とあるライダーオタクが絶望の世界に来てしまった件 作:キラトマト
────大義を掲げる。敵を殺す。住処を奪う。一体、正義とは何?
時は少し、遡る。ヴァルキュアによってグロンギと魔化魍が倒された日の夜。
────失われた楽園。それはグラナトファによって壊滅させられた地域の呼称である。
知性を持ったグラナトファたち。そしてその最大陣営、コールサイレン。彼女達の拠点は失楽園 広島県にあり、未だ知られていない盟主自らが建てた神殿のような場所に、幹部5人が集まっていた。
「くふ、やられてしまったようですねぇ、あのにゃんこさん。折角奴らから奪えたと思ったのに」
白と黒に彩られた女性。彼女は
「まぁまぁ、落ち込むな柩っち」
そう言いながら柩に過度なボディタッチを仕掛けるのはコールサイレンの盟主
「くふ、落ち込んでるように見えますかあ?」
しなやかにネメのセクハラから抜け出し、柩は嗤う。
「あーしははなっから期待してなかったけどねー」
グミを食べ、スマホを弄りながら
「くふ、それほど私たちの力を信頼してるんですねぇ」
「は? ちげーし。あーしだけでやれるって意味。てか
「あちゃー聞かれちゃったか〜。いや〜ね? 帰ってからずっとあの調子なのよ」
ネメは額を抑え、カーテンを開けた。窓の外には泣きながら楽器達を磨いている雪蚕がいた。
「うっわ何あれ……」
「月が綺麗だな〜。あはは〜あはは〜」
「ねぇねぇ雪蚕ぉ、そろそろ機嫌治してよぉ。うりうり」
ネメが雪蚕の4つある乳房を揉んでもぷいっと顔を背ける。
「んッ────! まぁ、冗談です。私情を優先させ周りを振り回すだなんて、人間のすることですからね。────それはそれとして」
「なぬッ!?」
「セクハラをする悪いリーダーはこの顔か〜!!」
4つ胸の中心にネメの顔を沈め、雪蚕は高笑いする。窒息どころか、生きていくために酸素が必要ないグラナトファならではのお仕置だった。
「……早くカレー、食べたい」
今まで発言しなかったもう1人の幹部。
「すまないすまない、待たせてしまって。あぁよしよし、あぁよしよし」
雪蚕の乳から抜け出し、続いて死心の乳をさする。
「このおっぱい星人がよぉ……」
いつも通り楽しんでいた中、突然天から幾多もの光とが降り注ぐ。
「お前たちか。人間を諦めた種、というのは」
「……あんたら誰? どーほーって奴?」
シマウマの頭をした怪物が一体。蜂の頭をした怪物が一体。蟻の頭をした怪物が何体も光のもとに現れた。
「もはやこの星には不要。排除対象に追加する」
「なに? あーしらの敵ってこと?」
「くふっ。ま、発言からしてそうでしょうねぇ」
「これも奴らからの刺客だろう。……しかも明確な敵、のな」
以前の魔化魍はただ本能のまま人間を喰らっていた。しかし今現れた、『アンノウン』と別世界で呼ばれていた種は違う。人間という範囲から逸脱した者を殺す神の使い。
ネメの冷静な判断は確かに正しかった。
「クソッ、なんでこうもイレギュラーが起こるのッ!」
蜂の怪物、ビーロードは素早く雪蚕に近づき壁に押し付ける。
「死ね」
押し付けられた彼女は壁と一体化し、身動きが取れなくなる。
「なんでッ、こいつの能力は何ッ!」
そして蟻のアントロードは柩に蟻酸を飛ばす。
すると、周囲は地上であるにも関わらず酸素を取り込めなくなってしまう。
「くふっ。うッ!? 嘘!?」
そのまま柩は意識を失ってしまうのだった。
「はぁ!? 何が起こってんの!?」
更にシマウマのゼブラロードがネメの体に触れると、身体中の体液が全て蒸発しミイラ化してしまう。息はあるものの、その身体では動くことはできない。
残ったのは2人だけ。それに死心はエネルギーの観点で戦うことができない。つまり戦えるのはらぶぱ1人。
「あーしがやるしかないってこと……? あークソ、めんどくせーなぁ!!」
らぶぱはピンクの髪をかき上げ、マスクを装着する。するとファーのような細かい蜂の子が集まる。そして背中から羽が生え、下腹部からは蜂のような毒針が段々伸びていく。
グラナトファの半変異体『赫醒』。人の姿を保ちながら人ならざる力を行使する為の形態。
「ラブパァナ、喰らえし!!」
毒針をアントロード達に突き刺し、毒液を注入する。すると奴らは電源を失ったおもちゃのようにその場に留まり動かなくなってしまう。
「はい余裕余裕〜」
アントロードには快勝。しかし同じ蜂であるビーロードと相対した時、らぶぱの身の毛がよだつ。
────恐怖、それは彼女がグラナトファになって初めて味わう感情。まるで人智を超えた存在を相手にしているかのよう。
しかし、らぶぱの脳内に"4人"の顔が浮かぶ。
「怖いッ……けどねぇ! こいつら失う方が強いっつーの!」
アンノウン襲来時に空いた天井の穴から、
"
「────殺れ」
