺さる。
「大丈夫か? 狗飼」
駆けつけたのは自らの部隊長、木守陽戦香だった。彼女は突き刺さった武器を抜く。
「な、なんでお前がっ!」
「何、君の婚約者を見たいと皆が聞かないのでな。つけさせてもらった。そしたら化け物が現れるとはな」
彼が振り向くと自らの部隊のメンバーがいた。
「なんだァ? 指輪の魔法使い……じゃないみたいだが……?」
「魔法使い……? そんな大層なものじゃあない。ただのお姫様さ」
血液をハルバードに吸わせ巨大化させる。元から大きくなった部分は全て戦香自身の血液だ。
「さっさと終わらせるぞ。セカイ、君は久方ぶりのデートタイム、なんだろ?」
恋人を抱えへたり込むセカイを横目に、ハルバードを振り回し、更に巨大化させていく。空気中の酸素を取り込み、血中の細胞が増殖しているのだ。
「はぁッ!!」
ハルバードで何度も切り付けられるバハムート。爆発四散し、跡形も無く消え去る。
「また……この技……クソがあああ!!」
無事ファントムを倒した戦香だったが、日中の作戦での負傷もあり少しよろけてしまう。
「……ありがとう。ッ、戦香────」
「戦香先輩!」
「
「や、やっぱり戦うのは危なかったんですよ!! あわわ急いで治療しないと」
事実、治療の為の血を今、
「騒ぐな
「ついさっきの傷ですよ! あぁもう! 先輩のお美しい御身体に傷だなんて……」
「放っておいてもいい。その方がカッコイイだろう?」
「いいえ! 私がその……唾つけさせて……」
「あぁもう、俺を放るな。悪い弓歌、先に帰っててくれ。すぐに追いつく」
「あーもう! 折角のおうちデートだっていうのにぃ、それじゃあ絶対早く、ね! ────あ、うちのセカイがお世話になっております〜」
弓歌は愛想よくダイナモメンバーの顔を見渡し、頭を下げた。
「ふ〜ん……セカにゃんの恋人さんってこんな人なんだ〜。それじゃあ私も真似して〜」
「つわり、遊ぶのはやめろ」
セカイは忠告する。そして弓歌が行ったことを確認した彼は、専用の機械を通して血を飲ませた。
そして管理者の血を取り込んだ
「いいっ、な〜! 私も飲みたいんだっ、よ〜」
「あまり騒ぐな湯布院。夜だ、近隣の迷惑になる」
「……わかったっ、んだよ〜」
蕾の欲しがりもいつもの事で、彼女たちは太陽機関に戻ったのであった。
「……はぁ、何だったんだあれは。ってこの本……賢人先輩のに似てるような……また持っていってみるか」
独り言を呟き、弓歌の元に戻ろうとしたところ、また足止めを食らってしまう。
「また怪人騒ぎが起こったようですが! 以前現れた物とは性質も何もかも違うようですが!」
ジャーナリストの真実だった。
「あ! あなたもしかして賢人が言ってた! いやちょっと太陽機関は取材許可が……」
言いかけたところ、真実は1枚の紙を縦に広げて誇らしげに示した。
「ジャン! ちゃんと許可、取ってあります!」
「はぁ……時間かかるなぁ……」
しかし無下に扱うこともできず、セカイは取材を進められていくのであった。
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9/14
初めてダイナモと会った。やばい名前多すぎない!? なに恋バナって!? とぴかとか、ひなみかど? とか読めないし!!
なんか今回参加しなかった新人もすごい名前らしい。
後、いつもの事ながら長官に褒められた。
9/15
ファントム出たってまじ!? セカイから渡されてビックリしたんだけど。てかよく人間だけで倒せたな……。人類凄。この世界だったらG3-Xとか開発できそう笑
『ファントム失格』
元ネタ『人間失格』
『目を覚ませ 絶望へ
エネグノス=剣やビルドのライダーシステムに相当。
管理者=基本的に参謀の子。血を分け与えることが出来る。別名適合者。BLEACHでいう死神 滅却師 完現術者 虚。