彼女の一声で、死したはずのアントロードが動き始める。それらはビーロードに向かって歩みを進めていく。それでも下級ロードであるアントロードではビーロードには敵わない。
呻き声を上げながら、蹴散らされていく。
「────は? あーしが殺れっつったら、死ぬ気で殺るんだよ」
しかし女王蜂の一声で、アントロードは何度でも立ち上がり群がっていく。まるでミツバチの熱殺蜂球のように、中心部のビーロードの身体は溶けていく。
複数の天使の輪が重なり、大きな輪となり爆発四散。
「……ふぅ。今まででいっちゃんつえー相手だったよ。アンタ」
しかし、まだ一体残っている。
触れられると終わり、その上もう傀儡は使えない。
「終わったか? 無駄な殺生は」
「は? 無駄……? アンタらが襲ってきたからあーしが戦ったんだし」
「声が大きいな。人間崩れの癖に。人は人のままでいいというのに……」
ゼブラロードは、嘆きの声を漏らす。
「人間は人間のまま……? そんな甘い考えのせいで、私たちの仲間たちは人間に殺されてきたっ! こんな姿にされた私たちの同胞が!!」
壁に埋まったまま、雪蚕は激昂する。未だ動かせる左腕で指揮棒を振り、今彼女が奏でられる唯一楽器、喉を使い微かな音色を奏でる。
「そんなことは聞いていない。お前達は存在してはならない種族だ」
「クソッ! 仕方ねー! ありったけの食いもんを死心に食わせる! それまで触らせない!」
音符を弾き飛ばしたゼブラロードは残ったらぶぱと死心にゆっくりと歩み寄る。しかし、らぶぱは諦めなかった。
「第二楽章
雪蚕は床に楽譜を投げ捨て、再度歌った。
「あーしも……!!」
針の先端を締め、毒液を拡散噴射する。その隙に冷蔵庫から食料をかき集め、死心の口に詰め込む。
「むぐっ!? 急に口に入れられたら……」
「ほんっとマイペースねアンタは! ホントに元軍人?! 周り見て!」
「……!?」
「アンタが食べないとヤバいの! だから早く!」
状況を理解した死心は素早く、しかし確かに味わって様々なものを食べる。
段々と乳房が大きくなり、体格すらも超える大きさになった頃、ようやく毒霧が晴れた。
「その姿……やはり存在してはならない者だッ!」
ゼブラロードは剣を取り出し、駆ける。
「主砲シコフリート-フルファイア-」
「逝っちゃえ♡」
らぶぱの掛け声と同時に、死心は乳房に溜まったエネルギーを発射させた。
「な……んだこの威力は……アギトとは……違う……ぐぁぁぁ!!!」
一瞬は耐えたゼブラロードだったが、その超高出力に耐えられるはずもなく、天使の輪を出す暇もなく爆発した。
安全を確認したらぶぱは息を漏らす。
「……ふぅ、終わった終わった〜。ってあれ? しーこちゃんまだおっぱいおっきいじゃん。なんで?」
「……まだ使わないと、だから」
口数は少なく、しかし確かな足取りでネメの方へと歩いていった。
「……飲んで」
普段のネメなら、喜んで意気揚々と吸い付くだろう。しかしミイラ化してしまっている現状、死心自らが彼女の顔に乳を近づける必要があった。
「まぁ仕方ないよね」
優しい力加減で、排出される水分を母親のように飲ませる死心。
「かはッ!? わ、私は一体何を……? ……おや? おやおやおや? 死心が私に授乳しているぞ?! まさか死心は私のママ────」
「はいはい戯言けっこーコケコッコー。次はゆきんこの救出、でしょ」
「あ、そなの? そんじゃあ……」
ネメは一瞬だけ赫醒し、生み出された剣で雪蚕を体ごと切り離す。
「いったぁ……っとと。ありがとネメ」
失った半身を一瞬で再生させ、雪蚕は礼を言った。
「くふ、ようやく能力が溶けたようですねぇ。ふぅ、苦しかった苦しかった」
背伸びをしながら柩も近づいてくる。
「いやー、頑丈な建物にしておいて良かった良かった。それじゃあカレーパーティーといきま────」
「あー……それなんだけど……。死心が全部食べちゃった」
「な、なんだって〜ッ!?」
翌日の同じ頃、材料を揃え満を持してカレーパーティーを終えたコールサイレンの7人。
「ふぅ、食った食った〜」
「死心様、美味しかったですか?」
「ん。まだ足りない、けど……美味しかった」
それには、死心の部下である
「────さぁ、人類絶滅……シムプトムの日まで後半年を切った。正義を始めようではないか」
ネメの言葉に呼応したのか、雷が付近に落ちた。
グラナトファside コールサイレン。彼らの最終目的は、自分たちを虐げてきた人間たちの絶滅。
果たされるまで、彼女たちは歩みを止めない。
コールサイレン 四天王
頭脳戦担当 ルナ・オペラシオン
武力戦担当 ルナ・ティエラ
経済戦担当 ルナ・コンキスタ
情報戦担当 ルナ・シエロ
名目上の、されど誇りを持った肩書きを引っさげ、闇夜を照らす10の月が、今動き出す。
『アンノウン神話』
『目を覚ませ 神に従いしストーリーメギド』
Tips.事前登録ではAndroid、ios共に1位を取っていたぞ。すごいな